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弁護士コラム
相続税まるごとガイド!申告・修正手続きについても解説
- 相続税・事業承継対策
- 投稿日:2022年07月27日 |
最終更新日:2024年07月31日
- Q
-
相続税は、どのくらいの遺産があるときに払うのでしょうか?
また、相続税の申告・修正の手続きについても教えてください。
- Answer
- 以下で詳しく解説していきます。
目次
相続税
課税の対象
相続税は、①財産の合計額ー②控除Aー③控除B=を計算し、算出された残額が、課税対象とされます(※)。より詳しくみてみましょう。
※ 正確には、相続財産+「みなし相続財産」+「相続時精算課税適用分の贈与財産」−(非課税財産+債務+葬式費用)+相続開始前3年以内の贈与財産−基礎控除=課税遺産総額として、算定していきますが、本記事では分かりやすく、上記のように単純化してご説明します。
まず、①財産の合計額は、相続又は遺贈(遺言により、被相続人の財産を無償贈与すること)により取得した財産の合計額のことです。ここで(相続税の計算にあたっては)、遺贈には死因贈与(生前に贈与契約を締結し、その効力が贈与者の死亡により生ずるもの)も含まれます。また、被相続人の債務などのマイナスの財産も、①財産の合計額の段階では、未だ含まれたままになっています。
次に、②控除Aでは、非課税財産の価格や、被相続人の債務、葬式費用が控除の対象とされます。マイナスの財産や最低限必要な葬式費用を差し引きます。①から②を差し引くことで、いわば実際に残るプラスの財産を計算するのです。
以上のように計算された金額を、「課税価格」といいます。具体的な相続税額を計算するうえで基本となる数字が、ここまでに計算されたことになります。
さらに、ここまでに計算された「課税価格」から、③控除Bとして、「基礎控除額」を控除します。ここで、基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)=を計算し、算出された額となります。
【具体例】 法定相続人が配偶者と子3人の合計2人の場合 3000万円+(600万円×3人)=4800万円が、基礎控除額となります。 この場合、「課税価格」(①ー②により算出された額)が、基礎控除額の4800万円以下であれば相続税はかかりません(ただし、課税価格の正確な計算にあたっては、上記※の計算式のように、相続開始前3年以内の贈与財産が算定される等しますので、ご留意ください)。 逆に言えば、相続した財産(①ー②により算出された額)が、4800万円以上であれば、相続税が課税されます。 |
支払う金額(税額軽減制度)
そのうえで、納付義務者が配偶者、未成年者、障がい者である場合には、税額軽減の制度があるので、適用の有無を確認しましょう。
【納付義務者が配偶者である場合】
まず、納付義務者が配偶者の場合、配偶者の税額の軽減の制度があります。被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した財産の額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
具体的には、
- 相続した財産が、配偶者の法定相続分相当額以下である場合
- 法定相続分法定額を超えても、1億6000万円以下である場合
以上の場合は、全額軽減となるため、相続税を納める必要はありません。
(国税庁ホームページもご参照いただけます。)
【納付義務者が未成年者、障がい者である場合】
次に、納付義務者が未成年者、障がい者である場合にも、一定の条件をみたすことによって
税額軽減の適用をうけることができます。
条件が細かいので、よく検討しましょう。
- 未成年者の場合
- 障がい者の場合
なお、このように、相続税は、相続人全員が負担する相続税の総額は変わらないよう定められています。ですので、相続税の総額がいくらになるか、という観点からは、具体的な遺産分割などによる遺産の分配をどのようにすべきか、気にする必要はありません。
相続税の申告・修正の手続き
相続税の申告
納税者は、課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出して行います(相続税法第二十七条)。
上記の計算を経て、なお相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から十月以内に、申告を行いましょう。
(第二十七条) 相続又は遺贈…により財産を取得した者…は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格…の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格…に係る…相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内…に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 |
修正が必要な場合
修正が必要な場合とは、申告書の記載に不足や誤りがある場合です。
例えば、申告書に記載した以外に新たな遺産が見つかってしまった場合や、申告書に記載した財産の評価額や税額の計算に誤りがある場合、修正が必要です(国税通則法第十九条)。
修正の手続き
相続税の申告書を提出します。具体的には、(2)で発見した修正内容について補正をした修正申告書を所轄税務署に提出します。
そのうえで、増加した税額を納付しましょう(国税通則法第十九条)。
(第十九条) 納税申告書を提出した者…は、次の各号のいずれかに該当する場合には、…その申告に係る…税額等…を修正する納税申告書を税務署長に提出することができる。 一 先の納税申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に不足額があるとき。 … 四 先の納税申告書に当該申告書の提出により納付すべき税額を記載しなかつた場合において、その納付すべき税額があるとき。 |
ー少し詳しくー
課税原因
そもそも、相続税は、相続(民法896条)、遺贈(民法960条)、死因贈与(民法554条)によって財産を取得した者に対し、その取得した財産の課税価格として課されるものです(相続税法第二条)。
(第二条)…規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。 |
納税義務者(相続税法第一条の三)
相続税の納税義務者は、相続又は遺贈によって財産を取得した個人です。
