澤田直彦
監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、
「ライセンス契約書締結マニュアル 自社を守る10のポイント」
について、詳しくご解説します。
ライセンス契約とは
まずはライセンス契約を理解するうえで大事な特許権と実施権についてご説明していきます。
特許権とは
特許権とは、特許出願から原則20年間に限って、発明という技術情報の業としての実施行為を、特許権者のみが独占的に行うことができるとする権利です。その期間内においては、原則として、特許権者しか発明を業として実施できないことになります。
したがって、特許権者は、発明を業として実施することによって、発明の創作のためにかかった費用を回収することができるのです。
特許権者としては、以下のように、発明の業としての実施を独占して投資を回収するよりも他人に実施を許諾する方が望ましい場合があり得ます。
- 特許権者が商品化技術を有しない場合
- 他社の販売力を利用したい場合
- 改良技術・関連技術を相互に利用したい場合
- 自社秘術を普及させ市場を拡大したい場合
実施権とは
発明が実施されることで社会にも利益がもたらされるので、特許権者以外にも発明の実施を認めることは社会的にも有益です。
そこで、特許法は、特許権者が他者に対して、発明の利用行為を行うことを認める仕組みを用意しており、そのような利用行為を行うことができる権利のことを「実施権」と呼びます。
実施権は、その発生原因や法的性質によって数種類に分類されます。ライセンス契約を発生原因とする「実施権」は「許諾実施権」であり、その法的性質によって「専用実施権」と「通常実施権」に分けることができます。
まず「専用実施権」とは、設定行為で定めた範囲内で特許発明を独占的に実施できる権利をいいます(特許法77条)。 専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、特許権者と同等の権利を有し(同条2項)、自己の名において侵害者に対し差止請求(同法100条)と損害賠償請求をすることができます。
次に「通常実施権」とは、特許権者以外の者が特許発明を業として実施できる権利をいいます。 その法的性質は、特許権者にその特許権に基づく差止請求および損害賠償請求の行為をしないことを請求できる、不作為請求権を中心とするものと理解されています。
また、1人の通常実施権者が、特許権者との間で、自らの実施権の範囲について他の通常実施権を一切設定しないと契約で取り決めることで、実質的に独占的な実施を実現することも考えられます。これは「独占的通常実施権」とよばれます。
※「独占的通常実施権」は、「専用実施権」とは異なり、特許権者との間で競合する他の「通常実施権」を設定しないとする契約上の効果をもつにすぎません。したがって、特許権者によって競合する他の「通常実施権」が設定されたとしても、独占的通常実施権者は、他の通常実施権者を排除することはできず、特許権者に対して契約上の責任を問うことができるにとどまります(裁判例では、他の通常実施権者に対する損害賠償請求を認める傾向があります)。
ライセンス契約とは
ライセンス契約とは、特許実施許諾契約ともいい、以上の特許権、実施権を前提に締結される契約です。
特許権の保有者(ライセンサー)が、相手方(ライセンシー)に対して、自己の保有する特許権の使用または実施を許諾して、その対価(ロイヤリティ、ライセンス料、実施料と呼ばれます。)を受け取る契約のことをいいます。
印紙
特許ライセンス契約書は不課税文書に該当しますので、収入印紙の貼付は不要です。
目的
【例文】
- 第○条(目的)
乙は、自社商品の製造力を上げるために、甲が特許を有する秘術を利用する必要が生じたため、甲から同特許について通常実施権の許諾を受けることを希望し、甲がこれを承諾したため、本契約を締結する。
民法の改正により、解除を主張したり、契約不適合責任に基づく請求をしたりする場合に、契約の目的が重要視されることになりました。
そのため、契約書に契約の目的を記載しておく必要があります。
実施権の設定
【例文】
- 第○条(通常実施権の設定)
甲は、乙に対し、甲の名義で登録されている下記特許につき、通常実施権を許諾する。
記
登録番号:特許登録 第○○○○○号
発明の名称:○○○○
以上
対象物の特定
ライセンスの対象物を適切に特定することが重要です。
これは当たり前のことですが、
①対象物がさらに改良された場合に、その改良物もライセンスの対象に含まれるのか、
②対象物について異なる形態が想定される場合(たとえば、オブジェクト・コードとソース・コード等)にどの形態について、ライセンスが許諾されているのか
