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弁護士コラム
火災保険の種類について解説
- 給付金の種類、補償内容 火災保険
- 投稿日:2022年02月27日 |
最終更新日:2023年07月03日
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
-
火災保険の種類にはどのようなものがありますか。
-
火災保険は、一般の住宅または小規模な事業者を対象とした家計分野の火災保険と事業者を対象とした企業分野の火災保険があります。
家計分野の火災保険には、住宅火災保険、住宅総合保険、オールリスク保険及び団地保険があります。
対して、企業分野の火災保険には、普通火災保険、店舗総合保険などがあります。
目次
保険事故の種類
保険者(保険会社)による保険金支払義務の対象となる事故を保険事故といいます。
そして、火災保険における保険事故には、以下のものがあります。
- 火災、落雷又は破裂若しくは爆発
→火災や落雷、破裂・爆発などにより、建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。火災保険でもっとも基本的なものとなります。 - 風災、雹災又は雪災
→風災、雹采、雪災などにより、建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。通雨が多く雪も降る日本では、比較的リスクの高い災害です。 - 水災
→台風や豪雨などで洪水・高潮・土砂崩れが起こり、建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。河川も多く都市型水害が増えている現代では、リスクの高い災害です。 - 盗難
→強盗や窃盗により建物や家財が損傷・汚損した、家財が盗まれた場合に保険金が支払われます。 - 給排水設備事故の水漏れ等
→給排水設備の事故、他の部屋で起きた事故によって生じた水漏れなどで建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。上階からの水濡れで天井や床の張替えが必要になった場合等が該当します。 - 車両又は航空機の衝突等
→車両や航空機が塀や建物に衝突した等で損害を被ったときに保険金が支払われます。 - 建物の外部からの物体の衝突等
→石が飛んできてガラスが割れた、その他外部からの飛来物により損害を被った場合に保険金が支払われます。 - 騒擾又は労働争議等
→デモや労働争議などの集団行動により建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。 - その他偶然な破裂事故等
→偶発な事故や不注意などにより、建物や家財が損害を受けた場合に保険金が支払われます。
ただし、保険会社によっては上記の表現が異なる場合がありますのでご留意ください。
火災保険の種類
家計分野の火災保険
住宅火災保険
住宅火災保険とは、住宅専用に使われている建物及び家財に対して生じた損害を補償する保険です。
上記保険事故の種類の内、①と②による損害を補償するものです。
住宅総合保険
住宅総合保険とは、住宅専用に使われている建物及び家財に対して生じた損害を補償する保険です。
上記保険事故の種類の内、①〜⑧までの損害を補償するものであり、住宅火災保険よりも広いものとなっています。
オールリスク保険
オールリスク保険とは、住宅専用に使われている建物及び家財に対して生じた損害を補償する保険です。
上記保険事故の種類の内、①〜⑨までの損害を全て補償するものであり、最も多くの損害をカバーする保険です。
団地保険
団地保険とは、民間のマンションや公団などの耐震構造で造られた共同住宅の建物や家財を補償する保険です。補償範囲は住宅総合保険とほぼ同じで、これに加え、個人賠償責任保険※1や団地構内での傷害保険などが組み込まれています。
※1 個人賠償責任保険とは、他人に怪我をさせたり、物を壊したりした場合に生じる法律上の損害賠償額を填補するものです。火災保険付帯の個人賠償責任は、保険事故について住宅を所有、使用又は管理にすることによって発生する偶然の事故及び被保険者の日常生活に起因する偶然の事故によって生ずる法律上の賠償責任に限定されるのが通例です。
企業分野の火災保険
普通火災保険
普通火災保険とは、専用住宅以外の店舗、店舗兼住宅、事務所などの建物、建物収容の什器・備品・機械・設備一式、商品・製品・原材料等一式、家財一式等の動産を補償するものです。補償の範囲は住宅火災保険とほぼ同じです。
そして、普通火災保険は、適用する物件ごとに一般物件用、工場物件用、倉庫物件用の3種類の火災保険普通保険約款が規定されています。
ア. 一般物件用は、住宅火災保険とほぼ同様の補償内容ですが、以下の点が住宅火災保険と異なります。
- 比例払※2に基づいて損害保険金を支払う点
- 建物を保険の対象とする場合でも、門、塀、垣、付属建物については、明記しない限り補償対象にはならない点
- 風、雹、雪による仮設建物(ex海の家)やゴルフネット、屋外にある商品や製品に生じた損害が補償対象にはならない点
※2 比例払(比例補填方式)とは、保険金額(保険会社が支払う保険金の限度額)が保険価額(保険の目的物の価額)を下回る場合は、損害の全額は支払われず、保険価額と保険金額の割合により補償額が決まることを言います。
ex.1000万円の建物(保険価額)に対して500万円(保険金額)の火災保険に加入している場合、50%しか保険をつけていないことになり、建物に500万円の損害が生じたとしても、250万円しか補償されないことになります。
イ. 工場用物件は、一般用物件とは、風、雹、雪による災害の除外物件と保険事故の種類の内、上記④を除く雑危険(雑危険とは、上記④〜⑧を指します。)による損害を補償する点が異なります。
