columns
弁護士コラム
使途不明金は遺産分割調停で解決できる?贈与の主張と立証責任について解説
- 遺産分割のトラブル
- 投稿日:2025年12月10日 |
最終更新日:2025年12月10日

- Q
-
半年前に母が亡くなり、同居していた兄と遺産分割で揉めています。母の預金を確認したところ、亡くなる数年前に度々使途が不明な多額の引き出しがありました。そこで兄に問いただすと、「母から感謝の気持ちでもらった。」と贈与された旨の主張をしていますが、書面などはないようです。
現在、遺産分割協議をしており、兄が母の預金から引き出した使途不明金も相続財産に含めるべきだと主張していますが、話が平行線で精神的に疲弊しています。遺産分割調停を申し立てれば、使途不明金についても解決できるでしょうか。
また、兄の「贈与」という主張に対して、こちらはどう対処すればよいのでしょうか。立証責任はどちらにあるのか、調停で合意するためのポイントや注意点を教えてください。
- Answer
-
遺産分割は「現在残っている遺産」を対象とするため、死亡前後に引き出された使途不明金は、本来その対象外です。ただし、相続開始後に一部の相続人が財産を処分した場合は、処分をした相続人以外の相続人全員の同意があれば、「遺産として存在するもの」と扱うことができます(民法906条の2)。
また、生前に生じた使途不明金についても、当事者全員が事実関係を認めて協議する意思がある場合には、調停で協議することができます。ただし、合意が見込めなければ協議は打ち切られ、別途訴訟での解決を図ることになります。
兄が「贈与を受けた」と主張する場合、原則として贈与の立証責任は贈与を主張する側(兄)にあります。訴訟では、贈与契約書などの直接証拠がない場合でも、裁判所は贈与の経緯・金額・被相続人との関係性などを総合的に考慮して判断します。贈与を否定したい場合には、被相続人の意思能力の欠如や、贈与理由の不存在などを指摘して反論していきます。
なお、仮に贈与と認められたとしても、当該贈与は遺産分割における「特別受益」となり、兄の相続分が減る可能性があります。そのため、主張を調停と訴訟で切り替えることは信義則違反と判断される恐れがあります。
この記事では、使途不明金に関する「贈与」の主張への対応・立証責任の所在・調停での解決のポイント、そして専門家へ早期に相談する重要性について詳しく解説します。
監修:弁護士法人直法律事務所 代表弁護士 澤田 直彦
本記事では、遺産分割で頻発する使途不明金トラブルへの対処法を解説します。贈与という主張の法的意味、立証責任の所在、調停での解決のポイントを理解することで、親族間の感情的対立を避けながら、公平な解決を目指すことができます。
被相続人と同居していた相続人による預金の無断引き出しに悩む方、遺産分割調停を検討されている方に役立つ実践的な知識をお伝えします。
目次
使途不明金をめぐる遺産分割トラブルの実態とリスク

相続が発生し、被相続人の預貯金口座の取引履歴を確認すると、生前に多額の引き出しがあり、その使途が不明確な、いわゆる「使途不明金問題」が浮上することがあります。
とりわけ、被相続人と同居していた相続人が口座を管理していた場合、他の相続人から「無断で引き出したのではないか」と疑われやすく、遺産分割協議が紛糾する原因となりがちです。
使途不明金をめぐる問題は、相続紛争の中でも発生件数が多く、解決までに長期間を要するケースも珍しくありません。
相続トラブルの中でも使途不明金問題が多い理由
使途不明金問題が相続トラブルの中で特に多い理由として、主に以下の3点が挙げられます。
第1に、親が高齢になるにつれて認知機能が低下し、同居する子が財産管理を任される場面が増えることです。通帳やキャッシュカードを預かる過程で、本来の目的以外にも使用してしまうケースがあります。
第2に、財産管理を任された相続人が、支出に関する領収書や記録を十分に残していないことが多く、後から使途を説明・証明することが困難になることです。
