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弁護士コラム
不動産相続における遺言書の不備や文言はどうなる?登記への影響を解説
- 遺産分割のトラブル
- 投稿日:2026年07月23日 |
最終更新日:2026年07月23日

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先月他界した父が自筆証書遺言を残していましたが、日付や財産の記載に誤字があり、内容も「実家を長男に任せる」という曖昧な表現となっていました。
このような遺言書は法的に有効なのでしょうか。「任せる」といった曖昧な文言の場合の不動産登記の手続き方法や、登記原因が「相続」と「遺贈」どちらになるかなども知りたいです。
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遺言書に記載される他の記述などから故人の真意が明確に特定できれば、遺言書の誤字や日付の不備があっても有効となる可能性があります。
一方、「任せる」という曖昧な表現が用いられている場合、譲渡する意思なのか単なる管理の依頼なのかが不明確なため、法務局での登記申請が却下される可能性が高いです。
登記原因については、遺言書に「不動産を相続させる」と書かれているなら「相続」、「遺贈する」と書かれているのであれば「遺贈」となります。
監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
2009年 弁護士登録
2018年 弁護士法人直法律事務所 開業
相続・不動産・企業法務を中心に取り扱い、相続に関する相談を年間100件以上対応。
遺産分割・遺留分・相続登記・生前対策など、幅広い相続問題の解決に取り組んでいます。
目次
遺言書の形式不備や誤記に関する効力の判断
自筆証書遺言は、法律で定められた方式を満たさなければ原則として無効になります。遺言者は、内容の全文・日付・氏名を自書し、押印しなければなりません。
もっとも、高齢の方が遺言書を作成する場合には、書き間違いや記載漏れが生じることがあります。
この章では、形式不備や誤記がある場合の遺言の有効性の判断基準について解説します。
軽微な書き間違いや日付の誤記が有効となる基準
遺言書に誤記があっても、遺言者の真意を容易に判断できる場合は無効にならない可能性があります。他の記述や周囲の事情から誤記であることが明らかであり、遺言者が本当に書きたかった内容を容易に判断できる場合がこれにあたります。
例えば、遺言書にあり得ない日付が記載されていても、作成に関わった弁護士と知り合った経緯などから真実の作成日が特定できる場合は、有効と判断されています。
一方、記載内容が多義的で遺言者の意図を1つに特定できない場合や、承継する財産を特定できない場合などは、無効となるリスクが高まります。
また、このような間違いを理由に、被相続人の遺言能力が争われることもあるため、注意が必要です。
遺言書が有効と判断される可能性がある例
- ・日付の誤記:実際の作成日ではない日付(例:昭和28年と48年の書き間違い)であっても、弁護士との面会記録など他の事情から真実の作成日が容易に判明する場合
- ・名前の誤記:妻の名前の一部を間違えているが、他に該当する人物がおらず本人であることが明らかな場合
- ・署名の誤記:通称や雅号・ペンネーム・氏または名前のみでも、遺言者が特定される場合
- ・財産の誤記:地番や県名の単純な書き損じで、他に類似の所有不動産がなく対象を特定できる場合
遺言書が無効となるリスクが高い例
- ・日付の特定不能:「吉日」や「○月○日」のみで年月日が不明な場合
- ・多義的な日付:誤字により複数の日付(例:11月4日とも11月11日とも読めるなど)に読めてしまう場合
- ・財産の特定不能:同じ町内に複数の土地を持っており、誤記のせいでどの土地を指しているか判別できない場合
法改正による財産目録の作成緩和と保管制度の活用
2019年の相続法改正により、自筆証書遺言の財産目録は手書きで作成しなくてもよくなりました。
改正前は全文を自書する必要がありましたが、現在は、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合、パソコンで作成した目録・不動産の登記事項証明書・預貯金通帳の写しを添付することが認められています。これらの目録は、各ページに署名押印をすることで遺言書の一部となります。
不動産の地番や銀行口座番号は、手書きで転記すると書き間違いが起こりやすい情報です。そのため、登記事項証明書や通帳のコピーをそのまま目録として利用すれば、記載ミスによって遺言書が無効になるリスクを抑えることができです。
また、形式不備によって無効となるリスクを防ぐためには、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の利用が有効です。
