1. ホーム
  2. 会社の基本法

【弁護士解説】取適法の4条明示とは?記載事項・発注書・基本契約書の整備方法

取適法の対象取引では、発注後直ちに、取引条件を明示する義務(4条明示)があります。 基本契約書の締結やメールでの発注だけでは、明示義務を満たしていない可能性があるため注意が必要です。

また、発注時の取引条件の明示は、担当者ごとの判断に委ねると記載漏れが生じやすいため、社内で統一した運用体制を整えることが重要です。

本記事では、企業法務の担当者の方に向けて、以下の点を解説します。
▸ 取適法の4条明示義務と12の明示事項
▸ 4条明示における未定事項の扱い
▸ 基本契約書と個別発注書の役割分担
▸ 電磁的方法による明示のルール
▸ 特定運送委託と貨物自動車運送事業法12条書面の関係
▸ 明示漏れを防ぐ社内体制と発注管理の方法

なお、自社の取引が取適法の適用対象になるかについては、関連記事「【弁護士解説】取適法の適用対象とは?委託事業者の判断基準と取引の確認方法」にて詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。


澤田直彦

監修
弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田直彦

2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。

弁護士のプロフィール紹介はこちら直法律事務所の概要はこちら

\初回30分無料/

【初回30分無料】お問い合わせはこちら法律顧問契約の詳細はこちら

当事務所では、LINEでのお問い合わせも受け付けております。お気軽にご相談ください。
登録はこちらから

友だち追加

取適法の4条明示義務とは?

4条明示の重要性

取適法の適用対象取引では、委託事業者は製造委託等をした場合、直ちに発注内容等を明示する義務があります(取適法4条)。旧下請法で3条書面と呼ばれていたものが、改正後は「4条明示」と呼ばれています。

4条明示は、法律上の義務であると同時に、受領拒否・減額・買いたたきといった禁止行為への該当性を判断する際の基準となる資料です。例えば、代金の減額があったかどうかは4条明示に記載された額と実際の支払額を比較して判断され、給付内容の変更についても4条明示の記載が基準となります。

つまり、4条明示の整備は、単なる義務の履行ではなく、自社の発注実務が適法であることを示す証拠づくりにもつながります。

また、取適法違反の有無は、4条明示や取適法7条に基づき作成・保存が義務づけられる書類の内容などをもとに、書面調査によって形式的・画一的に判断されます。書面の不備は、それだけで当局調査における弱点となります。

4条明示で必要な12の記載事項

4条明示では、以下の12の事項を明示する必要があります。

  1. 委託事業者および中小受託事業者の名称
  2. 委託をした日
  3. 給付の内容
  4. 給付を受領する期日
  5. 給付を受領する場所
  6. 検査をする場合の検査完了期日
  7. 代金の額
  8. 代金の支払期日
  9. 一括決済方式で支払う場合の金融機関名・貸付けまたは支払いを受けることができる額・支払日など
  10. 電子記録債権で支払う場合の額・満期日など
  11. 原材料などを有償支給する場合の品名・数量・対価・引渡期日・決済期日・決済方法
  12. 未定事項がある場合の理由と内容を定める予定期日

まずは、契約書や注文書の記載項目がこれら12項目を網羅しているか確認してください。

4条明示を行うタイミング

4条明示は、発注後直ちに行う必要があります。

契約書による明示も可能ですが、発注から契約締結までに日数を要する場合は、別途注文書などを発行して明示しなければなりません。契約書の内容を調整している間であっても、明示を先延ばしにすることはできません。

また、電話による明示は認められないため、その場合は直ちに書面または電磁的方法による明示を行う必要があります。緊急対応などで電話発注が避けられない場合は、電話発注後に定型の発注メールを必ず送信するルールを設け、送信漏れをシステムで検知できる仕組みを整えておくと安全です。

4条明示における未定事項の扱い

発注時点で検査完了期日や代金額などを確定できない場合でも、正当な理由があれば、未定事項以外を先に明示することが認められています。

ただし、その場合は発注時に以下の2点を明示し、内容が確定した後に直ちに補充明示を行う必要があります。

  • 未定事項の内容が定められない理由
  • 内容を定める予定期日

つまり、単に「未定」と記載するだけでは足りず、理由と予定期日を示したうえで、確定後に補充明示することが求められます。未定事項の例としては、検査基準の詳細が固まっていない段階での検査完了期日や、市況連動・実費精算のため確定できない代金額などが挙げられます。

明示漏れを防ぐためには、発注書のフォーマットに未定事項欄(理由・予定期日)を設け、補充明示のリマインドが自動的に行われる発注管理の仕組み整えておくことが有効です。

