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借地上建物の増改築に地主の許可は必要?制限特約の効力と地主への対応方法を解説

賃貸借トラブル
投稿日:2026年10月14日 | 
最終更新日:2026年10月14日

Q
曾祖父の代から続く和菓子店を営んでいます。店舗兼住宅の老朽化に伴い、イートインスペースを設けた建物への建て替えを検討しています。しかし、敷地は借地で、借地契約書には増改築を制限するような条項があります。

このような場合、地主の承諾は必要なのでしょうか。また、必要な手続きや費用について教えてください。
Answer
借地の増改築に地主の承諾が必要かどうかは、契約内容によって異なります。

増改築制限特約がなければ、原則として契約で認められた範囲で自由に増改築できます。ただし、建物の用途・構造や契約更新後の再築には注意が必要です。

制限する特約がない場合、借地人が借地上に、借地契約で認められている範囲の建物を増改築することは自由です。ただ、あくまで借地契約で定められた用途や構造などの制限に従う必要があります。また、更新後に建物が解体や倒壊して滅失し、地主の承諾を得ずに建物を建てた場合、地主から解約の申入れをされるおそれがあり、解約申入れがあった場合、3か月経過すると借地権が消滅してしまいます。

一方、特約がある場合は、地主と承諾料や地代について協議します。承諾が得られなければ、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます。

なお、旧借地法が適用される場合は、建物の朽廃と借地権の存続期間との関係にも注意が必要です。

この記事でわかること
▸ 借地の増改築に地主の承諾が必要となるケースと増改築制限特約の効力
▸ 増改築承諾料の相場と、地主の承諾が得られない場合の対処法
▸ 大修繕における承諾の必要性と、旧借地法が適用される場合の注意点

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
 
2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業
 
不動産・相続・企業法務を中心に取り扱い、不動産に関する相談を年間100件以上対応。
賃貸借・不動産売買・立ち退き交渉・建築紛争・共有不動産など、幅広い不動産問題の解決に取り組んでいます。

借地における増改築に地主の許可は必要?

借地契約に増改築制限特約がなければ、原則として、地主の承諾なしに建物を増改築することができます。借地人には、契約で認められた範囲で建物を建築・維持・増改築する権利があるためです。

ただし、旧借地法(平成4年7月末日までに締結された借地契約)では、法定更新後の借地権の存続期間は堅固建物が30年、非堅固建物は20年とされ、この期間内でも建物が朽廃すると借地権は消滅します。

朽廃の時期は、通常必要な補修や修繕を行った場合を基準に判断されます。最高裁判所は、朽廃が近い建物を大規模修繕し、耐久年数を20年以上延ばした事例について、修繕工事がなければ朽廃するはずだった時期に借地契約が終了したと判断しました(最判昭和42年9月21日)。

借地契約書の確認すべきポイント

借地上の建物を増改築する際は、まず借地契約書に増改築制限特約があるか確認することが重要です。

例えば、次のような条項が該当します。

  • 「借地権者が借地上の建物を増改築する場合、あらかじめ地主の承諾を得る必要がある」
  • 「店舗への建て替えは禁止」
  • 「建物の修繕はできるが、増改築はできない」

条項の意味や予定する工事との関係が不明確な場合は、後のトラブルを避けるため、地主への確認を検討しましょう。

ただし、地主に有利な解釈をされるおそれもあります。不安がある場合は、事前に弁護士へ相談し、契約条項の解釈を確認したうえで地主に相談することをおすすめします。

借地契約における増改築制限特約の例

増改築制限特約には、主に以下の3つのパターンがあります。

  • 承諾必要型
    「事前に地主の書面承諾を要する」という最も一般的な形式
  • 禁止型
    「増改築禁止」と定める形式。
    ただし、無断増改築が賃貸人に著しい影響を与え、信頼関係を破壊すると認められる場合に限り、特約に基づく解除が認められるとされています。そのため、事前に地主の承諾を得るべきです。
  • 曖昧型
    「著しい変更時に承諾を要する」など、解釈の違いによるトラブルが生じやすい形式

