澤田直彦
監修弁護士 : 澤田直彦
弁護士法人 直法律事務所
代表弁護士
IPO弁護士として、ベンチャースタートアップ企業のIPO実績や社外役員経験等をもとに、永田町にて弁護士法人を設立・運営しています。
本記事では、「【不正調査の面接対応】企業法務が押さえるべき面接調査の進め方と実務上の注意点」について、詳しくご説明します。
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面接調査の基礎と準備
面接調査の目的と重要性
企業における不正調査では、証拠資料の収集と並んで「面接調査」が極めて重要な手段となります。面接調査は、当事者の供述や関係者の認識を通じて事実関係を把握し、記録と照合することで全体像の整合性を確認する役割を果たします。
また、被面接者の態度や発言内容から、信頼性や関与の有無、虚偽供述の可能性などを査定するうえでも、極めて実務的な意味を持ちます。
適切な面接は、不正の真相解明と社内処分・再発防止策の妥当性の根拠となり、場合によっては裁判での立証活動においても決定的な役割を担います。そのため、準備・実施・記録のいずれにおいても高い精度が求められます。
成功するための準備事項
面接調査は「事前準備の良し悪し」でその成否が決まるといっても過言ではありません。
主な準備事項としては、以下の点に留意する必要があります。
- 面接の目的の明確化
今回の面接で何を確認 ・ 把握したいのかを具体的に定めておく必要があります。
漠然とした目的では、質問の焦点が定まらず、情報の取りこぼしを招きます。 - 案件ファイルの再確認
面接対象者に関する資料 ・ 調査の進捗状況 ・ 他の証拠との関係を事前に精査し、質問の根拠を明確にしておきます。 - 面接人数とスケジュール管理
原則として1回の面接につき1名を対象とし、複数人を同席させることは避けます。
これは、同席者の反応が無意識に影響を及ぼす「証言バイアス」を防ぐためです。
面接対象の選定と順序
調査対象者が複数いる場合には、面接の順序も戦略的に決める必要があります。
一般的な方針としては、以下のような流れが推奨されます。
- 協力的な関係者から順に面接を行う
最初に情報を得やすい相手を面接することで、後続の面接対象に対する質問内容の精度が向上します。 - 中心人物 ・ 被疑者は後半に設定する
先に周囲の情報を集め、内容を裏付ける準備を整えたうえで臨む方が有効です。 - 一人ずつ面接を行う
被面接者同士の意見交換やすり合わせを防止し、記憶の独立性を確保するためにも、必ず個別に実施します。
質問設計と資料準備
質問は「尋問」ではなく、「情報収集を目的とした構造化された会話」と捉えるべきです。
質問設計および資料準備にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
- 質問内容はメモにとどめる
質問リストの完全な提示は避け、要点だけを整理し、面接中は自然な流れに沿って柔軟に展開します。 - 開いた質問を中心に設計する
「いつ」「なぜ」「どのように」といった自由回答型の質問により、事実を多面的に把握することが可能になります。 - 資料の提示方針を事前に決める
必要に応じて提示する資料は選別しておき、どのタイミングで、何を提示するかを計画しておきます。
提示のしすぎは被面接者の警戒心を高め、情報の開示を妨げる可能性があります。
面接場所と時期の選定
面接の成果は、「どこで・いつ行うか」によっても左右されます。
面接場所や実施時期の選定にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
- 場所はプライバシーと安心感の両立が必要
人目のない会議室など、落ち着いて話ができる環境が理想です。
被面接者の自宅や業務執務スペースなど、心理的に不安を感じる空間は避けます。 - 面接の時期はできる限り早く
記憶が鮮明なうちに行うことで、証言の信頼性が高まります。
ただし、他の調査結果や資料の入手状況も見極め、適切なタイミングを見計らう必要があります。
面接担当者の選定と心構え
面接担当者は、内容の専門性だけでなく、対人スキルや倫理観、冷静さが求められます。