を明確にしておく必要があります。
IPOにあたり、ライセンス契約を重要な契約として開示する場合には、契約の対象物が不特定であると問題となることがありますので、しっかりと対象物を特定しておく必要があります。
なお、許諾対象となる特許が多数存在する場合、以下のように記載して、別紙にまとめましょう。
- 例文
甲は、乙に対し、甲の名義で登録されている別紙記載の特許につき、通常実施権を許諾する。
実施権の種類の特定
実施権が、その発生原因や法的性質によって、数種類に分類できることはすでに述べたとおりです(「1-2.実施権とは」を参照)。
上記規定は、許諾する実施権の種類が通常実施権であることを規定しています。
また、独占的通常実施権や専用実施権における「独占」に関し、特定の製品、利用目的、テリトリーなどについて、例外が定められている場合もあります。
独占権に例外が設定されている場合、当該契約がIPO時に重要な契約として開示対象となる場合には、単に「独占」とだけ記載すると不十分な開示となってしまう可能性がありますので、その独占権の例外については何らかの開示を行わなければならない可能性があります。
再実施許諾
【例文】
- 第○条(第三者への再実施許諾の禁止)
乙は、甲への事前の書面による同意を得た場合を除き、第三者に対し本件特許の実施権を譲渡し、又は再実施権を許諾してはならない。
単にライセンスといっても、あらゆる利用が許される場面と、利用形態や利用目的が制限されている場合があります。
ライセンス契約において、利用態様が細かく列記されるケースもありますが、自社がライセンシーである場合には、自社が予定している利用態様が全て包摂されているかを慎重にチェックする必要があります。
たまに、再実施許諾権(サブライセンス)の有無が明記されていないライセンス契約がありますが、ライセンス対象物を組み込んだ製品を顧客に販売する場合などを想定しているのであれば、再許諾権の有無はその後の事業展開に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、この点を明確にしておくことが大切です。
上記の規定は、ライセンサーの書面による事前の同意を得ない再実施許諾(サブライセンス)を禁止しています。
再実施許諾範囲を変更する場合、たとえば、第三者への再実施を許諾する場合は、以下のようになります。
- 第○条(第三者への再実施許諾)
乙は、第三者に対して本件特許の実施権を譲渡し、又は再実施権を許諾することができる。
※サブライセンスは、原ライセンス契約のライセンシーがサブライセンサーとなってサブライセンシーに特許やノウハウなどの再実施許諾をします。
サブリースと原賃貸借契約の関係はよく似ています。サブリースの場合、転貸の対象となった不動産などを転借人に明け渡し使用させるが、サブライセンスでは、サブライセンサーはサブライセンスをした後も対象となった特許やノウハウなどをそのまま使用し続けることができます。
なお、特許法94条1項により、会社の合併等の一般承継の場合に、特許権者の同意なしに実施権が移転することを認めてしまうと、実施権目当ての買収等に対抗できない結果になります。
そこで、ライセンサーとしてはそのような場合に備えて、実施許諾を解除できる旨を定めておくことが考えられます (「9-1.契約の解除」参照)。
対価
ライセンス料の決め方
【例文】
- 第○条(対価)
1 乙は、本契約に基づく本件特許の実施許諾の対価の一時金として、金○○○円を、本契約締結の日から30日以内に、甲が指定する銀行口座に振り込むことにより、甲に支払うものとする。
2 乙は、本件特許の実施料として本契約の有効期間中に契約製品を販売したときは、その純販売金額の○○%に相当する金額を、第○条の規定に従い甲に支払うものとする。
3 本契約に基づき乙から甲に支払われた対価は、計算の過誤その他の錯誤による過払いを除き、返還されないものとする。なお、錯誤による過払いを理由とする返還請求は、支払後30日以内に書面により行うものとし、その後は理由の如何を問わず請求できないものとする。
ライセンス料は、ライセンサーとライセンシーの交渉においてもっとも重要なポイントの1つです。
ライセンス料の決め方には、大まかに次の3つの方式があり、上記条項は③に依拠してライセンス料を規定しています。
①ランニング・ロイヤリティ方式(出来高払い)
生産量や販売額を基準に一定の計算式を適用して、ライセンス料を決定する方法です。
