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弁護士コラム

株式の準共有とは?相続時の権利行使手続きとトラブル解決法を解説

相続税・事業承継対策
投稿日:2026年01月22日 | 
最終更新日:2026年01月22日

Q
父が経営していた会社の株式を、私・母・弟の3人で相続しました。しかし、遺産分割協議がまとまらない状態のまま、株主総会の案内が届いています。

弟とは経営方針をめぐって意見が対立しているのですが、このような場合、議決権はどのように行使されるのでしょうか?権利行使者の指定方法や、意見が割れた場合の対処法について教えてください。
Answer
遺言がない場合、遺産分割協議が完了するまで、株式は相続人全員の「準共有」となります。この状態では、各相続人が個別に議決権を行使することはできません。

議決権を行使するには、相続人の中から「権利行使者」を1名指定して会社に通知する必要があります。

権利行使者の指定は、持分の過半数の賛成で決定できます。弟と意見が対立していても、母と自身の持分が過半数を超えれば、権利行使者を指定することが可能です。


この記事では、準共有株式の権利行使の具体的な手続きや、相続人間で意見が対立した場合の対処法について詳しく解説します。

監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦

相続によって非上場株式を取得すると、遺産分割が終わるまでの間、その株式は相続人全員による「準共有」の状態になります。準共有は、株数を分けるものではなく、持分割合に応じて権利を共有する仕組みであるため、内容を正しく理解していないと、議決権の行使や会社とのやり取りをめぐって戸惑うことも少なくありません。
 
この記事では、非上場株式の相続で生じる準共有の基本的な考え方から、株主としての権利行使の方法、相続人間で意見が合わない場合の対応、準共有状態を解消するための選択肢などについて分かりやすく解説します。

相続で発生する非上場株式の「準共有」とは?

親や祖父母などが亡くなり、遺言書が残されておらず、非上場株式を複数の相続人で相続することになった場合、遺産分割協議が終わるまでの間、その株式は「準共有」状態になります。

準共有とは、株式など所有権以外の財産権を、複数の人で共同して持っている状態のことです(民法264条)。準共有について、民法の「共有」のルールが適用されます。

まずは、非上場株式が準共有になった場合の基本的な考え方と、権利行使のために必要な手続きの全体像を押さえましょう。

準共有は「株数」を分割するものではない

準共有は、株式について、各相続人が法定相続分(民法が定める相続割合の目安)に応じた持分割合で権利を有している状態です。法定相続分に応じて株式が自動的に分割されるのではありません。

例えば、100株の株式を相続する場合「妻が50株、子供が25株ずつ」などと分割するのではなく、相続人全員が、1株につき持分割合に応じた権利を持つことになります。

最終的に誰がどのように株式を取得するのかは、相続人全員による遺産分割協議で決まるため、それまでは株式全体を各相続人が暫定的に共同で所有している状態となります。

準共有持分の割合は法定相続分で決まる

株式を準共有する際の、各相続人の権利の割合(持分割合)は、民法で定められた「法定相続分」によって決まります。

例えば、相続人が配偶者と子供2人であった場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1です。そのため、株式が準共有になったときは、1株に対して配偶者2分の1、子供4分の1ずつの持分割合を有する状態となります。

この持分割合が、株主としての権利を行使する代表者(権利行使者)を決めたり、管理に関する決め事をしたりする際の議決権の基礎となります。

準共有株式における株主の権利行使の具体的な手続き

株式が準共有状態にある場合、各相続人が個別に株主総会で議決権を行使することはできません。

もし相続人が別々に権利を行使できると、会社の運営が混乱する恐れがあるため、会社法では準共有株式の権利行使に関するルールが定められています(会社法106条)。

その際のポイントは以下のとおりです。

  • 権利行使者を1名定めて会社に通知する
  • 権利行使者は準共有持分の過半数で決定する
  • 前提として株主名簿の名義書換も完了させる

この章では、準共有株式の権利を行使するための具体的な手順や必要書類、注意点を解説します。

権利行使者を1名定めて会社に通知する

準共有となっている株式の権利を行使するには、まず相続人の中から代表者1名を「権利行使者」として定め、その人の氏名を株式発行会社に通知しなければなりません。この通知がなければ、相続人は原則として議決権行使や株主提案権など、株主としての権利を行使することはできません。

会社に通知をする際は「権利行使者の指定通知書」といった書面を作成して提出するのが一般的です。後のトラブルを防ぐため、権利行使者の指定通知書には相続人全員が署名し押印したうえで送付するのが望ましいとされています。

