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弁護士コラム

養子縁組は相続税対策になる?有効性と注意点を解説

相続税・事業承継対策
投稿日:2022年08月09日 | 
最終更新日:2022年08月09日
Q
相続税対策をする目的で養子縁組を考えているのですが、これは有効なのでしょうか?
Answer
養子縁組には縁組の意思が必要ですが、判例では、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものとして、相続税対策を目的とする養子縁組も有効としています。

ただし、判例は、民法上での養子縁組の有効性を判断したもので、相続税の計算における有効性を判断したものではありません。そのため、相続税の計算においては、相続税対策のみを目的とした養子縁組では、相続人の1人としてカウントされない可能性もあるため注意が必要です。

養子縁組が相続税対策となるのは、次の理由があります。

● 相続人の数が増えると基礎控除額が増える
● 相続人の数が増えると生命保険の非課税枠が増える
● 相続人の数が増えると死亡退職金の非課税枠が増える
● 1人あたりの相続分が減ることで税率が低くなる

養子縁組は相続税対策として有効な手段ですが、相続税の計算においてカウントされないリスクなども考慮し、慎重な判断のうえで利用を検討するようにしましょう。

相続税対策を目的とした養子縁組の有効性

相続税対策を目的とした養子縁組は有効なのでしょうか。

養子縁組は、「当事者間に縁組をする意思がないとき」は無効になります(民法802条1号)。

ここでは、相続税対策を目的とした養子縁組と縁組の意思の関係について解説します。

養子縁組には養子縁組をする意思が必要

当事者間に縁組をする意思がないときには、養子縁組は無効となるため、養子縁組が有効に成立するためには、縁組をする意思が必要です。

縁組をする意思には、養子縁組届けをする意思(形式的意思)と、真に養親子関係の設定を欲する効果意思(実質的意思)があります。

判例では、養子縁組をする意思は、形式的意思だけでは足りず、実質的意思も必要であるとされています(最判昭和23年12月23日)。

相続税対策を目的とした養子縁組と縁組の意思

縁組の意思として、実質的意思が必要であるのならば、相続税対策を目的とした養子縁組については、縁組の意思が認められず無効となるとも考えられます。

しかし、最高裁は、相続税対策のために孫との間で養子縁組を行ったことの有効性が争われた事案において、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできないと判断しました。

つまり、最高裁は、相続税対策を目的とした養子縁組の有効性を認めたのです。

そして、その理由については、次のように判示しています。

「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。」

ただし、この判例は、相続税対策を目的した養子縁組について民法上の有効性を認めたもので、税法上も当然に妥当するものではないことには注意が必要です。

養子縁組が単に相続税の節税だけを目的としてされたものである場合には、相続税の計算において、相続人の1人として数えられない可能性もあります。

参照:国税庁相続人の中に養子がいるとき

縁組の意思がない場合とは

過去の判例で、縁組の意思がないとされたものとしては、兵役義務を免れる手段としてなされた縁組、学区制を免れ進学率の良い学校へ転校するためにのみ行われた縁組などがあります。

なぜ養子縁組が相続税対策となるのか

相続税対策を目的とした養子縁組は、基本的に有効ですが、そもそも養子縁組が相続対策となるのは何故でしょうか。

ここでは、養子縁組が相続税対策となる理由を4つ紹介します。

相続人の数が増えると基礎控除額も増える

相続税には、基礎控除額があります。基礎控除額とは、課税の対象から控除される額のことです。

相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」で計算されます。

つまり、法定相続人の額が増えると、基礎控除額も増えます。養子も法定相続人となるため、養子縁組で法定相続人の数が増えることで基礎控除額も増えるのです。

たとえば、法定相続人が実子1名のみの場合、基礎控除額は、3000万円+600万円×1=3600万円となりますが、養子縁組で相続人が1名増えると、3000万円+600万円×2=4200万円に増額されます。

相続人の数が増えると生命保険の非課税枠も増える

被相続人の死亡によって支払われる生命保険金も課税の対象となります。ただし、「法定相続人の人数×500万円」の範囲は非課税です。

つまり、養子縁組で相続人が1人増えると、非課税枠が500万円増えることになります。

相続人の数が増えると死亡退職金の非課税枠も増える

被相続人が死亡したことで、死亡退職金が支払われる場合、死亡退職金も課税の対象となります。

死亡退職金も生命保険金と同じく、「法定相続人の人数×500万円」の範囲が非課税です。

つまり、死亡退職金についても、養子縁組で相続人が1人増えると、非課税枠が500万円増えます。

1人あたりの相続分が減ることで税率が低くなる

相続税は、課税対象の額が多いほど税率が高くなる累進課税の制度となっています。

具体的には、次のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%-
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

