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弁護士コラム
甥や姪は相続できる?「代襲相続」についても詳しく解説
- 遺産分割のトラブル
- 投稿日:2022年07月21日 |
最終更新日:2024年03月18日
- Q
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私には甥と姪がいるのですが、彼らも相続はできるのでしょうか?
また、姪の子についてはどうでしょうか?
- Answer
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甥や姪の親である兄弟姉妹があなたより先に死亡していれば、甥や姪が相続できます。これを「代襲相続」といいます。
一方、甥や姪の親である兄弟姉妹が存命の場合には代襲相続が起こらないので甥と姪に相続権は認められません。
また兄弟姉妹が「相続欠格者」となった場合や「相続人廃除」された場合にはやはり代襲相続が起こって甥や姪に相続権が認められる可能性があります。
姪の子どもには相続権が認められません。昔の民法では甥や姪の子どもにも再代襲相続(代襲相続が二重に発生すること)が認められていましたが、法改正によって甥や姪の子どもは相続できないことになったためです。
結論的に、本件では以下の場合に甥や姪に相続権が認められる可能性があります。
●甥や姪の父母である兄弟姉妹が被相続人より先に死亡した
●甥や姪の父母である兄弟姉妹が「相続欠格者」となった
●甥や姪の父母である兄弟姉妹が「相続人廃除」された
相続欠格者や相続人廃除については解説の項目でわかりやすくご説明します。
姪の子どもが相続人になる可能性はありません。
目次
甥や姪は原則的に相続できない
甥や姪には法律上、当然には相続権が認められません。
民法は配偶者以外の相続人につき、以下の順番で相続権を定めています。
- 子どもがもっとも優先される第一順位の相続人
- 親が2番目に優先される第二順位の相続人
- 兄弟姉妹が3番目に優先される第三順位の相続人
このように、甥や姪の父母である「兄弟姉妹」は第三順位の相続人となりますが、甥姪ではないので当然には相続できないのです。
また子どもや親がいたらそちらの相続人が優先されるので、甥や姪はもちろん兄弟姉妹さえ相続できません。
甥や姪が相続できないケース
以下のような状況であれば、甥や姪は相続できないと考えましょう。
子どもや孫、ひ孫などの直系卑属がいる
被相続人の子どもや孫、ひ孫などの親族がいる場合、第一順位の相続人として優先的に相続します。この場合、甥や姪はもちろん、その親である兄弟姉妹も相続できません。
親や祖父母などの直系尊属がいる
被相続人に子どもなどの直系卑属がいなくても親や祖父母などの直系尊属の親族がいる場合、第二順位の相続人として相続権が認められます。この場合にも甥や姪、その親である兄弟姉妹に相続権は認められません。
甥や姪の父母である兄弟姉妹が生きていて相続する
被相続人に子どもも親もいなくても、甥や姪の父母である兄弟姉妹が生きていて相続欠格者となったり相続人廃除されたりしていない場合には甥や姪に相続権は移りません。
兄弟姉妹が相続放棄した
甥や姪の父母である兄弟姉妹が相続放棄したら兄弟姉妹ははじめから相続人でなかったことになり、甥や姪に相続権が移りません。この場合にも甥や姪は相続できないと考えましょう。
甥や姪が代襲相続できるケースとは
甥や姪にも相続権が認められる状況があります。それは「代襲相続」が発生する場合です。
代襲相続とは
代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人が亡くなったり相続人が相続欠格者となったり相続人廃除されたりしたときに、相続人の子どもが代わって相続することです。
たとえば子どもが親より先に死亡していると、子どもの子どもである孫が代襲相続します。孫は子どもの地位をそのまま受け継ぐので第一順位の相続人となり、優先的に遺産相続できます。被相続人に子どもがいなくても孫が生きていれば第二順位である親へ相続権は移りません。
代襲相続は子どもだけではなく兄弟姉妹についても発生します。そこで甥や姪の父母である兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していれば、甥や姪が代襲相続人として遺産相続できるのです。
法改正で甥や姪の子どもは代襲相続できなくなった
本件では姪に子どもがいます。甥や姪の子どもも再代襲相続人として相続できるのでしょうか?
