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弁護士コラム
借地権の相続税評価額は?計算方法やトラブル対処法を弁護士が解説!
- 相続税・事業承継対策
- 投稿日:2024年11月29日 |
最終更新日:2024年12月02日
- Q
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先日、病死した父から借地権を相続したのですが、相続税は課税されるのでしょうか?
また、課税される場合はどのように評価されるのでしょうか?
- Answer
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一般的に借地権は一定の価格で取引されているため、相続税の課税上においては課税財産として扱われます。借地権の評価方法には様々な方法がありますが、多くは宅地の自用地価額に借地権割合を乗じることで計算されます。
ただし、借地権の評価は借地権の種類や土地の状況、地域などによって変わるため注意が必要です。また、地主とのトラブルを避けるためにも知っておくべき事項がありますので、ぜひ本記事を確認してみてください。
目次
借地権の基本と種類について
借地権の相続税評価額について確認する前に、改めて借地権の基本的な知識や種類についてチェックしましょう。評価額の計算に影響する部分ですので、あらかじめ把握しておくことが大切です。
借地権とは
借地権とは、建物を建てるために第三者から土地を借りて利用する権利を指します。一般的には、地主等から土地を借りて自宅を建築する事例が該当します。
相続においては、被相続人が保有していた借地権は相続税の課税資産となるため注意しましょう。また、借地権の種類には以下のようなものがあります。
- 1普通借地権
- 2一般定期借地権
- 3事業用定期借地権
- 4建物譲渡特約付借地権
- 5一次使用目的の借地権
種類によって相続税の評価額は異なりますので、相続する借地権がどの種類に該当するのか確認しておきましょう。なお、上記の③と④は②の定期借地権の一種ですので、相続税の計算においては②と同様の計算方法で評価額を算出します。
以下では、借地権の主な種類である普通借地権と定期借地権について説明していますので、概要や特徴を確認してみてください。
普通借地権
普通借地権は、地主から土地を長期間借りて、その上に建物を建てることができる権利です。主に住宅や店舗などの用途で利用されます。主な特徴としては、契約が30~50年の長期間で設定される点があり、契約終了の際には借地契約の更新が可能となっています。
基本的に地代は一定額を定期的に支払うケースが大半ですが、価格が変更される時もあります。譲渡や相続も可能ですが、地主の同意が必要な場合があるため注意しましょう。
なお、普通借地権のメリットとデメリットには以下のような点がありますので、参考にしてみてください。
<メリット> ・土地を購入する必要がないため、初期投資を抑えられる ・長期的に安定した土地利用が可能 <デメリット> ・土地の所有権がないため、土地価格の上昇の恩恵を受けられない ・地代増額請求権が法律上認められている ・契約更新や売却時に手数料が発生する場合がある |
定期借地権
定期借地権は、一定の期間(土地の貸借契約で明示された期間)だけ土地を借りる権利です。普通借地権とは異なり、当初定めた契約期間が満了になると更新はできませんので、借地契約終了とともに土地が地主に戻ります。
普通借地権の場合、正当な理由がなければ借地人(土地の借主)の契約更新の要求は拒否できません。しかし、定期借地権は原則として更新ができませんので、地主側に有利な特徴があります。
そのため、定期借地権の場合には、契約期間満了時に建物を取り壊してから地主に土地を返還する必要が出てきます。
なお、定期借地権のメリットとデメリットには以下のような点があります。
<メリット> ・土地を購入する必要がないため、初期投資を抑えられる ・地主が手放したがらない好立地の物件が多い <デメリット> ・土地を返還する義務があるため、半永久的な所有はできない ・更地返還が基本なので、建物の解体費用などが掛かる ・普通借地権や所有権と比較すると資産価値が低く、売却が難しい |
借地権の相続税評価額の計算方法
実際の借地権の相続税評価額は下記のような計算方法によって算出します。難しい部分もありますが、概要は把握しておきましょう。
普通借地権の評価方法
普通借地権の相続税評価額は、下記の計算方法により算出します。
普通借地権の評価額 = 自用地の評価額 × 借地権割合
自用地とは、所有者自身が自由に利用できる土地を指します。自用地の評価額は、国税庁のホームページの路線価図でチェックしてみましょう。