なお、権利行使者とあわせて、会社からの通知を受け取る人(通知・催告受領者)も1名指定しておくと、その後のやり取りがスムーズになります。

権利行使者は準共有持分の過半数で決定する

権利行使者を決める際、相続人全員の同意は必須ではありません。権利行使者の指定は、相続人間の「管理に関する事項」に該当し(最判平成9年1月28日)、持分価格(各準共有者の持分に相当する株式の価格)の過半数の賛成があれば決定できるとされているためです。

例えば、法定相続人が妻(持分2分の1)と子A(持分4分の1)、子B(持分4分の1)の3人の場合、妻と子Aが賛成すれば、持分は合計で4分の3となり過半数を超えます。そのため、子Bが反対していても、妻と子Aが指定する人物を権利行使者にすることが可能です。

このようにして選ばれた権利行使者は、会社との関係においては、他の相続人の意向に反していても、自己の判断で議決権を行使できるとされています(最判昭和53年4月14日)。

前提として株主名簿の名義書換も完了させる

権利行使者の指定や通知を行うためには、前提として「株主名簿の名義書換」が必要です。

株主名簿が亡くなった方(被相続人)の名義のままでは、たとえ相続人であっても、会社に対して「自分たちが現在の株主である」と法的に主張することができません(会社法130条1項)。そのため、相続人が議決権を行使したとき、会社側から「あなたは株主名簿上の株主ではない」などと拒否されたときに対抗できないのです。

株式が準共有状態となったときは、発行先の会社に連絡し、株主名簿を亡くなった方から相続人に変更する手続きをしましょう。名義書換の手続きは権利行使者の指定通知と同時に行うことも可能です。

なお、株主名簿の名義書換については、別記事「非上場株式の相続名義変更とは?株主名簿の名義書換手続きを解説」にて詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

準共有者(相続人)間でトラブルになった場合の対処法

株式を準共有している相続人の中に連絡が取れない人物がいるときや関係性が芳しくないときは、権利行使者を決める協議が難航することがあります。また、選ばれた権利行使者が他の相続人の意見を聞かず独断で行動してしまうかもしれません。

この章では、そうしたトラブルに備えて一部の相続人と連絡が取れない状況でも手続きを進めるための考え方や、権利行使者を解任・変更する方法を説明します。

一部の相続人と連絡が取れない場合の権利行使者の定め方

権利行使者の指定は、準共有者(相続人)の持分価格の過半数で決めることができるため、全員で話し合いをするのが理想です。しかし、準共有者の全員で協議をして決める必要性については法律による規定や最高裁の判例が存在するわけではなく、法的な見解も分かれている状況です。

とはいえ、連絡が取れないからといってその相続人を抜きにして権利行使者を決めてしまうと、後でトラブルに発展するかもしれません。

そこで、一部の相続人と連絡が取れない場合は、住民票などで住所地を調査し、権利行使者の指定に同意を求める文書を内容証明郵便で送付するなどして「協議の機会を与えた」という証拠を残すことが望ましいです。

また、持分の過半数を占める相続人が所在不明で権利行使者の指定ができない場合もあります。このような場合、共有物管理に関する非訟事件制度(民法252条2項)を利用することも考えられます。

合理的な調査を尽くしても一部共有者の所在が不明な場合や、相当期間を定めて催告しても期間内に共有物の管理に関する賛否を明らかにしない共有者がいる場合は、裁判所に申立てを行い、許可を得ることで、その相続人を分母から除いて持分の過半数を計算することができます。

権利行使者が他の相続人の意向に反した場合の対処法

権利行使者が他の相続人の意向に反して議決権を行使しても、発行会社においてその決議は原則として有効とされます。判例によると、選ばれた権利行使者は、他の相続人の意見に反する権利行使もできるとされているためです(最判昭和53年4月14日)。

そのため、権利行使者ではない相続人が会社に対して「その権利行使と決議は無効だ」と主張するのは難しいでしょう。

一方、権利行使者は他の相続人に対して債務不履行等の責任を負う可能性はあります。例えば、権利行使者が独断で行動したことにより、他の相続人に損害が生じたときは、損害賠償を請求することが可能です。

ただし、権利行使者に対して損害賠償を請求する際、実際のいくらの損害が生じたのかを具体的に立証するのは難しいケースもあります。権利行使者が独断で権利行使をしたことでトラブルが生じた際は、相続に詳しい弁護士へ相談するのがよいでしょう。

