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役員報酬の決め方 ~注意点・ポイントをおさえよう~

Q.
このたび、当社で取締役になってくれる方の報酬を決めようと思うのですが、何か気を付けるべきポイントはありますか?

A.
取締役の報酬は、社長が好きなように決めてよいものではなく、株主総会で決める必要があります(会社法361条、309条1項)。
ただ、株主総会で決めるのは取締役の報酬の「総額」でよく、個別的・具体的金額の決定は、取締役会に一任することができます。
 
報酬の種類は様々で、その種類に応じて留意する点が異なります。
また、いったん報酬の支給決議がなされた場合には、その事業年度途中での変更は取締役の同意がない限り、原則としてできない点にも注意が必要です。

本記事で、役員報酬を決める際のルールについて、確認していきましょう。


澤田直彦

監修弁護士:澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所 
代表弁護士

IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を運営し、各種法律相談をお受けしています。

本記事では、
「役員報酬の決め方 ~注意点・ポイントをおさえよう~」
について、詳しくご説明します。

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報酬等の決定方法とは

定款又は株主総会の決議

会社の役員報酬は、決め方にルールがあります。
取締役の報酬、賞与その他の職務の執行の対価として会社から受ける財産上の利益(「報酬等」と定義します)については、定款に定めがなければ、株主総会の決議によって定めなければなりません(会社法361条1項)。
社長が好き勝手に決めることはできません。

取締役自身に、自己に対する報酬を決定する権限を与えると、取締役同士の馴れ合いにより、不当に報酬額が吊り上げられる危険、すなわちお手盛りの危険が生じます。

そこで会社法、お手盛りの危険を防止し、株主の利益を保護するために、役員報酬の決定等について、定款又は株主総会の決議を要求しているのです。

実務では、「役員報酬変更が大変である」といった理由等から、定款によって報酬等の内容について定めている例は少ないです。また、株主総会決議についても、後述のように役員報酬の総額の最高限度額を定めて、各取締役への配分は取締役会の決議に一任することが多いです。

取締役報酬の決定を取締役会に委任する方法

株主総会の決議によって取締役の報酬等について定めるにあたり、取締役報酬の総額の上限のみを定めることも可能です。この場合には、個別の取締役への配分を取締役会に一任することになります。

このように、報酬総額の最高限度(たとえば、年間10億円を上限とする)のみを定め、その枠内で、取締役の個人別の報酬額の決定を取締役会(取締役会非設置会社では、取締役の過半数による決定)に一任する方法(以下「総額枠方式」といいます)について、判例は、お手盛りの危険防止という法の趣旨と取締役のプライバシー(自己の報酬額に関するプライバシー)に配慮したものであるとして適法として解しています(最判昭和39・12・11民集18巻10号2143頁,最判昭和60・3・26判時1159号150頁)。

さらに判例は、株主総会で取締役の個別の報酬額の決定を一任された取締役会はその決定を特定の取締役(実務では代表取締役になることが多いです)に再一任することも適法であるとしています(最判昭和31・10・5集民23号409頁,最判昭和58・2・22判時1076号140頁)。

報酬の最高限度額に変更がない場合の株主総会決議の効力

一度総額枠方式を採用した場合には、限度額を変更しない限り、翌年以降についても改めての総会決議は必要ありません。

令和3年3月1日施行改正会社法

2021年3月施行の改正会社法では取締役の報酬等について改正されました。

①改正の趣旨
取締役の報酬等については、上記で説明したお手盛りの弊害を防止する他にも、取締役が適切に職務を執行するインセンティブを付与するための手段として重要な事項であり、企業統治を充実させる観点から決定過程の透明性・公正性を確保する要請が高いといえます。

この観点からも、東京証券取引所制定のコーポレートガバナンス・コード(令和3年6月11日)原則3-1 では、上場会社は、取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続について開示し、主体的な情報発信を行うべきとされています。
また、上記コーポレートガバナンス・コード原則4-2においては、経営陣の報酬について、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきであるとされています。

このように、コーポレートガバナンス・コードは経営陣の報酬をインセンティブ付けの手段と捉えた上で、報酬決定に当たっての方針・手続の開示を重視しています。

このような背景の下、令和2年3月1日施行の改正会社法では、取締役の報酬等に関する規律に関して、「一定の範囲の株式会社に対する報酬等の決定方針の決定の義務付け」、「株式報酬等に関する制度整備」、「報酬に関する情報開示の充実」といった改正が行われました。

