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利用規約とは?目的・必要な理由・作成方法を弁護士が解説!


東原 佑翔

執筆者:東原 佑翔(ひがしはら ゆうと)
弁護士法人 直法律事務所 弁護士

はじめまして。
2022年4月に直法律事務所に入所致しました、弁護士の東原と申します。

本記事では、利用規約の作り方のポイントについて、みなさまにご紹介しようと思います。

ぜひご一読ください!

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利用規約作成の目的

利用規約とは、サービスを提供する事業者がユーザー向けにサービス上の利用ルールをまとめたものです。

利用規約を定める目的は、裁判になったときにサービスを提供する事業者が責任を負わないようにすることや、裁判に発展する前のクレームの段階で紛争を解決することにあります。

具体例

具体例として以下のようなものが挙げられます。
フリーマーケットやEC(Electronic Commerce)のサービスにおいて、あるユーザーが商品を販売する際に、本来販売している商品とは異なる商品の写真を掲載していたために、買主であるユーザーからサービス提供事業者にクレームが入るケースがあります。
このようなケースでサービス提供事業者が事実確認をする際に、当該売主のユーザーが証拠隠滅のために掲載していた写真を削除してしまうおそれがあります。
このような証拠隠滅を防ぐためには、サービス提供事業者はユーザーが掲載する写真を保存できるようにしておく必要がありますが、何らの根拠もなく写真を保存してしまうと、著作権法上の複製権侵害にあたり紛争(トラブル)に発展してしまう可能性があります。

しかし、利用規約であらかじめサービス提供事業者が、ユーザーがサービス利用に際して掲載する写真の管理を行うことができる旨規定しておけば、ユーザーの掲載する写真を保存しておいてもサービス提供事業者が責任を負わなくて済むようになります。

このように利用規約は、自身の対応が正しかったとするための根拠として機能し、上記の目的を達成するために必要なものになります。

また、大量のユーザーにサービスを提供することから、各ユーザーと個々に契約を締結することは困難であるため作成される、ということも利用規約の特徴になります。

利用規約の作成方法

利用規約作成の基本的な流れ

利用規約の作成にあたって、提供する予定のサービスと同種のサービスを提供している企業がある場合には、当該企業の利用規約を参考にすると便利です。
類似のサービスを展開する場合、利用規約で定めるべき条項は似通ってくるからです。

ただ、類似サービスを提供する事業者であっても、全く同一の契約条件でサービスを提供することは少なく、サービス提供事業者が提供するサービスに合った利用規約を作成することが重要です。

例えば、同じフリーマーケットやEC(Electronic Commerce)のサービスでも、

  • ①「誰と誰との間に、いつ、どのような契約が成立するのか」、
  • ②「代金の支払はどのように行うか」、
  • ③「商品に瑕疵(法律用語で「かし」とよみます。本来あるべき機能や品質が備わっていないことを指します。)があった場合はどうするのか」

などは、サービス提供事業者によって異なる運用をしていることも少なくありません。

サービス提供事業者があくまで売買のプラットフォームを提供するだけのプラットフォーマーとしてサービスを展開するのか、一度売主から商品を買い取って買主に転売する形でサービスを展開するのかによって、上記①②③のような取り扱いは変わってくることになります。

そのため、利用規約の作成にあたっては、自身らの業界の他社が作成している利用規約を参考にすることは有用ですが、そのサービスの立て付け、お金の流れ(決済方法)、商品の流れ等を細かく把握し、そのサービスに適合するよう適宜、参考とする利用規約から修正を行っていくことが重要となります。

以上が利用規約作成の基本的な流れですが、多くの利用規約に共通する典型的な条項(他社の利用規約を参考にできる条項)とサービス提供事業者の個別の事情に合わせて修正すべき部分の区別をつける必要があり、その区別の判断のためには典型的な条項について把握しておく必要があります。

そこで以下では、利用規約の典型的な条項について説明します。

利用規約の典型的な条項

① 登録手続き(IDの発行等)

サービスの利用のためには、何らかのユーザー登録を要求するのが一般的です。
ユーザーが違反行為等を行った場合に、登録取消しを行い違反者に対するサービス提供の停止を行えるようにしておくには、その前提として「登録」という形式をとっておく必要があります。

登録に関する規定には、

  • 登録にあたりユーザーが提供すべき情報
  • 登録拒否事由
  • 登録事項に変更が生じた場合の通知義務を課す規定

等を設けておくことが一般的です。

また、IDやパスワードを第三者に利用させることを禁止する規定や、IDやパスワードの管理はユーザーの責任であり、第三者が利用したことについてサービス提供事業者が責任を負わない旨の規定を設けておくことも多くあります。

② 利用料金

利用料金は、利用規約に基づく契約の根幹的な内容の1つなので、有料サービスとする限りは必須の条項です。
利用料金を後に変更することになった際に、その都度利用規約の変更を行わなくても済むように、利用料金そのものは利用規約に明記せず、「サービス提供事業者が別途定める料金とする」などの形で規定することがあります。

