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弁護士コラム

相続放棄を選ぶべき3つのケースとは?相続放棄のメリット・デメリット、似た言葉との違いをご紹介

相続放棄
投稿日:2022年07月21日 | 
最終更新日:2024年02月27日
Q
相続放棄は、どのようなケースで選択すべきでしょうか?また、相続放棄とよく似ている「相続分の譲渡」「相続分の放棄」とは何でしょうか?
Answer
A. 相続放棄は、相続開始による効果を全面的に拒否する意思表示であり、その相続に関しては最初から相続人にならなかったものと扱われます。
他方、相続分の放棄は、共同相続人がその相続分を放棄することです。相続人としての地位は残るためマイナスの財産の負担義務は残りますが、当該相続人が放棄した相続分を他の相続人の相続分に応じて帰属させる効果があります。
また、相続分の譲渡は、遺産全体に対する共同相続人の包括的持分または法律上の地位を譲渡することをいいます。
相続放棄は、熟慮期間内に家庭裁判所に申述する必要がありますが、一般的にマイナスの財産を相続したくない場合に選択されるケースが多いです。
他方、相続分の放棄は遺産分割争いに巻き込まれたくないような場合、相続分の譲渡は、特定の者に相続分を譲渡したい場合や遺産分割に巻き込まれずに譲渡の対価を譲受人から得たいような場合に選択されることが多いです。

相続放棄とは

故人が負債を抱えていた際に選ばれることが多いイメージの相続放棄ですが、実はどういったものなのかご存知ではない方も多いのではないでしょうか。

相続放棄を知っておくと、いざというときの選択肢の一つになるでしょう。そこで本項目では、相続放棄についてご紹介します。併せて、相続の方法である限定承認との違いについても見ていきましょう。

相続放棄とは

相続放棄とは被相続人(故人)の方の財産を一切相続しない意思表示です。相続放棄はマイナスの財産がある場合にのみ選択するイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

相続放棄を選択すると、マイナスの財産・プラスの財産両方を引き継ぐ権利と義務を放棄することになります。プラスの財産よりマイナスの財産が多ければ相続放棄を選択したほうが良いでしょう。しかしプラスの財産を引き継ぐ権利もなくなることを認識しておく必要があります。

限定承認と相続放棄の違い

相続方法には限定承認というものがあります。相続放棄と限定承認、それぞれの概要は次のとおりです。

限定承認プラスの財産の範囲内でしかマイナスの財産を相続しないこと 
相続放棄プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続しないこと。

限定承認を選択すれば、たとえばマイナスの財産が5000万円ある場合、もしくはいくらあるのか分からない場合であっても、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことになります。そのため、限定承認は被相続人の資産状況が不明な場合に選択することが多いです。

一方の相続放棄は、相続財産の負債がプラスの財産を超過していると明らかな場合に選択するケースが多いです。

相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄は負債から解放されるというメリットがある一方で、反対にデメリットもあります。ここでは相続放棄のメリットとデメリットについて見ていきましょう。

相続放棄のメリット

相続放棄のメリットは次の2つです。

  • 被相続人の負債を引き継がずに済む
  • 相続の揉め事に巻き込まれない

被相続人に負債があった場合、法定相続分に従って負債を引き継ぎ、弁済する義務が発生します。故人の負債が4,000万円、相続人が子供4人の場合は、子供1人あたり1,000万円の負債を各相続人が負います。負債の弁済を滞れば、遅延損害金も支払わなければなりません。

しかし相続放棄を選択すれば負債を弁済する必要がなく、債権者からも弁済を強いられずに済みます。そして相続放棄を選択すると相続人ではなくなるため、相続人同士の争いに巻き込まれません。遺産分割協議や遺産分割手続きなど、煩わしい手続きをすることもなくなります。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットは次の4つです。

  • プラスの財産も手放すことになる
  • 撤回や取り消しはできない
  • 遺産を処分すると放棄が認められない
  • 相続人間でトラブルになる可能性がある

相続放棄を選択すると被相続人の財産をすべて手放す必要があります。被相続人名義の家に同居していた場合はその家から退去しなければならない場合もあります。その他の所有物も被相続人の所有物であれば勝手に持ち出しもできないことになります。

また、一度相続放棄を選択してしまうと原則として、取消や撤回はできません。後々負債がないことが判明したとしても、撤回や取消ができないのです。

なお、相続放棄を選択した場合でも、当該相続人の行動次第では相続放棄が認められなくなります。被相続人の財産を使用したり、処分しようとしたりすると、相続を承認したとみなされることがあるからです。この点、注意しましょう。

