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弁護士コラム

養子縁組を解消しても財産相続できる?離縁の手続きも解説!

遺産分割のトラブル
投稿日:2024年03月06日 | 
最終更新日:2024年03月18日
Q
私たち夫婦は知合いの子どもを養子に迎え、大切に育て、成人させました。しかし、その養子にした娘は非行を重ねた挙げ句、家を出てしまい、連絡も取れません。現在、家庭裁判所に離縁の調停の申立てをしています。
もし、夫が死んだ場合、養子である娘にも財産を分けないといけないのでしょうか?
Answer
養子縁組をした場合、養子は、養親の相続について、実子と同じ相続権があります。これは、養子が結婚した場合でも、また、養親と養子が別居している場合でも影響を受けません。

しかし、養親及び養子とも生存しているうちに「離縁」をした場合には、養子は養親の相続権を失います。

生前に普通養子縁組を離縁する方法は、①協議離縁、②調停離縁、③裁判離縁があります。協議離縁と調停離縁は、当事者が離縁に合意した場合に成立します。(なお、調停離縁が成立しない場合に家庭裁判所の判断で調停に代わる審判による離縁をすることがありますが、事例は少ないようです。)しかし、裁判離縁の場合、民法の定める離縁原因があると認められることが必要です。

今回の事例では、家庭裁判所に離縁の調停を申立てていますが、離縁は成立していません。そのため、このまま夫が亡くなると、養子には、夫の財産を相続する権利があります。そこで、離縁が成立するまでの対策として、遺言により、遺産全部を妻に遺贈する方法が考えられます。ただ、この場合でも養子は遺産の4分の1の遺留分があります。そのため、養子は、遺留分侵害額の請求をすれば遺産の4分の1相当の額の支払を受けることができます。養子に遺留分も取得させないためには、推定相続人廃除をすることが考えられますが、被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があっとときに限られます。

なお、養親又は養子が死亡した後に離縁をする「死後離縁」は、既に養子と養親の間に相続が生じていることを前提に、残った親族との親族関係を消滅させるものです。そのため、養親と養子の間の相続は消滅しません。

従って、養子に夫の遺産を相続させたくない場合、夫の生存中に離縁できるよう、調停の成立に向けて努力をし、調停不成立の場合には離縁の訴えを提起して裁判離縁が成立するように努力をすることになります。また、離縁が成立するまでの対策として、遺言を利用した上で、推定相続人廃除も検討しましょう。

この記事では、養親と養子の間の相続、離縁と相続の関係、離縁できない場合の相続対策について、詳しく解説していきます。

養子の相続権

養子として迎えた子が、非行を重ねた挙げ句、音信不通になってしまったような場合、養親としては、自分の財産をその養子に相続させたくないと考えることもあるでしょう。
そこでまず、そもそも、養子は、養親の遺産を相続する権利があるのかみていきましょう。

養子縁組をした場合、養子は、養親の嫡出子として扱われます。そのため、養親と養子は、お互いに相続権をもつことになりますので、養子は養親の遺産の相続権があります。そして、養子は、実子と同じく、第一順位の法定相続人となります。

【法定相続人とは】
死亡した人の法律上の配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外の人は、①~③の順で配偶者とともに相続人となります。
なお、相続を放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされます。
    〇 配偶者
      +
    ① 死亡した人の子供
    ② ①がいない場合、死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
    ③ ①も②もいない場合、死亡した人の兄弟姉妹

死亡した人の子どもである法定相続人である養子の法定相続分は、次の表の「子ども」の部分のとおりです。
また、養子(子ども)は、遺言があっても相続財産の継承が保障される一定の割合(遺留分)があります。下の表の赤字部分が遺留分の割合です。

【法定相続分と遺留分】

※子ども、父母及び兄弟姉妹がそれぞれ複数人いる場合の相続分は、上記の相続分を人数で割って算定します。また、子ども及び父母が複数人の場合の遺留分も同様です。

このように、養子は養親の相続について、子どもとして相続権を有しています。仮に養親の子どもが養子だけである場合、養親に配偶者がいれば、その養子の相続分は2分の1となります。