②報酬等の決定方針の決定の義務付け
改正会社法361条7項は、一定の会社に対して、「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針」(以下「報酬等の決定方針」といいます。)を決定することを求めています。
この報酬等の決定方針として決定しなければならない事項は、具体的には改正法施行規則98条の5に定められており、取締役の個人別の報酬等についての額またはその算定方法の決定に関する方針のほか、業績連動報酬等や非金銭報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針、報酬の種類ごとの割合の決定に関する方針などが含まれます。

報酬等の決定方針を定めることが義務付けられるのは、株式会社のうち、
①監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの(改正法361条7項1号)
と、
②監査等委員会設置会社(改正法361条7項2号)
に限定されています。

~監査等委員会設置会社については、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の特徴と違い【IPOとコーポレートガバナンス2】の記事をご参照ください~

この範囲の株式会社が対象とされているのは、社外取締役を置かなければならないとされており(改正法327条の2、331条6項)、取締役の報酬等の内容の決定手続においても、社外取締役の関与を強めることが必要であるからです。
また、報酬等の決定方針は、取締役会が決定するものとされており(改正法361条7項)、取締役会はその決定を取締役に委任することはできず、常に取締役会によって決定しなくてはならないと解されています。

なお、会社法上、取締役の報酬等に関する議案が株主総会に提出された場合に、取締役が報酬等の決定方針について説明をする義務は定められていません。 もっとも、取締役が報酬等について議案を株主総会に提出した場合において、当該議案の可決後、取締役会等が報酬等の決定方針を決定し、または変更することが想定されるような場合には、当該報酬等の決定方針の内容は、株主が当該議案についての賛否を決定する上で重要な情報であり、また、当該議案の内容の合理性や相当性を基礎付けるものであると考えられます。
したがって、このような場合には、取締役は、株主総会において報酬等を相当とする理由を説明する際に、当該報酬等の決定方針の内容についても必要な説明をすることが求められると考えられます。

2021年3月1日施行の改正会社法では、取締役の報酬などに関する規律の見直しの外、取締役関係の改正事項としては、補償契約・役員等賠償責任保険契約に関する整備、社外取締役に関する整備が盛り込まれました。
直法律事務所では、ベンチャー企業から東証一部上場に至るまで、多数の法律顧問を務めており、会社法に関するご相談対応に多くの実績があります。
30分無料相談も承っておりますので、改正法対応を含めお気軽にお問い合わせください。

定款又は株主総会決議で定めるべき事項とは(会社法361条1項各号)

報酬等のうち額が確定しているもの(確定額報酬、会社法361条1項1号)

上記で説明した取締役全員の報酬総額を株主総会で決めるのではなく、個人別に報酬額を株主総会で決める場合で、月額100万円や年額1,000万円といったように、報酬等のうち額が確定しているもの(確定額報酬)については、その額を株主総会の決議で定めなければなりません。

報酬等のうち額が確定していないもの(不確定額報酬、会社法361条1項2号)

報酬等のうち額が確定していないもの(不確定額報酬)については、その具体的な算定方法を定めなければなりません。業績連動型報酬や株価連動型報酬など、一定の指標等に連動させる場合が該当します。

例えば、業績連動型であれば、当期利益の100分の1に相当する額というように、算定方法が定められることが必要です。

報酬等のうち金銭でないもの(非金銭報酬、会社法361条1項3号)

報酬等のうち金銭でないもの(非金銭報酬)については、その具体的な内容を定めなければなりません。

例えば、(無償や低賃料での)社宅の提供、業務執行の対価としての新株予約権の付与(いわゆるストック・オプション)などがこれに該当します。

総額枠方式の採用の可否

確定額報酬の場合に限らず、不確定額報酬や非金銭報酬の場合であっても総額枠方式で報酬額を定めることができます。

なお、不確定額報酬や非金銭報酬の場合には、不適切な運用による危険が生じないよう、各事項を新設・改定する際には、議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければなりません(会社法361条4項)。

規制の対象となる報酬等

報酬等の判断基準とは

取締役の「報酬等」として会社法361条1項の規制の対象となるかどうかは、取締役が会社から得た利益が、

  • ①職務執行の対価として提供されていること、
  • ②財産上の利益であること、
  • ③会社から出捐されていること

を基準にして決定されます。

したがって、職務執行の対価ではない、交通費、日当、交際費等の実費支給の性質を有するものは報酬等にあたりません。

以下では、具体的にどのようなものが「報酬等」として扱われるのかを確認します。

年額報酬、月額報酬

年額報酬や月額報酬は、「報酬等」に該当します。

年額報酬を定める場合には、始期を明示せずに単に「年額〇〇円」と定めると期間が不明確になります。そこで、「年額(1事業年度当たりの金額)〇〇円」などと明記することが望ましいといえます。