相続放棄を選択しても、被相続人の負債自体がなくなるわけではありません。他の相続人や次順位の相続人に相続人の地位が移る場合もあるので、状況によっては相続人同士でトラブルになるでしょう。トラブルにならないように相続放棄をスムーズに進めるために、これらのことを頭に入れて行うことが大事です。

相続放棄を選ぶべき3つのケース

相続放棄を選ぶべき3つの主なケースは次のとおりです。

  • 相続する財産に負債が多い場合
  • 特定の相続人に財産を相続させたい場合
  • 相続問題への関与を避けたい場合

それぞれの選ぶべきケースを見てみましょう。

相続する財産に負債が多い場合

冒頭でも述べたように相続遺産にはプラスの財産以外にも、マイナスの財産も含まれます。

そのためプラスの財産とマイナスの財産を比較して、マイナスの財産があまりにも多い場合は相続を放棄するのが望ましいです。被相続人に多額の負債があり、被相続人の財産で弁済が難しい場合が今回のケースです。法定相続人が相続すると負債の弁済義務を負ってしまうことになりますが、相続放棄をした場合は弁済する必要がなくなります。

特定の相続人に財産を相続させたい場合

特定の相続人に財産を相続させたい場合に、その他の相続人が相続放棄をするという手段を選択することが考えられます。他の相続人に相続を放棄してもらえば、特定の人のみが相続できます。なお、相続放棄ができる期間は相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内と民法で定められているため、生前に相続放棄はできません。また、相続放棄をした場合、相続税の控除額が変わるので注意が必要です。

相続放棄以外に特定の相続人に財産を相続させる方法としては、①遺産分割協議、②遺言、③相続分の譲渡、④相続分の放棄などが考えられます。

まず、①遺産分割協議による場合、相続人全員の同意が必要となりますが、相続人同士で話し合いをし、全員がその内容で納得すれば遺産分割協議で特定の相続人にのみ相続が可能です(例えば長男にのみ相続させるなど)。ただし財産のプラスがかなりの額で、マイナスの財産がないともなれば、相続人同士でのトラブルも考えられます。

話し合いをスムーズに進めるためには、あらかじめ遺産を誰に引き継ぎたいか、それに反対している人はいないかなどを確認するようにしておきましょう。

次に②遺言により特定の人にのみ相続させる方法があります。しかし遺言により相続させる方法は、他の相続人から遺留分減殺請求を行使される可能性があります。

被相続人が生きている間に家庭裁判所を通して、遺留分権利者が被相続人の死後に遺留分を主張しない意思表示をすることはできるものの、被相続人や他の相続人から強制することはできません。

③相続分の譲渡や④相続分の放棄については、後述します。

相続問題への関与を避けたい場合

相続争いはよくあることです。特に多額の財産がある場合、トラブルの可能性はより高まります。

相続問題を未然に防ぐには資産の整理、遺言、家族信託といった方法がありますが、何ら対策を行っていない方も多いでしょう。

よく争いが起こるパターンとして挙げられるのが、前妻との子供や認知した子供がいる場合や、生前贈与を受けた相続人がいて揉めるなどです。こうした争いへの関与を避けたい場合は、相続放棄を選ぶと相続トラブルから解放されます。

負債の金額が不明確な場合は限定承認が有効

マイナスの財産の金額が不明確の場合は、限定承認を選ぶことがおすすめです。限定承認の申述が受理された場合、被相続人の相続財産の清算手続きを行い、期間内に債権請求を申し出てた債権者や、元々特定されていた債権者に対して、相続財産から弁済していきます。これら清算手続き後にさらにマイナスの財産があることが発覚しても、これを引き継ぐ必要はありません。

ただし、限定承認の申述は、共同相続人全員で行わなければなりませんので、注意が必要です。また、相続財産管理人の選任や清算手続きのための費用も必要になる点もご留意ください。

相続人が未成年者・成年被後見人である場合

未成年者・成年被後見人とは

未成年者は精神年齢に関わらず年齢で定義されています。2022年より以前は20歳未満は法定代理人の同意がなければ相続放棄できませんでしたが、2022年の4月1日からは18歳になっていれば相続放棄が可能です。