第3に、同居していた相続人は「親の面倒を見ていたのだから当然」という意識を持つ一方、別居していた相続人は「無断で引き出したのではないか」と疑念を抱くなど、双方の意識のギャップが問題を深刻化させる要因となります。
親族間紛争の長期化リスクと心理的負担
使途不明金問題は、当事者間で合意が得られない場合、家庭裁判所での調停、さらには訴訟へと発展し、場合によっては数年に及ぶ長期紛争となることもあります。
そして、このような状況を放置すると、重大なリスクが生じます。
まず、時間の経過により金融機関の取引履歴の保存期間が経過してしまったり、関係者の記憶が曖昧になったりすることで、必要な証拠の収集が一層困難になります。
また、不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権などには時効があるため、早期に適切な手続きを取らなければ、権利行使そのものが出来なくなる恐れがあります。
さらに、使途不明金問題をめぐる対立が長引くことで、兄弟姉妹や親族間の信頼関係は大きく損なわれます。長期間にわたる精神的なストレスにより、日常生活に影響を及ぼす可能性も否定できません。
「贈与」を主張された場合の注意点と立証のポイント

使途不明金返還請求訴訟や遺産分割調停において、相手方から「被相続人から贈与を受けた」という主張がなされるケースは少なくありません。
この主張が認められると、不当利得返還請求権や不法行為損害賠償請求権の前提となる成立要件が欠けることになり、使途不明金返還請求訴訟においては相手方に有利な判断が下される可能性が高まります。
しかし、贈与が認められた場合でも、遺産分割手続においては贈与の金額や趣旨などによっては特別受益として扱われ、最終的に各相続人の取得分に影響が生じる可能性があります。
したがって、贈与の主張は単純に認める・否定するだけでは済まず、法的な位置づけを丁寧に検討する必要があります。
贈与の主張が遺産分割に与える影響
民法903条により、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がある」場合、その遺贈や贈与を「特別受益」といいます。
特別受益がある場合、その金額を相続財産に加算した「みなし相続財産」を基礎として、法定相続分を算定し、特別受益を受けた相続人は、その法定相続分から特別受益額を控除した額が最終的な具体的相続分となります。
例えば、遺産総額が3,000万円で、相続人が子A・B・Cの3人である場合、通常の法定相続分は各1,000万円ずつです。しかし、Aが1,500万円の特別受益を受けていた場合、みなし相続財産は4,500万円となり、Aの具体的相続分は0円、B・Cは各1,500万円となります。
贈与と認められた場合に遺留分侵害額請求の対象となる可能性
使途不明金が「贈与」と認定された場合でも、その金額や時期によっては遺留分侵害額請求の対象となる可能性があります。
相続開始前1年間の贈与、遺留分権利者に損害を加える意図を当事者双方が有していた贈与、また相続人に対する特別受益としての贈与(相続開始前10年間)は、いずれも遺留分算定の基礎財産に含まれます。
東京地判平成28年2月10日は、「被告に対して全財産の包括遺贈がなされている場合に、被告に対する不法行為損害賠償請求権等も遺贈されたものであるが、被告が取得したそれらの請求権についても遺留分の算定の基礎となる」としました。
このように、贈与の主張が認められたとしても、遺留分侵害額請求など別の法的手続で問題が再燃する可能性があるため、慎重な検討が必要です。
贈与の事実を証明する直接証拠と間接事実
贈与の成立を証明するうえで最も有力なのは「直接証拠」であり、具体的には以下の資料が挙げられます。
- 贈与契約書(特に公正証書で作成されたものは信用性が高い)
- 口頭での贈与契約の締結過程を記録した録音・映像データ
直接証拠がない場合には、「間接事実」を積み重ねて贈与の成立を推認させる必要があり、主な間接事実としては以下の資料や説明が挙げられます。
- 結婚費用の領収書・学費の納付書・借金返済の記録など、贈与の目的を示す資料
- 贈与税申告書(有力な間接証拠)