基本契約書と個別発注書の役割分担

基本契約書による共通事項の事前明示

4条明示は原則として個別発注の都度行う必要がありますが、継続取引における共通事項は、基本契約書などで事前に明示することが可能です(明示規則1条3項)。

例えば、支払方法や検査期間などを基本契約書であらかじめ明示しておけば、示された期間内は個別発注の都度明示する必要がなくなります。そのため、継続取引では、基本契約書に共通事項を可能な限り網羅し、個別発注書には変動事項(給付内容・数量・納期・代金額など)を記載する方法が効率的です。

ただし、この方法をとる場合は、発注の都度「代金の支払方法等については現行の基本契約書による」などと記載し、個別発注書と基本契約書を紐づける必要があります、

基本契約書が存在するだけでは足りず、個別発注書から基本契約書への参照を明示することが重要です。

基本契約書のフォーマットの選び方

基本契約書の作成にあたっては、取適法の適用対象かどうかにかかわらず共通のフォーマットを使用するか、適用対象となる取引先向けに専用のフォーマットを使用するか、あらかじめ方針を決めておく必要があります。

専用フォーマットを採用する場合、取引類型や取引先の資本金・従業員数の変動によって適用の有無が変わった際に、適切なタイミングで切り替えられる体制が不可欠です。

特に、従業員数は個別発注時点で判断されるため、基準値に近い取引先では適用の有無が変わる可能性があります。こうした切替管理の負担を踏まえ、当事務所では、取引先の多い企業に対して「全取引先に取適法水準を適用する共通フォーマット」を推奨することも少なくありません。

契約条項と取適法の強行法規性

取適法は強行法規であり、当事者間の契約書の内容にかかわらず、適用対象である取引には一律に適用されます。

そのため、基本契約書に取適法上の義務や禁止事項を逐一盛り込む必要はありません。一方、基本契約書に取適法に違反する行為について当事者が合意した旨を定めても、違反が正当化されることはありません。

「契約書に書いてあるから」「相手も合意しているから」という理由では、取適法上の義務を免れることはできない点に注意が必要です。

電磁的方法による4条明示のルール

取適法では、中小受託事業者の事前同意がなくても、電磁的方法による4条明示が可能になりました。

旧下請法では、発注時の明示は原則として書面交付によるものとされ、電磁的方法による明示には下請事業者の事前同意が必要でした。取適法への改正により、電子発注への移行がしやすくなっています。

ただし、中小受託事業者から書面の交付を求められた場合、委託事業者は原則として書面を交付する義務があります。

一方、中小受託事業者が自らの希望した特定の電磁的方法で明示を受け、その後に書面交付を求めた場合は、書面交付義務を負わないと考えられています(取適法4条2項ただし書、明示規則4条1号)。そのため、電子発注システムへの移行時には、相手方が希望する提供方法を記録に残る形で確認し、後日のトラブルを防ぐことが重要です。

特定運送委託における12条書面との関係

取適法の特定運送委託に該当する取引では、4条明示に加え、貨物自動車運送事業法12条に基づく書面交付が必要となる場合があります。

荷主として運送契約を締結する場合、貨物自動車運送事業法12条1項に基づき、いわゆる「12条書面」の交付義務が課されることがあるためです。12条書面の適用範囲は、取適法の特定運送委託より広く、通常、特定運送委託に該当する取引には12条書面の交付義務も生じます。

ここでいう「真荷主」とは、自らの事業に関して貨物自動車運送事業者と運送契約を締結し、貨物の運送を委託する者(貨物自動車運送事業者を除く)を指します。

12条書面の適用対象には、取適法の特定運送委託にある「目的物の販売先・発注先に対する運送の委託」という限定がありません。そのため、自社拠点間の運送など、取適法の特定運送委託に該当しない場合でも、12条書面の交付義務が生じる可能性があります。

実務上、4条明示は12条書面を兼ねることができるため、両者を別々に作成する必要はありません(パブリックコメント回答103)。

ただし、兼用書面を作成する場合は、通常の4条明示では求められない以下の事項についても、詳細な記載が必要です。

  • 運送以外の役務(荷役作業・附帯業務など)が契約に含まれる場合のその内容
  • 有料道路利用料・燃料サーチャージなどといった特別に生じる費用にかかる料金

また、12条書面は、相手方の同意がなければ電磁的方法による交付ができません(貨物自動車運送事業法12条3項)。そのため、取適法の4条明示では同意が不要でも、12条書面との兼用書面を電子交付する場合には、相手方の同意を取得する必要があります。

