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弁護士コラム

「再転相続」とは?具体的なケースや熟慮期間のカウントについて分かりやすく解説

相続放棄
投稿日:2022年07月21日 | 
最終更新日:2024年02月20日
Q
再転相続とはどのような相続のことでしょうか?また、再転相続における熟慮期間はいつからいつまでなのでしょうか?
Answer
例えば祖父がなくなった場合、通常であればその息子である父が熟慮期間の3ヶ月の間に、「単純承認」「限定承認」または「相続放棄」の3つの選択肢から相続方法を選びます。
しかし、その相続をするはずだった父親が選択を決定する前に亡くなってしまい、その子供(自分含む兄弟)が相続するようなケースがあり、これを「再転相続」といいます。

この例の場合、祖父の相続についての子(自分含む兄弟)の熟慮期間は、子(自分含む兄弟)が父の相続により、祖父の相続人としての地位を承継した事実を知った日から3ヶ月間となります。
つまり、祖父の相続について、子(自分含む兄弟)の熟慮期間は

●父が祖父の相続をしたこと(第1相続)を父が死亡する前から知っていた場合
➡父の相続を知ったときに父が祖父の相続をしたことも知っているため、父の相続を知ったときに熟慮期間開始

●父が祖父の相続をしたこと(第1相続)を父の死亡後に知った場合
➡祖父の相続を父がしたことと、父の相続を知った時に熟慮期間開始

再転相続とは?相続に強い弁護士が動画で解説

再転相続の概要

再転相続とは

再転相続とは、相続A(第一相続)の熟慮期間中に、相続人が相続を承認するか放棄するかを決める前に亡くなってしまい、相続B(第二相続)が発生した場合のことをいいます。

相続の方法を検討している熟慮期間中に相続人が亡くなってしまうことにより、このケースが発生するのですが、熟慮期間は「自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月」と決められています。

例えば、相続人である父親Aが被相続人の祖父Bの相続する財産について、承認もしくは放棄の選択をしないまま亡くなってしまったとします。

このように連続で2人が亡くなってしまった場合において、父親Aの息子Cが祖父Bの相続人となった際に、父親Aと祖父Bの間の相続関係が不確定な状態で息子Cを相続人とする第二相続が発生するような場合を、再転相続と言います。

第二相続の相続人息子Cが祖父Bの財産を相続すると、その相続する財産には、元々父親Aが相続するはずであった、「第一相続の承認または放棄を選択できる地位」も含まれることになります。

このような場合、もし仮に第一相続について、息子Cの熟慮期間を父親Bの熟慮期間の残っている期間で設定した場合、第一相続の相続財産について十分に調査できず、熟慮の上で単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択することが困難になってしまう可能性があります。

そこで民法では、第一相続、第二相続の両方の熟慮期間については、起算点をCが「自己のためにBの相続の開始があったことを知った時」から起算することとしました。

喜ばしいことではありませんが、相次いで相続が発生した場合、再転相続の知識がとても重要になってきますので、しっかりと学んでいきましょう。

再転相続の具体例

再転相続の具体例は、例えば以下のようなケースに発生します。

叔父が老衰で亡くなったため、叔父の財産を母親が相続し、母親が相続放棄するかどうかを悩んでいる間に亡くなり、叔父の財産を母親の子どもが相続した。

この場合、叔父の死亡が第一相続、母親の死亡が第二相続となります。

再転相続と似ている4つの用語

再転相続と似ている4つの用語について説明していきます。

1:相次相続

相次相続とは、相次いで相続がおこることを指します。

例えば、財産の相続Aがおこなわれて、あまり年月が経たないうちに、相続Aの相続人が病気で亡くなってしまい、財産の相続Bがおこなわれた場合、この一連の相続のことを相次相続といいます。

「相次いで相続がおこる」とは、どれくらいの期間内であれば該当するのかというと、10年以内と考えることが多いです。そのため、立て続けに相続が10年以内に発生した際は、相続税の控除を受けることが可能です。この控除のことを「相次相続控除」といいます。

再転相続との違いは、相次相続は10年以内に相次いで相続がおこることを指し、再転相続は相続をするかしないかを決める期間である自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に相続が起こることを指す、という違いです。