独断的な権利行使者を解任・変更するための手続き

他の相続人の意向を無視する権利行使者は、解任・変更することが可能です。

権利行使者の解任も、選任と同じく共有物の「管理行為」にあたると考えられています。そのため、指定したときと同様に「準共有者の持分の価格の過半数」による決議で、現在の権利行使者を解任できるとする見解が優勢とされています。現在の権利行使者を解任するときは、持分の過半数を持つ相続人で決議を行いましょう。

また、新たな権利行使者を指定する決議も行い、その内容を新たな指定書に記載して会社に通知することで変更手続きができます。

裁判所での解決方法(非訟・訴訟・調停)

相続人間での話し合いが難しい場合や、会社側が手続きに応じない場合、裁判所を通じて解決できることがあります。

非訟事件(民法252条)での許可申立て

非訟事件での許可申立ては、一部の相続人を除外して準共有物の管理行為を決議できるようにする方法です。

民法252条2項にもとづき、合理的な調査を尽くしても所在が不明な相続人がいる場合や相当な期間を定めて催告しても賛否を明らかにしない相続人がいる場合に申立てができます。

申立てにより、裁判所の許可を得ることができれば、これらの相続人を決定の母数から除外し、残りの準共有者の持分の過半数で権利行使者を指定などができるようになります。

株主名簿書換請求訴訟の提起

株主名簿書換請求訴訟は、会社が正当な理由なく名義書換に応じない場合に、裁判所を通じて名義書換を強制できる訴訟です。

相続によって株式を取得した相続人が株主名簿の書換を要求しても、会社側が非協力的で拒否される場合があります。しかし、株主名簿の名義書換が完了していないと、株主としての権利(議決権行使など)を会社に対して主張できません(会社法130条)。

株主名簿書換請求訴訟を提起し、裁判所が請求を認める確定判決を下すと、その判決をもとに会社に株主名簿の名義書換を命じることができ、株主としての地位を会社に対抗できるようになります。

損害賠償・差止請求

準共有者間で議決権行使の方針や内容を決めていたにもかかわらず、権利行使者がそれに反して議決権を行使したことにより、他の相続人に損害が生じたときは、債務不履行や不法行為を理由に損害賠償を請求できる可能性があります。

また、例えば取締役が特定の株主に有利な条件で新株を発行しようとしているため、会社の行為を止めたい場合、株式の準共有者が会社に対して差止請求をすることができるのか問題となります。この場合、権利行使者として指定されている者は原告となることができます。

また、権利行使者の指定がない場合でも、準共有持分の割合がかなり大きい者などは、状況によっては、差止請求ができる可能性があります。

ただし、損害賠償請求は損害額の立証が難しく、差止請求についても法令違反や不当性を具体的に立証するためには専門的な知識が求められます。損害賠償請求や差止請求をする場合は、相続トラブルに詳しい弁護士に相談するのがよいでしょう。

株式準共有状態を解消する方法

株式が相続により準共有となっている場合、準共有を解消する方法としては以下の方法が考えられます。

  1. 1遺産分割協議で一人の相続人に株式を相続させる。
  2. 2株式の準共有持分を特定の相続人または第三者に譲渡する。
  3. 3会社の株式売渡制度を活用する。

この章では、それぞれの方法について解説します。

遺産分割協議

準共有状態を解消するもっとも一般的な方法は、相続人全員による遺産分割協議です。この協議により、どの相続人が株式を相続するかを決め、相続人の全員が合意すると、当該相続人に帰属します。

株式を特定の相続人に相続させる場合、現物分割や代償分割という方法をとることが多いです。

  • 現物分割:特定の相続人が株式をそのまま取得する分割方法
  • 代償分割:特定の相続人が株式をすべて相続する代わりに、他の相続人に対してその価値に見合う代償金を支払う分割方法

分割方法には上記の他にも「換価分割」がありますが、株式を売却して得られた現金を相続人間で分けるため、故人の株式を相続する人はいなくなります。

遺産分割協議で合意した内容は「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名・押印しましょう。この遺産分割協議書は、相続人間の「言った、言わない」のトラブルを防ぐために重要なだけでなく、株式の名義変更など相続手続きや相続税の申告の際にも必要です。

株式の準共有持分の譲渡

民法上、遺産分割前の相続分の譲渡ができると解されています(民法905条)。そして、相続分の譲渡には、相続財産を構成する個々の財産上の共有持分権の移転を含みます。そのため、相続人は相続財産中の特定財産について、自己の相続分に応じた共有持分を第三者に譲渡することができます。

