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弁護士コラム
遺言書が見つかったときの相続手続|遺産分割が必要・不要なケースを弁護士が解説
- 遺産分割のトラブル
- 投稿日:2026年09月14日 |
最終更新日:2026年09月14日

- Q
- 親が亡くなった後、遺品整理をしていたら遺言書が見つかりました。この場合、相続は遺言書どおりに進めなければならないのでしょうか?
- Answer
-
遺言書があっても、必ずしもすべての相続手続が遺言だけで完結するとは限りません。
「自宅を長男に相続させる」など取得者と財産が具体的に定められていれば、遺産分割協議が不要になる場合があります
一方、相続分のみの指定や、遺言に記載のない財産がある場合には、相続人全員による遺産分割協議が必要になることがあります。
また、自筆証書遺言では改定裁判所の検認が必要な場合もあります。手続きは遺言の種類・内容によって異なるため、まず内容を正確に確認することが重要です。
監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業
相続・不動産・企業法務を中心に取り扱い、相続に関する相談を年間100件以上対応。
遺産分割・遺留分・相続登記・生前対策など、幅広い相続問題の解決に取り組んでいます。
目次
遺言書が見つかったときにまず確認すべきこと
遺言書が見つかったときは、まず「遺言の内容」「遺言書の種類」「検認の要否」を確認することが重要です。
遺言書があるだけで、遺産分割協議が当然に不要になるわけではありません。
遺言書がある場合の相続手続の基本
遺言書がない相続では、通常、相続人全員による遺産分割協議で財産の分け方を決めます。一方、遺言書がある場合には、原則として遺言の内容が優先されます。
被相続人が生前に「誰に」「どの財産を」「どの割合で」相続させるのかを遺言で定めていれば、その意思が尊重されます。ただし、以下のような場合には、遺産分割協議が必要になることがあります。
- 遺言で処理されていない財産がある
- 遺言で相続割合のみが指定されている
- 相続人全員が遺言と異なる分け方を希望している
そのため、遺言書が見つかったら、まず内容を正確に確認することが重要です。
遺言書があっても遺産分割が必要な場合がある
誰がどの財産を取得するかが具体的に定められていれば、その財産について遺産分割協議は原則不要です。
例えば、「自宅不動産を長男に相続させる」「預金を妻に相続させる」といった遺言は、一般に特定財産承継遺言(「相続させる」遺言)と呼ばれます。
一方、「相続分だけが指定されている」「財産の一部しか指定されていない」「抽象的な割合だけが示されている」といった場合には、具体的な取得財産を決めるため、遺産分割協議が必要となります。
遺言書の種類
実務でよく見られる遺言書は、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が自ら作成する遺言書です。手軽に作成でき、費用がかからないというメリットがあります。
一方、内容が不明確になりやすく、形式不備で無効になる可能性や相続人間で争いが生じる可能性がある点はデメリットといえます。
弊所でも、記載の解釈が分かれて相続人間でトラブルになった事案や、相続財産が網羅されておらず、残りの財産の分け方でトラブルになった事案が多数ありました。
なお、自筆証書遺言には、近年創設された法務局の遺言書保管制度を利用しているものもあります。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が作成する遺言書です。法律の専門家が関与するため形式不備が生じにくく、原本が公証役場で保管されるため、相続手続をスムーズに進めやすいというメリットがあります。
実務上は、相続トラブルを防止する目的で公正証書遺言が作成されることも多くあります。
ただし、弊所では、公正証書遺言であっても遺言の有効性が争われる事例が増えていることから、遺言書作成当時の遺言者の判断能力を客観的に担保するため、医師の鑑定書を作成することをおすすめしています。公証役場では、このようなアドバイスをしてくれません。
自筆証書遺言では検認が必要な場合がある
自筆証書遺言が見つかった場合は、原則として家庭裁判所で「検認」を行う必要があります。
検認とは、遺言書の内容・形式・保存状態などを確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。
ただし、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が不要です。もっとも、検認は遺言の有効性を判断する手続きではないため、検認を経ていても遺言が有効であるとは限らない点に注意が必要です。
遺言による財産承継の主なパターン
遺言書がある相続では、遺言が「何を、誰に、どのように承継させる内容か」によって手続きが決まります。