製造・使用・販売した製品の価格等に一定料率を乗じてライセンス料を決定する方式(定率方式)と、製造・使用・販売した製品の1単位(たとえば、製品1個)あたりいくらとライセンス料を決定する方式(定量方式)があります。
ランニング・ロイヤリティの算定方式としては、定率方式が用いられることが多いです。
これらの方式では、ライセンス料が売上または利益を基準として決定されるので、契約締結時に将来の不確実な予測に基づくライセンス料の交渉をしなくても済むというメリットがあります。
しかし、ライセンシーが将来にわたって製造・販売を行い、ライセンス料を支払い続けることが前提であり、ライセンシーが倒産した場合などにはライセンス料の回収ができなくなってしまうので、ライセンサーとライセンシーの信頼関係が重要となります。
そこで、ミニマム・ロイヤリティという形で販売金額にかかわらず最低実施料を規定することが考えられます。特に、独占的通常実施権を与える場合には、ライセンス料の回収が1社のライセンシーのライセンス料支払いに依存するため、ミニマム・ロイヤリティを規定しておくことが重要となります。
②一括払い方式
ライセンサーに最初にまとまったライセンス料を支払ってしまう方式です。
この方式では、ライセンサーにとっては最初にまとまった金額を得ることができ、研究開発に要した資金を回収することができるというメリットがあります。
しかし、不確実な将来の予測に基づいてライセンス料を決定することになるので、将来的にライセンシーが予測よりも利益を出した場合にもライセンサーは追加請求できず、他方で、予測よりも利益が出なかった場合にはライセンシーにとっては払い過ぎということになってしまうというデメリットがあります。
利益の予測が難しい製品についてはかかる方式を採用することは難しいでしょう。
③イニシャル・ペイメント+ランニング・ロイヤリティ方式(一時金および出来高払いの併用)
最初に一時金を受け取り、その後ライセンシーからランニング・ロイヤリティを受け取る方式です。
イニシャル・ペイメントは、技術開発コスト・特許取得費用等のライセンサーが支払った費用の回収という側面を有し、返還請求できないという条項が付けられることが多いです。
不返還条項
上記規定の第3項は、対価が返還されないことを定めています。 特許を無効にすべき審決が確定したときは、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます(特許法125条本文)。
このような場合に備え、このような場合のライセンス料の扱いをあらかじめ契約で定めておくことが望ましいです。
※なお、不返還条項が定められた事例において、最終的に実用新案権が無効とされても、返還請求ができないとされており、不返還条項が有効と解されています(東京地判昭和57年11月29日判時1070号94頁)。
ライセンシーの義務とは
報告、支払い
【例文】
- 第○条(報告、支払い)
乙は、 に基づき各月1日から末日までの間に発生した実施料額を計算し、当該月末日から30日以内に甲に対して書面で報告し、かつ、当該月末日から60日以内に甲の指定する銀行口座に振り込むことにより、甲に支払うものとする。
この規定は、実施料の支払方法および報告義務について定めています。
上記規定では、支払いに先立ち書面により報告することとしていますが、報告と同時に支払うことも考えられます。
また、上記規定は報告および支払いを毎月行うこととしていますが、四半期ごと半年ごととすることも考えられます。
帳簿、検査
【例文】
- 第○条(帳簿、検査)
1 乙は、契約製品の製造、販売に関する別個独立の帳簿を作成し、関係書類とともに、本契約の有効期間中及び終了後5年間、乙の本店に保管する。
2 甲は、甲が指定する公認会計士をして前項の帳簿及び関係書類を検査させることができ、乙はこれに協力するものとする。
この規定は、乙からの報告および支払の正確性を確認するための規定であり、甲にとっては重要な規定です。
不争義務
【例文】
- 第○条(紛争の場合の解約)
甲は、乙が本件特許の有効性または間接に争ったときは、本契約に直ちに解約することができる。
不争義務とは、ライセンス技術にかかる権利の有効性について争わないライセンシーの義務のことをいいます。
不争義務を課す行為は、公正競争阻害性を有するものとして不公正な取引方法に該当する場合もあります。
しかし、ライセンシーが権利の有効性を争った場合に当該権利の対象となっている技術についてライセンス契約の解除を定めることは、原則として不公正な取引方法に該当しないとされています(知財利用指針第4・4(7))。
改良技術の報告義務
【例文】
- 第○条(改良技術)
