澤田直彦
監修弁護士 : 澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、「優先株式と普通株式の違いとは?スタートアップ資金調達の必須知識」について、詳しくご説明します。
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スタートアップの資金調達では、優先株式と普通株式の違いを理解し、どちらが自社にとって正しい資金調達手段となるのか判断する必要があります。
この記事では、優先株式での資金調達やストックオプションを検討している創業者の方向けに、優先株式の基本的な仕組・弁護士に相談すべきテーマなどについて、正しく理解できるように基礎知識をできるだけわかりやすく解説していきます。
一目でわかる優先株式と普通株式の違い

まず、会社設立時に創業経営者に対し発行される株式は、通常、「普通株式」といわれる株式です。会社が発行する原則の株式で、どの株式も一株毎の内容や権利内容は同じです。例えば、どの株式も均等に配当がされ、原則として1株あたり1つの議決権があります。
これに対し、株式ごとに特別の内容や権利を定めた株式を「種類株式」といいます。権利内容を柔軟に設計できる株式というイメージを持つとわかりやすいでしょう。会社法では9つの項目について異なる設計にすることが可能です。この種類株式の中で、普通株式よりも何らかの優先的な価値や権利がある株式を一般に「優先株式」あるいは「優先株」と呼びます。
スタートアップ企業が資金調達する方法の一つとして、株式の発行がありますが、多くの株式を発行すると創業者株主等の持ち株比率が低くなってしまいます。そこで、目的とする資金額を調達するために、できる限り1株当たりの金額を高める必要があります。1株当たりお金額を高めるための手段として、優先株式を活用することが増えています。
法的性質 ・ 権利内容 ・ 実務上の位置づけの比較
投資・資金調達の際、優先株式が活用されることが増えています。そこで、一般的な優先株式と普通株式の違いを比較表を用いて解説します。
優先株式は、主に投資家などが保有者となるため、剰余金の配当や会社清算時の分配など経済的なメリットを重点的に受けられるように設計されることが多いです。
また、株主総会など会社の経営や意思決定に関心を持たない株主が多いことが予想できるため、議決権などについては大きく制限されているか、議決権をなしと設定しているのが一般的です。
| 比較項目 | 優先株式 | 普通株式 |
|---|---|---|
| 経済的権利 | 優先される (配当や会社清算時の分配を先に受けられる) |
劣後する (優先株への分配後に残りがあれば受けられる) |
| 議決権 | 制限される場合がある (設計により議決権なしとすることも可能) |
原則あり (株主総会での決議に参加できる) |
| 株価 (評価額) |
高い (有利な条件が付くため高い評価額がつく) |
低い (優先権がない分、相対的に安く評価される) |
| 主な保有者 | 投資家 (VCなどの外部出資者) |
創業者 ・ 従業員 (経営陣やストックオプション保有者) |
| 主な役割 | 投資家のリスク保護 (ダウンサイドリスクへの備え) |
経営権の維持 ・ 人材確保 (インセンティブとしての活用) |
優先株式と普通株式の法的な定義と仕組み

日本では、会社法によって権利内容の異なる「種類株式」を発行することが認められています。
会社法では、普通株式と異なる内容を定めることが出来る事項を9項目にわたり認めています。そのうち、優先配当や優先残余財産分配など、標準的な権利を持つ普通株式よりも優越的な条件が設定された種類株式を「優先株式」と呼んでいます。
なお、優先株式や優先株という言葉は法律上の正式な用語ではなく、あくまで実務上一般的に用いられている呼称です。
権利内容を自由にカスタマイズできる種類株式の特徴
種類株式制度では、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権などについて、定款で普通株式とは異なる内容を定めることができます。
会社法108条は、以下の9つの項目を定めており、各項目を単独または組み合わせて設計することが可能です。この仕組みを利用して、投資家にとって有利な条件を付した株式が、実務上優先株式と呼ばれています。
- 剰余金の配当