役員賞与

役員賞与も「報酬等」に該当します。

業績連動型報酬

業績連動型報酬も不確定額報酬として、「報酬等」に該当します。

退職慰労金

退職慰労金は、在職中の職務の対価と認められる限り報酬等に該当します。したがって、定款又は株主総会の決議で定める必要があります(最判昭和39・12・11民集18巻10号2143頁)。

もっとも、株主総会においては、単に、一定の支給基準(役員退職慰労金規程など)に従って退職慰労金を支給するものとし、具体的な金額、支給期日及び支給方法は取締役会(非取締役会設置会社では、取締役の過半数)の決定に一任する旨の決議をすることも可能です。

これは、株主総会で退職慰労金の額(またはその上限)を決めるものとすると、退職する取締役に支払われる額が事実上明らかになってしまう不都合に配慮したものです。

判例も、①当該会社の取締役会規則(内規)や慣行によって合理性を有する一定の支給基準が確立していること、②当該基準が株主にも知り得るものになっていることを条件にして、適法としています(前掲最判昭和39・12・11,最判昭和48・11・26判時722号94頁)。

手続としては、株主総会での議案が一定の基準に従い取締役の退職慰労金を決定することを取締役会に一任するものであるときは、議決権行使のための株主総会参考書類(会社法298条1項3号,301条1項参照)に当該一定の基準を記載しなければなりません(会社法施行規則82条2項本文)。

しかし、当該基準を記載した書面もしくは電磁的記録を本店に備え置いて株主の閲覧に供することで株主総会参考書類への記載を省略できます(会社法施行規則82条2項ただし書)。

退職慰労金支給議案例
第〇号議案 退職取締役に対する慰労金支給議案
本総会の終結の時をもって任期満了退任いたします取締役〇〇氏に対し退職慰労金を、在任中の功労に報いるため、当社所定の基準に従い相当額の範囲内において贈呈いたしたいと存じます。
なお、その具体的な金額、贈呈の時期、方法等は取締役会にご一任願いたいと存じます。
その対象者の略歴は次の通りであります。
氏名略歴
〇〇令和〇年〇月 当社取締役(現在に至る)

使用人兼務取締役の使用人給与部分

取締役が使用人(従業員)を兼務している場合には、当該取締役は取締役の報酬と使用人としての給与を受け取ります。

前者が報酬として規制の対象になることは当然ですが、後者については使用人としての職務の対価であるから、報酬等には該当しません。

しかしながら、使用人給与分が当然に報酬等に含まれないとすると、取締役同士の馴れ合いにより、使用人給与分を恣意的に増額する形でのお手盛りの危険が生じます。

そこで判例は、①使用人として受ける給与の体系が明確に確立している場合には、②株主総会において、別に使用人として給与を受けることを予定しつつ、取締役報酬のみを決議することは許されるとしています(最判昭和60・3・26判時1159号150頁)

そこで、株主総会では報酬等には使用人給与分が含まれないことを明示したうえで、取締役の報酬等の決議を行うべきです。

使用人兼務取締役を含む役員報酬改定議案例
第〇号議案 取締役の報酬額改定の件
現在の取締役の報酬額は、令和〇年〇月〇日開催の第〇期定時株主総会において年額(1事業年度当たりの金額)〇億円以内とご承認いただき、今日に至っておりますが、その後の当社の業績向上および経済情勢の変化等諸般の事情を考慮いたしまして、取締役の報酬額を年額□億円以内と改定させていただきたいと存じます。
なお、取締役の報酬額には、従来どおり使用人兼務取締役の使用人分の給与は含まれないといたしたいと存じます。
また、現在の取締役は〇名です。

ストックオプション

ストック・オプションとは、株式会社の取締役等に、インセンティブ報酬の趣旨で、あらかじめ定められた期間内に、あらかじめ定められた価額を払い込むことにより、会社から一定数の株式を取得できる新株予約権を付与することをいいます。

そして、通常、ストック・オプション自体の価格は、その付与時に公正な価格を算定することが可能とされているため、ストック・オプションの付与は確定額報酬かつ非金銭報酬として、会社法に定めのある「報酬等」に該当します

