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内縁の妻(夫)には相続権がない?内縁関係でも遺産を残す方法を解説!

遺産分割のトラブル
投稿日:2024年01月23日 | 
最終更新日:2024年03月18日
Q
内縁の妻がいます。わたしが死亡した場合に、財産を内縁の妻に残したいと考えています。
どのような方法があるのでしょうか?
Answer
内縁の妻は、死亡した内縁の夫の遺産を相続する権利がありません。

事実上、長年、夫婦として生活をしていたとしても、婚姻届けを提出していない場合、内縁の妻は法定相続人となることはできないのです。
しかし、内縁の夫が、内縁の妻に財産を残したいと考えている場合、次のような対策を行うことで、内縁の妻に財産を残すことが可能です。

・遺言書を作成して遺贈する
・生前贈与をする
・生命保険の受取人にする

事実婚・内縁関係にある方々が、相互の財産をパートナーのために残すには、事前の対策がとても重要となってきます。税金への配慮も不可欠です。
Q
内縁の夫が死亡した場合、内縁の妻は、死亡した夫の財産を取得することはできるのでしょうか。相続や財産分与請求ができるのか、教えてください。
また、内縁の夫が所有する家に住んでいますが、内縁の夫が死亡した後も、この家に住み続けることはできるのでしょうか。配偶者居住権や配偶者短期居住権は内縁関係でも認められるのでしょうか。
Answer
上記QAのとおり、内縁の妻は相続権がありません。

内縁の夫が積極的に財産を譲るための対策を講じなかった場合、内縁の妻は遺産を取得することができないのか問題となりますが、次のような方法をとることが考えられます。

・(内縁の夫が生前であれば)内縁関係を解消して財産分与を求める
・相続人と交渉
・特別縁故者として遺産を取得

また、内縁の夫が所有していた家に住んでいる場合、内縁の夫の相続人から建物の明け渡しを求められることもあります。内縁関係の場合、配偶者居住権や配偶者短期居住権は認められていません。場合によっては、内縁の妻の居住が保護されることもありますが、安心した生活ができるよう、事前に対策しておく必要があります。

このように、内縁関係にある場合、その財産の承継については事前の対策が重要となってきます。この記事では、内縁夫婦の財産の承継の問題に焦点を当て、解決策や事前対策を説明していきます。

内縁関係にある人々や関係者が、共に生活を送るための知識を得る助けになれば幸いです。(なお、ここでは便宜上、財産を有する内縁の夫が死亡した場合を想定して記述していますが、財産を有する内縁の妻が死亡した場合も同様です。)

内縁のパートナーに財産を残す方法とは?相続に強い弁護士が動画で解説

内縁関係(事実婚)と法律婚の差異

内縁関係、いわゆる事実婚など、公的な証明がなくとも、「内縁の夫婦」として日常生活を共にし、支えあう関係は社会的に存在します。しかし、法律婚と比較すると、法的保護を受けるのは簡単ではありません。

たとえば、法律婚であれば遺産相続に際しても、配偶者控除のような税法上の優遇措置等のメリットがありますが、内縁のパートナーには適用されません。内縁のパートナーが遺産を取得したところ、思いがけない税金の負担に直面することも少なくありません。

相続に際しても、法律婚ではその配偶者やその子供は当然に相続権を有し、原則として法定相続分の遺産を受け取ることができます。しかし、内縁のパートナーは遺言書がなければ相続人となることはできません。このように、内縁のパートナーが死亡した場合、相続においては、法定相続人である法律婚の配偶者や子供たちが優先されます。

事実婚・内縁関係にある方々が、このような問題を克服し、不安のない未来を見据えるためには、事前の対策がとても重要です。

内縁の妻の相続権

内縁の夫が死亡した場合、内縁の妻は法律上の配偶者ではないため、法定相続人にはなれません。(内縁の妻が死亡した場合も、内縁の夫は法定相続人ではありません。)

法定相続人とは
死亡した人の法律上の配偶者は常に相続人となります。配偶者以外の人は、①~③の順で配偶者とともに相続人となります。なお、相続を放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされます。
   〇 配偶者
     +
① 死亡した人の子供(※)
② ①がいない場合、死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
③ ①も②もいない場合、死亡した人の兄弟姉妹

