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弁護士コラム

「寄与分」って何?寄与分が認められる場合と、範囲について解説

遺産分割のトラブル
投稿日:2022年07月21日 | 
最終更新日:2024年05月23日
Q
どんな場合に寄与分が認められるのでしょうか?
また寄与分が認められる範囲についても教えてください。
Answer
寄与分が認められるのは、相続人が親族としての扶養の範囲を超えて遺産の維持や形成に特別に貢献した場合です。
特別な貢献が必要なので、親族の通常の扶養義務の範囲内の貢献であれば寄与分は認められません。
寄与分が認められる状況として、典型的には以下の5種類があります。

●介護を行った
●事業を手伝った
●金銭を拠出した
●扶養した
●財産管理した

寄与者が遺産分割時に主張すると、遺産を多く受け取れる可能性があります。

一方で、相続人以外の孫や長男の嫁などが献身的に介護などを行っても、寄与分は認められません。
ただし寄与分ではなく「特別寄与料」を請求できる可能性があります。
特別寄与料は近年の法改正によって新しく作られた制度です。

目次

寄与分とは何か?相続に強い弁護士が動画で解説

寄与分とは

寄与分とは、相続人が遺産の維持や形成に対して特別に貢献したときに、その相続人に多めに取得が認められる遺産の取得分です。たとえば被相続人を献身的に介護したケースや無給で事業を手伝った場合などに寄与分が認められる可能性があります。

他の相続人より明らかに献身的に介護などを行って遺産の維持や形成に貢献した相続人がいる場合、通常とおりに法定相続分で遺産を分割するとかえって不公平となってしまうでしょう。そこでそういった相続人には「寄与分」を認め、他の相続人よりも多くの遺産を取得できるようにするのが寄与分の制度です。

寄与分は、相続人間で実質的に公平に遺産分割を行うための制度ともいえるでしょう。

なお寄与分が認められるには「遺産の維持や形成に具体的に貢献」しなければなりません。

精神的に応援しただけでは寄与分は認められません。

寄与分が認められるケース

寄与分が認められるのは、相続人が遺産の維持や形成に対して特別な貢献をした場合です。

典型的には以下の5類型に分けられます。

療養看護型

相続人が被相続人を看護、介護したケースです。

ただし特別の寄与でなければならないので、親族の扶養義務の範囲の介護では寄与分は認められません。

たとえば娘が会社を辞めて父親のために介護に専念したおかげで、介護士の費用を払わずに済んだ場合などには寄与分が認められやすいでしょう。

家業従事型

家業従事型とは、相続人が被相続人の事業を献身的に手伝ったケースをいいます。

たとえば被相続人の農業や小売業、工場などの会社を相続人が無給で手伝い続けたら、寄与分が認められる可能性があります。

特別な寄与でなければならないので、正当な給料をもらっていれば寄与分は認められません。

金銭出資型

相続人が被相続人のために金銭を出資したケースでも寄与分が認められる可能性があります。

たとえば以下のような場合です。

  • 被相続人の自宅購入資金、リフォーム資金等のために、相続人が多額の金銭を援助した
  • 被相続人の借金を相続人が立て替えた

最低限の生活費を出した場合など、一般的な親族の扶養義務の範囲内とみなされる場合には寄与分は認められません。

扶養型

扶養型は、寄与者が被相続人の生活の面倒を見たときに認められます。実際に相続人が被相続人を引き取って面倒をみた場合や生活費を送金し続けた場合などに扶養型の寄与分が認められる可能性があります。

ただし親族には互いに扶養義務があり、義務の範囲内であれば「特別の貢献」にならないので寄与分は認められません。

財産管理型

財産管理型とは、相続人が被相続人の財産を適切に管理したために財産が増加したり散逸を免れたりしたケースです。

たとえば被相続人の所有するマンションを甥(相続人)が管理し続けたために管理会社へ委託せずに済んだ場合などに財産管理型の寄与分が認められる可能性があります。

寄与分の算定方法

寄与分が認められる場合、具体的に「いくら」とすべきかが問題になるケースが多々あります。相続人間で寄与分の算定方法について意見が合わなければ遺産分割協議が成立しなくなってしまいます。

