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弁護士コラム

ADR(裁判外紛争解決方法)とは?3つのADRや手続きの流れをご紹介

紛争解決
投稿日:2022年02月26日 | 
最終更新日:2022年03月03日
Q
保険会社の提示や対応に不服があります。裁判以外に利用できる制度はありますか?
Answer
保険会社の提示や対応に不満がある場合に裁判以外に利用できる制度として、裁判外紛争解決方法(ADR)があります。またこの場合、裁判所以外にも「そんぽADRセンター」を活用することができます。今回は3つのADRや手続きの流れをご紹介していきたいと思います。

ADR(裁判外紛争解決方法)とは?

ADR(裁判外紛争解決方法)とは

ADR(裁判外紛争解決方法)とは、紛争解決のための裁判以外の手続きのことです。

Alternative Dispute Resolutionの各々の頭文字をとった略称で、直訳すれば「代替的な紛争解決手続き」となりますが、「裁判に代わる」という意味合いで用いられています。

裁判とADRの違いは? 

裁判では事実認定や証拠に基づいて、裁判官が法律判断をして判決を下しますが、ADRは当事者間の話し合いによって、調停委員の導きを得ながらお互いの合意を目指します。

裁判を起こすには厳格な様式の訴状を作成し提出しなければなりませんが、ADRの申立には厳格な制約はありません。

また裁判は当事者の一方が訴えの提起をして手続きが開始しますが、ADRは当事者双方の合意により手続きが開始します。

裁判は公開が原則ですが、ADRは非公開が原則ですので、プライバシーや企業秘密に係る紛争等については、安心して手続きを進めることができます。

裁判では厳格な事実認定と法の適用により法律判断を行い判決を下しますが、ADRにおいては法律のみならず当事者の感情や願望なども加味して判断されます。

裁判では訴えの提起から終了まで数年かかる場合が多いのですが、ADRでは申立てから数か月で終了する場合が多いと言われています。裁判では何度も期日に出向く必要がありますが、ADRでは1~3回、期日に出ることで解決することが多いようです。

裁判では法律の専門家による主張立証活動や鑑定が必要な場合があり、申立費用のほか弁護士費用や鑑定費用が必要で、高額となります。

ADRでは当事者による解決とされるため、基本的に鑑定費用がかかることはありませんが、申立費用約1万円・期日手数料1回5千円程度が必要で、比較的リーズナブルとなり、無事合意が成立すると合意成立手数料が発生するものの、ADRにかかるコストは裁判より大幅に低くなります。

ADRには3種類ある

①裁判所が行うもの(司法型ADR)

ADRという言葉を最も広く捉えれば、「判決」ではない形式で紛争を解決する手続きと把握することができます。その場合には、裁判所の手続きである「民事調停」、「家事調停」などもADRのひとつということになります。

②行政機関・行政関連機関が行うもの(行政型ADR)

紛争解決手続きの実施主体が裁判所ではないものをADRであると定義すれば、裁判所以外の行政機関が実施している紛争解決手続きもADRに含まれます。

行政機関が設置している紛争解決手続きとしては、次のような制度などがあります。

  • 国民生活センター
  • 消費生活センター
  • 筆界特定手続き(法務局)
  • 労働委員会(国・地方公共団体)
  • 建築工事紛争審査会
  • 公害等調整委員会
  • 原子力損害賠償紛争解決センター

③民間のADR事業者が行うもの(民間型ADR)

ここ数年、上記①②以外にも、判決でも裁判所でも公的機関でもない民間の組織・団体が紛争解決手続きを設置する動きが拡がっています。

近年では、一般的にADRという言葉を用いるときには、「民間団体が設置している紛争解決機関」を指していることが一般的です。

たとえば、弁護士会・行政書士会・司法書士会・土地家屋調査士会・社会保険労務士会などのいわゆる士業と呼ばれる団体は、それぞれの専門領域を対象とする紛争のADRを設置しています。

また、交通事故や金融商品をめぐる紛争などについても、業界団体などがADRを設置しています。

裁判所のADRの例

民事調停・家事調停

調停には大別して民事調停と家事調停があります。

民事調停はお金の貸し借りや物の売買をめぐる紛争などについて、主に「簡易裁判所」で行われます。

民事調停には、サラ金やクレジットなど借金の返済で悩んでいる方が債権者と話し合って、生活の立て直しを図るための特定調停というものもあります。

家事調停は、離婚や相続など家庭内の紛争について、家庭裁判所で行われます。 

調停離婚は、家事調停を通じて行われる離婚です。離婚をするには、いきなり裁判をするのではなく、裁判をする前に必ず家事調停の手続きをとらなければならないことになっています(調停前置主義)。

労働審判

労働審判とは、労働者と企業との間で発生したトラブルについて、労働審判官1名と労働審判委員2名からなる労働審判委員会が間を取り持ちながら、審理によって解決を計る、裁判所を通じた手続です。

原則として3回を期日とし、その期間内で事実関係や法的主張について労働審判委員会が双方から意見を聞き、トラブルの内容を整理します。

話し合いで解決策がまとまれば調停が成立し、労働審判は終了です。まとまらない場合は労働審判委員会が労働審判という解決策を示します。調停も労働審判も訴訟と同じ効力を持ち、内容によっては強制執行を申し立てることも可能です。

審判の結果に納得できない場合には、異議申し立てをすることができ、通常の訴訟に移行することとなります。

かいけつサポートとは?