内縁の妻との子は、父親と法的に父子関係が認められないため、原則として相続人にはなれません。しかし、父親が認知していれば法定相続人となります。このとき法律上の夫婦の間に生まれた子との間に相続分の違いはありません。

そのため、内縁の妻に財産を残したい場合、婚姻届けを提出して法律婚としておけば、配偶者は「法定相続人」となるため、相続できます。そして、法律上の配偶者であれば、相続税について配偶者控除を受けることもできます。これは財産を残す側と受け継ぐ側の双方にとって大きなメリットです。

このように法律婚にはメリットがあります。しかし、婚姻届けを提出しない事情は様々です。次項から、内縁関係のまま、財産を承継するための対策について説明していきます。

遺産を承継させたい内縁の配偶者ができる対策

内縁の妻(夫)には、法律上の配偶者と違い、相続権がありません。そのため、内縁のパートナーの死後に、その財産を承継するには、何らかの対策が必要です。そこで、財産を有する者が、内縁のパートナーに財産を残したい場合の対策について検討します。

財産を有する者が、内縁のパートナーに財産を残すために考えられるのは次のような対策です。

  • 遺言書を作成して遺贈する
  • 生前贈与をする
  • 生命保険の受取人にする

そこで、一つ一つ確認してみましょう。

遺言書を作成して遺贈する

内縁の夫婦間であっても、遺言書に、内縁のパートナーに財産を譲渡する旨を記載することで、内縁のパートナーに遺産を遺すことができます。このように、亡くなった人が、遺言によって自己の財産を他人に与える行為を「遺贈」といいます。

では、内縁のパートナーに遺贈をする場合の注意点を見ていきましょう。

「特定の財産を与える」か「全部又は一定の割合を与える」

遺贈をする場合、特定の財産を与えること特定遺贈)というだけではなく、財産の全部又は一部を一定の割合で示して与えること包括遺贈)も可能です。なお、包括遺贈の場合、遺言者の負っている債務を含めた全部の財産を承継することになるため、注意が必要です。

特定遺贈 (例)○○所在の土地と建物を遺贈する。 
包括遺贈 (例)財産の全部を遺言者の内縁の妻Aに包括して遺贈する

相続税の適用を受ける

遺贈により相続財産を取得する場合には、相続税が加算されます。
しかし、配偶者と一親等の血族が相続財産を取得する場合より、内縁のパートナーが遺贈を受ける場合、相続税が2割加算されます。そのため、遺言書を作成する際には、相続税を計算した上で、配分を決定することが重要です。


また、相続人以外の者に不動産を承継させる場合、不動産取得税が課税され、登録免許税の軽減が認められない点にも注意が必要です。


しかし、生前に行う贈与に際して適用される贈与税と比較すると、承継する財産が同じ金額である場合の税率は相続税のほうが低いため、節税に繋がることもあります。

公正証書遺言がおすすめ

遺言は一定の形式を必要とし、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。内縁関係の場合、公正証書遺言をおすすめします。公正証書遺言は、作成にあたり公証人が関与し、また、公証人が保管もしてくれるため、将来起こりうる相続トラブルを大幅に減少できるからです。

遺留分に配慮が必要

遺贈する場合、被相続人の配偶者や子どもたちの遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。そのため、遺留分に配慮し、対象の財産を他の相続人の遺留分を侵害しない程度にとどめておくか、遺留分侵害額相当の金銭を支払える手当てをしておくことが必要でしょう。

このように、遺贈は内縁のパートナーに財産を残すために有効な手段です。しかし、遺言者より先に内縁のパートナーが亡くなってしまった場合への対策や、遺言時の遺言能力の有無が争われるリスクの軽減のための対策など、遺言書を作成する際に注意すべき点は数多くあります。財産を内縁のパートナーに確実に遺すために、弁護士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

生前贈与をする

内縁のパートナーに財産を残したい場合、生前に財産を贈与する(贈与契約)という方法も考えられます。
この生前贈与の場合のメリットや注意点を見ていきましょう。

計画的に贈与税の非課税枠を利用

贈与をする場合には贈与税がかかります。
しかし、年間110万円までの贈与であれば、贈与税がかかりません。この枠を利用し、内縁の妻や夫に計画的に資産を移転することは、とても有効な対策です。ただ、多額の財産を移転する場合には、早期に対策を始める必要があります。