特約の内容には、地主の土地管理に対する姿勢が反映されている可能性があります。

例えば、承諾必要型で承諾料も定めている場合は長期的な関係を重視し、禁止型では将来の土地利用を優先している可能性があります。ただし、従前から使用している定型の契約書に増改築禁止特約が含まれているだけのケースもあります。

なお、特約によって地主の承諾が必要でも、承諾を得られない場合は、裁判所の許可をもって地主の承諾に代えることができます。 借地借家法では、このように借地人の保護が図られています。

増改築の自由と制限の考え方

増改築制限特約がなければ原則として自由に増改築できますが、建物の種類・構造などの契約条件には従う必要があります。

また、借地契約の更新後に建物が滅失し、新たに建物を建てる「再築」では、地主の承諾が必要となるため注意が必要です(借地借家法8条)。

一方、増改築制限特約については、最高裁判所もその有効性を認めています(最判昭和41年4月21日・民集20巻4号720頁)。

多くの借地契約には、「増改築には事前に賃貸人の書面による承諾が必要」などの特約が設けられています。そのため、増改築を進める前に契約書で特約の有無を確認し、地主への事前相談を前提に行動することが重要です。

増改築と修繕の違い

借地契約では、増改築と修繕は区別され、増改築制限特約があっても通常の修繕は自由に行えます。 一方、増改築には地主の承諾が必要です。

それぞれの意味は以下のとおりです。

用語意味
増築附属建物の新築もしくは既存建物の床面積を増加させる工事
改築既存建物を取り壊し、新しく建て替える工事
修繕壁紙を張り替えなど、壊れたり傷んだりした部分を直す工事

通常の修繕を制限する特約は、借地借家法の趣旨に反し無効とされます。

ただし、増改築だけでなく、大修繕を制限する特約が設けられている場合は注意が必要です。

裁判例では、大修繕について、建物の柱・土台などの主要構造部分の取り換えや屋根の全面葺き替えなど、通常予期される以上に建物の耐用年数へ大きく影響する修繕とし、その制限を認めています。これは、大修繕によって建物の耐用年数が延びると、借地権の存続期間に大きな影響を及ぼすためです。

したがって、契約書に「事前の承諾なしに大修繕を加えてはならない」といった条項がある場合は注意しましょう。

増改築制限特約がない場合の対応

借地契約に増改築制限特約がなければ、原則として地主の承諾なしに建物を増改築できます。借地人には、建物所有を目的として借地を利用する権利があるためです。

ただし、増改築によって地主や周囲の人に受忍限度を超える迷惑をかける場合は、増改築の自由が制限されることがあります。

地主との事前協議と注意点

地主の承諾が不要でも、良好な関係を維持するため、事前に協議しておくことが望ましいでしょう。予定している増改築が借地条件の範囲内か確認する機会にもなります。

また、借地契約の更新後に建物が滅失・解体され、新たに建物を建てる「再築」では、地主の承諾が必要となるため注意が必要です(借地借家法8条)。

増改築制限特約がある場合の対応

借地契約に増改築制限特約がある場合は、原則として事前に地主の承諾を得る必要があります。

まずは地主と協議し、承諾が得られない場合は、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます。

地主との協議と承諾料の相場

地主との協議では、主に増改築承諾料の金額や地代の増額改定について話し合います。

増改築承諾料の相場は、一般的に更地価格の1〜5%程度とされていますが、以下の事情によって金額が異なる場合があります。

  • 借地権の残存期間
  • 土地の状況
  • 増改築の工事内容(一部工事・全面改築など)

例えば、借地契約で木造建物に限定されている場合に、鉄筋コンクリート造へ改築するには、借地条件の変更について承諾が必要です。この場合、承諾料は更地価格の10%程度が相場となります。