なお、自用地の評価額を算出する際には、借りている土地が路線価地域・倍率地域のどちらなのかを知っておく必要があります。土地の住所から路線価図を開けば「倍率地域」などの記載がありますので、確認しておきましょう。
仮に土地の住所を調べて路線価が定められていないようであれば、倍率方式による計算で自用地の評価額を算出します。主に地方の土地の場合には、路線価が定められていないケースが多いため覚えておきましょう。
借地権割合については、路線価図に記載されているアルファベット表記から調べられます。アルファベットごとに借地権割合は変わりますので(※)、借りている土地がどの割合に該当するか調べておくと良いでしょう。
※A地域が90%、B地域が80%、C地域が70%、D地域が60%、E地域が50%、F地域が40%、G地域が30%
ちなみに、借地権の目的となっている宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価することになります(借地権控除方式)。
定期借地の評価方法
定期借地権の相続税評価額は、下記の計算方法により算出します。
定期借地権の評価額 = 自用地の評価額 ×(A/B)×(C/D)
A:定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
B:定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期におけるその定期借地権等の残存期間年数に応じる基準年利率による複利年金原価率
D:定期借地権等の設定期間年数に応じる基準年利率による複利年金現価率
定期借地権の評価額の計算は上記の様に非常に複雑ですので、専門知識のない借地権者が自力で算出するのは困難と言えます。そのため、税理士等の専門家に依頼して計算はしてもらいましょう。
借地権の評価に関する具体例と計算式
借地権の評価についての具体例と計算式も例示しておきますので、評価額を算出する際には参考にしてみてください。
土地を借りて建物を建てている場合の評価
土地を借りて建物を建てている場合の評価額は、普通借地権のケースですと下記のような計算になります。
・自用地評価額 2,000万円 ・借地権割合 70%の場合 →2,000万円×70%=1,400万円【借地権評価額】 |
なお、自用地評価額の算出で路線価図を使用する際には単位に注意しましょう。記載されている値は千円単位となりますので、250と書かれていた場合は25万円となります。
また、土地によっては奥行価格補正率・側方路線影響加算率なども含めて計算を行わなければいけないケースもあるため、必要に応じて不動産会社等に算出を依頼しましょう。
土地評価と相続税評価額の基本
続いて、土地評価と相続税評価額の基本的な内容について確認していきましょう。特に借地権の評価は、路線価地域の場合と倍率地域の場合で異なるため、違いを把握しておくことが大切です。
路線価地域での借地権評価方法
路線価とは、国税庁が公表している道路に割り振られた土地の単価です。1㎡あたりの価格が決まっており、毎年7月1日に提示されます。
なお、路線価は不動産鑑定士などの専門家の意見を基に国税局が公表を行います。おおよそ時価の80%程度になっているのが特徴です。
路線価が定められた地域で借地権を評価する際には、まず路線価図で、評価を行う土地が接している路線価をチェックします。例えば、「230B」と表示されているケースでは、230が路線価を示しており、1㎡あたり23万円が路線価となります。
そして借地権の評価をする時は、数字の横にあるアルファベットから借地権割合を確認し、路線価に土地面積を掛けた金額に借地権割合を乗じて計算を行います。
倍率地域での借地権評価方法
路線価は都市部では基本的に定められていますが、地方の場合は設定されていないケースもあります。そのため、こうした地域の場合には固定資産税評価額に乗ずる倍率等を使用して借地権の評価を行います。
なお、倍率は国税庁のホームページにある路線価図・評価倍率表で確認しましょう。そして評価を行う土地の固定資産税評価額に該当する倍率等を乗じて、自用地評価額を算出します。
そして借地権評価を行う際には、自用地評価額に借地権割合を乗じて借地権の評価額を計算します。借地権割合も前述の評価倍率表に記載されていますので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
相続税評価額のトラブルとその対処法
借地権の相続税評価額の計算には様々な手法があります。また個別の案件ごとに考慮すべき内容も存在するため、評価については意見が分かれトラブルになる可能性も存在します。
借地権の評価額が適正でない場合の対処方法