なお、この記事では普通養子を前提として記載していますが、特別養子の場合でも、養子の相続権は普通養子の相続権と同じです。

養子に相続をさせない方法

このように、養子は養親の遺産を相続する権利があるのが原則です。そこで、養親が養子に遺産を相続させたくない場合には対策が必要です。

養子に遺産を相続させないためには、次の対策をとることが考えられます。

  1. 1養子と離縁をする
  2. 2遺言で全財産を他の者に遺贈する
  3. 3養子を推定相続人廃除する

しかし、それぞれの方法にはメリットやデメリットがありますので、次の項から詳しく解説していきます。

養子と離縁する方法

離縁の効果(生前離縁と死後離縁の違い)

養子と養親が生きている間に離縁した場合、親子関係が終了するので、養子の相続権が消滅します。そのため、養子に相続させたくない養親にとって、最もふさわしい対策が離縁です。ただ、「養親が生きている間に」と記載したのは、養親の生存中にする離縁と死後にする離縁では、養子の相続権が消滅するか否かという効果が異なるので注意が必要だからです。

離縁には、養親及び養子のいずれも生存している間に行われる生前の離縁と、いずれかが死亡後に行われる死後離縁があります。生前の離縁は、養親及び養子の双方が生存中に成立して親子関係が終了するため、その後にいずれかが死亡しても元養子と元養親の間に相続は発生しません。他方、死後離縁の場合、養親又は養子が死亡するのと同時に養親と養子間に相続が発生しており、その後に離縁が成立して親子関係が消滅するものの、すでに発生した相続を覆すものではありません

このように、死後離縁の場合、養親と養子の間の相続の発生を防ぐことができません。そのため、養子と養親が生存中に離縁を行う必要があります。

離縁方法の種類と順序

生前に普通養子縁組を離縁する主な方法として次の三種類あります。

  1. 1協議離縁
  2. 2調停離縁
  3. 3裁判離縁

ただ、原則として、いきなり裁判離縁を選択することはできません。

まず当事者間で協議をして、協議が調えば①の協議離縁をします。

しかし、協議ができない場合や調わない場合、原則として、先に家庭裁判所に調停の申立てをします。そして調停が成立すれば②の調停離縁となります。なお、調停離縁が成立しない場合に家庭裁判所の判断で調停に代わる審判による離縁をすることがありますが、事例は少ないようです。

そして、調停が不成立となった場合、地方裁判所に離縁の訴えを提起することができ、離縁を認める判決があれば③の裁判離縁となります。

なお、夫婦が共同で縁組をした養子と離縁するためには、養子が未成年で養父母が婚姻中の場合、原則として養父母ともに養子と離縁しなければなりません。他方、離縁の時までに養子が成年になっていれば、養親の一方のみで離縁することができます。

各離縁方法の概要

次に、協議離縁、調停離縁、裁判離縁の要件や手続について説明していきます。

協議離縁

養子縁組をした当事者である養親と養子は、協議によって離縁をすることができます。協議が調ったら、協議離縁届を市町村役場に提出します。この届が受理されると、離縁の効果が発生し、養子と養親の親子関係が消滅し、相互の相続権も消滅します。

養子が未成年であっても15歳以上であれば、単独で当事者となり、養親と協議をして離縁することができます。しかし、養子が15歳未満であれば、離縁が成立した場合に法定代理人となる人と養親で協議することになります。

また、夫婦で養子と縁組した場合、未成年の養子と離縁するには夫婦で共に協議の当事者となる必要があります。この場合、未成年者との養子縁組の場合と異なり、家庭裁判所の許可は不要です。

調停離縁

養親又は養子は、家庭裁判所に離縁の調停を申立てることができます。

調停の期日に離縁の合意ができれば調書に記載されます。この離縁の合意ができた旨が記載された調書は確定判決と同一の効果をもつので、この調書の謄本を添付して市町村役場に報告的な届出をします。