参照:国税庁「相続税の税率

相続人の人数が増えると、基礎控除額が増えるだけでなく、1人当たりの法定相続分も減少します。そのため、相続税の税率も低くなります。

たとえば、相続財産が1億円で、相続人が実子1名の場合の相続税は、次のとおりです。

課税対象 1億円ー基礎控除額3600万円=6,400万円
相続額  6,400万円×30%ー700万円=1,220万円

一方、同じ事例で養子が1名増えた場合の相続税は、次のとおりです。

課税対象      1億円ー基礎控除額4,200万円=5,800万円
1人当たりの相続額 2,900万円×15%ー50万円=385万円
相続額の総額     385万円×2=770万円

このとおり、相続人が1名増えるだけで、相続税の額は大きく減ることになります。

養子縁組の方法

養子縁組によって相続人を増やすことで、相続税の額を減らすことができますが、養子縁組には次の2つの方法があります。

  1. 1普通養子縁組
  2. 2特別養子縁組

ここでは、2つの養子縁組の方法について、要件と手続きの方法を解説します。

①普通養子縁組

養子縁組を行う場合、多くはこの普通養子縁組を利用することになります。

普通養子縁組の成立要件は次のとおりです。

実質的要件・社会通念上親子と認められる関係を成立させるという縁組意思の合致

・養親となる者が成人に達していること(民法792条)

・養子となる者が養親となる者の尊属又は年長者でないこと(民法793条)

・後見人が被後見人を養子するには、家庭裁判所の許可が必要(民法794条)

・未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要(民法798条本文)
 ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合には扶養

・配偶者のある者が養子縁組をする場合
 原則として配偶者の同意が必要(民法796条本文)
 未成年者を養子とする場合には夫婦共同縁組の原則(民法795条本文)

・代諾縁組の場合(民法797条)
 養子となる者が15歳未満の場合、家庭裁判所の許可に加え、法定代理人による  
 縁組の承諾が必要
 親権者と監護者が別である場合には監護者の同意も必要
形式的要件・書面又は口頭により縁組の届出をすること(民法799条、739条)

普通養子縁組が行われた場合であっても、実の親子関係はそのまま継続されます。つまり、養子は、実の父母に加えて、新たに養父母の相続人ともなる地位を得るのです。

普通養子縁組の手続きは、市区町村の窓口に次の書類を提出することで行います。

  • 養子縁組届
  • 家庭裁判所の許可を得た審判の謄本
    後見人が被後見人を養子とする場合もしくは未成年者を養子とする場合に必要
  • 養親、養子の戸籍謄本
  • 届出を行う者の本人確認書類

②特別養子縁組

養子縁組には、普通養子縁組だけでなく、一定の条件を満たすことで。実の親子関係を解消し、養子が養父母の実子として取り扱われることになる特別養子縁組の制度もあります。

特別養子縁組は、実親による監護が著しく困難又は不適当であるなどの特別の事情があり、その子の利益のために特に必要があると認められる場合に家庭裁判所の審判により実親子関係と同等の養親子関係を創設させることを目的とする制度です。

特別養子縁組を行うための要件は次のとおりです。

実質的要件・養子となる者が、養親となる者の家庭裁判所への請求時に15歳未満であること(民法817条の5第1項前段)
 ただし、一定の条件を満たす場合には、養子となる者が18歳に達するまで
 手続きが可能

・養子となる者が15歳に達している場合には、その者の同意が必要
 (民法817条の5第3項)

・養親が25歳以上であること(民法817条の4本文)
 ただし、夫婦の一方が25歳以上の場合は、他方は20歳以上で特別養子縁組が
 可能

・養親共同縁組の原則(民法817条の3第2項本文)

・特別養子縁組を行う必要性(民法817条の7)

・実父母及び養父母の同意(民法817条の6本文)

・6か月以上の試験養育の結果を考慮する(民法817条の8)
形式的要件・養親となる者の請求に基づいて、家庭裁判所の審判が行われることにより
 成立する(民法817条の2)

特別養子縁組は、実の親子関係を解消し、養父母との間で実の親子関係と同等の関係を生じさせるものであるため、普通養子縁組に比べて厳格な手続きが必要となります。

特別養子縁組を成立させるためには、実父母による監護が著しく困難又は不適当であるなど特別養子縁組を行う必要性がなくてはなりませんし、実際に6か月以上の試験養育の結果、問題がないと認められる必要があります。

