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弁護士コラム

家を売却した場合の火災保険契約の取扱いは?

給付金の種類、補償内容 火災保険
投稿日:2022年02月28日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、自宅(建物)を売却することになりました。
私は自宅に火災保険をかけていますが、この火災保険の取扱いを教えてください。
Answer
一般的には、保険契約の約款により保険契約は失効※1しますが、あらかじめ保険会社の同意(承認)を得れば、保険契約は失効せずに譲渡人の地位が譲受人に移転すると取扱う保険会社もあります。
また、譲渡する場合には遅滞なくそのことを保険会社に通知しなければならず、これを怠ると通知前までの保険事故について保険金が支払われなくなる可能性があります。

遅滞なく通知しなかった場合

保険対象物(ex建物)の譲渡により所有者を変更する場合には、譲渡することを遅滞なく保険会社に通知しなければならず、さらに譲渡人(保険契約者・被保険者※2)の保険契約における権利義務を譲受人に移転させるためには、あらかじめ保険会社の同意(承認)を得なければならないと約款に規定している保険会社もあります。

この通知を遅滞なく行わなかった場合には、譲渡後、通知までの期間に発生した保険事故(ex火災)による損害に対する保険金※3が支払われなくなる可能性があります。

そして、建物を譲渡し、所有者(保険契約者・被保険者)が変わるということは、保険契約の最重要事項に変更が生じるわけですから、必ずしも同一の保険契約が譲受人に承継されるわけではなく、保険会社の約款によっては保険契約が失効する可能性もあります。

その場合、譲受人は新規に保険契約を締結する必要があります。 

※1
失効となる場合で既に保険料を支払い済みの場合は、
契約が失効した日以降の期間(未経過期間)については保険料が返還されます。

※2
保険契約者とは、保険契約を締結した人で、保険料を支払う人を指します(保険法2条3号参照)。被保険者は、保険金を受け取る人を指します(保険法2条4号イ参照)。必ずしも両者は同じではありませんが、同一人であることが一般的です。また、
両者は個人に限定されず、法人でもなることが可能です。

※3
保険金は、保険会社からお客様に支払われるもので、保険料は、お客様側が保険会社に支払うものです。

「遅滞なく」とは?

では、「遅滞なく」とはどれくらいの期間をい うのか疑問に思われるかもしれません。

具体的に何日かは明確ではありませんが、参考になる判例として以下のものがあります。

保険会社に通知を行わず建物を譲渡し、その譲渡日から2日後に建物に火災が発生した場合において、通知義務違反を理由に保険会社が保険金の支払いを拒むこと(支払の免責)は認められないとした判例(最判平成5年3月30日民集47巻4号3384頁参照)

判決文では、建物の売主と買主との間で、売買代金の完済や所有権移転登記手続を完了するまでは建物の所有権を移転させないとする留保を付けることもあるため、譲渡前にあらかじめ保険会社に通知することが保険契約者(被保険者)にとって困難であることを理由として挙げています。

X(原告)は競売によりAから建物を譲渡され、譲渡人のAがY(保険会社・被告)に遅滞なく通知をしない間に建物に火災が発生し、譲渡から29日が経過した時点でAとXが譲渡した事実及び火災が発生した事実をYに通知したところYの保険金の支払拒絶を認めた判例(東京地判平成17年9月29日)

この判例では、通知義務の履行の通常想定される猶予期間は15日を一応の目安とし、さらに保険対象の譲渡後の手続きが遅滞したことについて正当な理由があるかどうかも考慮するとしています。

もっとも、これらの判例は、保険法の施行(保険法の施行は2010(平成22)年4月1日)よりも前のものですので、これらだけを判断材料にされないようにしてください。

まとめ

以上のように自宅を売却する場合には、保険会社の約款を確認の上、できるだけ早く(できれば譲渡前に)保険会社にその旨を通知し、譲受人に保険契約を承継させる場合には、保険会社のあらかじめの同意(承認)を得るようにしてください。

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