面接担当者の選定および面接に臨む姿勢については、以下の点に留意する必要があります。
- 調査の全体像を把握した人物を選ぶ
質問の背景や目的を正しく理解している担当者が行うことが原則です。 - 被面接者に威圧感を与えない対応
立場や肩書の強調は避け、「聞き取り役」としての中立性と共感を意識する必要があります。 - 公平性と一貫性を保つこと
感情的にならず、記録を重視しながら丁寧な聞き取りを行うことが信頼性向上につながります。
面接調査実施時の実務上の注意点
不正調査における面接は、被面接者の証言や反応から真実を探る重要なプロセスです。しかし、面接の進め方次第では、調査自体の信頼性を損ない、逆に企業が法的責任を問われるリスクすらあります。
この章では、面接を安全かつ効果的に実施するための実務上の留意点を整理します。
法的リスクと欺瞞行為の限界
調査担当者が事実を引き出そうとするあまり、過度な誘導や心理的圧迫に至ってしまうと、「違法な尋問」とみなされるおそれがあります。
とりわけ注意すべきは、欺瞞行為(あえて真実を隠し、誤認させるような対応)です。
日本法上、民間調査で一定の欺瞞が許容される余地はあるものの、以下のような行為は法的・倫理的に問題があります。
- 無実の者に罪を認めさせるような誘導
- 刑事処分や秘密保持に関する虚偽の約束
- 金銭 ・ 昇進などの見返りを仄めかす発言
- 過度な威圧 ・ 長時間拘束 ・ 退室制限等による実質的な強要
これらは、後に訴訟等で「違法な調査手法」とされるリスクを高めるだけでなく、調査全体の信頼性も損ないます。事実の裏付けを得るためには、合法かつ倫理的に許容される範囲での対応が不可欠です。
面接時に避けるべき行為・発言
面接の場では、緊張や感情的な反応が生じやすいため、調査担当者には高度なコミュニケーションスキルと心理的配慮が求められます。
以下のような行為や発言は、被面接者との信頼関係を損ね、証言の質にも悪影響を与える可能性があるため、避けなければなりません。
- 不必要に威圧的な言動
「本当のことを言わないと後で困りますよ」などの発言は、脅迫的な印象を与えるだけでなく、証言の任意性を疑われる原因にもなります。 - 相手の発言を遮る ・ 嘲笑する
被面接者が話す内容を途中で遮ったり、感情的な反応を笑ったりすると、相手の協力意欲を著しく損ないます。 - 結論ありきの質問
「あなたがやったんですよね?」といった誘導的な問いかけは、調査の公平性を損ね、後の争点化の火種になります。 - 「守秘義務を約束する」といった安易な発言
面接内容は場合によっては社内報告や法的対応の材料になるため、絶対的な秘匿性を約束するのは危険です。
面接における同意取得と記録保持の重要性
面接の信頼性を担保し、後日の紛争リスクに備えるうえで、面接開始時の同意取得と記録の適正な保持は不可欠です。
同意取得の留意点
✓ 被面接者に、面接の目的(あくまで事実確認)と、協力が任意であることを明示する。
✓ 「録音」や「記録の利用範囲(社内報告など)」についても、あらかじめ簡潔に説明し、了承を得る。
✓ 暗黙の頷きではなく、口頭での明確な同意を確認する(録音を行う場合はその旨も含める)。
記録保持のポイント
✓ 面接ごとに独立した記録用紙を用意する(後で照会・提出が求められる場合のため)。
✓ 逐語録である必要はないが、重要な発言はできる限り正確に記録し、引用符を用いて区別する。
✓ 面接終了後には、記録内容に補足説明や観察メモ(主観を排除した事実ベースの記載)を加え、記憶が鮮明なうちに整理しておく。
面接は、証拠とならない単なる聞き取りではありません。適正な方法で実施し、記録を正しく管理することで、調査全体の信用性と法的安全性が担保されます。
効果的なコミュニケーション技法
不正調査における面接は、単なる「質問と回答のやり取り」ではなく、相手の信頼を得て、心理的な抵抗を緩和しながら情報を引き出す「戦略的なコミュニケーションの場」です。
この章では、面接を円滑かつ成果のあるものにするための基本的なコミュニケーション技法を整理します。
面接コミュニケーションの基本構造
面接は構造化された会話であり、以下の4つの要素で構成されます。