4条明示の漏れを防ぐ社内体制の整備

4条明示の漏れを防ぐには、担当者個人の理解に依存せず、フォーマットやシステムによって管理することが重要です。

具体的には、以下の4つの対策は柱となります。

  1. 発注書フォーマットの統一
    法定12事項を網羅した全社統一の発注書フォーマットと記入ルールを整備する。
  2. 未定事項の管理
    未定事項欄を設け、補充明示のリマインド機能を実装する。
  3. 明示事項の網羅性チェック
    発注管理システムの導入などにより、必要な事項が漏れなく記載されているか確認する。
  4. 基本契約書と個別発注書の紐づけ
    両者を紐づける文言の定型化する。

4条明示義務の違反は罰金の対象となり得る一方、フォーマットとシステムによる仕組み化で防ぎやすい違反類型でもあります。

そのため、研修だけに頼らず、書式そのもので違反を防ぐ仕組みを整えることが重要です。

当事務所でも、発注書式のレビューを行う際は、条文との対照表を付けて12事項の網羅性を機械的に確認できる形に整えています。

7条書類の作成・保存義務

取適法では、4条明示に加え、取適法7条に基づく書類(7条書類)の作成・保存が委託事業者に義務づけられています。

7条書類は、給付の内容・代金額・支払いの状況など、取引の経過を記録するものです。取適法違反の有無は、4条明示や7条書類の内容などをもとに、書面調査によって形式的・画一的に判断されます。当局から個別調査を受ける場合、資料の提出対象となる期間は、7条書類の保存期間である過去2年間分とされるのが一般的です。

実務上は、7条書類を作成するだけでなく、4条明示・納品書・支払伝票と照合できる形で保存することが重要です。

発注番号をキーに、明示書面から受領記録、支払記録までを一貫して追跡できる状態にしておけば、調査対応の負担を軽減でき、社内監査でも支払遅延や減額の有無を機械的に検証できます。発注管理システムを導入している企業は、システムの出力が7条書類の記載事項を網羅しているかを一度確認してください。

また、紙とデータが混在している企業では、保存場所の分散が調査対応の障害になるため、対象取引の記録を電子データで一元保存する方針への統一も検討する価値があります。

発注から支払いまでの実務フロー

取適法に対応するには、発注時の4条明示から支払い・記録の保存まで、一連の手続きを適切に管理することが重要です。

具体的には、以下の流れで対応します。

  1. 取適法の適用対象か確認する
    見積依頼の段階で、取引先の従業員数を記録に残る形で確認する(見積書のチェックボックスなど)
  2. 対象取引用の発注フローに移行する
    適用対象と判定した取引は、対象取引用の発注フローに乗せる。
  3. 発注後直ちに4条明示を行う
    12事項を網羅した注文書などを交付する。共通事項は基本契約書への紐づけ文言で対応し、未定事項があれば理由と予定期日を記載する。
  4. 未定事項を補充明示する
    未定事項が確定したら、直ちに補充明示を行う。
  5. 取引記録を保存する
    受領・検収・支払いの各記録を発注番号に紐づけて保存する(7条書類)。
  6. 価格改定の協議を記録する
    価格改定の申入れがあれば、協議の経過を同じ発注管理の枠内で記録する。

このフローを運用するうえで最大の障害となるのは、発注チャネルの分散です。メール・電話・システム・口頭など、発注経路が混在すると明示漏れが生じやすくなります。そのため、書式の整備だけでなく、発注経路の統制まで含めて設計することが重要です。

当事務所が支援した企業でも、まず「対象取引の発注は必ずこの経路で行う」というルールを設け、発注チャネルを一本化しました。

また、書式やシステムを整えても、それを使う担当者の理解が伴わなければ適切に運用できません。取適法では、4条明示の記載方法や未定事項の処理など、現場で判断に迷う場面が多く、パブリックコメントの回答や運用基準といった一次資料の量も膨大です。

法務・コンプライアンス部門としては、外部専門家も交えながら、現場の担当者が理解すべき点を厳選し、発注書式の記入ルールと組み合わせた実践的な研修を継続して実施することが求められます。

さらに、運用開始後1〜2か月の時点で実際の発注書面を抽出し、記載状況を点検することで、運用の形骸化を早期に発見できます。

当事務所でも、書式整備とあわせて、記載例とNG例を対比させた現場向けマニュアルの作成をご支援することが増えています。

よくある質問(FAQ)

Q1.毎回の発注はメールで行い、詳細は月次で締結する覚書にまとめています。この運用で問題ないでしょうか。

見直しをおすすめします。4条明示は発注後直ちに行う必要があり、月次の覚書ではこの要件を満たしません。

メール(電磁的方法)による明示は相手方の同意なく可能ですが、発注時点で法定事項を網羅する必要があります。そのため、発注メールのフォーマットを整えるか、共通事項を基本契約書で事前明示し、発注メールに紐づけ文言と変動事項を記載する運用に改める必要があります。