上記(1)利用規約作成の基本的な流れにおいてフリーマーケットやECのサービスについての具体例を示しましたが、誰と誰との間に、いつ、契約が成立し、代金の支払はどのように行うのか等はこの利用料金の条項内で、それぞれのサービス提供のスキームに合わせた形で規定しておく必要があり、その意味でも重要な条項になります。

③ 禁止事項

サービス提供事業者が望まない形でサービスを利用しようとするユーザーに対応するために禁止事項を定めておき、これに違反した場合は、サービスの利用停止やユーザー登録の解除といったペナルティを課すということを、併せて規定しておくことが重要です。

どのような禁止事項を設けるか考えるにあたっては、当該サービスにおいてどのようなトラブルが生じる可能性があるか考える必要があるため、類似のサービスを提供する他社の禁止事項を見てみると参考になります。
その上で、他社の禁止事項には掲げられていないものの、特にサービス提供事業者が禁止したいと考えている禁止事項がある場合には、その禁止事項も利用規約に反映させるべきですが、場合によっては、当該規定の有効性についての裁判例等がなく、有効性の判断が難しいこともあるため注意が必要です。

また、あらかじめ今後起こりうる全ての禁止事項を明記することは現実的に困難であるため、「その他、当社が不適切と判断する行為」などという包括的な条項バスケット条項と呼ばれます)を設けておくことが有用です。
ただし、訴訟になった場合に、バスケット条項の有効性がどの程度認められるかは予測が難しいため、バスケット条項に頼りすぎることなく、できる限り禁止事項は網羅的に列記することが望ましいです。

さらに、違反行為者に課したペナルティにより当該行為者に損害が生じたとしても、サービス提供事業者が責任を負うことはない旨も規定しておくと安心です。

④ 登録取消手続き

でご説明した禁止条項に対するペナルティとして重要な規定です。
ペナルティ以外にも、サービス提供事業者がサービスを終了したい場合や、ユーザーがサービスから離脱したいときに備えて規定しておく必要があるものです。

また、禁止事項に違反したこと以外の理由で、ユーザーのサービスの利用を停止させる事由を列挙することも可能です。この条項に限らず、どのような事由を設けておくかについては、他社の利用規約が参考になりますが、一つ一つその事由を設けておく必要性は検討しなければなりません。

⑤ 免責条項

サービス提供事業者の責任を免責したり、サービス提供事業者が一定の事項を保証するものではないという非保証を明記しておく必要があります。

例えば、プラットフォーム型のサービスの場合、サービス提供事業者としてはあくまでプラットフォーマーとして取引の場を提供しているだけにすぎず、取引等はユーザー間で直接行われるため、その間で何かトラブル(例えば、ユーザー間で食品の売買ができるプラットフォームにおいて食品の売買が行われたが、その食品を食べた第三者が食中毒になってしまった)が発生した場合にでも、サービス提供事業者が責任を負わない旨の免責規定が必要になります。

この免責条項については、」後ほど記載する消費者契約法の改正について留意する必要があります。

⑥ 知的財産権に関する事項

知的財産権に関する規定には、

  • (ア)自社サービスの知的財産権に関する規定
  • (イ)ユーザーが投稿した文章、画像等の知的財産権に関する規定

があります。

(ア)では、サービスに関する知的財産権は全て自社又は自社にライセンスを許諾している者に帰属しており、ユーザーへのサービスの利用許諾は、サービスに関する自社又は自社にライセンスを許諾している者の知的財産権の使用許諾を意味するものでないことを規定することが考えられます。

(イ)では、ユーザーが掲載した文章や画像等の著作権をユーザーに帰属させるか、サービス提供事業者に帰属させるか、仮にユーザーに著作権を帰属させる場合、サービス提供事業者はどの範囲で当該文章や画像等を利用できるような規定とするかを考える必要があるがあります。

1 利用規約作成の目的」で挙げた具体例をもとに考えれば、ユーザーが掲載した文章や画像等を、自社が無償で自由に利用することができることを承諾させる旨を規定しておくことが考えられます。

場合によっては、サービス提供事業者が利用できる範囲を「本サービスの宣伝および広告に必要な範囲で」といった限定を設けている例もあり、どの範囲でサービス提供事業者が利用できるかはサービス提供事業者とよく相談したうえで決めるべき事項と言えます。

⑦ 契約上の地位の移転

利用規約においても契約書の一般条項と同様に、利用規約に基づく契約上の地位および権利義務の譲渡等を禁止したり、他方当事者の同意を要するとする規定が多いです。

もっとも、M&A等でサービスの運営主体を第三者に移転させる必要が生じる可能性があるところ、その際にユーザーから個別に同意を取らなければならないとなると煩雑です。
そこで、サービス提供事業者は契約上の地位を事業の譲受人に移転させることができる旨、および、ユーザーがかかる契約上の地位の移転に同意する旨を規定しておくことが考えられます。