書面を作成

生前贈与は口頭でも可能です。
しかし、贈与者が亡くなった場合や認知症になってしまったような場合、相続人などから争われ、贈与を受けたことを証明できないおそれもあります。
そのため、贈与契約書など、書面を作成しておくようにしましょう。
また、贈与税の非課税枠の利用に際しても、各年で別個に贈与が行われたことの証として、毎回、別個の贈与契約書を作成することが有用です。

このように、生前贈与により、内縁のパートナーに対して財産を分け与えることができます。また、使い方次第では税務上の利点があります。しかし、後に生じる争いのリスクや贈与税の非課税枠の利用ができないリスクを軽減するため、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

生命保険の受取人にする

内縁のパートナーに財産を残す方法として、生命保険の受益者、つまり死亡保険金の受取人として内縁のパートナーを指定するという方法も考えられます。

前述のとおり、内縁のパートナーは法定相続人になることはできません。しかし、死亡保険金は、内縁のパートナーに直接支払われます。相続財産とは別に受け取ることができるため、遺産分割などの手続きを経る必要がありません。

ただし、戸籍上の配偶者の有無や同居期間等の条件などによって、保険金額に上限が設定されることや、契約自体ができない場合もあります。審査に際しては、同居していることを確認する書面(住民票など)の提出を求められることもあります

また、内縁のパートナーが死亡保険金等を受け取る場合、相続税が課税されます。相続人の場合は相続税の非課税金額に該当する部分について相続税が非課税となりますが、内縁の場合は非課税金額の適用はないため注意しましょう。

遺産を承継したい内縁の配偶者ができる対策

では、内縁のパートナーが財産を残すための対策をしてくれない場合、その財産を承継するためにはどのような方法が考えられるのでしょうか。

ここでは、内縁のパートナーの財産を承継したい場合の対策について検討します。
内縁のパートナーの財産を承継したい場合の対策としては、次のような方法が考えられます。

  • (内縁の夫が生前であれば)内縁関係を解消して財産分与を求める
  • 遺族年金を請求する
  • 相続人と交渉
  • 特別縁故者として遺産を取得

そこで、一つ一つ確認してみましょう。

(内縁の夫が生前であれば)内縁関係を解消して財産分与を求める

内縁関係が生前に解消された場合、財産分与請求が認められることがあります。裁判においても、内縁を婚姻に準ずる関係とみて、内縁に対してできる限り婚姻に準ずる法律効果を与えようとする傾向があるのです。

ただし、法律婚と内縁関係が並行していた場合、このような場合の内縁関係を重婚的内縁といいますが、この重婚的内縁を解消された場合、財産分与は認められない場合が多いです。しかし、法律婚が破綻し、形骸化しているような場合、重婚的内縁でも解消した場合には財産分与が認められる可能性が高くなります。

また、財産分与に際しては、譲渡所得税等の課税の問題もあるため注意が必要です。

遺族年金の請求

内縁関係であっても、一定の要件(原則として同居、内縁のパートナーに生計を維持されていたこと等)を満たせば、内縁のパートナーの遺族年金については、受給をすることが可能です。

相続人と交渉

前述のとおり、内縁関係の場合、法定相続人になることはできません。しかし、相続人らが納得した場合には、遺産を取得できる可能性があります。

例えば、内縁のパートナーが、被相続人に対して長年、介護等をしていたような場合、相続人らが内縁のパートナーの貢献に報いるために遺産を分けようという話になり、遺産分割協議の結果、内縁のパートナーにも遺産を分割するということも考えられます。

このように遺産分割により内縁のパートナーが遺産を取得するためには、相続人らの納得が不可欠です。しかし、相続人らとの関係性によっては、取得できる可能性もあるのです。

特別縁故者として遺産を取得

内縁のパートナーの法定相続人が一人もいない場合、財産は原則として国庫に帰属してしまいます。

しかし、内縁関係にある者が家庭裁判所で「特別縁故者」の手続をとることで、遺産の全部または一部を受け取ることができる可能性があります。

民法は、「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」(民法958条の3)としています。この条文からもわかるとおり、特別縁故者への財産分与については、家庭裁判所の裁量によるところが大きいです。

内縁のパートナーが特別縁故者と認定されるには、内縁関係が長期にわたり安定して続いていることや、遺されたパートナーが経済的に故人に依存していたことなどが考慮されます。

小括

このような方法をとる場合、法的知識と手続きの理解、適切な書類の提出が不可欠です。内縁のパートナーが財産を継承できる可能性を高めるためには、弁護士等の専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

配偶者居住権は内縁関係にも適用されるのか?

