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弁護士コラム
退職手当金や功労金に、相続税はかかる?【みなし相続財産】
- 相続税・事業承継対策
- 投稿日:2022年12月05日 |
最終更新日:2022年12月05日
- Q
- 退職手当金や功労金に、相続税はかかるのでしょうか?
- Answer
-
結論からいえば、退職手当金や功労金で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産と「みなされ」、相続税が課せられます。
本記事でわかりやすく解説します。
死亡退職金・功労金とみなし相続財産
まず、死亡退職金や功労金は、一定の場合には、相続(又は、遺贈)によって取得したとして、相続財産とみなされる場合があります。
具体的には、
- 退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(下記の「※注意点その1」もご参照ください。)で、
- 被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものについて
- その支給を受けた場合
- その給与の支給を受けた者について、その給与
が、相続により取得したものとみなされます(相続税法第三条・第一項第二号参照)
※注意点その1
退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与には、政令で定める給付も含まれます(相続税法第三条・第一項第二号かっこ書き参照)。
また、相続財産とみなされる退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与は、被相続人に支給されるべきであったものに限られます。
(相続税法第三条・第一項柱書) 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、…各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。… (第二号) 被相続人の死亡により相続人…が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与 |
※注意点その2
上記のように、死亡退職金や功労金を取得した者が相続人であるときは、その財産を相続により取得したものとみなします。
他方、死亡退職金や功労金を取得した者が相続人以外の者であるときは、その財産を遺贈により取得したものとみなされることになります(相続税法第三条・第一項参照)。
もっとも、相続税法上、相続と遺贈は同じように取り扱われますから、実質的な差異はないといえます。
では、このように、死亡退職金や功労金が一定の場合に相続(又は、遺贈)によって取得したとして、相続財産とみなされる場合があるのはどうしてなのでしょうか。
被相続人が死亡し、会社の就業規則に基づき、死亡退職金や功労金が受給権者である相続人等に支払われた場合を想定してみましょう。
この場合には、その死亡退職金や功労金は、受給権者である相続人等に、原始的に帰属します。
言い換えれば、その死亡退職金や功労金がいったん被相続人の財産に帰属したあとに、相続人等が相続により承継取得するわけではない、ということです。
そうだとすれば、その死亡退職金や功労金は、被相続人の死亡と同時に、受給権者である相続人等にはじめから帰属していることになります。あえてもう一度言い換えるなら、被相続人に帰属していた財産とは言えない、つまり、相続財産ではないということです。相続財産でないのですから、確かに、本来的には、相続税は課せられないのが道理であるといえそうです。
しかし、例え相続人等が受給権者とされており、被相続人の死亡と同時に、相続人等にはじめから帰属していることになるとしても、死亡退職金や功労金は、被相続人が退職したことや、一定期間以上にわたり勤労に励んだことに対する、まさに「功労」金なわけです。
そうだとすれば、実質的には相続財産と違いがありません。
なぜなら、死亡退職金や功労金は、生前の被相続人の勤労に由来する、本来は被相続人が得るべきだった財産といえるからです。
だからこそ、生命保険金を、被相続人から、相続(又は遺贈)により取得したものとみなすという、「みなし相続財産」の規定が存在するのです。
★「みなし相続財産」にどのような財産がありうるかについては、国税庁のホームページでもご参照いただけます。
退職手当金・功労金等
そうだとすると、相続税を計算するうえでは、退職手当金や、功労金とはどのようなものかが問題となります。
まず、退職手当金等とは、その名義がなんであれ、実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品をいいます(相続税法基本通達 3-18参照)。
(相続税法基本通達) 3-18 法(注:相続税法のこと)第3条第1項第2号に規定する「被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与」(以下「退職手当金等」という。)とは、その名義のいかんにかかわらず実質上被相続人の退職手当金等として支給される金品をいうものとする。 |
次に、退職手当金等にあたるかどうか、その判断も重要となります。
その判断は、次のような基準にあてはめて検討します。
(パターン①)
当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合
・その退職給与規程にしたがい、退職手当金等にあたるかどうか判定します。
(パターン②)
それ以外の場合
・その被相続人の地位、功労等を考慮して、
・被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業を想定し、被相続人と同じような地位の者が受ける(だろう)金額を勘案して、
退職手当金等にあたるかどうか判定します。
(相続税法基本通達) 3-19 被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける金品が退職手当金等に該当するかどうかは、当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合においてはこれにより、その他の場合においては当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定するものとする。 |
そして、退職手当金等にあたるかどうかは、現金により支給されるか、現物により支給されるかによっては左右されません(相続税法基本通達 3-24参照)。
(相続税法基本通達) 3-24 法(注:相続税法のこと)第3条第1項第2号に規定する「給与」には、現物で支給されるものも含むのであるから留意する。 |
もっとも、以下の場合は、退職手当金等には該当しないため、注意が必要です。
- 被相続人の死亡後確定した賞与
- 支給期の到来していない給与
これらは、いずれも被相続人に帰属した相続財産であると考えられています。
だからこそ、相続財産と「みなす」までもなく、相続税の課税対象となるのです。
(相続税法基本通達) 3-32 被相続人が受けるべきであった賞与の額が被相続人の死亡後確定したものは、法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意する。 3-33 相続開始の時において支給期の到来していない俸給、給料等は、法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意する。 |
★相続税法基本通達のうち、退職手当金関係については、ら国税庁のホームページもご参照いただけます。
★相続税法基本通達の詳細については、こちらのページもご参照いただけます。
退職手当金等の非課税制度
具体的には、原則として一人当たり500万円まで、非課税限度として課税価格から控除されます。
ただし、以下の者は、500万円の控除は認められないため、注意が必要です。
- 相続を放棄した者
- 相続権を失った者
- 相続人でない受遺者が取得した退職手当金等
★非課税となる退職手当金等の詳細については、国税庁のこちらのページからもご参照いただけます。
相続税で困ったら、弁護士に相談を
死亡退職金や功労金は、一定の場合には、相続(又は、遺贈)によって取得したとして、相続財産とみなされる場合があります。
とくに、被相続人の死亡後三年以内に支給が確定したものであるかどうかについて、注意が必要です。
受給した金員の性質を十分検討して、誤りのないよう、相続税の申告を行いましょう。
お困りの際は、お早めに当事務所の弁護士までお問い合わせください。
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