1 乙が、本契約の有効期間中に、本件特許にかかる各発明の構成要素の全部を主要部分とし、各発明と同一目的を達成する技術(以下「改良技術」という。)を開発したときは、直ちにその内容を相手方に通知するものとする。
2 乙は、前項により通知した改良技術について相手方から実施許諾の要求があったときは、合理的な条件で実施許諾に応じるものとする。
上記規定第1項は、ライセンシーが開発した改良技術について、ライセンシーの合理的な条件での報告義務を規定しています。
ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンシーがライセンス技術を利用する過程で取得した知識または経験をライセンサーに報告する義務を課す行為は、原則として不公正な取引方法に該当しないとされています。
しかし、このような報告義務を課すことが、実質的にライセンシーが取得したノウハウをライセンサーに実施許諾することを義務付けるものと認められる場合には、不公正な取引方法に該当するとされているので、注意が必要です。
上記規定の第2項は、ライセンシーが開発した改良技術について、ライセンシーの合理的条件での実施許諾義務を規定しています。
ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンシーが開発した改良技術について、ライセンサーにその権利を帰属させる義務(いわゆる「アサイン・バック」)または、ライセンサーに独占的実施許諾契をする義務(いわゆる「グラント・バック」)を課す行為は、原則として不公正な取引方法に該当するとされています。
しかし、ライセンサーがライセンシーに対して、改良技術をライセンサーに非独占的に実施許諾する義務を課す行為は、原則として不公正な取引方法に該当しないとされています。
※注意すべきガイドラインとして、知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針があります。
知的財産のうち技術に関するものを対象とし、技術の利用に係る制限行為に対する独占禁止法の適用に関する考え方を包括的に明らかにしたガイドラインであり、実施権者に対して特許権の有効性について争わない義務を課すことは、不公正な取引方法に該当する場合があることなどについて指摘されています。
ライセンサーの義務とは
保証
【例文】
- 第○条(不保証)
1 甲は、本件特許につき無効事由が存在しないことを保証しない。
2 甲は、乙による本件特許の実施が第三者の権利により制限を受けないことを保証しない。
ライセンス対象物についての保証の範囲や、ライセンサーが負担する責任の内容についても、契約上、重要なポイントとなります。
上記規定は、ライセンサーが本件特許に無効事由が存在しないこと、および本件特許の実施が第三者の権利により制限を受けないことを保証しないと規定しています。
ライセンス契約においては、
①対象特許の有効性
②実施品が第三者の権利を侵害していないことを、ライセンサーが保障するか否か
が交渉の重要なポイントとなります。
ライセンサーとライセンシーの力関係に応じて、このような規定の有無が決定されることになり、 ライセンシーにとっては、ライセンサーの保証の範囲を広く確保しておいた方が望ましいといえます。
また、保証条項を設けた場合には、対象特許が無効とされたり、実施品が第三者の権利を侵害したりしたときは、ライセンサーは法的責任を負うことになるので、その場合の措置(たとえば、現実に受領した実施料の額を限度としてライセンサーが保証するなど)について規定しておくべきです。
その他の義務
上記のほかに考えられるライセンサーの義務としては、「技術援助義務条項」、「最恵待遇条項」などが考えられます。
「技術援助義務条項」とは、ライセンス契約締結後遅滞なく、ライセンシーによる製品の製造に有用な技術情報を提供することを、ライセンサーに義務付けるものです。
「最恵待遇条項」とは、本件ライセンス契約締結後に、ライセンサーが対象特許に関し第三者との間でより有利な条件で新たにライセンス契約を締結した場合には、本件ライセンス契約の条件をそれと同等の内容に変更するというものです。
ライセンスの期間
契約の解除
【例文】
- 第○条(契約の解除)
1 甲及び乙は、相手方が、本契約に定める義務を履行しない場合、相手方にその履行を催告し、当該不履行が、催告後30日以内に是正されない場合、本契約を解除することができる。
2 乙が、次のいずれかに該当したときは、甲はなんらの通知及び催告を要せず、直ちに本契約を解除できるものとする。
(1)手形又は小切手が不渡りとなったとき
(2)電子記録債権について不渡不能が発生したとき