以下で寄与分の一般的な算定方法をみてみましょう。

療養看護型の場合

療用看護型の場合には、「介護士に依頼したら、かかったはずの費用」を基準とします。

たとえば1日1万円で5年間介護を行ったのであれば、365日×5年×1万円=1825万円と計算されるでしょう。

ただし全額が寄与分と認定されるとは限りません。親族には扶養義務もあるので、相当な範囲に限定されるケースが多数です。

家業従事型の場合

家業従事形の場合には、「払われるべき正当な給料の額」が基準となります。

たとえば月給30万円が相当な案件で10年間事業を手伝い続けたとすると、30万円×12か月×10年間=3600万円となります。

ただし全額が認められるとは限りません。裁判所の裁量で相当な範囲に限定されるケースが多数です。

金銭出資型の場合

金銭出資した場合には、実際に支出した金額が基準となります。ただしこちらについても全額がそのまま寄与分になるとは限らず、相当な範囲に限定される可能性があります。

扶養型の場合

扶養型の場合には、実際に支出した生活費の金額が基準になります。

ただし親族には扶養義務があるので、その分は差し引かねばなりません。

財産管理型の場合

財産管理を行った場合には、相続人による管理によって支払いを免れた費用などを基準に寄与分を算定します。

たとえばマンション管理を行った場合には、マンション管理会社の一般的な費用が基準となるでしょう。ただしこちらについても裁判所の裁量で調整される可能性があります。

寄与分が認められる範囲の人

寄与分が認められる範囲の人についても理解しておきましょう。

寄与分は「相続人」にしか認められません。相続人以外の親族や第三者が遺産の維持や形成に貢献しても、そういった人は遺産を受け取れないので間違えないように注意すべきです。

相続人になる人

相続人になるのは以下のような親族です。

配偶者は常に相続人になる

被相続人の法律上の夫や妻は常に相続人になります。ただし内縁の配偶者には相続権が認められません。

配偶者以外の相続人については順位がある

配偶者以外の相続人には順位があります。

第1順位は子どもなどの直系卑属

第1順位の相続人は、子どもです。子どもが親より先に死亡していて孫がいれば、孫が代襲相続します。孫も先に死亡していればひ孫が再代襲相続します。

このような「直系卑属」はもっとも優先される法定相続人です。

第2順位は親などの直系尊属

被相続人に子どもや孫などの直系卑属がいない場合、第2順位の親や直系尊属が相続人となります。まず相続権が認められるのは親となりますが、親が死亡していて祖父母が生きていれば祖父母、祖父母が死亡していて曽祖父母が生きていれば曽祖父母が相続します。

第3順位は兄弟姉妹と甥姪

第3順位の相続人は兄弟姉妹です。兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していて甥や姪が生きていたら、甥姪が代襲相続によって相続人になります。甥姪も先に死亡している場合、甥姪の子どもには相続権が認められません。

上記のように、相続人となって寄与分が認められる可能性のあるのは「配偶者」「子ども(孫やひ孫など)」、「親(祖父母や曽祖父母など)」「兄弟姉妹(甥姪)」なので、それ以外の人が寄与分を主張できる可能性はありません。

相続人以外が寄与した場合の寄与分

確かに寄与分が認められるのは「相続人のみ」ですので、相続人以外の人が遺産の維持や形成に貢献しても寄与分算定の根拠にはならないはずです。

ただし法律上、一定のケースでは相続人以外の人による貢献も「寄与分」と認められる可能性があります。

それは、相続人の親族が遺産の維持や形成に貢献した場合です。その場合、親族(近親者)による寄与を「相続人による寄与」とみなし、相続人自身に寄与分を認めるのです。

相続人以外の人の寄与分が評価される具体例

相続人以外の人が遺産の維持や形成に貢献した場合に寄与分が認められる具体例をみてみましょう。

長男の嫁が献身的に親の介護を行った

この場合、長男の嫁による介護にもとづく寄与分を「長男による寄与分」として、長男に寄与分が認められる可能性があります。長男にしてみると、妻が献身的に介護を行ったので、自分の遺産取得割合が増える結果となります。