このように、承諾料は契約条件や工事内容によって異なるため、事前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

承諾が得られない場合の裁判所への申立て

地主との協議がまとまらない場合、借地人は裁判所に「地主の承諾に代わる許可」を申し立てることができます。裁判所の許可が得られれば、地主の承諾がなくても増改築が可能です。

裁判所は、主に以下の事情を考慮して判断します。

考慮事項内容
借地権の残存期間残存期間が短い場合は、許可が認められにくくなる。
土地の状況土地の広さや地盤、周囲や隣地の状況、建築規制などを踏まえて増改築が可能か判断される。
借地に関する従前の経過契約成立の事情、権利金や更新料の授受状況などのこれまでの当事者間における経緯が考慮される。
その他一切の事情増改築自体の必要性、地主が被る不利益の程度、地方の慣習、社会的・公益的な観点などが考慮される。

建物の大修繕に地主の承諾は必要?

通常の修繕は地主の承諾なしに行えますが、大修繕については、借地契約の特約によって承諾が必要になる場合があります。

借地人には、契約に従って建物を所有・使用する権利があり、建物の機能や美観を維持するための合理的な補修工事は認められています。こうした通常の修繕を禁止する特約は、借地借家法の趣旨に反し、無効とされます。

一方、大修繕を禁止する特約や、地主の承諾を必要とする特約は有効とされています。建物の維持・保存の範囲を超え、耐用年数を延ばす工事は、増改築と同様に借地権の存続期間に影響するためです。

大修繕の定義と具体例

大修繕とは、建物の主要構造部分の取り換えなどによって、通常予期される以上に耐用年数へ大きな影響を与える修繕をいいます。

具体的には、柱・土台などの主要構造部分の取り換えや、屋根の全面葺き替えなどが該当します(東京地判平成28年3月9日)。

一方、同判決では、以下の工事について、内外装や電気・給排水設備の更新とこれらに付随する工事であり、大修繕には該当しないと判断しました。

工事の区分具体例
外壁部分・ 外装石貼部への塗装
・ 袖看板の一部撤去
・ 2階窓ガラスやサッシの交換
・ 化粧用造作(門型工作)の設置
・ 3階から屋上にかけての外部正面ベランダ部の手すりや手すり子の補修
・ 木製の腰壁の設置
内部共用部分・ 床(ウレタン樹脂材)の張替
・ 壁や天井の塗装
・ 階段手すりや手すり子の塗装
・ トイレ扉や各区画扉の交換
・ ミニキッチンの交換
・ 化粧板の設置
・ 賃貸借区画用電気メーターの設置
・ 既存の区画壁の一部撤去
賃貸借区画部分・ 区画の出入り口扉の交換
・ 内部床(ウレタン樹脂材)の張替
・ 壁や天井の塗装
・ 窓ガラスやサッシの一部交換
・ 照明器具の交換
・ 空冷式空調機の設置
・ コンセントなど弱電設備の増設
・ 室内ゴミの処分撤去
・ 窓ふさぎ化粧板の設置
3階から5階のベランダ部分・ 窓ガラスやサッシや扉の交換
・ デッキ敷の敷設
・ 植栽プランターの撤去
・ 不要空調室外機や配管類の撤去
共用部トイレ部分・ 仕切り壁の撤去
・ 床や壁(下部)のタイルの張替
・ 上部壁や天井の塗装
・ 手洗い器や便器の取替
・ 照明器具の取替
・ 給排水管設備の更新
・ 換気扇の取替

