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弁護士コラム
不動産の評価額はどう決める?【相続税の申告】
- 相続税・事業承継対策
- 投稿日:2023年02月21日 |
最終更新日:2023年02月21日
- Q
-
相続税の申告をするのですが、相続財産はどのような方法で評価したらよいでしょうか?
具体的に教えてください。
- Answer
-
相続税の申告に当たって、相続財産を評価する方法は下記の2つです。
①個別評価法
②評価基準による評価法
相続財産の性質により、いずれの評価方法を用いるかが異なります。
例えば、不動産を相続した場合には、②評価基準による評価法を用います。
本記事では、相続税の申告にあたって、相続財産としてもっとも典型的な不動産の評価方法を中心に、具体的に説明します。
目次
財産評価の原則 ~時価主義について~
まず、相続税の申告にあたって、相続財産の価格の評価は、時価主義によります。
時価主義とは、原則として時価によって評価する建て前のことです(相続税法22条)。
(相続税法)第二十二条 この章(注:第三章 財産の評価)で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。 |
ところが、この「時価により」という文言のほかに、相続税法上の規定がありません。
つまり、ここでいう「時価」とは一体いつを基準とした価格のことなのか、また、どのように「時価」を算定したらよいのか、「時価」の意義およびその評価方法について、相続税法上に定めがないということなのです。
そこで、国税庁による、「財産評価基本通達」に基づいて、「時価」の意義およびその評価方法が、統一的に取り扱われています。
なお、「財産評価基本通達」の全体像を目次からご確認されたい場合には、こちらの国税庁のホームページをご参照されるのが便利です。
不動産の評価方法について
総説
不動産の価格は、前述の時価主義によりつつ、主に以下の3通りの方法によって評価されます。
- a.路線価方式
- b.倍率方式
- c.比準方式
です。
a.路線価方式は、市街地内の宅地の評価に用いられます。
b.倍率方式は、市街地内の宅地以外の宅地や、大部分の農地、山林、家屋の評価に用いられます。
c.比準方式は、市街地内及びその周辺の農地、山林の評価に用いられます。
宅地の場合
上記のとおり、市街地内の宅地の評価にa.路線価方式、市街地内の宅地以外の宅地にb.倍率方式が用いられます。
言い換えれば、宅地の価格は、a.路線価方式とb.倍率方式、いずれかの方法によって評価する、ということになります。
それぞれの方式について、詳しく説明します。
a.路線価方式
まず、路線価方式とは、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、財産評価基本通達の15≪奥行価格補正≫から20-7≪容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価≫までの定めにより計算した金額によって、評価する方式をいいます。
路線価とは、その道路に面している標準的な宅地の1平方メートル当たりの千円単位の価額のことです。
評価する宅地の面する路線の路線価を基として、
- 路線価が付された地域の宅地を評価する場合
- 側方路線(または裏面路線)に宅地の一部が接している場合
と場合分けをし、調整を行います。
画地の条件に応じ、様々な調整計算をする必要が生じますが、主な調整計算には次のようなものがあります。
- 正面路線価の奥行価格補正(15)
- 側方路線影響加算額の計算(16)
- 二方路線影響加算額の計算(17)
- 三方又は四方路線影響加算(18)
- 不整形地の評価(20)
- 地積規模の大きな宅地の評価(20-2)
- 無道路地の評価(20-3)
- 間口が狭小な宅地等の評価(20-4)
- がけ地等を有する宅地の評価(20-5)
- 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価(20-6)
- 容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価(20-7)
(※カッコ内の数字は、財産評価基本通達上の付番と対応しています。)
路線価方式についての詳しい計算方法については、国税庁のホームページからもご確認をいただけます。宅地及び宅地の上に存する権利|国税庁
b.倍率方式
次に、倍率方式とは、固定資産税評価額に対して、国税局長が一定の地域ごとに、その地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいいます。
倍率方式についての詳しい計算方法についても、国税庁のホームページをご参照ください。
c.貸家建付地の評価
貸家(財産評価基本通達94≪借家権の評価≫に定める借家権の目的となっている家屋のことです。)の敷地のために用いられている宅地(「貸家建付地」といいます。)の価額は、個々の具体的な権利関係に基づいて、個別に調整が行われます。