⑧ 分離可能性条項

消費者契約法その他の法令等によって、利用規約の条項が無効と判断される場合があります。
そこで、利用規約の一部が無効と判断されたとしても、利用規約のその他の条項まで無効となるわけではないということを明記しておくことが有用です。

利用規約への同意の取得

サービス提供事業者とユーザーの合意によって両者の間に利用規約の内容に従った利用契約が締結されることにより、ユーザーは利用規約の内容に拘束されることになります。したがって、ユーザーに利用規約への同意を得なければサービス提供事業者はユーザーに権利等を主張することができません。そこで、ユーザーからの同意を適切に取得するフローを用意しておく必要があります。

同意の取得の方法としては、利用規約を表示させた上で、「上記の利用規約に同意します」などのチェックボックス同意ボタンを設けることが望ましいです。
利用規約の全文を読み、その内容に同意したうえでサービスの利用を申し込んだことを強く推認させるために、利用規約の一番下の行まで画面をスクロールさせていかないと同意ボタンが押せない仕組みになっている例も見られます。

利用規約は同意取得ページに全文表示させることが望ましいですが、利用規約のページにリンクを張る形で対応するケースもあります。

この場合は、

  • リンクが分かりやすく表示されていること、
  • リンクをクリックすると直接利用規約のページに遷移する仕様となっていること、
  • リンク切れが生じていないこと

に注意が必要です。

また、紛争になったときにユーザーが利用規約に同意していることが立証できるように同意ボタンを押したログデータを残しておくことが重要です。

改正消費者契約法との関係

令和4年5月25日、消費者契約法の一部を改正する法律が成立し、令和5年6月1日から施行されます。

その改正のなかで注目されるのが、不当条項の新たな類型としていわゆる「サルベージ条項」を無効とする条項です(改正消費者契約法8条3項)。

サルベージ条項とは、ある条項が法律に違反し全部無効となる場合に、その条項の効力を法律によって無効とされない範囲に限定する趣旨の文言を付記した条項のことをいいます。
例えば「法律で許容される範囲内において事業者の損害賠償責任を免除する」といった条項がこれに当たります。単に「事業者の損害賠償責任を免除する」という条項であれば消費者契約法8条1項に違反するものとして全部無効になると解されていますが、「法律で許容される範囲内において」などという文言をいれておくことによって、同項には違反しないことになります。

このようなサルベージ条項は、消費者にとって契約条項のうち有効となる範囲が不明確であるため、消費者の権利行使が抑制されるおそれがあるという問題点が指摘されていました。つまり、サルベージ条項が存在することによって、消費者が本来は不当であるはずの条項の無効を主張立証することをあきらめてしまい、結果として不当な条項を消費者が甘受しかねないという問題点です。

このようなサルベージ条項の問題点を踏まえて、事業者が消費者にとって「明確かつ平易な」条項を作成するよう努め、サルベージ条項を使用せずに具体的な条項を作成するべきであるという議論が行われてきました。

このような経緯から、今回の消費者契約法の改正では、事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項のうち、損害賠償責任の免除が軽過失の場合のみを対象としていることを明らかにしていない条項は無効とすることが規定されました(改正消費者契約法8条3項)。
この改正によって、事業者の損害賠償責任の一部免責を軽過失のみに限定するのであれば、その旨を契約条項において明らかにすることが必要となります。

利用規約で「法律で許容される範囲内において」などという文言で事業者の損害賠償責任を限定する規定を定めていた場合、改正前においては、軽過失の一部免責の場合には事業者の責任は限定されるという効果がありましたが、改正後においては、当該条項自体が無効となります。
その結果、本来であれば消費者契約法上も認められている「軽過失の場合の事業者の一部免責」の効果も得ることができなくなります。

具体的にどのように規定すればよいかですが、消費者庁が出している報告書には、「当社の損害賠償責任は、当社に故意または重大な過失がある場合を除き、顧客から受領した本サービスの手数料の総額を上限とする」といった表現が適切な条項例として挙げられていますので参考になります。「賠償額は10万円を限度とします。ただし、事業者の故意又は重過失による場合を除きます。」といった表現も考えられるところです。

利用規約の作り方・ルールなどに関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで

以上、利用規約を作成することの目的とその作成方法について説明しました。基本的には競合他社の利用規約を参考としつつ、自社の提供するサービスの立て付けに適合するように修正をしていくことによって利用規約を作成します。

その際には、2(2)利用規約の典型的な条項で紹介した、典型的な条項について把握しておくと、どこが修正を加えるべき箇所なのかが見えてきやすくなります。

免責条項については、令和5年6月1日から施行される改正消費者契約法8条3項の規定について押さえておく必要があります。
そして、ユーザーからの同意の適切な取得についても忘れずに押さえておく必要があります。

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自社のビジネスに即した形でカスタマイズすることは必須ですが、ぜひご参照ください。

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