① ラポールの形成 (信頼関係の確立)
初対面の相手に心を開いてもらうためには、感情的な安心感と信頼感の構築が不可欠です。あいさつや世間話など、形式的な儀礼会話からスタートし、「敵ではない」という印象を与えることが第一歩となります。
② 目的の共有 (話題の明確化)
「何のために話を聞いているのか」を、被面接者にとって納得可能な範囲で伝える必要があります。あくまで確認や整理であり、責任追及や断定ではないというスタンスを示すことが重要です。
③ 情報収集 (自由な語りの促進)
相手の話に耳を傾けながら、共感的な反応を示し、発言を促すことが求められます。聞き取りは柔軟に、質問は自然な流れの中で行います。
④ 終結と再協力の確保
面接後も追加の情報提供や確認の連絡が必要となる場合があります。被面接者が再び協力してくれるよう、丁寧な感謝と前向きな雰囲気で締めくくることが大切です。
阻害要因と促進要因の理解
面接中、コミュニケーションがうまく進まない場面には、しばしば「心理的な障害」が関係しています。これを阻害要因といい、逆に、会話の進行を助ける要素を促進要因といいます。
主な阻害要因
▸ 時系列の混乱 : 出来事の順序を間違えて記憶している状態。記憶の曖昧さが原因となる。
▸ 推論による混乱 : 本当は見聞きしていないのに、自分の予測を事実のように語る現象。
▸ 警戒心 ・ 羞恥心 ・ 不信感 : 面接者に対する警戒や、自身の立場に対する羞恥心が、情報提供を妨げる。
主な促進要因
▸ 利他主義 : 「会社や社会のために」という動機は、誠実な供述を引き出す強力な力になります。
▸ 承認欲求 : 「自分の話を真剣に聞いてくれる」「評価されたい」という気持ちも供述促進に働きます。
▸ カタルシス : 自身の苦しかった経験を話すことで、心が軽くなる心理的効果。面接者の共感的態度が大切です。
▸ 外発的報酬 : 報酬や昇進などが間接的な動機となることもありますが、過度に期待させない配慮が必要です。
面接者はこれらの心理的要因を理解し、言葉選びや態度、質問順序に反映させることが求められます。
非言語的要素(パラ言語、ボディランゲージ、距離感など)
コミュニケーションの大部分は、実は「非言語情報」によって構成されています。
面接では、次のような非言語的要素が極めて重要になります。
パラ言語 (話し方の特徴)
声のトーン・速度・間合い・抑揚などが「感情」や「誠実さ」を表現します。
例えば、急に声が小さくなったり、言葉を選ぶようになったら「不都合な話題」である可能性があります。
ボディランゲージ (身振り ・ 手振り ・ 視線など)
▸ 信頼感を示す姿勢 : 背筋を伸ばして聞く。うなずきながら視線を合わせる。
▸ 警戒や動揺を示すサイン : 腕組み・貧乏ゆすり・顔を背ける・目を泳がせる
これらのサインを「嘘の証拠」と即断するのではなく、あくまで他の情報と照らし合わせて判断します。
距離感(近接学)
面接の座席配置や距離も、心理的安全性に大きく関わります。1.5〜2メートル程度の距離が目安です。
物理的な遮蔽物(机・書類など)を置きすぎると、相手との「心理的壁」を作ることになります。
身体的接触と文化差
握手や軽い肩へのタッチなどが信頼構築に有効な文化もありますが、慎重に判断する必要があります。
文化や個人の価値観によっては、不快や拒絶のサインとなる可能性もあるため、観察と配慮が必要です。
非言語的な情報は、しばしば言葉よりも雄弁に相手の本音を伝えてくれます。しかし、先入観で判断せず、あくまで全体の文脈の中で慎重に読み取る力が求められます。
情報収集の実務
面接における最大の目的は、被面接者から有効かつ信頼性の高い情報を収集することです。その実現には、適切な質問の技術と、相手の心理状態への柔軟な対応力が不可欠です。
この章では、調査現場で実践できる「質問構成」「展開順」「抵抗対応」「難しい相手へのアプローチ法」を解説します。
質問形式と構成 : 開いた質問 ・ 閉じた質問 ・ 誘導質問
面接調査における質問は、目的や文脈に応じて3つの形式を使い分けることが基本です。
開いた質問 (Open-ended Questions)
自由に語らせる形式のことです。