相続対策として養子縁組をする場合の注意点

養子縁組は、基本的に相続対策として有効なものですが、安易に養子縁組を行うことはおすすめできません。ここでは、相続対策として養子縁組を行う場合に、最低限注意しておくべきポイントを5つ紹介します。

気が変わっても養子縁組は容易に解消できない

一度、養子縁組が成立すると、後に養親子関係が悪化するなどしても養子縁組を解消することは容易ではありません。

養子縁組を解消するには、離縁の手続きが必要です。離縁が成立するためには、養親と養子が養子縁組を解消することに合意していなければなりません(民法811条1項)。

合意がない場合、裁判による離縁が必要となりますが、裁判による離縁が認められるのは、「悪意の遺棄があるとき」、「一方の生死が3年以上明らかでないとき」、「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」に限られます。単に養子と養親の関係が不仲になったというだけでは裁判による離縁は認められません。

よく問題となるケースとしては、実子の妻を養子とした後に実子と養子となった妻が離婚したというものです。このケースでは、実子と妻との婚姻関係が解消されても、養親子関係は解消されません。そのため、元妻は、依然として相続人として扱われることになってしまうのです。

養子縁組を行う際は、後の人間関係なども考慮し、慎重に判断するようにしましょう。

養子が法定相続人となれる人数には上限がある

養子が相続税対策になると言っても、相続税の計算において養子が法定相続人となれる人数には上限があります。

具体的には、実子がいる場合には1人まで、実子がいない場合には2人までが法定相続人となることができます。

つまり、実子がいる場合に2人と養子縁組をしても、相続税の計算においては、1人のみが法定相続人としてカウントされ、もう1人は、相続人でありながら、相続税の計算においては人数にカウントされません。

ただし、特別養子縁組の場合や配偶者の連れ子を養子とした場合、代襲相続人である孫を養子とした場合には人数の上限なく何人でもカウントされます。これらのケースでは、相続税対策での養子縁組でないことが明らかと言えるためです。

孫を養子にすると相続税が加算される

相続税対策として、孫を養子とする場合、相続税の納税額が2割加算されます。

孫を養子とする場合、本来は、被相続人から子に、子から孫にと2度の相続手続きが必要なところ、1度の相続手続きで済むため、相続税の支払いも1度で済ませることができます。これは相続税対策として非常に有効な手段のため、相続税を2割加算することで一定の制限が課されているのです。

もっとも、相続税が2割加算されたとしても、法定相続人の人数が増えることや、相続税の支払いを1段階飛ばすことによる節税効果の方が大きいというケースも多くあります。

孫を養子にする場合には、相続税が2割加算されたとしても、メリットの方が大きいのかを検討したうえで、養子縁組を実施するようにしましょう。

相続人間のトラブルとなる可能性も

養子縁組は、養親と養子との合意で成立します。つまり、実子の合意は必要ないため、養親が亡くなってから初めて養子の存在が発覚するケースなどもあります。

養子が法定相続人となるということは、当然のことながら、実子など他の相続人の相続分は目減りすることになるため、相続人間で遺産争いが生じる可能性が高いです。

養子縁組を行う場合には、法律上の要件ではないものの、実子にも予め説明するなど、相続人の理解を得ておくことが重要と言えます。また、遺産争いによる相続人間のトラブルを避けるためには、遺言書を作成しておくことも重要です。

未成年者を養子にすると親権者が不在となることも

養子縁組が行われても、普通養子縁組であれば実の親子関係は存続します。しかし、その場合でも親権者は養親のみとなるため、養子が未成年者であるときに養親が亡くなってしまうと、親権者が不在の状況となってしまいます。

親権者が不在になると、遺産分割協議などの相続手続きを行うために未成年後見人の選任が必要となり、手続きが煩雑になります。

未成年者を養子とする場合には、そのような手続きが必要となる可能性についても予め考慮しておくようにしましょう。

まとめ

養子縁組と相続税対策の問題について解説しました。

養子縁組は相続税対策として有効な手段となり得るものですが、親子関係を生じさせるという大きな効果を有するものであるため、利用には慎重な判断が必要です。

養子縁組を行うことで得られる節税効果と、養子縁組を行うことの注意点をよく比較検討したうえで利用の判断を行うようにしましょう。

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