現行民法は、甥や姪の子どもによる再代襲相続を認めていません。よって甥や姪が被相続人より先に死亡していて甥や姪の子どもが生きていたとしても、相続はできないと理解しましょう。
過去には甥や姪の子どもにも相続権が認められた時代がありましたが、法改正によって甥や姪の子どもの再代襲相続権が認められなくなっています。
再代襲相続とは
再代襲相続とは、代襲相続人も被相続人より先に死亡している場合に代襲相続人の子どもが相続人になることをいいます。
たとえば子どもも孫も被相続人より先に死亡していて孫の子どもである「ひ孫」が生きていたら、ひ孫が再代襲相続人として遺産を相続します。甥や姪についても再代襲相続が認められれば、甥や姪の子どもが相続できる可能性があるのです。
実際に過去の民法では、甥や姪の子どもにも再代襲相続権が認められていました。ところが昭和の時代に民法が改正されて甥や姪の子どもの再代襲相続権は廃止されました(昭和55年法律第51号)。兄弟姉妹は被相続人との関係が薄いにもかかわらず甥姪の子どもにまで再代襲相続を認めると、再代襲相続人が不当に得をしてしまい、遺産が不必要に分散されてしまうためです。
改正法が施行されたのは昭和55年12月31日です。施行後である昭和56年1月1日以降に相続が発生した場合、甥や姪の子どもが相続する可能性はないと考えましょう。現代の日本において甥や姪の子どもが相続する可能性はほとんどないといってよい状況です。
子どもなどの直系卑属では再代襲相続が認められる
兄弟姉妹の子孫については「代襲相続が1代限り」であり、甥姪の子どもに再代襲相続権は認められません。
一方、子どもなどの「直系」の血族については代襲相続に限定がありません。孫による再代襲相続もひ孫による再代襲相続も、その子どもによる再再代襲相続も認められます。
子どもなどの直系卑属が生きている限り、延々と代襲相続が起こると考えましょう。
このように子どもなどの「直系卑属」と甥姪などの「傍系卑属」において取り扱いが異なるのは、兄弟姉妹のような「傍系」の血族では被相続人との血縁関係が薄くなるためです。
民法は、なるべく被相続人と関係の近かった相続人に遺産を受け継がせようとしています。
子どもや孫、ひ孫などの直系卑属は被相続人から直接つらなる血族なので、非常に近しい親族といえるでしょう。
一方で兄弟姉妹や甥姪の場合、直系ほど近しいとはいえません。甥姪の子どもとなると「被相続人の顔も知らない」といったケースも珍しくないでしょう。
そのような相続人に遺産を受け継がせるのは法の趣旨に反するので、法改正によって甥姪の子どもやその子どもなどには再代襲相続を認めないこととしたのです。
現代の民法では子どもなどの直系卑属と兄弟姉妹などの傍系卑属とで代襲相続の範囲が異なるので、混同しないように注意しましょう。
甥姪も先に死亡した場合の遺産の行く先や対処方法
甥や姪の子どもは相続できないとなると、甥や姪も被相続人より先に死亡していて「相続人がいなくなってしまう状況」が発生する可能性があります。
相続人がいない場合、遺産はどのように取り扱われるのでしょうか?