代表的なパターンは、「特定財産承継遺言」「遺贈」「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」です。
特定財産承継遺言(「相続させる」遺言)
「○○を長男に相続させる」といった遺言は、法律上、特定財産承継遺言と呼ばれます。特段の事情がない限り、被相続人が死亡した時点で、その財産は指定された相続人に直ちに承継されると解されています。
そのため、原則として遺産分割協議を行う必要はありません。
遺贈(特定遺贈・包括遺贈)
遺言によって財産を無償で与える行為を「遺贈」といいます。遺贈には、特定の財産を与える「特定遺贈」と、遺産の全部または一定割合を与える「包括遺贈」があります。
「自宅不動産をAに遺贈する」といった特定遺贈では、その財産は遺産分割の対象から除かれます。一方、「全財産の2分の1をAに遺贈する」といった割合的な包括遺贈では、受遺者は相続人と同様の立場となり、遺産分割協議に参加する必要があります。
相続分の指定
遺言によって、法定相続分とは異なる割合を指定することもできます。
例えば、「妻2分の1、長男3分の1、次男6分の1」と指定する形です。この場合、遺産分割の基準となる割合は決まりますが、具体的にどの財産を誰が取得するかまでは決まっていないため、遺産分割協議が必要になります。
遺産分割方法の指定
遺言で、「自宅は長男が取得する」「預金は妻が取得する」など、遺産分割の方法を指定することもできます。この場合、基本的には遺言に従って財産を承継します。
なお、遺言書があっても、相続人全員が合意すれば遺言と異なる内容で遺産分割を行うことも可能とされています。ただし、税務上の問題や、贈与と評価される可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
遺言書があっても遺産分割が不要になるケース
遺言書によって財産の取得者が明確に定められており、相続人間で改めて分配を決める必要がない場合には、遺産分割協議は不要です。
「相続させる」遺言がある
「自宅不動産を長男に相続させる」「預金を妻に相続させる」といった特定財産承継遺言では、原則として被相続人が死亡した時点で、その財産は指定された相続人へ承継されます。
遺言の効力発生と同時に財産の帰属が確定するため、相続人全員による遺産分割協議を行う必要はありません。遺言書と戸籍関係書類などを用いて、不動産の相続登記などの名義変更手続を進めることになります。
特定の財産の取得者が明確である
「甲土地を長女に与える」「預金口座の残高を妻に遺贈する」など、特定の財産を誰が取得するかが明確であれば、その財産については遺言に従って承継され、遺産分割協議は基本的に不要です。
ただし、遺言で指定されていない財産がある場合には、その財産については遺産分割協議が必要になることがあります。そのため、遺言の内容だけではなく、被相続人の財産全体を確認することが重要です。
全部包括遺贈がある
「全財産を○○に遺贈する」といった全部包括遺贈では、すべての財産の帰属が遺言によって決まるため、原則として遺産分割協議は不要です。
ただし、受遺者が相続人ではない第三者である場合には、相続人との関係で遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。
すべての財産の帰属が決まっている
複数の不動産や預金などについて、それぞれの取得者が遺言で明確に指定されている場合も、遺産分割協議は不要です。
遺言が実質的に遺産分割の結果と同じ役割を果たすため、各財産について遺言に従って名義変更手続を進めます。
遺言書があっても遺産分割が必要になるケース
遺言書がある場合でも、具体的な財産の帰属が確定していない場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
代表例は、「割合的包括遺贈」「相続分の指定」「遺言で処理されていない財産」「内容が不明確な遺言」です。
割合的包括遺贈がある
「遺産の2分の1を妻に、残りの2分の1を子ども2人に与える」など、割合だけが定められている場合には、具体的にどの財産を誰が取得するのかまでは決まっていません。
そのため、相続人や受遺者で話し合いを行い、遺産分割協議によって決める必要があります。
相続分のみが指定されている
「妻に2分の1、長男に3分の1、次男に6分の1を相続させる」といった遺言では、それぞれの取り分の割合は決まりますが、具体的な財産の分配方法までは決まっていません。
そのため、どの財産を誰が取得するのかについては、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書にない財産がある
「自宅不動産を長男に相続させる」という遺言があったとしても、預金や株式などについて記載がなければ、その財産は遺産分割協議の対象となります。
実務では、遺言作成後に新たな財産が増えているケースもあるため、遺言に書かれていない財産がないか確認する必要があります。
遺言書の内容が不明確である