- 被相続人の意思を示す日記・メモ・手紙など
- 長年の無償介護・事業の手伝いなど、贈与の合理性を示す事情
なお、贈与税申告書は、受贈者のみが提出するため直接証拠には該当しませんが、贈与税を適切に申告・納税していたという事実は、贈与の意思を強く推認させる重要な資料となります。
贈与契約書がない場合に考慮される判断要素
贈与契約書が存在しない場合でも、裁判所は間接事実を積み重ねることで、贈与の事実を認定することがあります。
裁判所が贈与の有無を判断する際には、以下のような要素を総合的に考慮します。
- 贈与の金額・目的
- 結婚費用・学費・借財返済など、特定の目的が明確かどうか
- 贈与の公平性
- 特定の相続人やその家族にのみ贈与が集中していないか、他の相続人にも同様の贈与歴があるか
- 被相続人と当事者の関係性
- 長年の無償介護に対する実質的対価など、贈与に合理的理由があるといえるか
- 被相続人の意思
- 遺言の内容と贈与の主張に整合性があるか
裁判例でも判断が分かれています。東京地判平成30年12月12日は、長年の無償介護等の事情を踏まえ贈与の成立を認めました。
一方、東京地判令和元年11月7日は、遺言で冷遇されている相続人に対する多額の贈与は不自然であるとして贈与を否定しています。
遺産分割調停と訴訟で主張を覆すことの問題点
遺産分割調停で贈与を否定していたにもかかわらず、後の訴訟で「贈与があった」と主張を覆すケースがあります。
このような主張変更は、相手方の訴訟活動を不当に害し、訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に反すると判断される可能性があります。また、審判段階で突然贈与を主張する場合も同様です。
他方、調停または審判において、使途不明金を贈与と位置付けて特別受益を主張をしたものの認められず、その後に別訴で使途不明金について不当利得返還請求権等を提起すること自体は可能ですが、一貫性を欠くことによる不利益が生じ得るため、早期に主張方針を固めることが重要です。
使途不明金問題で弁護士ができるサポートとは?

使途不明金問題は、法的な知識と実務経験を要する複雑な問題です。
弁護士に依頼することで、証拠の収集や整理・内容証明郵便の作成・調停前の交渉・調停での代理・訴訟への移行まで一連の手続きを任せることができます。
また、弁護士が間に入ることで、感情的な対立を避けながら冷静な話し合いを実現し、法的根拠に基づく冷静な主張の組み立てが可能となります。
調停前の証拠整理・内容証明作成
弁護士は、「金融機関からの取引履歴の取り寄せ」「引き出しの時期・金額・頻度の分析」「被相続人の生活状況や医療・介護費用の確認」「相手方が主張する使途の裏付け調査」「贈与を否定する証拠の収集」など、必要な証拠の収集・整理を総合的にサポートします。
また、弁護士は、調停申立てに先立ち、相手方に内容証明で使途の説明を求めたり返還を請求したりする際には、法的要件を満たす文書の作成に加え、当方に有利となる事実関係を精査し、調停・訴訟を有利に進めるための準備を行うことが可能です。
相手方との交渉・調停の代理
弁護士が代理人となることで、当事者同士の直接的なやり取りを避け、感情的な対立を抑えながら法的な根拠に基づいた交渉を進めることができます。
家庭裁判所での遺産分割調停においては、「申立書の作成と提出」「調停期日への出席」「主張の整理」「証拠の提出と説明」「調停委員との効果的なコミュニケーション」「調停案の検討と助言」「調停調書の内容確認」など、弁護士が代理人として重要な役割を果たします。
調停が不成立となった場合や、調停の中で使途不明金問題が解決に至らない場合には、使途不明金返還請求訴訟を提起する必要があり、弁護士は訴訟の見通しを説明し、訴訟提起から判決まで一貫してサポートします。
親族間の感情的な対立を防ぐ
使途不明金問題は、親族間で感情的な対立が生じやすい問題です。当事者同士が直接やり取りすると、過去の家族関係や感情的なもつれが影響し、冷静な話し合いが困難になることもあります。