従って、定款の定めがなければ、その額または算定方法および具体的内容を、株主総会の普通決議により定める必要があります(会社法361条1項)。

もっとも、すでに総額枠方式が採用されている場合に株主総会で承認されている上限額の範囲内でストック・オプションを付与する場合(算定される付与時の公正な価格で判断する)には、その具体的内容のみを追加で定めれば足りると考えられます。

また、ストック・オプションの付与は新株予約権の発行規制も受けます。
そのため、非公開会社(会社法2条5号)である場合や、公開会社であっても有利発行に該当する場合には、株主総会の特別決議により、ストック・オプションとして付与される新株予約権の募集事項を定めるか、募集事項の決定を取締役(会)に委任する必要があります(会社法238条1項2項、239条1項、240条1項、309条2項6号)。

取締役に対してストック・オプションを付与する場合、報酬等に関する決議と新株予約権発行に関する決議は、別々に行うことも併せて行うことも可能です。
取締役に対してストック・オプションを付与する場合は、通常は有利発行に当たらないものと考えられていますので、有利発行としての特別決議は不要であり、普通決議で足ります。

また、あらかじめ株主総会でストック・オプションの数の上限を決議しておき、具体的な発行は取締役会に委任しているようなケース(会社法238条2項,239条1項,309条2項6号)においても、取締役に対するストック・オプションの付与が報酬に該当するために報酬決議との関係で株主総会も必要だったということも考えられるので、注意が必要です。

令和3年3月1日施行改正会社法

前述のとおり、取締役に対する適切なインセンティブ付けの観点から、株式報酬の活用が広まっています。
令和2年3月1日の改正会社法以前は、金銭でないものを取締役の報酬等として付与しようとする場合、定款または株主総会の決議によりその「具体的な内容」を定めなければならないとされていましたが、「具体的な内容」としてどのような事項を特定する必要があるか不明確でした。

そこで、改正法では、株主が希釈化等の影響や報酬等としての合理性を判断することができるよう、株式会社が取締役の報酬等として当該株式会社の株式を付与しようとする場合には、定款または株主総会の決議により、当該株式の数の上限等を定めなければならないとされました(改正法361条1項3号)。

また、改正法では、株式会社がより円滑に株式を報酬等として取締役に付与することができるようにするため、上場会社が取締役の報酬等として株式の発行または自己株を処分する場合には、募集株式と引換えにする金銭の払込み等を要さず、有利発行規制も適用されないとされています(改正法202条の2)。

これらの改正により、取締役に直接株式を付与する形での株式報酬を、従前よりも法的安定性の高いものとして実施することが可能となりました。

定款又は株主総会の定めがない場合の報酬請求権

報酬等について定款又は株主総会で定めなかった場合は、取締役は報酬等を受ける権利を有しません(最判昭和56・5・11判時1009号124頁)。

そのため、定款又は株主総会で定めていないにもかかわらず、取締役の側から会社に対して支払いを求めることはできず、報酬を受けた場合には会社に返還(または報酬相当額の損害賠償)をしなければなりません(最判平成15・2・21金法1681号31頁)。

ただし、報酬等について株主に決定させることで株主の利益を保護するという目的に鑑みて、報酬等の支給について株主全員の同意がある場合(前掲最判平成15・2・21)や後に株主総会で追認がなされた場合(最判平成17・2・15判時1890号143頁)には、当該支給は適法・有効なものとなると解されます。

さらに、無効な報酬の返還請求が信義則に反し、権利濫用として許されない場合もあります(最判平成21・12・18判時2068号151頁)。

取締役の報酬請求権と報酬等の減額

取締役の報酬請求権

取締役が報酬請求権を取得するのは定款又は株主総会の決議(総額枠方式を採用した場合の取締役会の決議も含む)により、具体的に定められたときです。

報酬等の減額

取締役の報酬等が具体的に株主総会決議などによって具体的に定められた場合には、その報酬額は会社と取締役間の契約内容となります。

そのため、契約内容となった後では、株主総会の決議によっても任期中に取締役の同意なく当該報酬を不支給または減額することは原則として許されません(最判平成4・12・18民集46巻9号尾3006頁)。

判例は取締役の職務に著しい変更があったとしても同様であるとしています。

報酬等の開示

公開会社では、取締役の報酬等は、事業報告による開示をする必要があります(会社法435条2項,会社法施行規則119条2号,121条4号~6号)。
個人別の報酬額の開示義務はありませんが、取締役、監査役といった役職ごとにその総額を員数と共に開示しなければなりません(会社法施行規則121条4号イ)。