法務大臣の認証を受けた民間ADR事業者のADR

ADRの中には、民間事業者が行っているものもあります。

法務省では、このような紛争解決手続を行っている民間事業者の申請に基づいて、法律に定められた厳格な基準をクリアしているかどうかを審査し、クリアしているものを法務大臣が認証する制度を実施しています。

法務大臣の認証を取得した民間事業者は、「かいけつサポート」の愛称と、ロゴマークを使用することが認められています。

かいけつサポートのメリット

かいけつサポートは、取り扱う紛争の分野に精通した民間の専門家の知識・ノウハウを活用します。これにより、紛争の実情を踏まえた、きめ細やかで迅速な解決を図ることが期待できます。

法務省によると、かいけつサポート全体の取扱実績として、8割以上の事件が6か月以内に終了し、7割以上の事件が3回以内の審理で終了しています。

この実績から、手続に時間や回数をかけずに、簡易・迅速に進められていることがうかがえます。

かいけつサポートの事業者は、手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行や、当事者が支払う報酬・費用などの重要なポイントについて、事前に当事者に説明することが義務とされています。

この説明を受けることにより、本当に自分にとってふさわしい解決方法なのかを、事前によく考えた上で利用することができます。

第三者を交えてじっくり話し合いをしていると、その間に時効が成立してしまうことが考えられます。

かいけつサポートを利用すれば、ADR法が定める一定の場合には、時効の中断が認められます。このほかにも、訴訟手続の中止や調停前置の特則といった法的特例が用意されています。

かいけつサポートのデメリット

かいけつサポートは、当事者間の紛争を調停人・あっせん人が仲介しながら話し合いを進め、和解の合意を目指そうという手続ですから、相手方が話し合いに応じないといった場合には、そもそも手続を開始することができません。

また、かいけつサポートは、途中で一方が手続から離脱すると、その時点で手続が終了します。

相手方が話し合いに応じて手続が開始されたとしても、一致点が見いだせない場合や、調停人の提示する和解案を当事者のどちらか一方でも受け入れなかった場合には、未解決のまま手続が終了することになります。

かいけつサポートによる話し合いの結果で合意した内容は、一般的に和解合意書の形式でまとめられますが、強制執行力はありません。ただし、お互いの話し合いの結果で合意したものなので、合意内容が実施されないという例は実際にはあまりないようです。 

かいけつサポート利用前の注意点

あなたの依頼により「かいけつサポート」のサービスが始まると、依頼を受けた民間ADR事業者から相手方に郵便などで連絡や通知をすることになります。相手方の確実な連絡先などを事前に把握していると、手続きがスムーズに進みます。

また、自分の言い分を整理しておくことも重要です。

例えば、トラブルについて、その内容とともに、起きた日時や場所、原因などについて、あなたがどのように考えているか、といったことを事前に整理しておくと、話し合いたいポイントがはっきりします。トラブルに関連する資料などがある場合は、事前に整理して準備しておくとよいでしょう。

加えて、自分がどのような解決を望むか想定しておきましょう。

話し合いを重ねても、あなたの言い分がすべて通るとは限りません。トラブルのどの点についてどこまで合意できれば相手方と和解してもよいか、いわゆる”落としどころ”を事前に想定しておくことが大事です。

苦情相談および紛争解決手続きの流れ

①ADR機関に相談

まず、申立書、証拠書類の写しなど必要な書類を提出して、あっせん手続を申し立てます。 申立が受理されると、トラブルの内容等を考慮してあっせん人が選任されます。 

②ADR機関から保険会社に連絡

トラブルの相手方に、あっせんの申立があったことを通知し、相手方からあっせん手続に応じるかどうかについて回答が来ます。相手方があっせんに応じない場合は、ここで終了となります。

③話し合い

しっかり話し合うために原則として当事者双方が同席します。ただし別席で話し合うこともできます。

④紛争解決手続きに必要な書類を提出

相手方との利用契約書を作成します。運転免許証など及びご印鑑が必要になります。

⑤意見聴取の実施

当事者同士の話し合いをうながし、当事者が自ら課題を解決する方法を見いだすことができるよう助力します。証拠や要件事実、法律的な判断に拘束されない解決策を話し合いによって決めることができます。

⑥和解案の検討

当事者が合意した合意書には確定判決と同一の効力はありませんが、当事者が納得して出した結論でありますので、きちんと守られることが期待できます。

まとめ

平成13年6月12日付の司法制度改革審議会意見書では、「ADRが、国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、その拡充、活性化を図っていくべきである」とされました。

そして、平成19年4月1日にADR促進法が施行されました。ADRでのトラブル解決は第三者が間に入ってくれるため、当事者同士の直接的な話し合いに比べて冷静で、円満な解決を期待できそうです。

片方がトラブル解決に消極的な場合は活用が難しくなりますが、裁判以外にもこんな手段がある、という事を、ぜひ覚えておいてください。

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