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弁護士コラム

生命保険金に相続税はかかる?【みなし相続財産】

相続税・事業承継対策
投稿日:2022年10月20日 | 
最終更新日:2022年10月20日
Q
生命保険金を受け取ったのですが、どの程度の相続税や贈与税がかかるのでしょうか?
Answer
結論からいえば、生命保険金のうち、相続財産とみなされるものについて、相続税が課せられることになります。
したがって、相続財産にあたるとされるかぎりで、相続税や贈与税がかかります。

本記事でわかりやすくご説明します。

みなし相続財産

まず、生命保険金は、一定の場合には、相続(又は、遺贈)によって取得したとして、相続財産とみなされる場合があります。

具体的には、

  • 相続開始の時において、
  • まだ保険事故が発生していない生命保険契約で
  • 被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、

かつ、

  • 被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合

    においては、

  • 被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で、
  • 相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分

    について、

相続により取得したものとみなされます(相続税法第三条・第一項第三号参照)

(相続税法第三条・第一項柱書)
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、…各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。…
(第三号)
相続開始の時において、まだ保険事故(共済事故を含む。以下同じ。)が発生していない生命保険契約…で被相続人が保険料の全部又は一部を負担し、かつ、
被相続人以外の者が当該生命保険契約の契約者であるものがある場合においては、…当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額…に係る保険料で
当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分

※注意点その1

上記のように、保険金を取得した者が相続人であるときは、その財産を相続により取得したものとみなします。

他方、保険金を取得した者が相続人以外の者であるときは、その財産を遺贈により取得したものとみなされることになります(相続税法第三条・第一項参照)。

もっとも、相続税法上、相続と遺贈は同じように取り扱われますから、実質的な差異はないといえます。

では、このように、生命保険金が一定の場合に相続(又は、遺贈)によって取得したとして、相続財産とみなされる場合があるのはどうしてなのでしょうか。

相続人等が保険金受取人に指定され、被相続人が死亡した場合を想定してみましょう。

この場合には、その保険金は、保険金受取人である相続人等に、原始的に帰属します。

言い換えれば、その保険金がいったん被相続人の財産に帰属したあとに、相続人等が相続により承継取得するのではない、ということです。

そうだとすれば、その保険金は、被相続人の死亡と同時に、相続人等にはじめから帰属していることになります。あえてもう一度言い換えるなら、被相続人に帰属していた財産とは言えない、つまり、相続財産ではないということです。相続財産でないのですから、確かに、本来的には、相続税は課せられないのが道理であるといえそうです。

しかし、例え相続人等が保険金受取人に指定されており、被相続人の死亡と同時に、相続人等にはじめから帰属していることになるとしても、保険料を被相続人が負担していた場合には、実質的には相続財産と違いがありません。なぜなら、生前の被相続人の財産を原資としているからです。

だからこそ、生命保険金を、被相続人から、相続(又は遺贈)により取得したものとみなすという、「みなし相続財産」の規定が存在するのです。

「みなし相続財産」にどのような財産がありうるかについては、国税庁のホームページ「相続税がかかる財産」からもご参照いただけます。

※注意点その2

上記の場合と異なり、被相続人が、被相続人自身を被保険者及び保険金受取人として保険契約を締結し、特に他者を保険金受取人として指定することなく、そのまま死亡した場合を想定してみましょう。

この場合には、保険金は、被相続人が受け取るはずであった財産です。言い換えれば、この保険金は、相続財産そのものです。したがって、このような保険金については、「みなし相続財産」とするまでもなく、いわばストレートに相続税が課されることになるわけです。

保険料の負担者

上記のような場合には、保険料の負担者は、その保険金の受取人です。

そもそも、保険金を受け取った際の課税関係を検討するためには、保険料の負担者が誰であるのか、という視点が重要です。

繰り返しになりますが、被相続人の死亡により、(被相続人本人ではなく)相続人等が取得する保険金であって、対応する保険料を被相続人が支払っていた場合は、「みなし相続財産」として相続税が課せられることになります。

※注意点その3(参考)

以上と異なり、被相続人又は保険金受取人以外の第三者が保険料を負担していた場合には、保険金受取人が保険料負担者から贈与によって取得したものとみなされます。この場合には、贈与税が課せられることになります。

