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弁護士コラム
限定承認を選ぶべきケースとは?限定承認のメリット・デメリット、弁護士への依頼方法をご紹介
- 相続放棄
- 投稿日:2022年07月21日 |
最終更新日:2022年07月21日
- Q
- 限定承認は、どのようなケースで選択される方法なのでしょうか?また、相続人の中に限定承認に反対する者がいるのですが、どうなるのでしょうか?
- Answer
- 限定承認を選択するケースとしては、債務超過が明らかではないときや、土地や家業といった引き継ぐ必要のある財産がある場合、たとえ被相続人に債務があっても引き継ぎたいという思いがあるような場合です。ただし、相続人の中に限定承認に反対する者がいる場合は、限定承認を行うことはできません。
限定承認とは?
あなた、またはどなたかが相続人となった場合は、3つの相続方法から選びます。3つの相続方法とは「単純承認」「限定承認」「相続放棄」です。もし亡くなった方の財産が、プラスの財産が多いのかマイナスの財産が多いのかわからない場合、どれを選択するべきなのか迷う方が多いでしょう。
状況によって相続方法を間違えると、損することがあります。ここでは、相続方法の一つである「限定承認」について、その意味や、「単純承認」「相続放棄」との違いを見ていきましょう。
限定承認とは
限定承認とは、亡くなった方のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することを指します。相続を行う際、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれどのくらい残っているのか分からないケースがあります。
住居や土地といったプラスの財産が多いときに相続放棄を選択すると、相続できたはずのプラスの財産を放棄することになり、大きな損をしてしまうのです。
そこで限定承認を選んでおくことで、プラスの財産の範囲内でのみ負債を引き受けることができます。
単純承認と限定承認の違い
単純承認とは、プラスの財産とマイナスの財産をすべて相続することです。例えば亡くなった方のプラスの財産が1,000万円、負債が5,000万円の場合に単純承認を選ぶと、1,000万円の財産を受け取ると同時に、5,000万円の負債も弁済しなければなりません。
しかし限定承認を選択した場合は、弁済しなければならない負債はプラスの財産分の1,000万円です。残りの4,000万円について、相続人は弁済を求められることはありません。
限定承認と相続放棄の違い
相続放棄とは、プラスの財産及びマイナスの財産がいくらあっても、すべて引き継がない相続方法です。
亡くなった方のプラスの財産が1,000万円、負債が4,000万円ある場合に相続放棄を行うと、負債を弁済する必要はなくなるものの、プラスの財産を受け取ることもできません。しかし、相続放棄をしたからといって負債がなくなるわけではなく、次に相続人になる方に引き継がれる点には注意が必要です。
限定承認のメリット・デメリット
事前に限定承認のメリット・デメリットを知ることで、損をするリスクを抑えられるでしょう。ここでは限定承認のメリット・デメリットについてご紹介します。
限定承認のメリット
限定承認のメリットは次のとおりです。
- プラスの財産の範囲を超える負債を相続する必要がなくなる
- 相続財産の不動産等を手放す必要がなくなる場合がある
- 先買権の利用が可能
- 債務などマイナスの財産を相続する心配が不要
限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぎます。つまり、相続する財産がマイナスの方が多いにしても、相続人が残した財産以上の負債を負うことはなくなります。そのため、相続人の残した負債が多いとしても、不測の不利益を被ることがなくなるのです。
また限定承認では、プラスの財産でマイナスの財産を清算することになります。この場合債務を弁済できなければ、相続財産は手放さなければなりません。しかし、手に入れたい不動産がある場合、その不動産に相当するお金を用意できる場合は、換価処分を免れ、当該不動産を手元に残すことができるのです。不動産の買取可能な資力があることが大前提となりますが、不動産を手放すことになる相続放棄にはないメリットといえます。
先買権とは、相続した不動産が競売にかけられたときにその不動産を優先的に購入できる権利です。相続放棄の場合は先買権が利用できないものの、限定承認の場合は先買権を利用できます。
限定承認の場合はいったん承認し、後から膨大な負債が見つかったとしても相続放棄への変更はできません。しかし限定承認はプラスの範囲内で負債を引き継ぐため、後からマイナスの財産があるのでは?と心配することはありません。
限定承認のデメリット
限定承認のデメリットは次のとおりです。
- 相続人全員で行わなければならない
- 譲渡所得税が発生する
- 債務清算手続きの手間が多い
- 相続税の減税制度を受けられない
限定承認は、相続人の中に一人でも反対する者がいれば行えません。さらに、みなし譲渡所得税が発生します。準確定申告をする必要があり、手間がかかります。
他にも、裁判所に所得の申請書を提出する手間があることや、減税制度を受けられないのはデメリットといえるでしょう。相続税の減税制度を受けられないため、場合によっては単純承認をしてマイナスの財産は個別に引き継いで弁済したほうがプラスになるケースもあるのです。
限定承認を選ぶべきケース
限定承認を選ぶべきケースは次の3つです。
- 債務超過である場合
- 負債の額を明確にして相続したい場合
- 財産の額も負債の額も不明確である場合
選ぶべきケースを詳しく見ていきましょう。
債務超過である場合
例えば故人のプラスの財産が200万円、負債が500万円ある場合、債務超過です。相続人が今も被相続人の持ち物がある自宅で生活をしている場合や、相続したい財産がある場合に、限定承認はとても有効です。相続人が不動産持分を優先的に買い戻せば、被相続人名義の財産を相続できます。
プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続するため、手続きは複雑ですが、負債を清算した上で自宅などの財産を相続できる手段として、非常に有効です。
負債の額を明確にして相続したい場合
自分が相続人である場合、うかつに単純承認などを行うと、負債などもすべて引き受けなければならなくなる可能性があります。負債の調査を行い負債がないということが判明したものの、実は負債があるのでは?と不安な場合、限定承認を選ぶことが考えられます。
負債調査で負債が判明しなかった場合、限定承認申立て後の官報公告を通じて、公に債権者がいないことを確認する過程があります。この過程で債権者が誰も現れなければ、手続き上では債権者がいなかったことになるのです。もし、この過程で債権者が現れたとしても、相続した財産の範囲で、負債の財産を弁済すればよいことになります。
プラスの財産の額も負債の額も不明確である場合
プラスの財産とマイナスの財産の金額がほぼ同じ、あるいは両財産の金額がわからない場合は、債権者が後から現れた場合でも、プラスの財産を限度として弁済すればよいことになります。
プラスの財産以上には負債を引き継ぐことがないという点は、限定承認のメリットといえるでしょう。単純承認を選択し、後から多額の負債があることが判明した場合は、負債の清算をしなければなりません。負債の心配がある方は、限定承認を選択し、後から負債が判明しても心配の要らない限定承認を選択するのがよいでしょう。
限定承認の判断が難しいケースをご紹介
限定承認の判断が難しいケースは次の5つです。
- 限定承認に反対する相続人がいる場合
- 相続人に成年被後見人がいる場合
- 相続人の一人が行方不明の場合
- 相続人の一人が相続財産を処分していた場合
- 相続人の一人が熟慮期間を過ぎている場合
限定承認を選択すべきかどうか、判断が難しいケースを詳しく見ていきましょう。
限定承認に反対する相続人がいる場合
冒頭でも述べましたが、限定承認は相続人全員が同意していなければできません。つまり、一人でも反対する者がいる場合は、限定承認を行うことはできないのです。相続放棄をした者は相続人ではないとみなされるため、相続人とカウントはしません。それでもすべての相続人から合意を得るのは難しいでしょう。相続放棄についてあらかじめ話し合っておくと、スムーズに相続方法を選択できます。
相続人に成年被後見人がいる場合
相続人に成年被後見人がいる場合は、通常とは違う方法で遺産分割協議をする必要があります。通常の手順で限定承認を行うのではなく、遺産分割協議を行うにあたり特別代理人の選任申立てが必要となります。
成年被後見人とは
成年被後見人とは、判断能力が欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人です。
相続人の一人が行方不明の場合
相続人の一人が行方不明の場合も、限定承認はできません。
限定承認は、相続人「全員の同意」が得られなければ選択できないため、相続人の一人が行方不明であっても、共同の申立てができなければ限定承認はできないということになります。
相続人の一人が相続財産を処分していた場合
相続人の一人が相続財産の処分をしていた場合は、「法定単純承認事由」となる処分行為の対象に該当します。
法定単純承認が成立すると、それ以降は相続放棄や限定承認ができなくなります。
処分行為とは、財産の現状・性質などを変更する行為を指しています。処分行為には、相続遺産の損壊・破損なども含まれるのです。
なお、この処分行為は相続放棄・限定承認をする前の処分行為に限られます。
相続放棄などをした後の処分の場合は、法定単純承認ではなく、相続債権者、共同相続人、次順位の相続人に対する関係で損害賠償の問題が発生します。
相続人の一人が熟慮期間を過ぎている場合
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内(熟慮期間内)に単純承認、限定承認または相続放棄を選択しなければなりません。
熟慮期間内に申立てが難しい場合は、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立てをする必要があります。熟慮期間が過ぎても延長の申立てをしないまま期間が経過した場合は、単純承認をしたものとみなされます。
限定承認を弁護士に依頼する際の2つの支払いパターン
限定承認を弁護士に依頼する際、料金が発生しますが、支払い方法は依頼事務所によってさまざまです。ここでは限定承認を弁護士に依頼する際の、2つの支払いパターンについて見ていきましょう。
着手金・成功報酬金方式
1つ目が着手金・成功報酬金方式です。依頼した際に着手金を支払い、相続が終了した際に成功報酬金を支払う方式です。成功報酬は、着手金とは異なり弁護士の業務の結果・成功に応じて支払う費用が変わります。依頼先の事務所によって着手金や成功報酬が異なるため、気になる方は依頼する事務所に問い合わせをしてみましょう。
定額型
もう1つが、定額型の方式です。定額型とは報酬として一定額の費用に加え、それに加えて戸籍謄本取得などの手数料や、官報公告費用などの実費を加えた費用を支払うものです。成功報酬方式より、かかる費用を把握しやすいメリットがあります。
まとめ
この記事では限定承認のメリット・デメリット、限定承認が難しいケースや弁護士へ依頼した際の支払いパターンなどをご紹介しました。相続方法はいくつもあり、難しいと思っている方も多いと思いますが、いざというときに備えて知っておくと、スムーズに相続ができるようになります。
あらかじめ知っておくことで、状況に応じて損をするのも防ぐことができるでしょう。なお、限定承認は相続人全員の同意が必要となるため、気になる方はあらかじめ、共同相続人となる予定の方と話しておくのがおすすめです。
なお、熟慮期間である3ヶ月以内に手続きができなかった場合は、熟慮期間伸長の申立てを行いましょう。いずれにしても早く動けるように準備をしておくと、実際に相続をする状況になってもスムーズに相続方法を選択できるはずです。
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