この制度では、法務局の遺言書保管官が日付や署名など民法の定める形式に適合しているかを外形的に確認するため、形式不備によって無効となるリスクを小さくすることができます。
ただし、遺言書の内容まで精査されるわけではなく、有効性が完全に保証されるわけではありません。
財産の特定が曖昧な場合の有効性判断基準
財産の記載に誤りがあっても、対象となる財産を特定できる場合は無効にならない可能性があります。
例えば、不動産の地番や銀行口座番号に誤記があっても、被相続人がどの財産について書こうとしたのかを読み取ることができる場合です。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- ✓ 被相続人が所有する不動産が1つしかなく、他の物件と混同するおそれがない
- ✓ 県名のうち1文字を書き忘れるなど、他の地域と混同する可能性がない単純なミスである
一方、被相続人が複数の不動産を所有しており、記載ミスによって対象となる不動産を判別できない場合は、その部分が無効となるリスクが高まります。
遺言書の誤記だけで直ちに無効となるわけではありませんが、法的な効力については弁護士などの専門家に確認することが大切です。
遺言書の文言が不動産登記に与える影響とリスク
遺言書の文言が曖昧だと、不動産の相続登記ができない可能性があります。「全財産を任せる」や「委ねる」といった表現では、法的な権利移転の意思が不明確と判断されるおそれがあります。
不動産の登記手続では、登記官は申請書と添付書類のみをもとに形式的な審査を行うため、遺言書作成時の事情や遺言者の真意までは考慮されません。そのため、曖昧な文言が記載された遺言書では、権利移転の原因を特定できないとして登記申請が却下される可能性が高いです。
不動産を確実に承継させるためには、法的に明確な文言を使用して遺言書を作成することが重要です。
「相続させる」と「遺贈する」で異なる登記原因の使い分け
遺言書の文言によって、不動産登記の登記原因は異なります。「相続させる」と記載されていれば登記原因は「相続」となり、「遺贈する」と記載されていれば「遺贈」となるのが原則です。
財産を受け取る相手が相続人であっても、「遺贈する」や「包括遺贈する」と記載されている場合は、登記原因は「遺贈」となります。
もっとも、相続人全員に対して「全財産を包括遺贈する」と記載されている場合は、実質的に遺産分割方法の指定と同じと考えられるため、登記原因は「相続」として扱われます。
文言による登記原因の使い分け
| 遺言書の文言 | 相手方(受取人) | 登記原因 | 備考 |
| 「相続させる」 | 相続人 | 相続 | 原則として単独申請が可能 |
| 「遺贈する」 | 相続人 | 遺贈 | 共同申請が原則(遺言執行者等) |
| 「包括遺贈する」 | 相続人 (特定の1人など) | 遺贈 | 登記原因は「遺贈」となる |
| 「包括遺贈する」 | 相続人全員 | 相続 | 実質的な相続分の指定とみなされる |
| 「相続させる」 | 相続人以外 (第三者など) | 遺贈 | 相手が相続人でない場合は遺贈となる |
| 「任せる」「委ねる」 | 問わない | ー | 登記申請が却下されるリスクが高い |
相続人以外への「相続させる」旨の遺言の法的扱い
相続人以外に「相続させる」と記載しても、法的には「遺贈」として扱われます。
例えば、被相続人の面倒をみていた第三者など、本来は相続人ではない人に対して「相続させる」と記載した場合でも法的な性質は「遺贈」となります。これは、相続人ではない親族に財産を取得させる場合も同様です。
そのため、相続登記では登記原因を「相続」ではなく「遺贈」としなければなりません。「相続」として申請すると不備となります。
曖昧な文言(任せる・委ねる等)の解釈と登記リスク
「任せる」「委ねる」などの曖昧な文言では、相続登記が認められない可能性があります。
例えば、「特定の不動産を特定の相続人に相続させる」と記載されていれば、その不動産は遺産分割協議を経ることなく、指定された相続人が取得したものと解釈されます。
一方、「長男にすべての財産を任せる」「不動産の管理を妻に委ねる」といった表現では所有権を移転させるという意思なのか、単に管理を任せる主旨なのかが明確ではありません。
登記官は形式的な審査しか行わないため、曖昧な文言では権利移転を認められず、登記申請が却下される可能性があります。
また、「与える」などの文言は所有権を移転させる意思があると解釈する余地がありますが、登記原因が「相続」と「遺贈」いずれになるのかについて見解が分かれているため、どのような登記が認められるかを予測することは困難です。
望む登記を実現するためにも、遺言書には法的に明確な文言を用いることが大切です。
遺言内容と異なる登記がされた場合の是正手続