無断で大修繕を行った場合のリスク

借地契約に大修繕を禁止する特約がある場合、地主の承諾なく大修繕を行うと、契約解除が認められます。

ただし、実施した工事が大修繕に該当しなければ、それを理由とする借地契約の解除は認められません。

旧借地法が適用される借地の増改築と注意点

旧借地法が適用される借地契約では、存続期間内であっても、建物の朽廃によって借地権が消滅する場合があります。

平成4年(1992年)7月末日までに締結された借地契約には旧借地法が適用されるため、現行の借地借家法とは異なる点に注意が必要です。

旧借地法における存続期間と建物の朽廃

旧借地法では、契約で存続期間を定めていない場合、堅固建物は60年、非堅固建物は30年とされています(旧借地法2条)。

また、法定更新後の存続期間は、当事者間でより長い期間を定めていない限り、堅固建物が30年、非堅固建物が20年です(旧借地法5条1項)。

建物の種類は、以下のように区分されます。

  • 堅固建物:鉄筋・鉄骨コンクリート造、石造、土造、レンガ造など、耐久性の高い建物
  • 非堅固建物:木造など、堅固建物に比べて耐久性の低い建物

ただし、存続期間内であっても、建物が朽廃した場合は借地権が消滅します。 朽廃とは、建物が老朽化し、人が住めないほど傷んだ状態を指します。

増改築・大規模修繕が借地契約へ与える影響

旧借地法が適用される場合、朽廃が近い建物を大規模修繕して耐久年数を延ばしても、借地契約の終了を回避できるとは限りません。

最高裁判所は、朽廃が近い建物を大規模修繕し、耐久年数を20年以上延ばした事例について、修繕工事がなければ朽廃するはずだった時期に借地契約が終了したと判断しました(最判昭和42年9月21日)。

ただし、朽廃の時期は、修繕を一切行わずに放置した場合を基準に判断するわけではありません。

神戸地方裁判所は、修繕工事によって建物の耐久年数が延びた場合でも、工事後の建物の状態や、修繕をせずに放置した状態を基準とするのではなく、通常必要な補修・修繕を行ってもなお朽廃するはずだった時期を基準に判断すべきとしています(神戸地判昭和60年5月30日)。

よくある質問(Q&A)

老朽化した借地上の建物をカフェに変更する場合、地主の承諾は必要ですか?

借地契約に増改築や大修繕を禁止・制限する特約がなければ、原則として地主の承諾は不要です。

ただし、増改築が制限されていなくても、建物の用途が制限されている場合は地主の承諾が必要です。 例えば、住居を店舗に変更する場合は、承諾料の支払いが必要になることも多いため、まずは借地契約書を確認しましょう。

地主から地代の増額や高額な増改築承諾料を求められた場合、どうすればよいですか?

まずは借地契約書を確認し、増改築や大修繕を禁止・制限する特約があるか確認しましょう。

特約がなければ、原則として増改築や大修繕に地主の承諾は不要であり、承諾料を支払う必要もありません。

ただし、建物の用途に制限がある場合は、地主の承諾や承諾料の支払いが必要になることがあります。地代の増額や承諾料の妥当性については、契約内容や個々の状況に応じて判断する必要があります。

借地契約の更新後に建物を建て替える場合、地主の承諾は必要ですか?

借地契約の更新後に建物が滅失し、新たに建物を建てる場合は、地主の承諾または裁判所の許可が必要です。建物が滅失した場合には、借地人が自ら解体したケースも含まれます。

地主の承諾や裁判所の許可を得ずに再築した場合、地主は借地契約の解約を申し入れることができ、その申入れから3か月が経過すると借地権が消滅するため、注意が必要です。

東京都千代田区の不動産に強い弁護士なら直法律事務所

借地上の建物の増改築・大修繕をする場合、借地契約書を確認し、地主の承諾が必要かどうかを判断することが重要です。

増改築制限特約の有無や工事内容によって必要な対応は異なり、地主との交渉が必要になる場合もあります。適切な判断をしなければ、不要な承諾料を支払ったり、無断増改築を理由に借地契約を解除されたりするおそれがあります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、自己判断で工事を進めず、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。

直法律事務所では、借地上の建物の増改築に関する契約書の確認や地主との交渉など、借地に関する案件について豊富な経験を有する弁護士が丁寧にサポートいたします。借地の増改築や地主の承諾についてお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

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