✓ 回答の幅が広く、相手の考えや記憶を深く探ることが可能です。
✓ 会話の導入や自由ナラティブ(後述)で有効です。
✓ 回答に含まれる言葉や感情を手がかりに、次の質問へつなげやすくなります。
閉じた質問 (Closed-ended Questions)
「はい/いいえ」や、選択肢で答えさせる形式のことです。
例2 : 「AとBのどちらの手順でしたか?」
✓ 事実確認や誤解のない再確認に有効です。
✓ 話題を絞りたい終盤フェーズでの使用が多いです。
✓ 乱用すると情報の広がりを制限してしまうため、使いどころに注意しましょう。
誘導質問 (Leading Questions)
ある回答を期待するような聞き方のことです。
✓ 確証のある事実について、肯定を引き出すときに有効です。
✓ 無実の相手に使うと、不適切な誘導・強要とみなされる恐れがあります。
✓ 使用は限定的に、慎重に行いましょう。
原則として、「開いた質問 → 閉じた質問 → 誘導質問」の順に構成するのが望ましいとされます。
面接における質問の展開順と自由ナラティブの活用
面接をスムーズに進め、相手の記憶や感情を自然に引き出すには、質問の順序設計も戦略的に行う必要があります。
展開順の基本パターンは、以下のとおりです。
- 全体から個別へ (「何があったか?」→「そのとき何をしたか?」)
- 既知から未知へ (「Aさんがこう話していましたが…」→「あなたはどうでしたか?」)
- 事実確認 → 推測 ・ 感想 → 感情の動きの順で掘り下げていく
自由ナラティブ (Free Narrative) の活用
自由ナラティブとは、相手に時系列で自由に語らせる手法です。
✓ 記憶の構造に沿って語らせることで、情報の正確性が高まりやすいです。
✓ 面接者の介入を最小限にすることで、虚偽の構成がしにくくなります。
✓ 逸脱した話題にも重要な手がかりが含まれる場合があるため、遮らず最後まで聞くことが重要です。
抵抗を示す対象者への対処法
被面接者の中には、何らかの理由で面接への協力を拒む、または回避的な態度を取る者もいます。
そうした「抵抗」の典型例と、その対応策は以下のとおりです。
「忙しい」 「時間がない」 と言う場合
実際には調査自体への不安や警戒が原因であることも多いです。
• 「10分だけで結構です」と具体的に時間を提示する
• 「いま、ここで確認しておくほうが誤解が避けられます」と面接の重要性を伝える
「覚えていない」 「何も知らない」 と言う場合
記憶があいまいな場合と、情報開示を避けている場合があります。
• 沈黙して考える時間を与える
• 「そのとき隣には誰がいましたか?」のような、より具体的な補助的質問に切り替える
扱いづらい相手への心理的アプローチ
一部の被面接者は、敵意や高圧的態度、または極端な無関心・情緒不安定といった「扱いにくさ」を持ち合わせています。そのような相手に対するアプローチは、対立ではなく心理的合気道のように、受け止めて流すことが基本です。
敵意を示す相手
• 否定せず、「なるほど」「そのように感じていらっしゃるのですね」と受容する
• 論点を誰が正しいかから何が起きたかへシフトする質問を投げかける
感情が不安定な相手
• 「もし〜だったとしたら」という仮定の質問に切り替えて、直接的な非難を避ける
• 面接者を2名体制にする(安心感と記録の客観性を担保)
議論をふっかけてくる相手
• 無理に説得せず、「その点については、また必要に応じてお伺いします」と一旦流す
• 質問を分割して、小さな肯定(はいと言いやすい流れ)を積み重ねていく
調査における面接は、情報を引き出す場であると同時に、「信頼を損ねない対応力」が問われる瞬間の連続です。強引さではなく、相手の心理と反応に寄り添った対話設計こそが、真実への最短ルートとなります。
面接の終結と評価
面接調査は、開始から終了まで一貫した流れで進められるべきプロセスです。とりわけ、面接の終盤での確認作業と、記録内容の評価は、後日の検証可能性や法的対応の基礎となる重要な工程です。
この章では、面接の終結場面で留意すべき実務対応と、得られた情報の信頼性をどのように査定するかについて解説します。