役員報酬の開示記載例
当該事業年度にかかる取締役の報酬等の総額
 取締役 〇人 〇〇万円

他方、非公開会社では報酬等の開示について明文の規制はありません。
しかし、計算書類にかかる付属明細書の販売費および一般管理費の明細(会社計算規則117条3号)の中で役員報酬総額の開示が必要となる可能性があります。

令和2年3月1日施行改正会社法

取締役の報酬等の内容の決定手続等に関する透明性を向上させる観点から、会社役員の報酬等に関する事項について、公開会社における事業報告による情報開示に関する規定の充実が図られました。

具体的には、報酬等の決定方針に関する事項、業績連動報酬等に関する事項、株式報酬その他の非金銭報酬等に関する事項、取締役の個人別の報酬等の決定の委任に関する事項等が公開会社の事業報告の内容に加えられています(改正法施行規則121条4号、 5号の2~6号の3)。

今般の会社法の改正以前から、上場会社等については、有価証券報告書において役員報酬に関する一定の事項の開示が求められていましたが、、事業報告における情報開示が充実することにより、役員報酬の透明性がいっそう高まり、企業統治の向上につながることが期待されています。

取締役の報酬請求権と報酬等の減額

取締役報酬を決定する株主総会決議

総額枠方式を採用する場合で、取締役の報酬等を決定する株主総会決議の議事録の記載例は以下の通りです。

なお、使用人兼務取締役の使用人給与分が含まれないことを明示するべきであることは3-6の通りです。

記載例
第〇号議案 役員報酬に関する件
議長は、取締役全員の報酬総額については、使用人兼務役員の使用人分の報酬を含めず、年額(1事業年度当たりの金額)金〇〇万円以内とし、その配分方法は取締役会決議に一任したい旨を述べ、その理由を説明し、その賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれに賛成した。

役員報酬を改定する株主総会決議

総枠額方式を採用した場合に既存の報酬等の総額を改定する場合の株主総会決議の議事録の記載例は以下の通りです。

記載例
第1号議案 取締役報酬額改定の件
議長より、令和○年〇月〇日の当社株主総会において、取締役に対する報酬額は年額(1事業年度当たりの金額)○○○○万円と決議されたが、当社の業績向上および経済情勢の変化等諸般の事情を考慮して、取締役の報酬額を年額〇万円以内に改定したい旨、並びに取締役の報酬額には使用人兼務取締役の使用人分給与を含まないものとしたい旨が説明された。
続いて、議長より、本議案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり承認可決された。

役員賞与を支給する株主総会決議

総枠額方式を採用した場合の役員賞与の支給を決議する株主総会議事録の記載例は以下の通りです。

記載例
第〇号議案 役員賞与支給の件
議長より、当期の業績等を勘案して、当期末時点の取締役〇名に対し役員賞与総額〇万円を支給したい旨、並びに各取締役に対する支給額は取締役会の決定に一任したい旨が説明された。
続いて、議長より、本議案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり承認可決された。

退職慰労金を支給する株主総会決議

退職慰労金の支給を決議する株主総会議事録の記載例は以下の通りです。
総額枠方式ではなく、一定の基準に従う旨を定めて取締役に一任する点に特殊性があるのは、3-5で述べました。

記載例
第〇号議案 退任取締役に対する退職慰労金支給の件
議長より、本株主総会の終結をもって、取締役Aが退任するため、その在任中の功労に報いるため、役員退職慰労金規程に従い、相当な範囲で退職慰労金を支給することとしたい旨、並びにその具体的な支払額、支払時期、支払方法等は、役員退職慰労金規程に従い妥当な範囲内で、取締役Aについては当社取締役会に一任したい旨が説明された。
続いて、議長より、本議案の賛否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり承認可決された。

監査役の報酬等の決定

以上は取締役の報酬等についての説明でしたが、監査役の報酬についても少し説明します。

監査役の報酬等の額は、定款又は株主総会の決議によって定めます(会社法387条1項)。
監査役が二人以上いる場合において、株主総会の決議で上限が定められている場合には、定められた報酬等の範囲内で監査役は協議によって具体的な額を定めることも可能です(会社法387条2項)。

監査役は取締役の監査がその職務です。そのため、監査役の報酬についても取締役会に一任するとカバナンスが機能しなくなる恐れがあります。

したがって、取締役の報酬とは別個に監査役に一任しなければならない点で注意が必要です。

令和3年3月1日施行の改正会社法では、取締役の報酬などに関する規律の見直しの外、取締役関係の改正事項としては、補償契約・役員等賠償責任保険契約に関する整備、社外取締役に関する整備が盛り込まれました。

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