遺言と異なる内容で共同相続登記がされた場合は、「所有権更正登記」によって是正します。
例えば、遺言で特定の相続人が不動産を取得することになっていたにもかかわらず、法定相続分どおりの共同相続登記がされることがあります。
この場合、共同相続登記を抹消するのではなく、所有権更正登記を行う必要があります。共同相続登記全体を抹消すると、本来の権利者の持分まで消えてしまい、誤って登記された他の相続人の持分だけを抹消することも、原則として認められないためです。
この章では、誤った共有状態を是正する所有権更正登記の方法について解説します。
共同相続登記後に遺言が発見された場合の更正登記の方法
共同相続登記の後に単独相続を定めた遺言書が見つかった場合、原則として相続人全員で所有権更正登記を申請しなければなりません。
更正登記をする際の手順は、以下のとおりです。
- ① 遺言書の有効性確認:遺言の種類や内容を確認し、更生登記が可能か判断する
- ② 登記状況の確認:登記簿にて、現在の登記内容や第三者の権利の有無を調べる
- ③ 必要書類の準備:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や不動産を取得する相続人の戸籍謄本などを用意する
- ④ 法務局へ申請:管轄法務局に所有権更正登記を申請する
権利を失うことになる他の相続人が協力しない場合には、裁判所で「所有権更正登記手続請求訴訟」を提起する方法があります。勝訴判決を得られれば、その判決書を添付することで単独で更正登記を申請することができます。
第三者の権利が設定されている場合の対抗関係と承諾の要否
第三者の権利が登記されている場合は、更正登記に第三者の承諾が必要となることがあります。
例えば、誤った共同相続登記の後、権利を持たない相続人が自分の持分に抵当権などを設定している場合は、その第三者は利害関係人となるため、更正登記には原則として第三者の承諾が必要となります。
もっとも、この取り扱いは民法改正によって変更されました。
2019年7月1日以後に開始した相続では、「相続させる」旨の遺言によって不動産を取得した相続人であっても、自己の相続分を超える部分については、登記がなければ第三者に対抗できなくなりました(民法第899条の2第1項)。
そのため、2019年7月1日以後に開始した相続で、権利を持たない相続人の持分に第三者が抵当権などを設定している場合はその第三者の承諾書または第三者に対抗できることを認める裁判がない限り、原則として遺言どおりの更正登記を行うことはできません。
また、遺言書が存在するだけでは、第三者を相手とする訴訟で勝訴することは困難です。
一方で、遺言で不動産を取得する相続人の持分のみに担保権が設定されている場合には、更正登記によって第三者に不利益は生じないため、承諾は不要です。
遺言書に基づく登記ができない場合の解決策
遺言書があっても、その内容によっては相続登記ができない場合があります。
例えば、遺言書の文言が曖昧である場合などは、法務局で登記申請が受け付けられないことがあります。
この章では、遺言による相続登記ができないケースと、その場合の対応方法について解説します。
遺贈登記ができない場合の代替手続(死因贈与に基づく登記)
将来の権利を確実に保全したい場合は、「死因贈与契約」を利用できることがあります。
死因贈与とは、「私が亡くなったら不動産を譲ります」という内容について、譲る人と受け取る人が生前に合意して締結する契約です。
遺言が相手の同意を必要としない単独行為であるのに対し、死因贈与は双方の合意によって成立する契約である点が大きく異なります。
また、遺贈では生前に登記手続を行うことはできませんが、死因贈与であれば贈与者が亡くなる前に「始期付所有権移転仮登記」を行うことができます。この仮登記は、将来の本登記に備えて登記順位を確保するためのものです。
仮登記をしていれば、その後に贈与者が不動産を第三者へ売却した場合や、債権者によって差し押さえられた場合でも、買主や債権者に優先して権利を主張することができます。
遺言どおりに登記できない場合の遺産分割協議による対応
遺言どおりに登記できない場合でも、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議によって解決できることがあります。
「全財産を妻に任せる」「長男に管理を委ねる」など曖昧な言葉が使われている場合、登記申請が却下されることがあります。しかし、このことは直ちに遺言書が無効になることを意味するものではありません。
遺言の内容を確定するために裁判所を利用する方法もありますが、時間・費用・労力が必要となります。
そこで、相続人全員が合意できる場合は、遺産分割協議によって誰がどの不動産を取得するかを決め、その内容を遺産分割協議書にまとめることで、相続登記を申請することができます。故人の最終意思は原則として尊重されますが、相続人全員が別の分け方を望む場合には、このような方法による解決も可能です。