弁護士が間に入ることで、法的な視点から客観的に問題を整理し、感情的な対立を抑えることができます。また、法的な根拠に基づいて主張を組み立てるため、相手方も感情的な反応を控え、理性的に対応せざるを得なくなります。
弁護士は紛争解決の専門家として、単に法的に勝つことだけでなく、可能な限り円満な解決を目指すことで、紛争後の親族関係を維持・修復する余地を残すことができます。
遺産分割調停で使途不明金を解決する手順

遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員を介して、相続人が遺産分割について話し合う手続きです。
遺産分割は、あくまで現存する遺産を対象とするため、被相続人の死亡前後の預貯金の引き出しによる使途不明金については、本来協議の対象ではありません。
しかし、当事者全員が使途不明金に関する事実の全部あるいは一部について認めた上で、遺産分割調停での解決を望む場合には、調停で協議することが可能です。
申立書作成と家庭裁判所への提出
遺産分割調停を申し立てるには、家庭裁判所に「遺産分割調停申立書」を提出します。
申立書には、以下の内容を記載します。
- 当事者の氏名・住所
- 被相続人の氏名・死亡日
- 相続人の範囲と法定相続分
- 遺産の内容
- 使途不明金の存在とその金額
- 申立ての趣旨
また、申立書と併せて、以下の資料を提出する必要があります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産に関する資料
- 使途不明金に関する資料
申立ては、相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に行います。提出の際には、収入印紙(被相続人1人につき1,200円)と連絡用の郵便切手が必要です。
調停期日での主張・証拠提出
申立てから約1~2ヶ月後に第1回調停期日が開かれます。調停期日では、調停委員(通常2名)が当事者双方から交互に事情を聴き、話し合いを仲介します。
使途不明金に関する主張がある場合、調停委員は当事者の言い分を聴取したうえで、預貯金を管理していた相続人に対し、払戻しの経緯や使途の開示、必要資料の提出を促すことが一般的です。
使途不明金を主張する側は「引き出しが無断で行われたこと」、相手方は「被相続人の承諾や贈与の存在」を主張し、それぞれ預貯金の取引履歴・医療費や介護費用の領収書・贈与契約書や贈与税申告書・被相続人の意思を示す資料などを提出します。
任意で資料が開示されない場合は、弁護士照会を用いて金融機関から入出金状況を取得することもあります。相当回数の期日を経ても、使途不明金について合意の見通しが立たない場合には、現存する遺産のみを対象として遺産分割調停を先に進め、使途不明金については別途訴訟を提起して解決することになります。
遺産分割に関して、双方の主張と証拠が出揃った段階で、調停委員が調停案を提示し、当事者間での合意形成を促します。
調停成立と審判への移行
調停において当事者間で合意が成立すれば、調停成立となり、合意内容は調停調書に記載され、確定判決と同じ効力を持ちます。
使途不明金問題を含む遺産分割調停が成立する場合、以下のような形で解決されることが多いです。
- 使途不明金の一部を遺産分割において考慮する(特別受益として扱う)
- 使途不明金を主張した相続人の相続分を増やす形で調整する
- 使途不明金を主張された相続人が一定額を他の相続人に支払う
遺産分割は、遺産の性質や相続人の事情などを総合考慮して行われるため、調停では当事者の納得を重視した柔軟な解決が図られます(民法906条)。
一方、当事者間で合意が成立せず調停が不成立となった場合には、自動的に遺産分割審判へ移行します。ただし、使途不明金は審判の対象外であるため、その点については別途訴訟で解決を図る必要があります。特に、使途不明金の割合が大きい場合、遺産部分のみが先に審判で確定すると、不利益が生じる可能性があります。
しかし、遺産分割調停や審判の取下げは申立人の同意がなければ行うことができず、手続の進行を止めることはできません。