※注意点その4(参考)

以上と異なり、保険金受取人自身が保険料を負担していた場合には、保険金受取人自身が保険料負担により得た保険金については、相続も贈与も受けていません。したがって、相続税や贈与税ではなく、単純に所得税が課せられることになります。

生命保険金等の範囲

「みなし相続財産」とされる保険金の範囲は、次のものに限定されます。

  • 生命保険契約の保険金(下記の「※注意点その5」もご参照ください。)

又は

  • 損害保険契約の保険金(下記の「※注意点その6」もご参照ください。)

なお、「みなし相続財産」とされる保険金の範囲については、相続税法施行令第一条の二・第一項以下に詳細な定めがあります。

※注意点その5

生命保険契約とは、保険業法第二条第三項に規定する生命保険会社と締結した保険契約、及び、これに類する共済に係る契約を含みます。

したがって、保険金には、共済金も含まれます。

(相続税法第三条・第一項 第一号、相続税法施行令第一条の二・第一項 第一号参照)

(相続税法施行令第一条の二・第一項 第一号)
法(注:相続税法のこと)第三条第一項第一号に規定する生命保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約は、次に掲げる契約とする。
一 保険業法第二条第三項(定義)に規定する生命保険会社と締結した保険契約…

※注意点その6

損害保険契約とは、保険業法第二条第四項に規定する損害保険会社と締結した保険契約その他の政令で定める契約をいいます。また、相続税法第三条の「みなし相続財産」規定の適用を受けるのは、偶然な事故に基因する死亡に伴い支払われるものに限定されます。

(相続税法第三条・第一項 第一号参照)

生命保険金等の非課税限度

相続人が取得した生命保険金等については、原則として一人あたり500万円まで、非課税限度として課税価格から控除されます。

ただし、この死亡保険金の受取人が、相続放棄や相続権を失った人である場合には、控除は認められません。

詳しくは、国税庁のホームページ「相続税の課税対象になる死亡保険金」からもご参照いただけます。

みなし贈与財産

以上のように、「みなし相続財産」の規定が存在するのは、実質的には相続によって財産を取得した場合と違いがないから、という点に理由がありました。

同様に、実質的には贈与によって財産を取得した場合と違いがない時には、そのような財産の取得を贈与による財産の取得とみなして、贈与税が課されることがあります。

そして、生命保険金についても、贈与による財産の取得とみなされて、贈与税が課されることがあります。

具体的には、

  • 生命保険契約又は損害保険契約の保険事故が発生した場合において、
  • 保険受取人以外の者がその契約の保険料の全部または一部を負担しているときは、
  • 保険金受取人が取得した保険金のうち、保険金受取人以外の者が負担した保険料に対応する部分について、
  • その保険受取人が、保険料を負担した者から贈与によって取得した

とみなされることになります。

なお、贈与がなされたとみなされるタイミングは、保険事故発生のときです。

(相続税法第五条)
生命保険契約の保険事故(…死亡を伴わないものを除く。)又は損害保険契約の保険事故(偶然な事故に基因する保険事故で死亡を伴うものに限る。)が発生した場合において、これらの契約に係る保険料の全部又は一部が保険金受取人以外の者によつて負担されたものであるときは、これらの保険事故が発生した時において、保険金受取人が、その取得した保険金…のうち…当該保険金受取人以外の者が負担した保険料の金額…相当…部分を当該保険料を負担した者から贈与により取得したものとみなす

※注意点その7

みなし贈与財産の対象とされているのは、

  • 信託受益権(相続税法第九条の二~第九条の五)
  • 保険金(相続税法第五条)
  • 定期金(相続税法第六条)
  • 低額譲受による利益(相続税法第七条)
  • 債務免除等による利益(相続税法第八条)
  • その他利益の享受(相続税法第九条)

です。

相続税でのお悩みは、弁護士に相談を

生命保険金を受け取った場合には、生命保険金のうち、相続財産とみなされるものについて、相続税が課せられることになります。

そして、相続財産とみなされるかどうかは、保険料の負担者が誰であるかという視点が重要となります。

詳細な定めがあるため、いかなる税が課せられるのか、慎重に検討しましょう。

迷われた際は、当事務所の弁護士までお問い合わせください。

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