成年被後見人とは精神や健康の問題から、正しい判断をすることが難しい人のことをいいます。

未成年者または成年被後見人の代わりに「法定代理人」が申述する

未成年者または成年被後見人が相続人となっている場合は、単独では相続放棄を選択できません。そのため未成年者の場合は親(法定代理人)が、成年被後見人の場合は成年後見人が、本人に代わって相続放棄の申述をします。相続人が未成年者または成年被後見人である場合は、原則としてその法定代理人である親権者や成年後見人が、遺産分割協議を行うことになります。

相続人と代理人の利益が相反する場合

未成年者・成年被後見人とその親権者・成年後見人が同時に相続人となる場合には、利益が相反する可能性があります。

法定代理人も未成年者や成年被後見人と一緒に相続放棄を選択する場合、利益相反行為でありませんが、法定代理人が相続放棄をしない場合、未成年・成年被後見人の相続放棄を代理すると利益相反行為となるため注意しましょう。

利益相反行為にあたる場合、相続放棄や遺産分割協議が無効となるため、特別代理人を選任しなければなりません。

相続人の債権者による債権者代位の可否

もし相続人の債権者の立場であれば、被相続人の相続財産がマイナスであれば相続人に相続放棄や限定承認をしてほしいと考えるかもしれません。債権者には、債務者の権利を代わりに行使できる債権者代位権が認められていますが、相続放棄や承認は、一身専属権であるため、相続人の債権者であっても、債権者代位をすることはできません。

Aが、商売をしているBにお金を貸して金銭債権がある場合に、Bの事業が失敗し負債が積み重なり債務超過になってしまったとします。この場合はBがCに対して売掛金がある場合、このBがCに対して持っている売掛金をAがBの代わりに回収できます。これが債権者代位権が利用される場面ですが、これは相続の承認や放棄には適用されません。

相続放棄と似ている「相続の譲渡」「相続分の放棄」とは?

相続放棄と似ているものとして、「相続の譲渡」「相続分の放棄」があります。相続放棄と相続分の放棄は何が違うのかについて見てみましょう。

相続の譲渡とは

相続の譲渡とは相続人が自分の相続分を他者に譲ることです。譲渡の相手は他の共同相続人のみならず、第三者とすることも可能です。なお、相続分とはプラスの財産・マイナスの財産を含めたものです。全てではなく、一部を譲渡することも可能で、有償・無償を問いません。

相続分が譲渡されると、譲り受けた方は、第三者であっても相続人と同じ地位になり、遺産分割協議に参加しなければなりません。

相続分の譲渡と相続放棄との違い

相続分の譲渡と比べた場合の相続放棄の特徴は次のとおりです。

  • 家庭裁判所への申立てが必要
  • 債務を承継しなくていい
  • 相続権が移動する

相続分の譲渡は譲渡人と譲受人との合意で成立しますが、相続放棄は家庭裁判所への申立てが必要となります。

また、相続放棄した場合、最初から相続人ではなかったことになり、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎません。

他方、相続分の譲渡の場合、譲渡の時に効力を生じ、相続開始時にさかのぼるものではありません。そして、譲受人はプラスの財産とマイナスの財産を承継しますが、譲渡人は債務を免除されず、債権者との関係では債務引受の問題となります。

相続分の放棄とは

相続分の放棄とは共同相続人が自分の相続分を放棄することです。相続分の放棄をすると、相続人の地位を失うことはないものの、相続財産を承継する権利を放棄します。そのため他の共同相続人の相続分が増えます。しかし相続人としての地位は残るため、相続債務の負担義務は免れないことに注意しましょう。そのため相続分の放棄を選択する際は、慎重に判断をしなければなりません。

相続分の放棄と相続放棄との違い

相続分の放棄は、相続人としての地位は維持するものの、プラスの財産を放棄して他の相続人に譲ることになります。また、マイナスの負債に関しては負担をします。

一方の相続放棄は遺産をすべて放棄します。そのためプラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぎません。それと同時に最初から相続人ではなかったことになります。

まとめ

本記事では相続放棄の意味からメリット、デメリット、似た言葉の相続分の放棄についてご紹介しました。相続放棄を行うとマイナスの財産がなくなるわけではなく、次の相続人に引き継がれます。そのため相続放棄を行うと、相続人同士でトラブルになることもあるのです。

あらかじめ相続放棄について話し合うことで、トラブルを起こさずスムーズに相続ができる可能性が高まります。相続放棄にはさまざまなメリットとデメリットがあるため、それを把握してから選択するようにしましょう。トラブルになりやすい相続放棄だからこそ、事前にトラブルの対策を行ってみてください。

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