「自宅は長男に継がせる」「預金は家族で仲良く分けること」など、遺言の意味が明確でない場合には、その解釈をめぐって相続人間で争いが生じることがあります。
遺言の解釈を踏まえて相続人間で話し合い、最終的に遺産分割協議で解決を図ることになります。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停や審判によって解決される場合もあります。
遺贈と「相続させる」遺言の違い
遺贈と特定財産承継遺言は、どちらも遺言によって財産を承継させる方法ですが、法的な性質や手続きが異なります。
遺贈とは
遺贈とは、被相続人が遺言によって自分の財産を無償で他人に与える法律行為のことです。相続人以外の第三者にも財産を与えることもでき、内縁の配偶者・長年世話をしてくれた知人・公益団体などを受遺者とすることもできます。
ただし、遺贈によっても遺留分制度による制限があるため、一定の相続人の取り分が完全に排除されるわけではありません。
特定遺贈
「自宅不動産をAに遺贈する」「預金口座の残高をBに遺贈する」など、特定の財産を指定して与える遺贈です。特定遺贈された財産は遺産分割の対象から除かれ、残りの財産が遺産分割の対象になります。
受遺者が相続人である場合には、その取得した財産が特別受益として扱われる可能性があり、残りの財産の分配に影響を与えることがあります。
包括遺贈
「全財産をAに遺贈する」「遺産の3分の1をBに遺贈する」など、遺産の全部または一定割合を与える遺贈です。
割合的な包括遺贈では、受遺者が相続人とほぼ同様の権利義務を持ち、具体的な財産の分配について遺産分割手続に参加することになります。
「相続させる」遺言とは
特定財産承継遺言とは、遺産分割方法の指定として、特定の財産を特定の相続人に承継させる旨を定めた遺言のことです。「自宅不動産を長男に相続させる」「会社の株式を次男に相続させる」といった内容が該当します。
大きな特徴は、被相続人が死亡して遺言の効力が発生した時点で、その財産が指定された相続人に承継されると解されていることです。財産の帰属が遺言によって決まるため、原則として遺産分割協議は不要となり、遺言書と戸籍関係書類などを用いて名義変更手続を進めることができます。
この形式は、不動産などを特定の相続人に承継させたい場合に利用されることが多く、家業を継ぐ相続人に事業用資産を集中させたい場合や、同居している相続人に自宅を承継させたい場合などに用いられます。
遺産分割をめぐる紛争の予防も期待できるため、公正証書遺言でも広く利用されています。
遺言書があってもトラブルになるケース
遺言書があっても、内容の解釈・遺言と異なる分割・遺留分・遺言執行者・遺言の有効性などをめぐって紛争が生じることがあります。
遺言内容の解釈が分かれる
自筆証書遺言では、「与える」「任せる」「継がせる」など、法律上の意味が明確でない表現が使われていることがあります。
例えば、「自宅は長男に任せる」と記載されている場合、管理を任せる趣旨なのか、所有権を取得させる趣旨なのかが問題となることがあります。このような場合、遺言書の文言だけでなく、遺言作成当時の事情や被相続人の意思などを考慮して解釈する必要があります。
弊所でもこの種のご相談は非常に多く、過去の審判例などを子細に調査し、ご相談者に有利な審判例をもとに交渉することがあります。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判による解決に至る場合もあります。
遺言と異なる分け方を希望する
相続人全員が合意すれば、遺言とは異なる内容で遺産分割を行うことも可能とされています。
例えば、遺言では長男が自宅を相続するとされていても、相続人全員が売却を希望している場合には、売却して代金を分配するという方法を取ることもできます。
ただし、遺言と異なる分割を行うことが、税務上は贈与や交換と評価される可能性があります。また、後から一部の相続人が遺言を尊重すべきだったと主張し、新たな紛争が生じる可能性もあります。
この問題については、税理士の先生方から弊所へのご相談も多い分野であり、相続人全員の意思を明確にしたうえで慎重に進める必要があります。
遺留分侵害額請求が問題になる
特定の相続人に多くの財産を与える遺言では、他の相続人の遺留分が侵害されることがあります。遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分です。
例えば、「すべての財産を長男に相続させる」という遺言があり、配偶者や他の子どもがいる場合には、遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。
遺留分侵害額請求は金銭によって解決する制度ですが、実務では相続人間の対立が深刻化する原因となることもあります。
遺言執行者を確認せずに手続きを進める
遺言執行者が指定されている場合、遺言内容を実現するための手続きは原則として遺言執行者が行います。遺言執行者は、財産の名義変更など、遺言の実現に必要な権限を持ちます。