民法は「子ども(などの直系卑属)」「親(などの直系尊属)」「兄弟姉妹と甥姪」にしか相続権を認めていません。これら以外の親族がいても、遺産相続はできません。
法定相続人がいない場合、遺産は最終的に国庫に帰属するので国のものとなります。
ただしそのためには相続人がいないことを確定し、負債の支払いなどもしなければなりません。
そこで利害関係人や債権者などが「相続財産管理人」を選任し、相続財産管理人が遺産の精算手続きを進めます。
相続財産管理人の職務
相続財産管理人が選任されると、以下のような職務を行います。
- 相続人調査や遺産の調査
- 債権者への公告や通知
- 遺産の現金化
- 債権者への支払い
- 受遺者への遺贈
- 特別縁故者への財産分与
- 残った遺産を国庫へ帰属させる
相続財産管理人となれば、多種多様な業務をしなければなりません。選任申立の際に親族を候補者に立てることもできますが、専門的な対応が必要なので選ばれても困惑してしまう方が多いでしょう。
相続財産管理人は、できれば弁護士などの専門家から選任するのが得策です。相続人がいなくなって困ったときには、当事務所までご相談ください。
代襲相続が発生するケース
次に代襲相続が発生するのはどのような場合なのかご説明します。
相続人が相続開始以前に死亡していた
1つ目は相続人が相続開始以前に死亡した場合です。たとえば子どもや親よりも先に死亡していたら、子どもの子どもである孫が代襲相続します。
孫も先に死亡していてその子どもであるひ孫が生きていれば、ひ孫が再代襲相続します。
同様に兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら兄弟姉妹の子どもである甥姪が代襲相続人として相続します。
被相続人と相続人が同時に死亡した場合にも代襲相続は発生すると考えられています。
相続人が相続欠格者となった
2つ目は相続人が「相続欠格者」となったケースです。
相続欠格とは、もともとの相続人が著しい問題行動をとったために法律上当然に相続資格を失うことです。
以下のような場合に相続欠格者となります。
被相続人を殺した
相続人が被相続人を殺害すると当然に相続欠格者となり遺産相続が認められません。
被相続人が殺されたのを知って告訴告発しなかった
被相続人が殺されたのを知りながら刑事告訴や告発をしなかった場合にも相続欠格者となります。ただし殺害者が配偶者や直系血族の場合には告訴告発しなくても相続欠格者にはなりません。告訴告発の意味がわからない幼児なども除かれます。
詐欺や脅迫によって遺言書を作成、変更、撤回させた
詐欺や脅迫によって相続人が被相続人に無理に遺言書を作成させたり変更させたり撤回させたりすると、その相続人は相続欠格者となります。
詐欺や脅迫によって遺言書の作成や変更、撤回を妨害した
詐欺や脅迫によって相続人が被相続人による遺言書の作成、変更、撤回を妨害すると、その相続人は相続欠格者となります。
遺言書を偽造、変造、隠匿、破棄した
遺言書を偽造したり手を加えて変造したり、あるいは隠したり捨てたりした場合にも相続欠格者となります。
相続欠格が生じると、代襲相続が起こるので欠格者の子どもが相続人になります。
たとえば兄弟姉妹が相続欠格者になると、その子どもである甥姪に相続権が移ります。
相続人が相続人廃除された
相続人が「廃除」された場合にも代襲相続は発生します。
相続人廃除とは、被相続人が自分の意思で非行のある相続人から相続権を奪うことです。
相続欠格とは違い「法律上当然に」相続権を失うわけではありません。要件に該当しても被相続人が何もしなければ相続権が認められたままです。
相続人廃除するには、被相続人が家庭裁判所へ「相続人廃除の申立」をして認められなければなりません。
相続人廃除されるケース
以下のような場合に相続人廃除される可能性があります。
- 相続人が被相続人を虐待した
- 相続人が被相続人に著しい侮辱を加えた
- 相続人にその他の著しい非行がある
相続人廃除されると戸籍にもその旨が記載されます。
相続人が廃除されたときにも代襲相続が発生します。たとえば兄弟姉妹が相続人廃除されると、存命であってもその子どもである甥姪が相続できると考えましょう。
代襲相続人の相続分
甥姪が代襲相続人となる場合、どの程度の相続分が認められるのでしょうか?