詳しい調整方法については、(貸宅地の評価)|国税庁からご確認をいただけます。
【参考】財産評価基本通達94≪借家権の価額≫については、下記をご参照ください
コラム:不動産を人に貸している場合の注意点
不動産の取扱いへの影響
土地建物を賃貸に供している場合でも、その土地が遺産分割の対象となる点、相続税課税の対象となる点に異なるところはありません。
ただし、賃借権の負担があるために、自用地よりも相続税課税価額が下がります。
その計算式の概略は以下のとおりです。
ア 貸宅地の評価
① 借地権設定時に通常の金額の権利金を受領している場合(財産評価基本通達25)
自用地評価×(1−借地権割合) |
ただし、借地権慣行のない地域の貸宅地の場合には、借地権割合を20%として計算します。
② 借地権設定時に権利金を受領しない代わりに、賃料を通常より高い水準(=「相当の地代」)で受領している場合(相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて6(1))、あるいは、法人が借主で、かつ、土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合(相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて8)
自用地評価×80% |
③ 借地権設定時に通常の金額の権利金を受領せず、賃料も上記「相当の地代」に満たない場合等(相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて6(2)・7)
ⓐ 自用地評価から、この場合の借地権評価額(Q18参照)を控除した金額 ⓑ 自用地評価×80% 上記ⓐⓑのいずれか低い方の金額 |
イ 貸家建付地の評価(財産評価基本通達26)
自用地評価×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
ウ 貸家の評価(財産評価基本通達93)
建物の価額×(1−借家権割合×賃貸割合) |
不動産の借地権について
借地権は、相続税課税の対象となるのが通常です。
例外として、借地権設定の対価として権利金その他の一時金を支払うなどの借地権の取引慣行(=「借地権慣行」)がない地域にある借地権については課税対象外となりますが、そのような借地権は多くありません(財産評価基本通達27ただし書)。
その評価額については、主に
- 1「(定期借地権等・一時使用目的の借地権ではない)借地権」
- 2「定期借地権等」
- 3「一時使用目的の借地権」
の3つの区分に応じた評価方法があります。
東日本大震災による被災の特例
平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、不動産の評価に著しい影響が生じました。
そこで、混乱を最小限に抑えるべく、被災した場合の特別な取扱いが定められました。
a. 震災前(平成23年3月10日以前)に取得した特定土地等について
・平成22年5月11日から平成23年3月10日までの間に相続等により取得 または
・平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得 したものであって、
・平成23年3月11日において所有していたもの
の価額は、その取得の時の時価によるのではなく、「震災の発生直後の価額(震災後を基準とした価額)」によることができるとされています。
b. 震災前(平成23年3月10日以前)に取得した家屋について
・震災前に相続等又は贈与により取得した家屋が、
・申告期限前に被害を受けた場合には、
・一定の要件に該当すれば、
災害減免措置の対象になります。
c. 震災後(平成23年3月11日以後)に取得した土地等について
平成23年3月11日から平成23年12月31日までの間に相続等又は贈与により取得した土地等の評価方法は、次のとおりです。
・指定地域内にある土地等:
平成23年分の路線価及び評価倍率に「調整率」を乗じて計算することができます。
・指定地域外にある土地等:
平成23年分の路線価及び評価倍率により計算します。
東日本大震災による被災の特例についての詳しい計算方法については、下記国税庁のホームページからもご確認をいただけます。
東日本大震災により被害を受けられた方へ(相続税・贈与税に係る財産評価関係)|国税庁
不動産の評価で困ったら、弁護士に相談を
いかがでしたでしょうか。
不動産の評価は、相続税の算定のためにも大変重要ですが、いかなる方法により計算すべきか、判断に困ることもあると思います。
本記事で、あらましを掴み、相続税の負担がどの程度になるのか、把握できるとよいですね。
不動産の評価は複雑ですので、専門家にご相談されることもおすすめします。
お困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
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