ただし、相続人のうち一人でも反対する場合は、遺産分割協議は成立しません。
また、相続人以外の受遺者がいる場合には、その受遺者が遺贈を放棄しない限り、相続人全員の合意があっても遺言と異なる内容で遺産分割をすることはできません。
さらに、遺言執行者が指定されている場合は、その人の同意も必要となります。遺言書で一定期間の遺産分割が禁止されている場合、その期間中は遺産分割協議を行うことができない点に注意が必要です。
遺言執行者が登記手続を行わない場合
遺言執行者が登記に協力しない場合の対応は、遺言書の文言によって異なります。
遺言書に「遺贈する」と記載されている場合は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請を行うのが原則です。そのため、遺言執行者が協力しない限り、受遺者は単独で登記申請をすることはできません。
もっとも、遺言執行者には、遺贈を原因とする所有権移転登記手続を行う権利義務があると考えられています。そのため、受遺者は遺言執行者を被告として所有権移転登記請求訴訟を提起することができます。勝訴判決を得た場合には、判決正本(確定証明書付き)を添付して単独で登記申請を行うことができます。
また、訴訟上の和解が成立し、和解調書に所有権移転登記手続を行う旨の記載がある場合も、単独申請が可能です。
一方、「相続させる」と記載されている場合は、不動産を取得する相続人が単独で相続登記を申請できるため、遺言執行者の印鑑や協力は必要ありません。
なお、現在は遺言執行者も相続を登記原因として、遺言により不動産を取得する相続人への所有権移転登記を単独で申請できます。ただし、これによって相続人自身が単独で登記申請ができなくなるわけではありません。
よくある質問(Q&A)
最後に、遺言書と不動産相続について、読者からよく寄せられる質問をQ&A形式でご紹介します。
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遺言書の日付が未来の日付になっている場合、有効ですか?
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原則として、未来の日付が書かれた遺言書は無効となります。
ただし、遺言書の内容や作成当時の事情などから、単なる書き間違いであることが明らかであれば、有効と判断されるケースもあります。
-
「全財産を長男に任せる」という遺言書で登記できますか?
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法務局での登記申請が却下される可能性が高いです。
「任せる」という表現だけでは、不動産の所有権を移転する意思なのか、管理を委ねる主旨なのかを判断できないためです。
裁判所で遺言の内容について判断を仰ぐ方法もありますが、遺言者の真意が認められるとは限らず、時間・費用・労力がかかる点に注意が必要です。
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孫に「財産を相続させる」と書いた場合、どうなりますか?
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この事例では、法的には「遺贈」として扱われます。
「相続させる」という文言は、本来、法定相続人に対して用いられるものです。この事例のように、子や配偶者などの相続人がいるにもかかわらず、法定相続人ではない孫に対して「相続させる」と記載した場合は、法的には「遺贈」として扱われます。
そのため、不動産の名義変更を行う際は、「相続」を原因とする登記ではなく、「遺贈」を原因とする登記を申請することになります。
東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所
遺言書に形式の不備があったり、相続財産を「○○に任せる」などの曖昧な表現が用いられていると、不動産の名義変更登記ができない場合があります。法務局では書類を形式的に審査するため、遺言者の意思が明確でないと判断されると、登記申請が認められません。
また、遺言書による登記ができない場合は、遺言書の内容について裁判所の判断を仰ぐか、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。さらに、遺言で取得者が指定されているにもかかわらず共同相続登記がされている場合には、所有権更正登記が必要となります。
遺言書による不動産の名義変更は、状況に応じた適切な対応が重要です。不安がある場合は、早い段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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