配当金の額や支払われる順序について、普通株式と異なる条件を設定できる。 - 残余財産の分配
会社解散時に残った財産を分配する際、その額や順序を差別化できる。 - 議決権の制限
株主総会において決議に参加できる事項を制限したり、議決権をなくしたりできる。 - 譲渡制限
株式を他者に譲渡する際に、会社の承認を必要とするよう制限をかけられる。 - 取得請求権
株主側の請求によって、会社に株式を買い取らせたり、別の種類の株式(普通株など)に交換させたりできる。 - 取得条項
一定の条件が発生した場合に、会社側が強制的にその株式を買い取る(または交換する)ことができる。 - 全部取得条項
株主総会の決議を経ることを条件に、会社がその種類の株式すべてを回収できる。 - 拒否権
重要事項の決定において、株主総会や取締役会の決議だけでなく、この種類株主の同意も必要とさせることができる。 - 役員選任権
この種類株主だけで構成される会議(種類株主総会)において、取締役や監査役を選任できる。
9つの設定項目に基づいた優先株式の定義
前述の9つの設定項目のうち、特に剰余金の配当や残余財産の分配について、普通株式よりも優先的に設定されている株式を「優先株式」といいます
もっとも、経済的価値を優先させる一方で、議決権の制限などを設けることで経営への関与を限定する設計も可能です。
なお、これらの9つの設定項目以外の内容を独自に設定することは法的に認められていません(限定列挙)。しかし、各項目の組み合わせや設計次第で、多様な権利を作成することは可能となっています。
日本と米国における資金調達手法の変遷

現在では、スタートアップの資金調達として優先株式を用いることは、日本でも米国でも一般的な手法となりました。
米国ではベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資が盛んになったころから優先株式を積極的に用いてきました。他方、日本では2010年頃まで普通株式による資金調達が中心でした。
しかし、種類株式制度が法的に整ったことや投資実務のグローバル化が進んだことで、近年では日本でも急速に優先株式の利用が広がっています。
株主平等の原則により普通株式が中心だった日本の経緯
日本では2010年頃まで、普通株式による投資・資金調達が一般的でした。株主間で株式によって権利内容に差をつけることが、株主平等の原則に反するのではないかという配慮から、なかなか優先株式の利用が浸透せず、慎重な姿勢が取られ続けていました。
しかし、旧商法において発行可能な範囲や条件が厳格であった種類株が、2001年の商法改正により条件等が緩和さるなど法的整備が進み、会社法(2006年5月1日施行)により種類株式の発行が広く認められるようになりました。これを契機として、日本でも米国の投資実務モデルを導入し、優先株式による資金調達が標準となりつつあります。
現在でも株式の内容に差がつくことについては議論が続いており、完全に収束しているわけではありません。しかし、少なくともかつてのような普通株式での資金調達に固執するような動きは落ち着き、実務環境は米国の影響を受け、大きく変化しています。
ベンチャー投資の初期から優先株式が定着していた米国の背景
米国では、ベンチャーキャピタルによる投資が盛んになった初期段階から、優先株式を利用した資金調達が積極的に行われています。
現在、米国では外部投資家が普通株式で出資するケースはほぼなくなりました。日本でもシリーズA以降のラウンドでは優先株式の利用が圧倒的多数であり、普通株式を用いることは少なくなりました。
日米のスタートアップ投資実務において、優先株式による資金調達が事実上のスタンダードとなっています。
資金調達で優先株式を活用する2つの大きなメリット

資金調達において、優先株式が普通株式よりも選ばれるのには理由があります。一つは「創業者側にとってバリエーションをあげることができること」、そしてもう一つは「投資家側にとってセーフティネットの役割を果たすこと」です。
創業者と投資家、両者の利害は必ずしも一致しているわけではありませんが、優先株式という仕組みは双方にとって納得できる着地点として機能しているのです。
ここでは、創業者と投資家側のそれぞれの立場から見た具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。
バリュエーションを高めて希釈化を抑制できる創業者のメリット