Q2.単価が市況連動のため、発注時に代金額を確定できません場合はどうすればよいですか。

代金額を確定できない正当な理由がある場合は、発注時にその理由と確定予定期日を明示し、確定後直ちに補充明示する方法が認められています。算定方法(計算式)で示せる場合は、算定方法の明示も検討できます。

一方、「空欄のまま発注し、請求時に決める」という運用は明示義務違反となり、協議を経ない一方的な代金決定の問題にもつながりかねないため避けてください。

Q3.電子発注システムに移行済みですが、一部の取引先から紙の注文書も欲しいと言われています。応じる義務はありますか。

原則として応じる必要があります。取適法では、電磁的方法による明示に相手方の同意は不要ですが、中小受託事業者から書面交付を求められた場合は、交付義務があります。

ただし、相手方が自ら希望した特定の電磁的方法で明示を受け、その後に書面交付を求めた場合には交付義務を負わないと考えられています。

そのため、システム移行時に相手方の希望方法を記録化しておくことが実務上重要となります。

Q4.発注後に事情が変わり、発注の取消しや納期の延期をしたい場合、どんな点に注意が必要ですか。

発注の取消しや納期の延期は、受領拒否や不当な給付内容の変更に該当する可能性があるため、注意が必要です。

製造委託の目的物について、発注取消しによる納期の変更や、納期延期によって目的物を受領しない行為は、名目にかかわらず受領拒否(取適法5条1項1号)に該当し得ます。受領拒否が認められるのは、受託側の責めに帰すべき事由がある場合に限られ、受託側の同意があっても違反は解消されません。

また、受領前の給付内容の変更には、不当な給付内容の変更に関する規制(取適法5条2項3号)があり、契約上の中途解約条項に基づく解除も対象となります。

変更によって受託側に生じた費用(設備投資や違約金など)を委託側が負担すれば違反とならない整理のため、発注変更時は費用負担もあわせて検討してください。

Q5.事業部ごとに発注書のフォーマットがばらばらです。統一は必須ですか。

法律上、フォーマットの統一は義務づけられていません。ただし、記載漏れや不備による4条明示義務違反を防ぐため、全社共通のフォーマットと記入ルールを整備することが望ましいといえます。

フォーマットの統一は、調査対応や社内監査の効率化、基本契約書との紐づけ管理、システムによる記載事項の網羅性チェックにも有効です。事業部固有の記載事項がある場合は、法定12事項を共通項目として固定し、事業部別の追記欄を設ける方法が現実的です。

取適法に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで

4条明示では、発注後直ちに12事項を明示し、未定事項がある場合は理由と予定期日を示す必要があります。 また、基本契約書と個別発注書の紐づけ、電磁的方法による明示、特定運送委託における12条書面との兼用にも注意が必要です。

4条明示は、取適法違反の有無を判断する際の重要な資料となります。明示漏れを防ぐためにも、発注書式や発注フローを点検し、研修を含めた社内体制を整えておきましょう。

直法律事務所では、基本契約書・発注書のレビューから発注フローの設計、調達部門向け研修、現場向けマニュアルの作成、運用開始後の定着点検まで、企業の状況に応じた支援を行っています。スポットでのご相談や、顧問税理士・社会保険労務士など士業の先生方からのご紹介にも対応しております。

ご相談も随時受け付けておりますので、お困りの際はぜひお気軽にお問い合わせください。

\初回30分無料/

【初回30分無料】お問い合わせはこちら法律顧問契約の詳細はこちら

【関連記事】
【弁護士解説】取適法の適用対象とは?委託事業者の判断基準と取引の確認方法

顧問弁護士とは?法律顧問契約を結ぶメリットや費用・相場について解説!【企業向け】

直法律事務所では、IPO(上場準備)、上場後のサポートを行っております。
その他、プラットフォーム、クラウド、SaaSビジネスについて、ビジネスモデルが適法なのか(法規制に抵触しないか)迅速に審査の上、アドバイスいたします。お気軽にご相談ください。
ご面談でのアドバイスは当事務所のクライアントからのご紹介の場合には無料となっておりますが、別途レポート(有料)をご希望の場合は面談時にお見積り致します。


アカウントをお持ちの方は、当事務所のFacebookページもぜひご覧ください。記事掲載等のお知らせをアップしております。

企業法務のお悩みは、
弁護士に相談して解決

会社を運営する上で、商法や会社法などの基本法律の知識に加え、展開されるビジネス特有の業法に至るまで、企業法務に精通している弁護士に相談することが肝要です。いち早く信頼できる弁護士を見つけ、ビジネスを加速してくれる法務パートナーを見つけましょう。

クライアント企業一例