相続税評価額のトラブルで代表的な事例として、課税当局が主張する評価額が過大である等のケースが存在します。また、遺産分割協議の際に借地権の評価額をめぐって、相続人同士で意見が分かれるなどの事態も起こり得るでしょう。
このような借地権の相続税評価額に関するトラブルが発生してしまった場合、不動産鑑定士などの専門家に評価額の算出を依頼した方が良いでしょう。
提示された借地権の評価額が適正でない、もしくは納得できないと感じた場合は、専門知識があり信頼できる鑑定士などへの相談をご検討ください。
相当の地代を受け取っている場合の注意点
借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金(以下「権利金」といいます。)を支払う取引上の慣行のある地域において、
借地権の評価を行う場合、相当の地代を受け取っているケースでは計算方法が異なります。「相当の地代」とは、借地契約時に権利金の授受がなかった場合に支払うものであり、借地権部分を含む土地全体の賃料として支払う地代を指します。
なお、相当の地代を受け取っている場合には、借地権は原則として0となります(相当地代通達3⑴)。
他方で、相当の地代が支払われている場合における貸宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額の80%に相当する金額により評価します(相当地代通達6(1))。
相続税評価相当の地代について
相当の地代がある場合には、借地権の評価額に影響する可能性があるため注意が必要です。以下で詳しい内容を解説していますので、事前に確認しておきましょう。
相当の地代とは何か
借地契約を結ぶ際には、地代とともに権利金を支払うのが一般的です。しかし、親族もしくは親族が関係する会社が土地を借りるケースのように、同族関係者間の取引であった場合には権利金の授受を行わない可能性もあります。
上記の事例では、借主側は権利金を支払っていないため通常よりも高い地代を支払う必要が出てきます。通常は権利金を支払うことで借地権を得ますので、残りの底地部分のみに対応する地代を支払えば土地を利用できます。しかし、権利金を支払っていない前述のケースでは、借地権部分も含んだ土地全体の地代を支払わなければいけませんが、この時に支払う地代が「相当の地代」です。
なお、相当の地代の額については、原則としてその土地の自用地としての価格(財産評価通達に従って、評価した価額の過去3年間の平均額)の年6%程度となっています。
使用賃借権の評価について
使用貸借とは、契約当事者の一方が、契約の対象となった物を無償で使用及び収益を行った後にこれを返還することを約して、当該対象物の引渡しを受ける契約をいいます。
例えば、子が親の土地を無償で借り受け、その土地上に自己の住宅を建築して居住の用に供する場合や妻の土地を夫が無償で借り受け、その土地上に賃貸ビルを建築する場合などが該当します。
使用貸借契約においては土地の借受けの対価である賃料(地代)の授受は行われませんが、借主は貸借の目的となった資産の通常の必要費を負担する義務があることから、その土地に課せられる公租公課(固定資産税や都市計画税)相当額を貸主に支払っている場合も、使用貸借と認められます。
この土地の使用貸借権の価額は、0と評価します(使用貸借通達1)。土地の所有者と借受者の間でその土地に係る公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるに過ぎない場合であっても、土地の使用貸借が行われているものと考えられることから、この場合の土地の使用権の価額も零と評価することになります。使用貸借は借主の死亡によって終了することとされていることからその価値は極めて低いものと考えられるためです。
借地権相続の手続きと注意点
借地権を相続する際の手続きについても確認しておきましょう。具体的には下記のような注意点を意識しておくことが必要です。
地主への連絡と承諾の必要性
借地権の相続時には、地主からの承諾を得る必要はありません。借地権は相続財産であり、被相続人が保有していた借地権は法定相続人が相続するためです。なお、土地の賃貸借契約書に関しても名義変更の義務はなく、譲渡承諾料等も不要となりますので覚えておきましょう。
ただし、承諾を得る必要はなくとも地主との賃貸借契約書は継続することになります。今後も土地活用を続けるのであれば地主との良好な関係は必須となりますので、トラブルを防ぐ意味でも相続した事実は伝えておきましょう。
ちなみに借地権を相続した場合、賃貸借契約の期間等もそのまま引き継がれることになります。
建物は登記の変更が必要
これまでは、相続した不動産を名義変更せずに放置していたケースが多く見られました。しかし、2024年4月からは相続登記が義務化されましたので、相続により建物等の不動産を取得した相続人は相続登記を行う必要があります。