2:代襲相続

代襲相続とは、例えば、Aの子供であるBが、Aよりも先に亡くなってしまっており、Bに子供のCがいた場合に、Aの財産をCがBを代襲して、相続する制度のことです。

簡単に言うと、代襲相続の場合は被相続人が亡くなってしまう前に相続人が亡くなっており、再転相続の場合は被相続人が死亡した後で相続人が死亡しているという点で異なります。

再転相続の場合には2つの相続(例えば、父が祖父の相続をし、子が父の相続をするという、祖父と父親の2つの相続)について手続きをする必要があります。

一方で代襲相続の場合は、直近の相続で1つのみの手続き(例えば、祖父が亡くなった時にすでに父が死亡していた場合、祖父の相続のみ)が必要になります。

また、配偶者の立ち位置も2つの方法で異なります。代襲相続の場合、配偶者は代襲相続人になることはできませんが、再転相続の場合は再転相続人に含まれる、といった点が異なります。

3:数次相続

数次相続は、相続の承認が終わった後、相続の手続きが完了する前に相続人が亡くなった場合に起こる相続のことを指します。

再転相続・相次相続と混同しやすいため、気を付けましょう。

4:同時死亡

同時死亡は、交通事故などで家族全員が同時に亡くなったなどのケースで、被相続人と相続人が同時に亡くなってしまう場合のことを指します。

同時に亡くなってしまった人の間では当然相続は発生しませんし、被相続人の財産を相続することもあり得ないので、再転相続はもちろん発生しませんが、代襲相続は発生します。

再転相続の熟慮期間はいつから始まる?

熟慮期間とは

相続をする場合には、相続の方法を選択する「熟慮期間」が定められています。

相続人が自身のための相続があったことを知ったタイミングから3ヵ月間で、相続をする(単純承認・限定承認)か放棄するかを決めなければいけない、と民法915条で定められています。

この熟慮期間を過ぎてしまった場合、相続を単純承認したものとみなされてしまいます。その場合、限定承認や相続放棄を選択することができなくなってしまうため、この熟慮期間の起算点(始まるタイミング)がいつからになるのか、といった点は非常に重要視されています。

再転相続の熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から

再転相続の場合、第1相続の熟慮期間の起算点は、民法916条で「自己のために相続の開始があったことを知った時」とされています。この意味は、相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を、自己が承継した事実を知った時であるとされています(最判令和元年8月9日)。つまり、第1相続の熟慮期間の起算点は、第2相続の相続人が、第2相続により、第1相続の相続人としての地位を自分が承継したことを知った時となります。

そのため、再転相続で祖父から父に相続、父から子供へ相続、といった2つの相続があった場合で、子供は祖父の死亡について父の死亡前から知っていた場合、祖父の相続についても、父の死亡を知った時から3ヵ月以内に限定承認又は放棄をするか決めればよいのです。

他方、再転相続で祖父から父に相続、父から子供へ相続、といった2つの相続があった場合で、子供が祖父の死亡について知らなかった場合、子が、祖父の相続人としての地位を承継した事実を知った時(つまり父を自分が相続することに加え、父が祖父を相続することを知った時)から3カ月以内に限定承認又は放棄をするか決める必要があります。す。

熟慮期間のカウントの具体例

祖父が10月1日に亡くなり、それに相次いで急に父が12月1日に亡くなってしまい、その際に再転相続が発生したと仮定します。

父は祖父の相続のために資料などを色々集めていたようなのですが、手続きを何もすることなく亡くなりました。祖父の死から3ヶ月が経過してしまっているのですが、この場合相続放棄はできるのでしょうか。

結論、相続放棄が可能です。

子供が、祖父の死亡を10月1日に知り、父の死亡を12月1日に知ったという場合、熟慮期間の起算日は、父の死亡を知った12月1日の翌日の12月2日からとなります(初日不算入の原則、民法140条)。そして、熟慮期間はその3ヵ月後の3月1日までです。

