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弁護士コラム

孫や養子の子は、相続できる?

遺産分割のトラブル
投稿日:2022年07月21日 | 
最終更新日:2024年03月18日
Q
孫が相続人になるのは、どういうときですか?
Answer
孫が相続人になるのは、孫の親(被相続人の子)が、相続開始以前に死亡したり、欠格・廃除によって相続権を剥奪されたりしたときです。
なお、孫の親(被相続人の子)が相続放棄をしたときは、孫は相続人にはなりません。

孫が相続人になる場合

法定相続人の種類と優先順位

民法は法定相続制を採用し、被相続人(亡くなった人)の親族のうち、誰が被相続人の財産を相続するかについて条文で画一的に定めています(被相続人が遺言等で相続人を指定することは許されていません)。

民法が規定する相続人のことを「法定相続人」と呼びますが、法定相続人の範囲は、被相続人の直系卑属(子、孫、ひ孫等)、直系尊属(両親や祖父母等)、兄弟姉妹(それらの子を含みます)及び配偶者に限られます。

これら法定相続人は2種類に大別することができます。すなわち、配偶者相続人血族相続人(養子縁組による法定血族関係を含みます)です。

このうち、配偶者は、血族相続人と並んで常に同順位の相続人となります(民法890条)。

これに対し、血族相続人には優先順位が付けられており、先順位の血族相続人が誰もいないときに初めて次順位の血族相続人が相続人となります(民法889条)。血族相続人の順位は、第1位が子とその代襲相続人(民法887条)、第2位が直系尊属、第3位が兄弟姉妹とその代襲相続人です(民法889条)。

第1位の血族相続人は、「子」です(民法887条1項)。

数人の「子」がいるときは、全員が同順位の血族相続人となります。

「子」の属性、すなわち、実子・養子、性別、長幼、既婚・未婚、嫡出子・非嫡出子、親権や監護権の有無、国籍・戸籍・氏等の異同といった事情は子の相続権に一切の影響を及ぼさず、複数の子がいるときには全員が同順位の相続人になります。

なお、昭和37年の民法一部改正によって第1位の血族相続人が「直系卑属」から「子」に改められたことで、孫以下の直系卑属には固有の相続権がなく、子を代襲して相続できるだけであることが明確化されました。

また、かつての旧民法下では、継親子や嫡母庶子関係が存在しましたが、既に廃止されています。

そのため、先妻の子と後妻、父の非嫡出子と父の妻との間には親族関係はなく、養子縁組をしない限り相続関係は発生しません(養子縁組をしない限り、先妻の子は後妻を相続せず、父の非嫡出子は父の妻を相続しません)。

したがって、被相続人の死亡時に相続権を有する子が生存しているときは、その子の子(被相続人の孫)は相続人にはなりません

非嫡出子

非嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことです。

父子間において、非嫡出子は、父の認知がなければ第1順位の血族相続人である「子」としては扱われません。

そのため、父の死亡時に父の認知がなされていない非嫡出子が父の法定相続人となるためには、父の死亡後3年以内に検察官を被告とする認知の訴えを提起した上で、認知を認める判決を獲得する必要があります(民法787条、人事訴訟法12条3項)。

なお、父が妻ではない女性との間の子(非嫡出子)を妻との間の子(嫡出子)と偽って出生届を提出して受理されたときは、その出生届は認知届としての効力を有するものと解釈されています。また、父が非嫡出子を非嫡出子とする出生届を提出して受理されたときも、その出生届は認知届としての効力を有するものと解釈されています(いずれも、最高裁判所昭和53年2月24日判決)。

これに対し、母子間では、母の認知を待たず、分娩の事実によって当然に母と非嫡出子との間の親子関係が発生するものと解釈されています(最高裁判所昭和37年4月27日判決)。そのため、母の死亡時に母の認知がなされていない非嫡出子であっても、認知の訴えを提起することなく母の第1順位の血族相続人になります。

改正前の民法では非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の2分の1とされていましたが(900条4号ただし書前半部分)、現行民法ではこの規定は削除されています。

したがって、被相続人の孫が被相続人の非嫡出子の子であっても、被相続人の嫡出子の子と同様に取り扱われることになります。

代襲相続

代襲相続とは、相続人となるべき者(被代襲者)が相続開始以前に相続権を失ったとき(死亡、欠格、廃除のいずれかが発生したとき)に、被代襲者の直系卑属(代襲者)が被代襲者に代わって同一順位で相続人となり、被代襲者が受けるはずだった相続分を承継する制度です。