なお、調停離縁が成立しない場合、家庭裁判所の判断で調停に代わる審判により、離縁が成立することもあります。しかし、当事者から二週間以内に異議の申立があれば効力が失われてしまうため、あまり利用されていないようです。

裁判離縁

養子又は養親が、地方裁判所に離縁の訴えを提起し、離縁を認める判決をもらうというのが裁判離縁です。この場合、判決が確定することにより離縁の効果が発生しますが、報告的な届出は必要です。

裁判離縁を求める場合、まず、調停の申立をする必要があります。調停の申立をせずに訴えを提起した場合、裁判所は当該事件を家庭裁判所の調停に付すことになります。ただし、相手が生死不明の場合には調停ができないので、直ちに訴えを提起することができます。

裁判離縁の場合、離縁が認められる原因が次の3つに限定されており、いずれかに該当しなければ離縁は認められません。

  • ⅰ他の一方から悪意で遺棄されたとき
  • ⅱ他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  • ⅲその他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき

ⅰの「遺棄」は、扶助義務違反に限定せず、親子として要請される精神的かつ物質的な共同生活を正当な理由なく一方的に破棄することと解する判例や学説が多いと言われます。

ⅱの「その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき」とは、養親子としての生活共同体の維持または回復が困難な程度にまで破綻しており、将来の回復の見込みがない場合をいいます。

ⅲの「縁組を継続し難い重大な事由」の有無は、その養親子の関係における諸般の事情を総合的に判断して認定します。裁判例で離縁が認められているのは、暴行・虐待・重大な侮辱、長期間の別居、家業承継の懈怠、夫婦関係の破綻(いわゆる婿養子・連れ子養子の場合)等の場合です。

遺言~養子に相続させないためには

遺言による対策

今回の事例のように、家庭裁判所に離縁の調停を申立てていても、未だ離縁が成立していない間に夫が亡くなると、養子には夫の財産を相続する権利があるため、養子が法定相続人として夫の遺産を相続することになりかねません。そこで、養子との離縁が成立するまでの間の対策として、遺言により、遺産全部を妻に遺贈する方法が考えられます。

財産を有する養親が、遺言書に養子以外の者に財産を譲渡する旨を記載することで、養子に法定相続分に従った割合の遺産が相続されることを防ぐことができます。このように、亡くなった人が、遺言によって自己の財産を他人に与える行為を「遺贈」といいます。

遺言と養子の遺留分の関係

養親が、遺言書に養子以外の者に全財産を譲渡する旨を記載したとしても、養子には遺留分があります。遺贈等により遺留分を有する配偶者や子どもたちの遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害額を請求することができるのです。

もし、亡くなった養親に配偶者と養子がいた場合、仮に亡き養親が配偶者に全財産を譲渡する遺言をしても、養子は遺産の4分の1の遺留分があるため、養子は、遺留分侵害額の請求をすれば遺産の4分の1相当の額の支払を受けることができるのです。

そのため、養親の死後にトラブルとなるのを避けるためには、遺留分に配慮し、対象の財産を他の相続人の遺留分を侵害しない程度にとどめておくか、遺留分侵害額相当の金銭を支払える手当てをしておくことが必要となってきます。

遺贈の注意点

そのほか、養子以外の者に遺贈をする場合、次のような注意点があります。

① 「特定の財産を与える」か「全部又は一定の割合を与える」

遺贈をする場合、特定の財産を与えること(特定遺贈)というだけではなく、財産の全部又は一部を一定の割合で示して与えること(包括遺贈)も可能です。なお、包括遺贈の場合、遺言者の負っている債務を含めた全部の財産を承継することになるため、注意が必要です。

・特定遺贈
 (例)○○所在の土地と建物を遺贈する。 
・包括遺贈
 (例)財産の全部を遺言者の(養子以外の)Aに包括して遺贈する

② 次の相続も想定して作成する

夫婦で養親となっている場合、先に亡くなった養親の遺産を他方の養親が相続し、その養親が死亡した場合、結果的に先になくなった養親の遺産を養子が相続することになります。