(3)重要な資産につき差押え、仮差押え又は競売の申立てがあったとき
(4)租税滞納処分を受けたとき
(5)破産手続開始、民事再生手続開始又は会社更生手続開始の申立てがあったとき
(6)清算に入ったとき
(7)解散を決議し、又は解散したとき
(8)(1)~(7)のほか、その財産状態が悪化し、又はその信用状態に著しい変化が生じたとき
(9)法令に違反し、又は公序良俗に反する行為を行ったとき
(10)乙につき、合併、会社分割、本件特許に関係する事業譲渡その他の企業再編が行われた場合
3 乙が第1項又は第2項(1)~(10)のいずれかに該当した場合、乙は、当然に期限の利益を失い、甲に対して本契約に基づいて負担する一切の金銭債務を直ちに弁済するものとする。
この規定は、一定の場合にライセンサーがライセンス契約を解除することができる旨を規定しています。
民法上認められている債務不履行の場合の解除権に加え、ライセンシーが債務を履行できなくなったような場合にも解除権を認めたところにこの規定の意味があります。
上記規定の2項10号は、企業再編等の場合の解除権を規定しています。
会社の合併等の一般承継の場合に、特許権者の同意なしに実施権が移転することを認めてしまうと、実施権目当ての買収等に対抗できない結果になります(特許法94条1項)。そこで、ライセンサーとしてはそのような場合に備えて、実施許諾を解除できる旨を定めておくことが考えられることはすでに述べたとおりです。
有効期間
【例文】
- 第○条(有効期間)
本契約の有効期間は、本契約締結の日から本件特許の最終の存続期間満了の日までとする。
会社のビジネスの根幹となっているライセンスについて、その有効期間の確保はライセンシーの事業戦略上、重要であるのみならず、IPOとの関係でも大切です。 そのようなライセンスに関する契約書は、IPOにあたり開示される可能性があり、その際に有効期間は必須の記載事項となります。
この期間が短い場合には、ライセンシーの将来の業績に重大な影響を及ぼす可能性があり、リスクとしての開示も必要となるかもしれません。
また、有効期間が長期間確保されていたとしても、容易にライセンサーから解除され得る規定が含まれている場合には、それもリスクとなるため、開示対象となる可能性があります。
特に、ライセンサーの側から提示された契約書においては、ライセンサーからの一定期間前の書面通知により、いつでも解除されるような規定が含まれる場合が多いので、この点注意が必要です。
ライセンスの終了時
【例文】
- 第○条
1 契約期間の満了、解除その他理由のいかんを問わず本契約が終了した場合には、乙は直ちに、契約製品の製造を中止し、本契約に基づき甲から乙に供給された一切の技術情報及び乙によって作成されたそのすべての複製物を甲に返還するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、乙は本契約終了後も、既に製造した在庫製品を販売することができる。
3 本契約終了後も、本条、第○条、第○条、第○条及び第○条は、甲乙間でそのまま有効とする。
ライセンス契約終了時の手当ても考慮しておく必要があります。
特に、ライセンスに基づき製品を製造して大量の在庫が契約終了時に存在する可能性がある場合には、ライセンス終了時の在庫の取扱いについて明確にしておくのが望ましいといえます。
また、サブライセンスを行っている場合には、何の手当てもないとライセンス終了時にそのサブライセンスも実行できなくなってしまうため、サブライセンスの取扱いも明確化しておくことが安全です。
まとめ
以上のように、ライセンス契約のチェックポイントについて学んでおくことは、ベンチャーの経営者にとって重要です。
なお、各企業によるライセンス契約の締結は、それぞれ策定するライセンシングポリシーなど
クロスライセンスの場合、1つのライセンス契約において一方の当事者がライセンサーであり、かつ、ライセンシーでもある点で、通常の片面的ライセンスと異なります。
しかしその場合でも、以上のチェックポイントが重要であることには変わりません。
特許権者の場合は、以下の点をチェックしましょう。
- 契約の目的が明確であるか
- 契約の当事者が明らかであるか
- 実施許諾の対象となる特許は明確に定められているか
- 許諾の対価の決定方法は明確か
- 対価の決定方法は適正か
- 解除条項に不合理な事項が入っていないか
実施権者の場合は、以下の点をチェックしましょう。
- 契約の目的が明確であるか
- 契約の当事者が明らかであるか
- 実施許諾の対象となる特許は明確に定められているか
- 許諾の対価の決定方法は明確か
- 解除条項に不合理な事項が入っていないか