長男の娘(被相続人の孫)が献身的に親の介護を行った

この場合、長男の娘(被相続人の孫)の介護にもとづく寄与分を「長男による寄与分」として、長男に寄与分が認められる可能性があります。長男にしてみると、娘が献身的に介護を行ったために自分の遺産取得分が増えることになります。

長期間被相続人の事業(農業や漁業、個人事業など)に従事した場合などにも基本的に同じ考え方です。

このように「寄与分は、相続人にのみ認められる」とはいえ、一定のケースでは相続人以外の人の行為も「寄与」と評価される可能性があるので、おぼえておきましょう。

なお相続人以外の人による寄与であっても、寄与分が認められるには「特別な貢献」でなければなりません。親族の扶養義務の範囲内の介護や事業の手伝いなどの場合には寄与分は認められないので注意しましょう。

寄与分を受け取れる人

寄与分を受け取れるのは、あくまで「相続人のみ」です。

たとえ配偶者や子どもなどによる行為が相続人による行為と同一視されるので相続人に寄与分が認められるとしても、配偶者や子どもが遺産を取得できるわけではありません。

たとえば長男の嫁が献身的に介護を行って長男に寄与分が認められる場合、多めの遺産を取得できるのは長男本人です。介護を行った嫁は遺産を受け取れません。

「特別の寄与」の意味について

寄与分が認められるには、被相続人の財産の維持・増加に「特別の寄与」をしなければなりません(民法904条の2第1項)。

「被相続人と共同相続人との身分関係において通常期待される程度の貢献は、法定相続分の設定にあたって既に評価済みであり、あえて相続分の修正要素として考慮することは寄与分制度の趣旨に反する」ためです。

このような親族の身分関係にもとづく範囲を超える貢献があった場合において、はじめて寄与分が認められます。

具体的に貢献の程度が特別の寄与に該当するかどうかについては、被相続人と貢献のあったとされる相続人との身分関係を前提に判断されます。

たとえば配偶者 の場合、相互に協力、扶助の義務があるので(民法752条)、義務の履行として貢献がなされたときは特別の寄与と認めることはできません。

直系血族の場合にも互いに扶養義務を負い(民法877条1項)、親族間の互助義務(民法730条)を負っているので、その義務の範囲内の貢献は特別の寄与に該当しないと考えられます。

一方、子どもであっても長時間にわたって被相続人の家業に従事して、被相続人の財産の維持増加に貢献したときや献身的に介護したときなどは、親族間の互助義務の範囲を超えるものとして特別の寄与にあたるといえるでしょう。

現実の事案で相続人による行為が「特別の寄与」に該当するかどうかの判断には極めて専門的な知識が必要です。一般の方が自己判断すると間違えるリスクが高いので、迷ったときには弁護士へ相談しましょう。

寄与分を決定する方法

寄与分を定めたい場合、どのような手続きをとれば良いのでしょうか?

寄与分の定め方は以下の3ステップとなります。

STEP1 まずは遺産分割協議で主張する

まずは遺産分割協議において、寄与分を求める相続人が自分の寄与分を主張しなければなりません。他の相続人からは寄与分に反対されることはあっても主張してくれるケースは極めて少ないからです。

全員が本人による寄与分を認め、寄与分の計算方法についても合意ができれば寄与分を考慮した遺産分割ができます。

ただし遺産分割協議が成立するには、相続人全員による合意が必要です。1人でも反対したら寄与分は認められません。

実際に特定の相続人が寄与分を主張すると、他の相続人が認めなかったり計算方法について意見が合わなかったりして遺産分割協議が決裂するケースが多々あります。

STEP2 遺産分割調停を申し立てる

遺産分割協議を行っても寄与分について合意できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てなければなりません。