このことから、相続財産の中にある株式についても、自己の相続分に応じた準共有持分を譲渡することができると解されます。

特定の相続人を除く共同相続人全員が特定の相続人又は共同相続人全員が第三者に株式の準共有持分を譲渡した場合、当該特定の相続人又は第三者に株式が帰属し、準共有は解消されます。

会社の売渡制度を活用

株式会社は、定款において、相続その他一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を会社に売り渡すよう請求できることを定めることができます(会社法174条)。この定めがある場合、期間制限は会社が相続その他一般承継を知ってから1年以内であれば、会社は株主総会特別決議により相続人等から強制的に株式を取得する請求をすることができます(会社法176条)。裁判例によれば、準共有状態にある株主の一部に対する売渡請求も可能です。

このように、相続人等に対する株式の売渡請求は、会社が相続人に対して行使する権利ですが、相続人から会社に働きかけ、売渡請求をしてもらうことも考えられます。例えば、会社の経営に関心を持つ相続人がおらず、全員が株式を現金化したいと考える場合、売渡請求をするよう働きかけることも検討してみましょう。

なお、定款に「相続人等に対する株式の売渡請求」の定めがある場合、会社から請求をされると相続人は原則として拒否できません。まずは、相続した株式を発行する会社の定款に、株式の売渡請求に関する定めがないかを確認しましょう。

売渡請求の対象となる株式の相続人は、株主総会における売渡請求の特別決議での議決権を持たず、承認されると株式の売却を拒否することはできませんが、売却価格を交渉することや、裁判所に売買価格決定の申立をすることが可能です。

売渡請求を受けた場合、相続人にとって不利な価格で買い取られることがないよう、価格交渉や法的手続きは弁護士に依頼することをおすすめします。

よくある質問(Q&A)

この章では、株式の準共有に関してよく寄せられる質問に回答します。

Q
相続人全員の意見が一致しないと議決権は行使できませんか?
Answer
準共有株式の議決権は、相続人が共同で行使するのが原則ですが、相続人全員の意見が一致しなくても議決権を行使できる場合があります。

具体的には、準共有者の中から代表して権利を行使する「権利行使者」を1名定め、会社に通知することで、議決権等の株主としての権利行使が可能となります(会社法106条)。

この権利行使者を決める行為は、法律上「管理行為」とされているため、全員の同意がなくても準共有持分の過半数の賛成で指定することが可能です。
Q
連絡の取れない相続人がいますが、権利行使者を決めることはできますか?
Answer
連絡が取れない相続人がいても、権利行使者を決められる場合があります。

まず前提として、連絡が取れない相続人に対して、住民票の調査や内容証明郵便の送付など、連絡を取るための合理的な努力をし、協議の機会を提供することが望ましいです。そのうえで、連絡が取れない相続人を除いた他の相続人の持分だけで「全体の過半数」を確保できるなら、権利行使者を指定することが可能です。

連絡可能な相続人のみで過半数を確保することが難しい場合は、非訟事件での許可申立てをする方法があります。合理的な調査を尽くしても所在不明な場合などは、裁判所の許可を得ることで、その所在不明者を除いた相続人の持分の過半数で権利行使者を決めることができます(民法252条2項)。
Q
指定した権利行使者が勝手な議決権行使をした場合、その決議は無効になりますか?
Answer
権利行使者が勝手に議決権行使をしたとしても、会社との関係では、原則としてその株主総会の決議は無効になりません。

ただし、他の相続人は、勝手な行動をした権利行使者に対し、義務違反(善管注意義務違反など)として損害賠償を請求できる可能性があります。

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相続によって株式が準共有の状態になると、株主としての権利を行使するためには所定の手続きが必要です。具体的には、株主名簿の名義を亡くなった方から相続人全員へ書き換え、相続人の中から「権利行使者」を1名定め、会社へ通知しなければなりません。

また、「選ばれた権利行使者が独断で行動してしまう」「会社から株式の売却を求められる」など意図しないトラブルが生じることもあります。

非上場株式の相続では、準共有という特殊な状態が生じるため、手続きの進め方や判断を誤ると、相続人間の対立や会社経営への影響につながることもあります。特に、権利行使の方法や準共有の解消をめぐって悩まれるケースは少なくありません。

直法律事務所では、非上場株式の相続などの相続問題に精通した弁護士が、状況に応じて丁寧にサポートいたします。対応に迷われた場合や、少しでも不安がある場合には、まずは一度ご相談ください。

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