面接終盤での再確認と追加聴取
面接を終える前には、以下の2つの目的を意識して再確認を行います。
目的① 供述内容の理解に誤りがないかの確認
被面接者の発言を正しく把握しているかを確認することは、証言の信用性を維持するうえで不可欠です。ただし、質問の「復唱」ではなく、「要点の再提示」によって理解のすり合わせを行うのが実務上は効果的です。
被面接者の同意が得られた部分は、面接記録にもそのまま引用可能です。
目的② 新たな情報の引き出し
面接終盤では、相手の緊張がほぐれ、心を開きやすくなっているケースも多いため、以下のような質問で追加情報を引き出せる場合があります。
面接の「余白」で得られる情報が、調査全体の突破口となることも少なくありません。
例2 : 「この件について、他に詳しいことを知っていそうな方はいらっしゃいますか?」
終結時の対応と次回以降への連絡確保
調査の現場では、「1回限りで終わる面接」ばかりではありません。再確認や追加調査が必要になる可能性を見据え、次回の協力を得やすい終わり方を意識することが肝要です。
丁寧な感謝とフィードバックの要請
協力してくれたことへの感謝は、今後の協力関係の継続に直結します。 また、被面接者が面接に不満や不信を抱いていた場合、対応改善の手がかりとして面接そのものへの感想を軽く聞くのも有効です。
例2 : 「本日のような聞き取りの進め方で、ご不安に感じられた点などがあれば、ぜひ今後の参考にさせてください。」
連絡許可の明確化
再確認や追加質問のために連絡が必要になる可能性もあります。終結時には必ず次のような一言を添えます。この事前の了解があるかどうかで、再接触のしやすさは大きく変わります。
例2 : 「他の方のお話と照らし合わせて、念のため確認させていただくことがあるかもしれません。」
面接結果の評価と信頼性の査定方法
面接後には、得られた供述が調査全体にどの程度寄与するか、証言の信頼性が高いかどうかを評価する必要があります。
評価すべき観点
- 供述の一貫性
・ 面接中の発言が矛盾していないか
・ 質問を変えても同じ内容を再現できているか - 他の証拠との整合性
・ 書類やログ、また他の関係者の供述と照らし合わせて齟齬がないか - 発言時の態度 ・ 様子
・ 回答に詰まった場面はあったか
・ 特定の話題で急に態度が変化したか(非言語的兆候) - 動機と利害関係の有無
・ 話す内容によって自己の不利益を避けようとしていないか
・ 他人を庇っていないか
査定のまとめ方
面接直後に、以下のような形式でメモを残しておくと評価が客観的に保たれます。
・ 供述の一貫性 : 高 / 中 / 低 (理由 : ◯◯)
・ 他の証拠との整合性 : 整合あり / 部分的整合 / 不一致 (例 : ◯◯)
・ 態度変化や非言語的反応 : 特になし / △△で変化あり
・ 信頼性総合評価 : 高 / 要再検証 / 疑義あり
澤田直彦
このように整理しておくことで、調査報告書や内部会議でも面接内容を正確かつ説得力ある形で活用できます。
面接調査の締めをどう行うかは、その面接の価値を大きく左右します。「話を引き出す力」と同様に、「終わらせる力」も、法務・コンプライアンス担当者の重要な武器となるのです。
虚偽供述を見抜く査定技法
不正調査の面接では、被面接者が事実を隠したり、虚偽の供述をしたりする場面に直面することがあります。しかし、嘘を見抜くことは簡単ではありません。言葉の裏にある揺らぎや兆候を読み取るには、冷静な観察力と、心理的・言語的なパターンへの理解が必要です。
この章では、供述の信頼性を見極めるための「査定技法」について解説します。
言語的・非言語的な嘘の兆候
虚偽供述を示唆するサインは、大きく言語的兆候と非言語的兆候に分けられます。
非言語的な兆候 (表情 ・ しぐさ ・ 身体反応)
▸ 目を合わせない ・ 目を泳がせる : 視線が定まらず、落ち着かない様子を見せる。
▸ 手や顔を触る ・ 口元を隠す : 緊張や不安を感じているときに現れやすいセルフコンフォート動作。
▸ 姿勢の変化や貧乏ゆすり : 質問に対して身体を引いたり、揺らすなどの動きが出る。
▸ 声のトーンや話すスピードの変化 : 急に声が小さくなる ・ 語尾が不明瞭になる ・ 話し方がぎこちなくなる