代襲者の相続への期待(もし被代襲者が相続していれば、被代襲者がのちに死亡したときに相続することができていたはずという期待)を保護するため、代襲者が相続権を失った被代襲者に代わって相続人となることが認められています。代襲相続が発生すると、代襲者は、被代襲者と同順位の血族相続人となります。

代襲相続が発生する原因(代襲原因)は、

  1. 1相続の開始以前(同時に死亡したときを含みます)に相続人となるべき子や兄弟姉妹が死亡したとき
  2. 2相続人が相続欠格事由により相続権を失ったとき
  3. 3相続人が廃除されたことにより相続権を失ったとき

です(民法887条2項)。

なお、被相続人と被代襲者が同時に死亡したときの代襲相続を認めるため、昭和37年改正法は相続開始「前」(それよりも前)の死亡という表記を相続開始「以前」(同時又はそれよりも前)の死亡という表記に改めています。

また、被相続人(亡くなった人)の子に代襲原因が発生すると、その子の子(被相続人の孫)が代襲相続しますが、この孫についても代襲原因が発生すれば、被相続人の子の子の子(ひ孫)が代襲相続することになります(民法887条3項。これを「再代襲相続」と呼びます)。

なお、相続放棄は代襲原因に含まれません。そのため、子が相続放棄をしたときは、その子の直系卑属(孫など)は代襲相続人とはなりません。また、全ての子が相続放棄をしたときは、孫以下の直系卑属は相続人とはならず、次順位である直系尊属が相続人となります。

したがって、被相続人の死亡以前に相続権を有する子が死亡したとき(被相続人と子が同時に死亡したときを含みます)、あるいは相続権を有する子が欠格・廃除によって相続権を剥奪されたときには、その子の子(被相続人の孫)は被相続人の子(孫の親)を代襲相続し、第1位の血族相続人となります

なお、代襲者(例えば被相続人の子の子)は、相続開始時(被相続人が死亡したとき)に少なくとも胎児として存在していればよく、被代襲者(例えば被相続人の子)が相続権を失ったときに存在している必要はありません。

欠格と廃除① 「欠格」

被相続人の孫が相続人になるのは、代襲相続が発生したときです。そこで、代襲原因のうち、欠格と廃除について説明しておきます。

欠格と廃除は、相続人から相続権を剥奪する制度です。

被相続人の意思とは無関係に発生するものが欠格であり、被相続人の意思に基づいて発生するものが廃除になります。欠格や廃除が相続開始後に発生したとしても、それらの効果は相続開始時にさかのぼって発生するものと解釈されています。

民法891条は、次のとおり5つの欠格事由を定めています。

  1. 1故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 2被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない
  3. 3詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 4詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 5相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

これらの欠格事由は、被相続人などに対する生命侵害に関するもの(①②)と被相続人の遺言の妨害に関するもの(③④⑤)とに大別することができます。

いずれも相続人となるべき者が重大な不正行為をしたときであり、法律上当然に相続権が剥奪されます。特別な裁判や意思表示等は不要であり、欠格事由に該当する行為をした事実によって欠格の効果は発生し、その効果は相続開始時にさかのぼります。

なお、欠格事由は制限列挙ですので、欠格事由と同視し得るような重大な非行であっても欠格事由とはなりません。

また、欠格事由に該当すると相続人は相続権を剥奪されますので、遺言によって遺産を取得する資格(受遺能力)についても失うことになります(民法965条)。

また、相続欠格の効果は、欠格事由と関係のある特定の被相続人との関係でしか発生しません。例えば、父を殺して刑に処せられたとしても、自分の配偶者や子の相続人になることはできます。しかし、民法891条1号により、父を殺害後に自然死した母との関係でも相続権を剥奪されるので、父を殺害して刑に処せられた子は、母の相続人になることもできません。

欠格と廃除② 「廃除」

廃除とは、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対し、虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行をしたとき、家庭裁判所の調停や審判によってその相続権を剥奪する制度です(民法892条、893条)。廃除を認める審判の確定によって、被廃除者は直ちに相続権を失います(欠格は受遺能力まで失われますが、廃除では受遺能力は残ります)。廃除を認める審判の確定が相続開始前のときはその時点から直ちに廃除の効果が発生し、相続開始後のときは相続開始時にさかのぼって廃除の効果が発生します(遺言による廃除につき、民法893条後段)。

