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弁護士コラム

相続における彫刻や骨董品の評価どうすればよいのか?

相続税・事業承継対策
投稿日:2022年07月22日 | 
最終更新日:2024年03月14日
Q
私の父は趣味で彫刻や骨董品を収集していました。先日父が亡くなったのですが、これらの価値はどのように評価されるのでしょうか?
Answer
売買実例価額や古物商等の精通者意見価格等を参考にして推計した市場価格に基づいて評価することになりますが、きちんとしたルートを通じて売却してしまうのが最も簡便です。

相続財産の評価は時価による

 相続税法22条は、相続税の対象となる資産の評価は「当該財産の取得の時における時価による」と規定しています。

また、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達)1(2)は、時価とは課税時期(相続等により財産を取得した日時等)においてそれぞれの財産の現況に応じ不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は評価通達の定めによって評価した価額によるとしています。

この点について、評価通達135は、書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するとしています。

また、国税庁事務運営指針第5章第3節(美術品等の評価)は、次のように規定しています。

「美術品、宝石、ブランド品、その他これに類する動産について、その真贋鑑定を行い、鑑定書又はそれに類する証明書等を付すことでその価値が高まると認められる場合は、鑑定人等に鑑定を依頼するものとし、また、見積価額が比較的低額と認められる財産で、適当な取引事例があり評価可能と認められるときは、精通者意見等を参考にするなど、合理的かつ簡易な方法で評価して差し支えない。


 なお、美術品等の評価に当たっては、その種別、作者別、年代別等による市場価格又は類似品の取引における価格を参考として評価すること。

(注) 書画、骨とう等の評価については、当該書画、骨とう等が有名品であっても、それらに箱書、奥書、鑑定書等がある場合とない場合、更に鑑定者の有名、無名等によって、その価格に相当の開差があることに留意する。」

 この点について、最高裁判所令和4年4月19日判決は、「相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。」「租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。

そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。」との判断を示しています。

 以上をまとめると、彫刻や骨董品は、売買実例価額や古物商等の精通者意見価格等を参考にして推計した市場価格に基づいて評価されることになります。

 

市場価格の探知方法

 彫刻や骨董品を市場価格に基づいて評価するとしても、彫刻や骨董品は工業生産品でないことから、メーカーによって定価や希望小売価格が定められているわけでも、同一品が店頭で販売されているわけでもありません。

 また、美術年鑑(株式会社美術年鑑社より毎年発行されている書籍であり、大きい図書館であれば閲覧することができます)は、信頼性が高く、とても頼りになる参考資料です。しかし、彫刻や骨董品に記されている落款や署名等を手掛かりにして美術年間に掲載されている作者のものであることが判明したとしても、当該彫刻や骨董品の市場価格がダイレクトに判明するものではなく、あくまでも参考程度にしかなりません。

 また、当該彫刻や骨董品の販売店(被相続人と付き合いがあった美術商や百貨店等)が判明していれば、現在の市場価格を販売店に確認することもできます。しかし、販売店としては、過去に販売した価格を大幅に下回る査定額を提示することは心情的にしにくいため、実際の市場価格よりも高額な査定額となってしまう可能性があります。

 そのため、複数の専門業者に査定を依頼し、上振れ価格や下振れ価格を取り除いた複数の査定額から市場価格を推計するほかありませんが、あくまでも推計であるため、実際の市場価格と乖離している可能性があることに注意しなければなりません(評価額が実際の市場価格よりも低額であれば、相続税が減ることになるため、税務署とトラブルになるリスクが発生します。これに対し、評価額が実際の市場価格よりも高額であれば、過大な相続税を納付することになります)。

参考:簡便な評価方法として

 最後に参考として、簡便な評価方法をお伝えします。

それは、相続人全員の合意の上で、きちんとしたルートを通じて売却してしまうことです。

売却する過程で査定書を入手することもできますので、買い手が見つからなかったとしても無駄ではありません(複数の業者に声をかけ、最も高い買値を付けたところに売却するようにすれば、売却ルートの合理性も確保することができます)。

また、税務署対策としても、実際の売得金を時価であるとして相続税申告されたものについて、売却ルートがきちんとしたものであればあるほど、時価はもっと高いはずだと言って否認することは難しいでしょう。

さらに、遺産分割をする際も、書画や骨董品を公平に分配するのは大変ですが、お金であれば簡単に分配することができますので、一つの方法として検討してみてください。

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