▸ 過剰な汗 ・ 咳払い ・ 呼吸の乱れ : 身体的な緊張の表れとして注目すべき反応です。
言語的な兆候 (話し方 ・ 内容の傾向)
▸ 質問の繰り返しや回避 : 「え?もう一度言ってください」などの時間稼ぎ的応答が増える。
▸ 曖昧な表現が多くなる : 「たぶん」「おそらく」「よく覚えていない」など、核心を避ける語調に変化。
▸ 反論ではなく質問で返す : 「なんで私がそんなことをするんですか?」等
▸ 不自然な強調表現 : 「絶対にそんなことしてません!」「神に誓ってやってません!」等
▸ 細かい部分を強調し、全体の説明を避ける : 具体的な事実ではなく、印象で話をまとめる傾向があります。
澤田直彦
これらの兆候がある=嘘とは限りません。
兆候はあくまで「真偽の判断材料の一つ」であり、他の情報と照らし合わせて総合的に判断する必要があります。
ストレス反応と基準との対比
嘘をついている人は、程度の差はあれど心理的ストレスを感じています。そのストレスは、言動の変化として現れますが、それが嘘によるものかを判断するには、「基準(ベースライン)」との比較が重要です。
基準を設定する際の留意点
✓ 面接冒頭で、日常や無関係な質問を通じて、自然な反応パターンを把握する。
✓ 話す速さ・声の調子・視線・姿勢・しぐさ・表情の動き方などを観察する。
✓ 平常時の反応と重要な質問に対する反応の違いに注目する。
ストレス反応の現れ方による判定の例
| 基準での反応 | 特定質問での反応 | 想定される兆候 |
|---|---|---|
| 普段は視線をしっかり合わせる | 質問時に急にそらす | 不安 ・ 回避の可能性 |
| 落ち着いた口調で話す | 早口 ・ しどろもどろになる | 焦り ・ 緊張 |
| 手は机の上で静止している | 質問中に貧乏ゆすり ・ 髪を触る | 緊張 ・ 警戒心 |
嘘 ・ 否認への対応と矛盾検出
虚偽供述の可能性がある場合でも、正面から「嘘だ」と追及するのは逆効果です。調査の目的は対立ではなく真相解明であることを忘れてはいけません。
嘘や否認への効果的な対応法
- 否認のタイミングをコントロールする
「まずは私から説明させてください」と伝え、発言を先にさせないようにします。 - 矛盾をあえて指摘せず、後に伏線として回収する
相手が話し切るまで我慢し、最後に「先ほどこう仰っていましたが…」と矛盾点を静かに提示します。 - 逃げ道を与える質問を使う
「あなただけでなく他の方も関与していたと思いますか?」と認める方向に導く、もしくは共犯者の存在をにおわせて揺さぶります。 - 証拠や情報を段階的に提示する
一度にすべてを示さず、小出しにして反応を探ることで、嘘の再構成を防ぎます。 - 仮定質問の活用
「もし〜だったとしたら、なぜそのように感じたと思いますか?」のように直接的に責めず、話を引き出す有効な手段です。
澤田直彦
矛盾を見つけたとしても、面接の目的は「相手を追い詰めること」ではありません。
事実を浮き彫りにし、再発防止や法的対応に資する正確な情報を引き出すことこそ、本質です。
被疑者からの自白を得る技法
不正調査の過程で最も難しく、かつ成果が問われるのが「被疑者からの自白取得」です。しかし、違法な取り調べや過剰な圧力は逆効果であり、法的・倫理的リスクも伴います。
この章では、自白に至るための前提条件や、心理的誘導技法、自白に向けた論理構成を紹介します。
自白を得るための面接前提条件
自白を得るためには、「被疑者の心理的な壁を下げるための環境・関係性づくり」が不可欠です。
以下の条件を整えることが前提となります。
- 信頼関係の構築 (ラポール形成)
被疑者に「この人には話してもいいかもしれない」と思わせることが、事実開示への第一歩です。
頭ごなしの追及や高圧的な態度ではなく、相手の話を聞く姿勢と敬意をもって接する態度が信頼を生みます。 - 相手の不安 ・ 恐怖の緩和
多くの被疑者は、「発覚による処分」「家族・周囲への影響」などの不安を抱えています。
処分を示唆せず、事実確認の目的を強調することで、その心理的負担を軽減することが、口を開かせるカギとなります。
自白を促す心理的誘導