なお、遺贈には、死因贈与も含まれます(死因贈与とは、贈与をした者が死亡することによってはじめて効力を生ずる贈与をいいます)。
まず、課税原因が相続である場合についてみてみましょう。
この場合には、相続によって相続財産を取得した被相続人個人が、納税義務者となります。ここで、仮に被相続人を共同相続した場合には、原則として共同相続人全員が連帯して相続税の納付義務を負います(相続税法第三十四条)。
※胎児について
なお、たしかに、胎児は相続権が認められています(民法886条)。しかし、胎児は出生するまでは納税義務を負いません(相続税法32条1項2号参照)。したがって、例え相続人のなかに妊婦さんがいたとしても、この点を考慮する必要は原則的にはありません。
次に、課税原因が遺贈である場合についてみてみましょう。
この場合にも、遺贈によって財産を取得した個人が、納税義務者となります。ここで、遺贈の場合であって、受取人が社団や財団、法人など「個人」以外の場合には、次のようになります。
受取人が社団(法人格のない社団を含みます)や財団、法人の場合
…受取人とされた当該社団、財団、法人が個人とみなされ、相続税の納税義務を負います。
(「個人」以外の場合を考える理由について、より詳しくは下記の「*」をご参照ください)。
*相続の場合と遺贈の場合とで、上記のように扱いが異なる理由は、相続と遺贈の性質の違いにあります。つまり、相続は個人と個人の間で生じるため、相続人は個人に限られます。したがって、「個人」以外の場合を考える必要はありません。
他方、遺贈の場合は、受取人が個人に限られず、本文で検討した社団等が受取人となる場合がありえます。社団等は、厳密には「個人」にあたらないため、「個人」以外の場合を検討する必要があるのです。
納税義務の成立と確定
相続税の納税義務の成立時期:
相続又は遺贈により財産を取得した時です(国税通則法第十五条)。
(国税通則法第十五条) 第二項 納税義務は、次の各号に掲げる国税…については、当該各号に定める時…に成立する。 (四号)相続税 相続又は遺贈…による財産の取得の時 |
相続税の納税義務の確定:
相続税の申告書を提出することによって確定します(相続税法第二十七条、上記Ⅱ(1)もご参照ください)。
なお、修正が必要な場合には、更正等により確定します(おなじく相続税法第二十七条、また、国税通則法第十六条に「国税についての納付すべき税額の確定の方式」が定められています。)
課税財産の範囲(相続税法第二条の二)
財産には非課税財産と課税財産があります。そして、相続税は課税財産にのみかかります。
では、具体的にはいかなる財産が課税財産なのでしょうか。
課税財産は、相続、遺贈により取得した財産のうち、「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」です。例えば、不動産、現金、預貯金、有価証券といった想起しやすい財産のみならず、宝石や貸付金、特許権や著作権までもが含まれます。
そのほか、相続税がかかる財産(みなし相続財産ほか)も課税財産です。
たとえば、生命保険金や死亡退職金等がみなし相続財産に該当しますが、その他、いかなる財産が「みなし相続財産」にあたるかは、詳細な定めがあります。
一度国税庁のホームページを確認すると無難でしょう。
遺産が未分割のとき
相続人が複数人おり、申告期間内(相続の開始があったことを知った日の翌日から、原則として十箇月以内。Ⅱ(1)を再度ご参照ください。)に遺産分割が終わらなかった場合、つまり、遺産が未分割のときは、どのようにしたらよいでしょうか。
この場合は、共同相続人が法定相続分に従い遺産を取得したものと仮定して、相続税を計算のうえ申告し、その税額を納付する必要があります。
なお、この際、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、3年以内に分割ができなかった場合は、更に「申告期限後3年以内に分割されなかったことにつきやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。
前記のとおり、相続税の総額に変化は生じないため、共同相続人の納付した税額全体をみれば、申告及び納付額が過少であったり課題であったりすることはありません。
しかし、個別具体的に遺産の分割がなされた後は、遺産分割の方法によっては、相続税の総額は変わらない場合であっても、個々の相続人がそれぞれ負担すべき相続税は異なってくることもあり得ます。その場合には、分割後の相続分に従い、税額の計算をやり直したうえで、納付や減額更正を受けることが可能です。
具体的には、申告が過少であった相続人は、改めて修正申告書の提出が必要です(相続税法第三十一条)。他方、申告が過大であった相続人は、更正の請求書を提出し、減額更正を受けることが可能です(相続税法第三十二条)。
(第三十一条)第二十七条…の規定による申告書…を提出した者…は、…既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。 (第三十二条)相続税…について申告書を提出した者…は、…相続税額…が過大となつたときは、…納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額…につき更正の請求…をすることができる。 |
※ただし、更正の請求は、法定の事由が生じたことを「知った日の翌日から四月以内に限」られるという期間制限があります。よく注意しましょう。
まとめ
相続税は、どのくらいの遺産があるときに払うのでしょうか?
まず、「課税価格」を計算し、「基礎控除額」を控除します。ここで、計算結果が0より大きいとき、すなわち、基礎控除額よりも「課税価格」があるときに、相続税が課税されます。相続税が課税される場合には、相続税の申告書を提出する必要があります。
次に、具体的に相続税を支払うかどうかは、さらに、納税義務者の特性に基づく、税額軽減制度が適否によって変化します。
申告手続・修正手続とも、申告書を納税地の所轄税務署長に提出して行うのが原則です。 相続税のしくみは複雑です。以上の記事内容でおおまかなイメージを掴んだうえで、必要に応じて専門家の助力を得ながら、確実に納税を行いましょう。
相続税・事業承継対策についてお悩みの方へ
相続税・事業承継においては、ご自身にとってどの方法が効果的な対策となるのか、見極めることがまず大事です。トラブル防止の観点からも最適な対策・進め方ができるよう、プロの弁護士が専門家とも連携して安心のサポートをいたします。お悩みの方はお早めにご連絡ください。
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