被相続人は、廃除の申立てを生前にすることもできますし、遺言ですることもできます。排除を遺言でするときは、その手続(家庭裁判所に対する調停や審判の申立て)は遺言執行者が行うことになります。

なお、兄弟姉妹を廃除することはできません。なぜなら、兄弟姉妹には遺留分がないため、被相続人が兄弟姉妹に相続財産を与えたくないと考えるときは遺言によって特定の兄弟姉妹を除外することができるためです(子には遺留分があり、遺言によっても排除できないため、廃除という制度が認められています)。

まとめ

これまでご説明したとおり、孫が相続人になるのは、孫の親(被相続人の子)が、相続開始以前に死亡していたり、欠格・廃除によって相続権を剥奪されたりしたときになります。

Q
養子の子が相続人になるのは、どういうときですか?
Answer
養子の子が相続人になるのは、養子の子の親(被相続人の養子)が、相続開始以前に死亡したり、欠格・廃除によって相続権を剥奪されたりしたときです。
たたし、養子の子が被相続人と養子が養子縁組をする前に生まれていたときは、養子の子は代襲相続することはできません。

養子の子が相続人になる場合

養子の相続権

養子(法定血族)は実子(自然血族)と同等の法的地位を有するため、養子であっても被相続人の子として第1位の血族相続人となります。

「養子」には通常の養子と特別養子の2種類の養子がありますが、どちらも第1位の血族相続人である「子」に含まれます(特別養子は、実親との間の親族関係を終了させる制度です。民法917条の9)。

養子の子と被相続人との血族関係

養子と養親(被相続人)との血族関係(法定血族関係)は、養子縁組が成立したときから発生します(民法727条)。そのため、養子の子が養子縁組後に生まれたときは、親である養子を通じて養親(被相続人)との間に血族関係が発生しますが、養子の子が養子縁組前に既に生まれていたときは養親(被相続人)の血族にはなりません(養子縁組前に生まれていた養子の子と養親との間には、親族関係は全く存在しないことになります)。

被相続人の子の代襲相続人は、相続権を失った者の子であり、かつ代襲相続人自身が被相続人の直系卑属でなければなりません(民法887条2項ただし書)。そのため、養子が被相続人の以前に死亡したり、欠格・廃除によって相続権を剥奪されたりしたとき、養子縁組後に生まれた養子の子は代襲相続することができますが、養子縁組前に生まれた養子の子は、相続権を失った養子の子であっても被相続人の直系卑属ではないため、代襲相続することはできません(民法887条2項ただし書)。

そうすると、養子に養子縁組前に生まれた子と養子縁組後に生まれた子がいるとき、養子縁組をする前に生まれた兄や姉は養親(被相続人)の遺産を代襲相続することができないのに、養子縁組をした後に生まれた弟や妹は代襲相続することができるケースが発生することから、不公平であるようにも思えます。

しかし、養子縁組をする前に生まれた兄や姉は養親(被相続人)の直系卑属ではありませんので、やむを得ないことです。

これに対し、養子が養親(被相続人)よりも後に死亡したときは、養親(被相続人)を相続した養子の相続という問題になり、養子縁組をする前に生まれたかどうかに関係なく、養子の子は全て養子自身の血族として平等に相続することになります。

養子が離縁されたとき

養子縁組した後に生まれた養子の子が養親(被相続人)の血族であるのは、養子の子が生まれたときに養子と養親(被相続人)との間に血族関係があったからです。

養子と養親(被相続人)との間の血族関係は養子縁組の成立によって発生したため、養子と養親(被相続人)の養子縁組が解消され、養子が養親(被相続人)の血族でなくなったときは、養子縁組した後に生まれた養子の子も養親(被相続人)の血族ではなくなります(民法729条)。

したがって、養子の子が代襲相続するためには、養親(被相続人)の死亡時に養親と養子との間の養子縁組が解消されていないことが前提となります。

よくある質問

よくある質問① 遺言書による祖父母からの孫への財産承継

質問:

私(祖母)の財産の分け方を考えていますが、孫に財産を渡す方法を考えています。そのような遺言書を作ることは可能でしょうか?