また、借地権は建物と借地権者の名義人が同じでないと権利を主張できません。そのため、建物を相続した場合には早めに登記変更の手続きを行いましょう。期限は相続を知った日から3年以内となっています。
なお、相続登記はトラブルを避ける意味でも重要な手続きです。将来的にまた借地権の相続が起こった時や、不動産の売却・建て替えなどを行う時などに問題が起きないよう、名義変更は必ず行っておきましょう。
借地権の譲渡や売却には、地主の承諾が必要
原則として、借地権を相続するだけであれば地主の承諾や土地賃貸借契約書の書き換えは不要です。ただし、相続した借地権の譲渡や売却時には、地主の承諾が必要になりますので注意しましょう。
被相続人が遺贈によって法定相続人以外の方へ借地権を譲渡する場合、譲渡承諾料が必要になります。相場は借地権価格の10%程度となっていますので、あらかじめ認識しておきましょう。なお、具体的な金額はそれぞれの借地の状況等も考慮して決定します。 一方、借地権を売却する際にも地主の許可や承諾料が必要です。仮にこうした譲渡や売却を地主が認めてくれない場合、家庭裁判所に対して借地権譲渡の承諾に代わる許可を求める申請を行います。
借地権相続に関するよくあるトラブル事例
借地権を相続する際には、様々なトラブルが発生する可能性もあります。特に意識しておくべきポイントには以下の点がありますので、事前にチェックしておきましょう。
地代の滞納や更新料問題の対処方法
借地権の相続で多いトラブルの例として、地代の滞納が挙げられます。被相続人が支払うべき地代を滞納しており、土地を相続した相続人が地主から滞納されている地代の請求を受けるケースが存在します。
このような事態を避けるためには、借地権を相続する前に被相続人の地代の支払い状況をあらかじめ確認しておくことが重要です。そして、仮に地代の滞納があった場合には、単純相続ではなく、限定承認や相続放棄などで高額な地代の支払いを避けましょう。
また、借地権の相続で起きるその他のトラブルとして、更新料の問題があります。借地契約の更新を機に、新たな借地権者(借地権の相続人)に対して高額な更新料を請求してくる地主がいます。
こうした高額過ぎる更新料は、消費者契約法違反となり無効とされるケースがありますので、安易に支払わないようにしましょう。いずれのトラブルにおいても、対処に迷った場合には借地権の相続に詳しい弁護士などの専門家に相談する方が無難と言えます。
地主とのコミュニケーションの重要性
借地権の相続をした場合、上記の様なトラブル以外にも様々な問題が起きる可能性があります。
●相続したタイミングで地主に契約解除を告げられる ●関係が悪化して立ち退きを求められる ●借地権の譲渡や売却を承諾してくれない ●リフォームや建て替えを認めてくれない |
この様な事例は地主との良好なコミュニケーションを意識し、事前に対策しておけば防げる可能性があります。したがって、借地権の相続が発生した場合には、なるべく早めに地主に連絡をしましょう。そして、今後の借地契約について話し合っておく方が安心です。
仮に地主とのトラブルに発展してしまった際には、信頼できる弁護士や不動産会社等に交渉を依頼するのも一つの方法ですので覚えておきましょう。
まとめ:借地権の評価と相続税対策
借地権の評価や相続税対策について解説を行いました。まとめると、確認しておくべき点は以下のようになりますのでチェックしておきましょう。
- 借地権の種類の把握
- 借地権には様々な種類があるため、まずはどの借地権なのかを把握し、それぞれの特徴と計算方法を把握しておく必要があります。
- 地域や形状、地代の受け取り等にも注意する
- 路線価地域か倍率地域かにもよって評価方法は異なります。また、土地の形状や地代の受け取り方等でも評価額は変わる可能性がありますので注意しましょう。
- 専門家への相談も検討しておく
- 相続税評価額の計算は非常に複雑です。借地権に詳しい不動産鑑定士や税理士、弁護士等の専門家への相談も考えておきましょう。
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借地権の概要や種類、評価の方法や相続税評価額の計算方法、相続手続きの注意点等についての説明をしました。借地権の評価は複雑な部分がありますが、円滑にトラブルなく相続を進めるためには、正しい計算方法を知っておく必要があります。
個人で行うには手間や時間も掛かりますので、ぜひ専門家の力も借りながら手続きは進めましょう。当事務所でも借地権に関するご相談は受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
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