亡くなった内縁のパートナーと同居していた家に、そのまま住み続けることはできるのでしょうか。以下、亡くなった内縁のパートナーが家を所有していた場合と賃借していた場合に分けて検討してみましょう。

亡くなった内縁のパートナーが所有していた家

令和2年に施行された改正相続法で、配偶者居住権や配偶者短期居住権が定められました。

配偶者居住権:残された配偶者が、被相続人の所有(又は夫婦共有)の建物に居住していた場合、一定の要件を充たせば、被相続人が亡くなった後も、配偶者が賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利。

配偶者短期居住権:残された配偶者が、被相続人の所有する建物に居住していた場合、引き続き一定期間、無償で建物に住み続けることができる権利。

しかし、これらの権利は、内縁関係には適用されません
では、内縁の夫の相続人から建物の明け渡しを求められた場合、残された内縁の妻は、明け渡しをせざるを得ないのでしょうか。
この点、裁判例をみると、内縁配偶者の居住権の保護を重視する傾向にあります。


例えば、黙示的であっても、内縁の妻が死亡するまでその建物を無償で使用させるという使用貸借契約が成立していたと認められる場合、内縁の妻の居住が保護されると判断した裁判例があります(大阪高判平成22年10月21日)。


また、生前贈与を認めたり、財産分与を類推適用して残された内縁のパートナーの居住を保護している裁判例や、相続人から内縁配偶者への建物明渡請求が権利の濫用に当たるとしたもの(最判昭39年10月13日)などもあります。


このように、裁判例を見る限り、残された内縁のパートナーの居住は保護される場合が多いようです。しかし、確実なものではないため、できる限り事前の対策をして、残される内縁のパートナーが安心して生活できるようにしておきましょう。

亡くなった内縁のパートナーが賃借人として借りていた家

内縁の夫が賃借人として借りている家に同居していたところ、内縁の夫が亡くなった場合、内縁の妻はそのまま住み続けることはできるのでしょうか。
この点、内縁の妻は、相続人ではありません。そのため、亡くなった内縁の夫の賃借権を相続できません

しかし、居住用の建物の賃借人が死亡した場合、相続人がいない場合に限り、事実上、夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居人に対し、賃貸借の承継が認められています(借地借家法36条1項本文)。

では、亡くなった内縁の夫に相続人がいる場合はどうでしょう。
賃借人(内縁の夫)に相続人がいる場合でも、賃貸人が内縁の妻に対して不動産明渡請求を行ったときは、内縁の妻は、相続人が相続した賃借権を援用できるとされています(最判昭42年2月21日)。

そして、相続人から明け渡しを求められた場合には、その請求が権利濫用に当たるとして内縁の妻が保護される場合もあります(最判昭39年10月13日)。

とはいえ、内縁の妻が賃借権を承継できるわけではなく、賃借人となるのはあくまで相続人です。
そのため、賃借人である相続人が賃料を支払わなければ、債務不履行を理由として賃貸人から賃貸借契約を解除され、明け渡しを拒むことができないという結果になる可能性があります。

このように、賃借している建物に同居している場合、賃借人となっている者が亡くなると残された内縁のパートナーの生活はとても不安定なものになりかねません。安心して生活が送れるよう、しっかりと事前の対策をしておきましょう。

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法律婚の場合、配偶者の一方が死亡すれば、他方の配偶者には当然に相続権があるため財産を承継することは難しくありません。また、居住についても、配偶者居住権等が法律上認められており、一方の配偶者が亡くなった後も安心して暮らせるよう配慮がなされています。

内縁関係の場合も、裁判等になった場合に法律婚に準じ、又は、様々な法律構成を駆使して保護されることもあります。

しかし、裁判で権利関係を認めてもらうのは残されたパートナーにとって大きな負担となります。
そのため、内縁関係の場合、一方が死亡した場合に他方に財産を承継できるよう、生前に意思表示を書面等の形にするなどの対策をすることが必要です。

ただし、方法は様々なパターンが考えられ、また、税金や遺留分に対する対策など、注意すべき点も多くあります。そのため、弁護士など専門家に相談して、よりよい対策を講じるようにしましょう。

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