代襲相続人は基本的に「被代襲者(代襲相続される相続人)」の地位をそのまま引き継ぎます。
よって相続分についても、もともとの相続人である兄弟姉妹と同じになります。
たとえば3人の兄弟が相続人となるケース(長兄、次兄、弟)において、次兄が先に死亡しており甥が1人いるとしましょう。この場合、次兄の法定相続分は3分の1です。
次兄の子どもである甥が代襲相続する際には、甥にも次兄と同様の3分の1の相続分が認められます。
結果として長兄、次兄の子ども(甥)、弟はそれぞれ3分の1ずつの遺産を相続できます。
一方、代襲相続人となる甥姪が複数いる場合には必ずしも親である兄弟姉妹の相続分と一致しません。この場合、被代襲者の相続分を「代襲相続人の人数で割り算」しなければならないからです。
たとえば3人の兄弟が相続人となるケース(長兄、次兄、弟)において次兄が先に死亡し、その子どもとして甥と姪がいるとしましょう。この場合、甥と姪は代襲相続人になりますが、相続分は「2人で3分の1」です。
よって甥姪それぞれの相続分は3分の1×2分の1=6分の1ずつとなります。
遺産分割の際には長兄が3分の1、弟が3分の1、甥と姪がそれぞれ6分の1ずつとして分ける必要があるので、混乱しないように正しく理解しておきましょう。
相続放棄しても代襲相続は起こらない
もともとの相続人が相続放棄をしても、代襲相続は発生しません。
相続放棄すると、その人は「そもそも相続人ではなかった」ことになるからです。相続人でない以上、その子どもが相続権を受け継ぐことはありません。
たとえば兄弟姉妹が借金を相続したくないので相続放棄したとしても、甥姪が代わって借金を相続してしまう可能性はありません。
相続放棄する際には「自分が相続放棄したら子どもに負債が引き継がれるのではないか?」などと心配して躊躇する方がおられます。
そういった不安は無用なので、安心して相続放棄するとよいでしょう。
親が先に死亡している場合の相続人
代襲相続は、子どもや兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合(または相続欠格者となった場合や相続人廃除された場合)に起こるものです。
代襲相続人になれるのは「被代襲者(もともとの相続人)の子ども」です。
では親が被相続人より先に死亡していたら、誰が相続人になるのでしょうか?
この場合、親の親である「祖父母」が生きていたら祖父母が相続人になります。祖父母も死亡していて曽祖父母が生きていると、曽祖父母が相続します。祖父母や曽祖父母などが生きている限り、兄弟姉妹や甥姪が相続する可能性はないと考えましょう。
このように直系尊属についても子どもと同様に延々と相続権が続いていきます。ただし直系尊属による相続については代襲相続とはいいません。
代襲相続はあくまで「相続人の子ども(や孫、ひ孫など)」に認められる制度といえます。
よくある質問
よくある質問① 姪や甥の遺留分
質問:
甥や姪には遺留分はありますか?
回答:
兄弟姉妹の相続人には遺留分はありません。また、兄弟姉妹を代襲した相続人(被相続人の甥姪)にも遺留分はありません。
よくある質問② 姪や甥に相続させたい場合
質問:
私の財産は、姪や甥に相続させたいと思います。どのようにすればいいでしょうか?
回答:
姪や甥が代襲相続人としての地位を有しない可能性がある場合、遺言書を残すことで財産を遺贈し相続させることが可能となります。
例えば、遺贈文言の記載例として「遺言者は、姪の愛子(平成〇年〇月〇日生。住所:東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号)に下記預金を遺贈します。」等との記載はよく見る事例です。
東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所
子どもや親がおらず兄弟姉妹も先に死亡していて甥姪が相続人になるケースでは、相続人間の関係性が薄く連絡をとりにくかったり意見が合わなかったりして、遺産分割でもめてしまうケースが少なくありません。困ったときには早めに弁護士へ相談しましょう。
弁護士であれば誰が相続人になるかを正確に確定できますし、遺産分割協議の代理や遺産分割協議書の作成も任せられます。当事務所にも、お気軽にご相談ください。
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