そのため、相続人が独自に遺産を処分すると、遺言執行者の権限との関係で問題が生じることがあります。遺言執行者がいる場合は、その関与のもとで手続きを進めることが重要です。
遺産分割後に遺言書が見つかる
すでに遺産分割協議や名義変更を終えた後に遺言書が見つかる場合もあります。この場合、遺言の内容によっては、すでに行った遺産分割の効力が問題となり、やり直しが問題になる可能性があります。
そのため、遺産分割協議を行う前に、遺言書の有無を十分に確認することが重要です。
遺言書の有効性が争われる
遺言書は、法律で定められた方式に従っていなければ無効になる可能性があります。特に自筆証書遺言では、形式不備や内容の問題から有効性が争われることがあります。
遺言者に意思能力がなかった、他人が作成したのではないかなどと主張され、遺言無効確認訴訟が提起されることもあります。このような紛争になると、相続手続が長期間停滞する可能性があります。
遺言書がある相続手続の進め方
遺言書が見つかったら、すぐに名義変更を行うのではなく、①遺言内容の確認、②相続人・財産調査、③遺言執行者の確認、④登記・名義変更の順に進めます。
① 遺言内容の確認
最初に、誰にどの財産を承継させるのか、割合だけが指定されているのかなど、遺言書の内容を正確に確認します。
特定財産承継遺言であれば、その財産は遺産分割の対象にならない可能性があります。
一方、割合のみの指定であれば、具体的な財産の分け方を決めるために遺産分割協議が必要です。自筆証書遺言では、家庭裁判所の検認が必要になる場合もあります。
② 相続人調査・財産調査
被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法律上の相続人を確認します。遺言がある場合でも、遺留分の問題が生じる可能性があるため、相続人の範囲を確認することは重要です。
財産については、不動産・預貯金・株式などの資産だけでなく、借入金などの負債も含めて確認する必要があります。遺言書に記載されていない財産があれば、その財産について遺産分割協議が必要になることもあります。
③ 遺言執行者の確認
遺言書に遺言執行者が指定されている場合には、原則として遺言執行者を中心に手続きを進めます。不動産の名義変更や預金の解約なども、遺言執行者が行うことになります。
そのため、相続人だけで手続きを進めるのではなく、遺言執行者と連携して進めることが重要です。
④ 登記・名義変更
遺言の内容と相続財産を確認した後、不動産は相続登記、預貯金は金融機関での相続手続、株式などは証券会社での名義変更手続を行います。
遺言で承継者が定められている財産は遺言書を用いて手続きを進め、遺言で処理されていない財産については遺産分割協議書を作成します。
弁護士に相談すべきケース
遺言の内容や相続人の状況によっては、早い段階で弁護士に相談することで、手続きの停滞や紛争の拡大を防ぎやすくなります。
相続人間で争いがある
遺言の内容が不公平であると感じる相続人がいる場合や、遺言の解釈について意見が分かれる場合には、相続手続が進まなくなることがあります。
弁護士が法律的な観点から論点を整理し、紛争解決に向けた調整を行うことが可能です。
遺言書の解釈が難しい
自筆証書遺言などで法律用語ではない表現が使われている場合、その意味をめぐって争いが生じることがあります。
遺言の文言だけでなく、作成当時の事情や被相続人の意思も踏まえた判断が必要になるため、専門的な検討が重要です。
遺留分侵害額請求が想定される
遺言によって特定の相続人に多くの財産が与えられている場合、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
弊所においてもご相談が非常に多い類型であり、事前に法的な整理を行い、紛争の拡大を防ぐための対応を検討することが重要です。
遺言執行者の選任が必要
遺言書に遺言執行者が指定されていない場合でも、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。
相続人同士の関係が良好でない場合や、相続財産の管理・処分が複雑な場合には、弁護士が遺言執行者となることで手続きを進めやすくなります。
東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所
遺言書がある場合でも、必ずしも遺産分割協議が不要になるわけではありません。「相続させる」旨の遺言など、財産の取得者が具体的に定められていれば遺産分割が不要となる一方、相続分のみの指定や、遺言で処理されていない財産がある場合には遺産分割協議が必要になります。
また、遺言の内容が不明確な場合や、遺留分侵害額請求が問題となる場合には、相続人間でトラブルになることもあります。遺言書が見つかったときは、遺言の種類や内容を確認し、必要な相続手続を整理することが重要です。
直法律事務所では、相続問題に精通した弁護士が丁寧にサポートいたします。お悩みの方は、まずは一度ご相談ください。
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