そのため、遺産をできる限り養子に相続させないためには、養親となっている夫婦ともに遺言をしておく必要があります。  

③ 相続税の適用を受ける

遺贈により相続財産を取得する場合には、相続税が加算されます。

しかし、配偶者と一親等の血族が相続財産を取得する場合より、他の者が遺贈を受ける場合、相続税が2割加算されます。そのため、遺言書を作成する際には、相続税を計算した上で、配分を決定することが重要です。

また、相続人以外の者に不動産を承継させる場合、不動産取得税が課税され、登録免許税の軽減が認められない点にも注意が必要です。

しかし、生前に行う贈与に際して適用される贈与税と比較すると、承継する財産が同じ金額である場合の税率は相続税のほうが低いため、節税に繋がることもあります。

④ 公正証書遺言がおすすめ

遺言は一定の形式を必要とし、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がありますが、基本的には公正証書遺言をおすすめします。公正証書遺言は、作成にあたり公証人が関与し、また、公証人が保管もしてくれるため、将来起こりうる相続トラブルを大幅に減少できるからです。

小括

このように、遺言は養子に相続をさせたくない場合の有効な手段です。しかし、養子には遺留分があるため、遺留分相当額を養子が取得できる点、注意が必要です。

また、遺言時の遺言能力の有無が争われないための対策など、遺言書を作成する際に注意すべき点は数多くあります。遺産をできるかぎり養子に取得させないためには、弁護士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

推定相続人の廃除

養子と離縁できるまでの対策として遺言をしても、養子には遺留分があるため完全に相続させないことはできません。しかし、推定相続人の廃除をすれば、養子に遺留分も取得させないことも可能です。そこで、推定相続人の廃除の要件や手続について説明していきます。

推定相続人廃除の効力

推定相続人の廃除が認められると、その推定相続人は相続人になることができません。ただ、その廃除の効力は廃除された推定相続人だけに及ぶので、廃除された推定相続人に子どもがいる場合、その子の代襲相続権には影響しません

【代襲相続とは】
代襲相続とは、被相続人がなくなった時点で、本来相続人になるはずだった人が亡くなっていた等の場合に、その子どもが亡くなった元相続人に代わって遺産を相続する制度です。

また、廃除は相続権がなくなるだけであり、扶養義務や親権、後見の関係にも影響はありません。さらに、受遺者となることも可能です。

推定相続人の廃除の要件

推定相続人の廃除ができるのは、次にいずれかの事由があった場合に限られます。

  1. 1被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたとき
  2. 2推定相続人にその他の著しい非行があっととき

廃除は、法定相続権の最低限の内容として保障されている遺留分を否定するものなので、社会的かつ客観的に正当と言えるほどの理由が必要なのです。この廃除ができる原因は、実質的には、裁判離縁が認められる原因である「縁組を継続しがたい重大な事由」と趣旨が同じであり、裁判離縁が認められる程度の非行があったか否かを基準として判断されます

推定相続人の廃除の手続

上記の事由がある場合、被相続人は家庭裁判所に対して、推定相続人の廃除の審判または調停を申立てることができます。そして、審判がなされた場合、審判が確定することによって、廃除の効力が発生します。また、調停が成立した場合には、その旨が記載された調書は確定審判と同一の効力を持ち、調停の確定によって廃除の効力が発生します。

なお、推定相続人の廃除は遺言ですることもできます。この場合は遺言執行者によって廃除手続を行います。遺言による廃除の効力は、推定相続人の廃除と同様、審判の確定によって、相続開始時に遡って効力が発生します。

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このように、養親が、自分の財産を養子に相続させたくない場合にとるべき手段はいくつかありますが、養子との合意が必要なものや、条件が必要なもの、養子に一部の財産が渡ってしまうものなど一長一短があるので、複数の手段を選択する等の対策をとっていく必要があります。

また、次に予想される相続も想定して対策をとる必要もあり、よりよい対策をとるために、弁護士等の専門家に相談してみることをおすすめします。

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