ウ. 倉庫物件用は、他の物件用と比較し、補償される保険事故は上記①のみであり、また、補償される費用は臨時費用及び残存物の片付け費用のみと制限のある補償となっています。ただし、損害防止費用※3や権利保全行使費用※4は他の物件用と同様に支払われます。
※3 保険事故に基づく損害の発生や拡大を防止するために支払う費用をいいます。
※4 保険者(保険会社)が被保険者に代わって代位取得する債権の保全・行使に必要な手続のために要した費用をいいます。
エ. また、これらの複数の保険対象を1つに包括すべく、特殊包括契約に関する特約が付帯されることもあります(具体的には、ブランケット契約とマルチロケーション契約があります。)。
(ア)ブランケット契約(特殊包括契約)とは、1敷地内に存在する多数の物件を対象とするものです。保険目的をブランケットで包込むように、構内にある全物件を漏れなく担保する契約方式であることから、ブランケット契約とも呼ばれています。
(イ)マルチロケーション契約(複数敷地内特殊包括契約)とは、複数の敷地内に存在する物件を対象とするものです。
オ. さらに、商品・製品・仕掛品・原料など変動する在庫品を付保対象とするための契約方式の特約として火災通知保険(「Declaration」略称:デクラ)があります。
火災通知保険には、以下の点に特徴があります。
- 保険金額を定める代わりに、支払保険制限額を設定し、支払保険制限額を限度とした実損払※5である点
- 契約時に支払保険制限額に応じた暫定保険料(年間保険料の3/4)を領収し、契約終了時に通知された在庫価額(平均値)に基づく確定保険料との差額を精算する点
火災通知保険の契約方式は様々ありますが、基本方式であれば支払保険制限額が1構内5000万円以上(2構内1億円以上)の場合に利用できます。
※5 実損払(実損填補方式)とは、保険金額の範囲内で損害額相当の保険金を支払う方式のことを言います。5万円の損害が発生したら5万円、50万円の損害が発生したら50万円が支払われます。
店舗総合保険
店舗総合保健は、普通火災保険と同様に、専用住宅以外の店舗、店舗兼住宅、事務所などの建物、建物収容の什器・備品・機械・設備一式、商品・製品・原材料等一式、家財一式等の動産を補償するもので、補償の範囲は、住宅総合保険とほぼ同じです。
また、小規模店舗、店舗併用住宅だけではなく、大規模店舗等も対象としています。
火災保険と火災共済の違い
どちらも住宅を補償対象にするという点では同じです。
ただし、火災保険は民間企業が運営しているのに対し、火災共済は一定の条件の下に認められた非営利団体が運営している点で異なります。また、火災保険は保険会社と加入者が1対1で契約し、不特定の一般の方を対象とするのに対して、火災共済は加入者全員が支出したお金を運営団体が取りまとめて災害に備えるもので、公務員などの特定の方を対象とするものです。
補償の対象ではない物
以下に記載する物は、火災保険の補償対象とはならない場合が多いです。
- 通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手(ただし、通貨、預貯金証書の盗難は一定額のみ補償されることがあります。)
- 自動車、船舶
- 商品、営業用什器、備品その他これらに類する物(ただし、上記で述べた通り、事業者用の特定の保険では補償対象となる場合があります)
- 設計書、図案、証書、帳簿その他これらに類する物
保険期間の長期契約と1年契約のメリットとデメリット
火災保険は保険期間(保険期間は、保険法6条5号に「その期間内に発生した保険事故による損害を填補するものとして損害保険契約で定める期間」と定められています。詳細は、Q 「火災保険の保険期間とは何ですか?」をご覧下さい。)を1年間にも2〜10年間のように長期にも契約できます。(ただし、2022年度にも現行の最長10年から5年に短縮される見通しです。)10年間のように長期の保険期間で契約すると保険料が割安となり、毎年契約の継続手続きをしなくても良いというメリットがあります。また、保険期間を長期に設定し、保険期間の途中で解約したとしても、支払った保険料のうち未経過分の保険料が解約返戻金として戻ってきます。
しかし、長期であるがために、契約内容を忘れてしまい見直しの機会が減ってしまうと言うデメリットもあります。
反対に、保険期間を1年間のように長期契約よりも短く設定すると、保険料が割高となり、毎年継続手続きをする手間が生じるデメリットがありますが、見直しの機会や契約内容の確認ができるというメリットがあります。
なお、損害保険料率算出機構が2020年度に公表したデータによりますと、保険期間を5年で契約する方が最も多く、次いで1年、2年となっています。
また、保険期間中に建物が全焼する等し、損害保険金が支払われる場合、支払額が1回の事故で保険金額の80%を超えた時、保険契約は終了するので、その際は、再び保険契約を締結する必要がある点にご注意ください。
まとめ
火災保険の種類は上記のように、住宅火災保険、住宅総合保険、オールリスク保険、団地保険、普通火災保険、店舗総合保険の6つを挙げましたが、各保険会社はこれらの分類とは別に、ペットネームと呼ばれる名称を保険商品に販売用として付けています。
たとえば、令和元年度に公表されている商品を例にあげると、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が販売する住宅総合保険は、「タフ住まいの保険」と呼ばれているようです。
ただし、ペットネームと呼ばれる名称も、基本的には、上記の保険種類のいずれかの類型に該当するため、皆様におかれましてはこの記事をご参考にしていただき、加入する保険をご選択されるとよいでしょう。
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