誘導といっても、強制的なものではなく、自発的に語りたくなる心理状態をつくるという意味です。
効果的な誘導には以下のようなアプローチがあります。
共感的傾聴 (エンパシー)
「誰にでも間違いはある」「背景にはやむを得ない事情があったのでは」といったスタンスで接すると、相手の罪悪感が薄まり、弁解や説明として語りやすくなります。
情報の提示と包囲感
既に把握している事実を断片的に示すことで、被疑者に「これ以上隠しても無駄だ」と思わせます。
黙っているより話した方が有利であることの演出
自白することで事態の収拾に向かう、あるいは評価の対象になり得る、という印象を与えます。
正当化の論理 (不公平 ・ 脱個人化 ・ 利他性など)
被疑者が自分の行為を自らの言葉で正当化できるようにすることが、自白に至る強力な誘因です。
よく使われる正当化の論理は以下のとおりです。
不公平の是正
「自分だけ評価されなかった」「同僚と比べて損をしていた」などの感情を肯定しつつ導く。
脱個人化(組織の責任への転嫁)
「皆がやっていた」「黙認されていた」という感覚は、個人の罪悪感を軽減します。
利他性の演出
会社や上司、家族を守るために行動したという構図を作ると、話すことが善意になります。
このような誘導によって、被疑者は「責められるのではなく、理解されている」と感じ、自白のハードルが下がります。
アリバイ崩しと選択式質問の活用
自白に至るもう一つの技法が、アリバイの破綻を促す質問の構成です。
アリバイ崩しの原則
- 質問は時系列に沿って丁寧に、具体的に。
- 曖昧な答えが出たら、証拠と突き合わせながら再確認。
- 相手が誤りを認めやすいよう、強調ではなく確認の形で進める。
選択式質問による行動範囲の限定
自由回答では逃げ道が多くなりますが、選択肢を提示することで答えを狭め、矛盾を生じさせやすくします。どちらに答えても一定の行為を認めたことになる構成です。
澤田直彦
被疑者からの自白を得るには、単なる追及ではなく、心理的誘導と論理構成の両面からのアプローチが必要です。
重要なのは、「自白させること」ではなく、「事実を語ってもらう環境を整えること」にあります。
そのためには、面接担当者の傾聴力、観察力、そして冷静な論理展開力が試される場面となります。
供述書の作成と署名取得
不正調査において、口頭で得た情報だけでは証拠価値が弱く、後日の紛争対応や懲戒処分、刑事告訴といった法的手続きに耐えられません。そのため、面接結果を文章化した「供述書」を作成し、本人の署名・押印をもって証拠化することが必要です。
この章では、供述書作成と署名取得の実務について解説します。
供述書作成の実務フロー
供述書作成の流れは、以下のとおりです。
- 面接後すぐに下書きを作成
面接終了後、記憶が鮮明なうちに面接記録(メモや録音)をもとに下書きを作成します。
可能であれば、面接中に同席した記録係と確認しながら進めます。 - 本人への確認・修正
対象者と一緒に文面を確認し、本人の言い分や表現への違和感があれば柔軟に修正します。
この段階で「言わされている感」を排除することが、後日の撤回リスクを減らすポイントです。 - 最終版への署名・押印取得
文面が確定したら、原本に署名・押印(または署名のみ)を求めます。
企業調査の場面では、録音・記名押印のいずれか一方のみでも足りることがありますが、署名の取得は必須です。 - 証人(立会人)を付ける
できれば、同席者または第三者による立会署名を付すことで、任意性・真実性を補強できます。
記載すべき内容と注意点
供述書には、以下の項目を過不足なく記載する必要があります。
2. 日付 ・ 氏名 ・ 所属 ・ 役職
3. 経緯の時系列記述
4. 事実認定された行為と本人の認識 ・ 理由 ・ 背景
5. 反省や今後の対応への意向 (必要に応じて)
6. 文末に本人の確認文言 「本書の記載内容に相違ありません」 と署名押印欄
記載する際の留意点
✓ 感情的・断定的な記述は避け、あくまで事実に限定し、「重大な背任行為である」「会社に損害を与えた」などの法的評価は記載しない。
✓ 誘導的な表現を避け、「〜させられた」「〜のために仕方なく」などの主観的・責任回避的表現には注意し、本人の真意を確認する。