回答:

遺言書で孫に財産を譲ることも可能です。包括遺贈の方法と特定遺贈の方法がありますが、法定相続人への遺留分への配慮は必要です。

【説明】

相続財産の分け方について、遺言書で相続人以外の第三者に財産を譲ると定めることも可能です(民法964条)。

その方法としては、包括遺贈と特定遺贈の2種類があります。

包括遺贈とは、相続財産の全部、あるいは何分の1という割合で財産を譲る方式です。

この場合、相続財産の譲受人として指定された者(受遺者)は、共同相続人との遺産分割協議によって、具体的にどの財産を譲り受けるかを自ら決定することになります。

包括遺贈の注意点として、受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされているので(民法990条)、指定された割合に応じて、プラスの財産だけでなく借金も受遺者に移転してしまうことになります。

他方で、特定遺贈とは、相続財産中の特定の財産を指定して同財産を譲る方式です。

この場合には、受遺者が関わるのは当該対象財産のみであり、その他の相続財産について共同相続人間の遺産分割協議に加わることはありません。

包括遺贈、特定遺贈いずれも、遺贈の結果として法定相続人の遺留分を侵害する場合には、その受遺者は相続人からの遺留分侵害額請求の相手方となります(民法1047条)。

したがって、遺留分侵害額請求を巡る相続人との紛争を防止するためには、遺言書を作成する段階で、あらかじめ、相続人の遺留分を侵害しないような配慮をしてください。

よくある質問② 子供が先に死亡した場合には、不動産を孫に相続させたい

質問:

私が遺言書で「甲不動産は子Aに相続させる。」という内容の遺言をした後、子Aが私の死亡以前に死亡した場合、子Aの代襲相続人B(私の孫)が甲不動産を代襲相続できますか?

回答:

遺言者がご質問のように、「甲不動産は、子Aに相続させる。」旨の遺言(特定財産承継遺言)をした後、子Aが遺言者の死亡以前に死亡した場合、原則としては、子Aの代襲相続人B(遺言者の孫)は当該遺言により甲不動産を代襲相続することはできません。

したがって、ご質問の場合、原則として甲不動産は法定相続人全員が法定相続分に従って相続することになります。

もし、子Aの代襲相続人B(ご質問者の孫)に相続させることを望む場合、

「甲不動産は、子Aに相続させる。子Aが遺言者の死亡以前に死亡したときは、甲不動産は子Aの長男B(遺言者の孫)に相続させる。」などと予備的な遺言をしておく必要があります。

よくある質問③ 孫への不動産の遺贈と相続税の問題

質問:

遺贈によって孫に財産(不動産)を遺す場合、相続税はどのようになりますか?子供に相続して、孫がその子供を相続した場合と比べて、相続税は高くなるのか、低くなるのか、教えてください。

回答:

遺贈によって財産を譲り受ける場合、受遺者には相続税が課税されることになります(相続税法1条の3)。

例えば、ある財産が子へ相続され、更にその子が死亡して孫へ相続されたような事例を考えた場合、相続税課税されるだけの財産がある場合には、子への相続時と孫への相続時の合計2回相続税が課税されることになります。

他方で、遺言で財産を孫に遺贈した場合には、相続税の課税は1回だけですので、このような遺贈には、相続税の節減という効果が生じる可能性があります。

もっとも、このような遺贈の場合には相続税が2割加算されますので(相続税法18条)、必ず相続税の節減につながるというものではないことに注意してください。

よくある質問④ 孫の教育資金を援助する場合

質問:

孫に学校の入学金や授業料などの教育資金を一括して贈与したいと考えています。この場合の贈与税はどうなりますか?

回答:

子や孫(30歳未満)の教育資金に充てるため、直系尊属(祖父母など)が金融機関等との契約で行う一括贈与の場合、1,500万円までの金額に相当する部分は贈与税が非課税になります。

詳しくは、お近くの税理士事務所等へご相談ください。

よくある質問⑤ 孫との養子縁組

質問:

孫を養子縁組することで、相続税の負担を軽減することができますか?

回答:

孫を養子縁組することで、相続税の負担を軽減することができます。

また、子や孫に対して今のうちから少額ずつでも暦年贈与をしていけば将来の相続税の負担を軽減することができます。

東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所

これまでご説明したとおり、養子の子が相続人になるのは、相続開始以前に養子が死亡したり、欠格・廃除によって養子が相続権を剥奪されたりしたときになりますが、代襲相続することができるのは養子縁組前に生まれた養子の子に限られます。

本記事をご参考いただき、相続についてどのようにすべきか悩んだ場合には、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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