調停では、裁判所の調停委員が間に入って遺産分割方法を決めるための調整を進めます。

ただし調停でも相続人全員が合意しなければなりません。

1人でも寄与分に反対したり、寄与分の割合や金額について意見が合わなかったりすると調停は不成立となって終了します。

STEP3 審判で決定される

調停も不成立になった場合には、寄与分は「審判」において決定されます。

寄与分を定める審判の申立があれば、裁判所は寄与分を評価して遺産分割方法を指定します。

審判は話し合いの手続きではありません。裁判所が裁量によって寄与分の金額や割合を算定し、最終的な遺産分割方法を決めます。

他の相続人に主張しても寄与分を認めてもらえないときには、家庭裁判所で遺産分割調停や寄与分を定める審判を申し立てましょう。

特別寄与料とは

近年の相続法改正により「特別寄与料」という制度が作られました。

特別寄与料とは、一定範囲の親族が遺産の維持や形成に特別な貢献をしたときに相続人へ請求できる金銭です。

つまり相続人以外の人が遺産の維持や形成に貢献した場合でも、特別寄与料が認められたら相続人へ「お金」を請求できるのです。

寄与分と異なり遺産を取得できるわけではありませんが、金銭によって献身的な貢献が報われる制度といってよいでしょう。

特別寄与料が認められる親族の範囲

特別寄与料が認められるのは、以下の範囲の親族です。

  • 6親等以内の血族
  • 3親等以内の姻族と配偶者

上記より遠い親族には特別寄与料は認められませんし、親族でない第三者にも特別寄与料はありません。

特別寄与料が認められるケース

特別寄与料が認められるのは、以下の2種類の状況です。

  • 療養看護をした
  • 家業を手伝った

寄与分における「療養看護型」と「家業従事型」の場合に特別寄与料が認められる可能性があります。

金銭出資型、扶養型、財産管理型の特別寄与料は認められていないので、寄与分と混同しないように注意しましょう。

特別寄与料の請求方法

特別寄与料は、相続開始と相続人を知ったときから6か月以内に相続人へ請求する必要があります。遺産分割協議に参加するわけではありません。

また相続開始と相続人を知ったら6か月以内に請求する必要があります。期限を過ぎると特別寄与料を受け取れなくなるので、早めに対応するのが得策です。

よくある質問

よくある質問① 寄与分を遺言で定めることはできるか

質問:
寄与分を遺言で定めることはできるのでしょうか?

回答:
遺言で寄与分を直接定めることはできません。

遺言書では、相続財産の全部または一部を特定の相続人に遺贈したり、相続人全体の相続分を指定したりすることができます。しかし、寄与分のように、個々の相続人が行った貢献に応じて遺産を分配する方法を直接定めることは原則としてできないのです。

これは、寄与分が、法定相続分とは別に、相続人間の実質的な貢献度を考慮して遺産を分配する制度であり、相続人間の合意によってのみ決定されるべきと考えられているためです。

ただし、遺言書で寄与分を認めたいという遺言者の意思を間接的に実現する方法はいくつかあります。

① 特定の相続人に寄与分相当額を遺贈する
例えば、長男が長年家族の介護をしてきた場合、遺言書で長男に他の相続人よりも多くの財産を遺贈することで、寄与分を認めたいという遺言者の意思を事実上実現することができます。

② 遺産分割の方法について指図する
遺言書では、遺産をどのように分割するかについて指図することができます。例えば、「自宅は長男に、預貯金は長女に」のように指定することで、寄与分を考慮した遺産分割を促すことができます。

なお、遺言書作成の際には、遺言書の内容や遺産分割の方法について専門的なアドバイスができる、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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遺産分割の際、寄与分が問題になると関係者の意見が合わずトラブルになるケースが多々あります。弁護士を代理人に立てれば話し合いも審判も有利に進められる可能性が高くなり、自分で対応しなくて良いのでストレスも軽減されるでしょう。

お困りの際は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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