従って、3月1日までは、父と祖父それぞれの相続について放棄又は限定承認をすることができます。

再転相続の際に選べる選択肢・選べない選択肢

再転相続が発生した場合、最後の相続人(二次相続人)は1人目の被相続人(第一相続の被相続人)と2人目の被相続人(第二相続の被相続人)の両方の相続を相続放棄するかどうかを決めなければなりません。

ただし、必ずしも1人目と2人目の相続について、自身が自由に放棄と相続を選べるわけではないため、注意が必要です。

ここでは、「祖父が事故で亡くなり、祖父の相続人となった父親が別の事故で亡くなり、子どもが再転相続したケース」を例に、第一相続と第二相続について選べる選択肢と選べない選択肢について説明していきます。

「第一相続、第二相続のどちらとも単純承認」と「第一相続、第二相続のどちらも相続放棄」という対応自体は問題なく選択することが可能です。

つまり、祖父と父親の財産をどちらも相続する、あるいはどちらも放棄することは可能です。

また、第二相続のみを承認して第一相続は放棄するパターンも選択することができます。

例えば、祖父の相続については放棄し、父親のみを相続することも可能です。

一方で、再転相続人が第二相続を放棄して、第一相続のみを承認する方法は選択することができません。

例えば、子供が父親の財産を相続放棄して、祖父の財産だけを受け取ろうとしても、それは認められません。

その理由は、第二相続を放棄した場合、第一相続の相続人としての地位も同時に無くなってしまうことになるからです。

たとえば父親に債務があり、その債務は相続せず、祖父のプラスの財産のみ受け取りたい場合があるかもしれません。しかし、そういった対応は選択することができないので注意しましょう。

再転相続での相続放棄の判例

令和元年8月9日最高裁判所の、再転相続に関しての相続放棄の判例です。

概略・最終判断

  1. 1多額の債務を残したまま叔父BがH24.6.30に亡くなり、Aの父親であるCがBの相続人となった。
  2. 2父親CがH24.10.19に亡くなり、Aは、BとCについて相続人となった。
  3. 3父親Cが亡くなってからおよそ3年後H27.11.11、Aに対して、Bが負っていた債務に基づき強制執行するための承継執行文がAに送達された。
  4. 4Aは、H28.2.5にBの相続を放棄の申述をし、受理された。
  5. 5Aは、相続放棄をしたことを理由として、強制執行を許さないことを求める執行文付与に対する異議の訴えをした。

AのしたBの相続放棄が有効であれば、強制執行を回避できるため、相続放棄が有効かどうか争われた訴訟です。

父親Cは伯父Bの相続について「放棄するのか承認するのか」の判断しないまま亡くなってしまっているため、子供Aは気づかぬ間に再転相続人となっています。

この裁判の最終的な判決では、熟慮期間の起算点は、債権者からの請求H27.11.11の執行文等が送達され、父親Cが伯父Bの相続人だったことを子供Aが知った時である、と判断されたため、Aは相続放棄の効力が認められることになりました。

判決の争点

「再転相続人の熟慮期間の起算点」がいつなのかが一番の争点です。

起算点はH24.10.19の父親Cが亡くなってしまった時なのか、もしくはH27.11.11の執行文等が送達され、父親Cが伯父Bの相続人だったことを子供Aが知った時なのかが争われています。

H27.11.11が起算点とされた場合は、H28.2.5のAによるBの相続放棄が認められますが、H24.10.19が起算点となった場合は相続放棄することができません。

今回の判決では、民法916条を元にして相続放棄の熟慮期間の起算点を判断した事例のため、今回のパターンで民法916条の解釈が変わった点がポイントです。

まとめ

再転相続とは、第一相続の相続人が熟慮期間中に相続方法を選択する前に亡くなってしまった場合において、第二相続が開始した場合のことを指します。

相続人は自身のための相続があったことを知ったタイミングから、3ヵ月間で相続をする(単純承認・限定承認)か、放棄するかを決めなければいけません。この期間を超えてしまうと、相続放棄や限定承認ができなくなるため、注意が必要です。

再転相続の熟慮期間は少し難しい内容になっていますが、間違えてしまうと誤って債務を相続してしまうケースも考えられます。

迷うことなどがあれば、弁護士や専門家に頼って解決していくことをおすすめします。

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