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弁護士コラム
被相続人の遺産に、自分名義の通帳がでてきた!これは誰の相続財産になる?
- 遺産分割のトラブル
- 投稿日:2022年07月21日 |
最終更新日:2022年07月21日
- Q
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先日、亡くなった母の遺産を整理していたところ、私名義の預金通帳が出てきました。
名義人が私であっても、これは母の相続財産に含まれるのでしょうか?
また、これを相続財産と判断されないようにする方法はありますか?
- Answer
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預貯金が誰のものかは、口座名義ではなく原資を誰が支出したかによって決まりますので、お母さんがお母さん自身のお金を預けた預金は、その名義のいかんにかかわらずお母さんの相続財産となります。
また、お母さんの相続財産である以上、相続財産と判断されないようにする方法はありません。
判断基準について
亡くなった人(被相続人)の名義ではない財産が相続財産になるかどうかについて、確立した判断基準はありません。
しかし、次のような要素を総合考慮して判断するとした裁判例があり、参考になります。
- 1当該財産又はその購入原資の出捐者
- 2当該財産の管理・運用の状況
- 3当該財産から生ずる利益の帰属者
- 4被相続人と当該財産の名義人と当該財産の管理・運用をする者との関係
- 5当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯 等
解説
本件では、
- 1預金の原資の出捐者は母
- 2預金口座の銀行通帳・銀行印・キャッシュカードを管理していたのも母
- 3利子を取得していたのも母
- 4被相続人は母、口座名義人は子
- 5母が手元にあった子供名義の銀行口座を利用していた
ということになります。
したがって、子供名義の預金であっても、母の相続財産に含まれることになります。
これに対し、母が、子供の法定代理人親権者母としての立場で子供の小遣いやお年玉等を預金しており、子供が成人したときに渡すつもりであったところ、渡しそびれたまま死亡してしまったケースについては、別途検討が必要です。上記①~⑤の判断基準に当てはめると、次のようになります。
- 1預金の原資の出捐者は子
- 2預金口座の銀行通帳・銀行印・キャッシュカードを管理していたのは母だが、子の法定代理人として管理していたものである
- 3利子は銀行口座に入金されているだけ
- 4被相続人は母、口座名義人は子
- 5母が未成年の子の余った小遣いやお年玉を預金する趣旨で子供の法定代理人としての立場で銀行口座を作り、子供の法定代理人としての立場で通帳・銀行印・キャッシュカードを管理し、子供が成人して法定代理権が消滅したタイミングで渡すつもりであったが、子供の成人後も渡しそびれていた
したがって、このようなケースでは、母の相続財産ではなく、口座名義人の子の固有財産であると言える余地があります。
また、母が母名義の銀行口座ではなく、あえて子名義の銀行口座に預金していたということは、子に贈与する趣旨で預金したものであるから、母の相続財産ではない(既に子に贈与されている)と言うことはできるかどうかについて検討してみます。
贈与は契約の一種ですから、誰に幾らをあげるかについて、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)が合意していなければなりません。そのため、もらう人が贈与の事実を知らなければ、贈与契約が成立したとは言えません。
本件では、母が死亡した後に子名義の銀行通帳が発見されたということですから、子は子名義の銀行通帳の存在を知らなかったと言えますので、母の生前に預金の贈与契約が成立していたとは考えられません。また、実質的に考えても、仮に預金の贈与契約が成立していたのであれば、銀行通帳・銀行印・キャッシュカード等は子に引き渡され、子が管理していたはずです。これらが母の手元にあったという事実は、贈与契約の成立を否定する重要な根拠になります。
結論
以上のことから、被相続人の死亡後に相続人名義の預貯金口座が発見されたとしても、相続人の固有の財産とは言えず、被相続人の財産(相続財産)として遺産分割の対象となります。
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