創業者にとって、高いバリュエーション(企業価値や株価)で資金調達を行うことは極めて重要な要素です。株価が高い状態であれば、同じ金額の資金を調達する場合でも発行株式数を少なく抑えられるため、創業者の持株比率を低くする(希釈化)ことなく、経営権を維持できるのです。
例として、発行済株式数が1万枚の会社が1億円を調達するケースで考えてみましょう。
株価を1万円とした場合には1万株発行する必要があり、創業者の持株比率は50%程度まで低下する可能性があります。一方で、株価が10万円だった場合には、発行株式数は1,000株だけで足り、持株比率は90%超を維持できます。このように株価の違いは、創業者の持株比率を大きく上下します。
剰余金の配当や残余財産の分配などにおいて優先する設定をした優先株式は、高いバリュエーションを正当化しやすく、結果として希釈化を抑えながら、経営権や支配権の維持に大きく貢献できるのです。
リスクテイクに対する保護を確保できる投資家のメリット
高いバリュエーションでの投資は、投資家にとって大きなリスクを伴います。事業が不振となり、次回以降の資金調達で評価額が下がった場合には、出資比率が希釈されてしまうため、高いバリュエーションで出資する対価として、セーフティネットが必要となってきます。
具体的なものとしては、「後日バリュエーションが下がった場合の希釈化防止の仕組み(取得請求権)」と「M&A時における優先的な投資回収(優先残余財産分配)」の2つが挙げられます。この2つの仕組みにより、投資家はリスクを抑えつつ出資が可能となり、スタートアップへのリスクマネーの循環が促進されるのです。
ストックオプションの発行時に期待できる効果

優先株式と普通株式を使い分けることは、株主だけでなく、従業員向けのストックオプション(新株予約権)の設計にも重要な意味を持ちます。
スタートアップにおいては、ストックオプションを活用して優秀な人材を採用するケースが一般的です。優先株式は有利な設定が付されている分、株価も高く評価されています。裏を返せば、普通株式の株価は相対的に低く設定されているということです。
この評価構造の違いは、ストックオプションの行使価格の設定に直接影響します。その結果、将来的な上場やM&Aの局面において従業員に大きな経済的メリットをもたらす可能性があります。
もっとも、こうした効果を適切に引き出すためには、優先株式の設計内容とストックオプション制度を一体として検討することが重要です。
優先株式の設計が普通株式評価に与える影響
投資家へのプロテクション(優先権)が働くことで、優先株式の評価額が高くてもそのバリュエーションは正当化されるのですが、その一方でなぜ普通株式の評価額が低く抑えられるのか、そのロジックを解説します。
投資家に発行される優先株式は、取得請求権や残余財産の分配についての優先が設定されることで、投資家が高いバリュエーションで投資を行うというリスクについてのセーフティネットとして機能します。そのため、優先株式の評価額は高いものとなります。他方、普通株式はそのような優先権がない分、リスクを多く引き受けているということとなり、その分相対的に評価額が低くなります。
ストックオプションでは、行使価格は原則として普通株式の評価額が基準となります。優先株式を発行すると、相対的に普通株式の評価が低くなっているため、行使価格も低く設定できます。
したがって、将来的に上場やM&A時の評価額との差が大きくなっている場合には、従業員の経済的メリットが飛躍的に増大します。
優先株式を活用したストックオプション設計の実務動向
米国のスタートアップ実務では、優先株式による資金調達と、409Aという株式算定ルールによる普通株式の低い評価額を組み合わせてストックオプションを発行する手法が一般的に行われています。
近年では日本でも、優先株式による資金調達と普通株式でのストックオプション発行による実務上の運営も固まりつつあります。この効果を最大限に活用するためには、制度設計という初期段階から弁護士などの専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要です。
弁護士へ相談すべきタイミング

契約内容や制度設計を誤ったまま、自己判断で 進めるのは危険です。
実務において、以下の3点のような問題に直面した場合には、できるだけ早く弁護士へ相談するようにしましょう。
VCから優先株式の条件提示を受けている場合