✓ 自白誘導の疑念が生じる表現は避け、「〜と認めさせられた」「言われて記載した」等の供述が出る余地を与えないよう、十分に本人と合意形成を行う。
法的リスクを避けるための表現・証人の確保
供述書は、証拠能力を持つ文書として訴訟等で提出される可能性があるため、次の観点を重視する必要があります。
表現の留意点
✓ 事実と意見を分け、「◯月◯日に◯◯を持ち出した」「そのときは問題とは思っていなかった」などのように、事実と心情を明確に記載する。
✓ 曖昧な表現は避け、「たぶん」「おそらく」「気がする」では証拠価値が下がるため、「記憶が定かではないが」「記録にはないが当時の認識としては」といった形で記述を明確に区切る。
✓ 強要・誤導と取られかねない誘導文言を避け、「調査担当者から〜と言われた」などの文言については、必ず本人確認を取る。
立会人の確保と署名
面接に弁護士や第三者(外部監査人、法務部長等)を同席させると、供述内容の信用性を高められます。立会人には、面接経緯や署名時の状況も簡単にメモとして残してもらうとよいでしょう。
澤田直彦
供述書は、不正調査において「本人の自認に基づく核心証拠」として重い意味を持ちます。
しかし一方で、作成過程に問題があると、後日の撤回や裁判における無効主張の原因にもなり得ます。したがって、冷静な記録作成、十分な本人確認、適切な同席者の配置が成功のカギとなります。
供述書を「事後に活用できる証拠」とするためには、単なる文書作成にとどまらず、調査全体の一貫性と信頼性を見据えた運用が重要です。
セルフチェック : 面接調査の理解度テスト
不正調査においては、調査手法や法的知識を形式的に理解しているだけでは不十分です。実際の現場では、心理的抵抗・情報の錯綜・証拠性の担保など、繊細で複雑な判断を求められる場面が多々あります。
以下に、法務担当者としての判断力を確認できるセルフチェック問題を用意しました。調査における判断力とリスク感覚をチェックしてみましょう。
ケース① : 同意取得を怠った面接記録
Q : 法務部が、パワハラ疑惑に関して従業員Aへの面接を実施し、面接内容を詳細に記録したものの本人の同意確認書を取得しないまま、その内容を懲戒処分の根拠として用いた場合に生じ得るリスクとして、最も適切なものはどれでしょう?
a. 処分対象者のプライバシー侵害
b. 記録の信頼性に対する法的反論余地
c. 社内ガバナンス体制の評価低下
d. 上司による面接立会がなかったこと
A : b (記録の信頼性に対する法的反論余地)
本人の同意がないままの記録は、後日「任意の供述ではない」と主張され、証拠価値が否定されるリスクがあります。
ケース② : 供述書に 「違法行為」 と明記
Q : 調査担当者が作成した供述書に「私は背任行為を行いました」との記載があり、本人の署名も得られていたものの、後日、本人が「違法性を理解していなかった」として供述を撤回した場合、この供述書のリスクおよび調査実務上の適切な対応として正しいものはどれでしょう?
a. 「背任行為」という法的評価を本人の言葉として記載したのが不適切
b. 撤回されたとしても法的証拠力は自動的に維持される
c. 面接時の録音があるため、供述書がなくても補える
d. 自白があれば違法性の認識は問わない
A : a (「背任行為」という法的評価を本人の言葉として記載したのが不適切)
法的評価を本人の供述文に入れると「誘導された供述」と解釈される危険があります。あくまで「事実の記載」にとどめることが重要です。
不正調査に関するご相談は、東京都千代田区直法律事務所の弁護士まで
不正調査は「形式通りにやったからOK」ではなく、対象者の心理的反応・社内の風評・記録の残し方まで、あらゆる要素において実務的な地雷が潜んでいます。調査を主導する立場にある者ほど、細部に宿る落とし穴への感度が求められます。
本記事の内容を踏まえ、調査手法や法的知識を「理論」から「現場の判断」に昇華させていくことが、組織の信頼と調査の正当性を守る最善の道といえるでしょう。
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