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弁護士コラム
遺留分侵害額請求の時効は1年?10年?遺言無効との関係を弁護士が解説!
- 遺留分のトラブル
- 投稿日:2024年10月10日 |
最終更新日:2024年10月15日
遺産相続の場面で、遺言書の内容に納得がいかない場合、遺留分侵害額請求を行うべきか、遺言無効を主張すべきか迷うことが多いでしょう。
どちらを選択するかは、状況によって異なり、適切な判断が求められます。
ここでは、弁護士の立場から、遺留分侵害額請求と遺言無効確認請求の関係を解説し、どちらを選ぶべきかについて解説していきます。
目次
遺留分侵害額請求権
遺留分侵害額請求権とは?
遺留分侵害額請求権は、相続人に認められた最低限の取り分である「遺留分」が侵害された場合に、その不足分を請求する権利です。
遺留分は、配偶者や子ども、一定の条件下では親にも認められ、遺言書で全財産が他人に譲渡される場合でも、法定相続人が最低限の財産を受け取ることができるよう保障されています。
この遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内に行使する必要があります(民法第1048条)。
この1年という期間は、遺留分侵害額請求権そのものの消滅時効を指します。
これに対して、遺留分侵害額請求によって発生する金銭債権については、一般の債権と同様の消滅時効期間が適用され、1年の短期消滅時効は適用されません。
また、遺留分侵害額請求権は、相続開始から10年が経過すると消滅します(民法第1048条後段)。この10年は除斥期間であり、時効の中断は認められません。
したがって、遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権を行使する際には、特にこの1年の消滅時効を念頭に置いておく必要があります。
遺言無効を主張する場合の消滅時効の起算点
消滅時効の起算点について、通説では贈与または遺贈の事実と遺留分侵害の事実を双方認識した時点とされています。
しかし、この考え方に基づくと、遺言書が偽造されていると信じて遺贈の効力を争っている間は、遺留分侵害があったことを知ったとみなされない可能性があります。
この点に関して、最高裁昭和57年11月12日の判決(民集36巻11号2193頁)は、「民法が遺留分減殺請求権(※現行法では遺留分侵害額請求権)に特別の短期消滅時効を定めた趣旨に鑑み、遺留分権利者が訴訟で無効の主張をするだけでは、時効の進行が止まるとはいえない」としています。
また、被相続人の財産のほとんどが贈与されている場合に、遺留分権利者がその事実を認識していれば、無効の主張をしているだけで遺留分侵害が認められない限り、消滅時効が進行することを指摘しています。
このように、遺言無効を主張する際にも、消滅時効に対する十分な注意が必要です。
遺言無効の主張
遺言無効の主張とは?
遺言無効の主張は、遺言書自体が法律上無効であると判断される場合に、その無効を確認するための訴訟です。
遺言無効が認められる主なケースには、以下のようなものがあります。
1 遺言者の意思能力が欠如していた場合 遺言書を作成した時点で、遺言者が意思能力を欠いていた(例:認知症など)の場合。 2 遺言書が法律の要件を満たしていない場合 遺言書が自筆証書遺言でありながら、自筆で書かれていない部分があるなど、法定の形式を満たしていない場合。 3 遺言書が偽造されている場合 遺言書が第三者によって偽造されている、または遺言者が強制されて作成された場合。 |
遺言無効を確定するためには、遺言無効確認請求訴訟を提起する必要がありますが、この訴訟を提起しただけでは、遺留分侵害額請求の意思表示があったとはみなされません。
遺留分侵害額請求権と遺言無効確認請求の関係
遺留分侵害額請求権と遺言無効確認請求は、相互に関連しており、どちらを選択するかが重要なポイントです。
特に、遺留分侵害額請求権は、消滅時効が1年と非常に短いため、注意が必要です。
遺言無効確認訴訟と遺留分侵害額請求権の消滅時効の関係
遺言無効確認訴訟を進める中で、遺留分侵害額請求権の消滅時効(1年)が完成してしまうリスクがあります。
たとえ遺言が無効であると確信している場合でも、消滅時効の問題を考慮して、予備的に遺留分侵害額請求の意思表示を行うことが重要です。
遺言無効確認請求の戦略と証拠収集
遺言無効を主張する場合には、遺言書の偽造や遺言能力の欠如を立証するための証拠収集が不可欠です。
遺留分侵害額請求権の行使と並行して、遺言無効確認請求の準備を進めることで、遺産分割における依頼者の利益を最大限に保護することができます。
どちらを選択するべきか?
では、遺留分侵害額請求と遺言無効のどちらを選択するべきか、どのように判断すればよいでしょうか?
ここでは、いくつかの判断基準を示します。
遺言の内容が明確かどうか
遺言書の内容が明確であり、遺言者の意思がしっかりと反映されている場合は、遺留分侵害額請求が適切かもしれません。
一方、遺言書が曖昧で、解釈に疑義が生じる場合や、遺言書が複数存在する場合は、遺言無効を主張する方が適切です。
遺言者の意思能力に疑いがあるか
遺言書を作成した当時、遺言者が意思能力を欠いていた場合には、遺言無効の主張が有力です。
特に、遺言書が作成された時期に、遺言者が重度の認知症を患っていた場合などは、無効の主張を検討すべきです。
手続きの難易度と時間
遺言無効確認訴訟は、訴訟手続であることから時間と労力がかかることが多いため、早期解決を望む場合は、遺留分侵害額請求を選ぶ方がいらっしゃいます。
結論
遺言書の内容に納得がいかない場合、遺留分侵害額請求と遺言無効確認請求のどちらを選択するかは、状況によって異なります。
それぞれの手続きには利点とリスクがあり、法的なアドバイスを受けながら慎重に判断することが重要です。
遺言無効を主張する場合でも、消滅時効を見据えた上で遺留分侵害額請求を行うことで、依頼者の権利を守ることができます。
弁護士に相談し、自分のケースに最も適した解決策を見つけることで、安心して遺産相続の問題に対処できるでしょう。
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