VC(ベンチャーキャピタル)から優先株式での条件提示を受けている場合、その契約や条件の詳細を正確に把握する必要があります。
ここで重要なポイントとなるのは、「条件が自社にとって適切な内容であるか」「長期的に経済的または経営的にどのような影響を及ぼすのか」の2点です。
できれば交渉の前から、少なくとも契約前に、弁護士に相談して内容を精査してもらうようにしましょう。
希釈化や拒否権の影響が読めないまま契約しそうな場合
持株比率の希釈化や拒否権など、資金調達の段階では判断が難しいものの、将来的には大きな問題になりそうな部分について、その影響が読めないまま契約に進んでしまうケースです。
持株比率も拒否権も、いずれも会社の支配権や意思決定に大きく影響する非常に重要な部分であり、詳しい内容や制限については、慎重な判断が求められます。
このような場合も、できる限り交渉に入る段階、少なくとも契約前には弁護士に相談するようにしましょう。
ストックオプション制度の設計も検討している場合
資金調達だけではなく、従業員向けのストックオプション制度の設計も検討しているケースです。
イメージ通りのインセンティブ効果が期待できるかは、優先株式の権利内容や株式の評価方法などによって大きく左右されます。また、普通株式の評価額も関わってくるため、現時点では全く見通しが立たないということもあるでしょう。将来的な上場やM&Aを見据えた設計が重要となるほか、税務上の取り扱いという問題も出てきます。
将来全くストックオプションをするつもりがないという場合でない限り、弁護士から適切なアドバイスを受け、設計の全体像を整理しておきましょう。
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優先株式と普通株式に関して、実際によく寄せられる3つの質問についてQ&A形式で整理しました。
Q.優先株式は必ず発行しなければなりませんか?
優先株式の発行は任意であり、法的に必ず発行しなければならないものではありません。あくまでも合理的な資金調達手段の一つであり、普通株式のみで出資を募る・金融機関から借り入れを行う・クラウドファンディングなど様々な選択肢が考えられます。
もっとも、一度優先株式で資金を調達すると、その後の資金調達においても優先株式を前提とした設計が求められることが少なくなく、将来の資金調達の柔軟性に影響を及ぼす可能性もあります。そのため、実際に発行する際には、中長期的な資本政策を踏まえた慎重な検討が必要です。
Q.普通株式での資金調達にはどんなデメリットがありますか?
普通株式で資金調達を行う場合、投資家にとっては優先株式のような優先的な経済的保護が付されていないため、出資の判断が慎重になりやすく、高いバリュエーションを提示しにくいという側面があります。
その結果、調達額に対して発行株式数が相対的に多くなり、長期的には創業者の持株比率の希釈化や経営権の安定性に影響を及ぼす可能性があります。
また、会社清算時やM&A時の分配において優先株式が存在する場合には普通株式は劣後する立場となるため、投資家にとってのリスクヘッジ手段が限定的である点も留意すべきポイントです。
Q.優先株式の発行は上場審査に影響しますか?
優先株式が残存したままでも普通株式の上場自体は可能とされていますが、その内容や設計によっては審査に影響を及ぼす可能性があります。
実務上は、上場前に優先株式を普通株式へ転換するケースが多く見られます。そのため、「株式上場」を一定の取得事由として強制転換が可能となるよう、取得条項を適切に設計しておくことが重要です。
投資契約 ・ 資金調達に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで
優先株式と普通株式は、権利内容や実務上の位置づけが大きく異なっています。どちらを選択するかによって経営権やM&A、ストックオプション、投資家との関係性などについても大きな影響が生じます。
資金調達により自社を成功へ導くためには、制度への十分な理解と慎重な判断による資金調達計画が重要です。しかし、すべてを正確に把握し、常に最適な選択肢を選ぶのは容易ではありません。少しでも判断に迷う場合や想定外の条件提示を受けた場合には、できるだけ早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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