使途不明金問題は早期相談がカギになる理由

使途不明金問題は、早期に専門家へ相談することが極めて重要です。時間の経過とともに、証拠が散逸したり時効が成立したりするリスクが高まるだけでなく、当事者が抱える心理的負担も大きくなります。
早い段階で弁護士に相談し、状況を法的に整理することで、証拠の保全・法的見通しの把握・相手方との早期交渉・感情的対立の防止が可能となり、使途不明金問題をスムーズに解決できる可能性が高まります。
証拠喪失・時効・心理的ストレスの観点
時間が経過すると、金融機関における取引履歴の保存期間(一般的に10年程度)が過ぎ、詳細な取引履歴を入手できなくなったり、医療費・介護費用の領収書が紛失したり、被相続人の生活状況に関する関係者の記憶が曖昧になったりするなど証拠喪失のリスクが高まります。
また、不当利得返還請求権の消滅時効は「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」であり、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は「損害及び加害者を知った時から3年」「不法行為の時から20年」です。
さらに、使途不明金問題を放置すると、相手方に対する不信感や怒りが蓄積し、他の相続人との関係が悪化して日常生活に支障をきたすなど、心理的な負担も深刻化します。
早期の対応で成功率を高める
早期に証拠を収集・保全することで、後の交渉や調停、また訴訟においても有利な立場に立つことができます。
また、弁護士に相談することで法的な見通しを把握し、現実的な解決策を検討することができます。問題が深刻化する前に相手方と交渉を行えば、柔軟な解決が可能となるばかりでなく、専門家の介入によって不要な感情的な対立を防ぐことにもつながります。
遺産分割調停は、事実を一つずつ確認しながら合意を目指しますが、各論点で早期に合意できれば、短期間で調停成立に至る可能性があります。しかし、当事者間の対立が深まった状態で調停に臨むと、各論点の合意に時間を要することがあります。
早期に合意が成立すれば、調停や訴訟にかかる時間と費用を節約でき、親族関係への悪影響も最小限に抑えることができます。
よくある質問(Q&A)

使途不明金や遺産分割調停・審判・訴訟に関して、読者の方が抱きがちな疑問点について、Q&A形式でわかりやすく解説します。
- Q
- 相手が贈与の証拠を何も持っていない場合、どうなりますか?
- Answer
-
贈与の立証責任は、原則として贈与を主張する側にあります。相手方が贈与契約書や贈与税申告書などの直接証拠を持っていない場合、贈与と認められない可能性が高くなります。
もっとも、長年の無償介護や税務申告の有無など、複数の間接事実を積み重ねることで贈与が認められる場合もあります。他方、使途不明金として返還を求める側は、遺言内容や不自然な引出額など、贈与を否定する事情を主張することで、贈与が認められない可能性を高めることができます。
- Q
- 遺産分割調停において、被相続人の生前の使途不明金の話をしたら聞いてもらえますか?
- Answer
-
遺産分割調停において、被相続人の生前の使途不明金の問題を主張することは可能ですが、調停で直接的に使途不明金の返還を命じることはできません。なぜなら、使途不明金の返還請求は別の手続だからです。
もっとも、調停では当事者の主張を聴取し、預貯金を管理していた相続人に払戻しの経緯や使途の開示を求めるのが一般的です。資料が任意に開示されない場合には、弁護士会照会などで入出金状況を確認することもあります。
複数回の期日でも合意に至らなければ、使途不明金は別途訴訟で解決する必要があり、調停は現存する遺産のみを対象に進行します。他方、相手方が使途不明金を認めた場合には、その金額を遺産分割で調整したり、特別受益として扱われることもあります。
したがって、遺産分割調停で使途不明金の話をすること自体は無意味ではありませんが、効率的に主張するには、事前の準備が重要になります。
- Q
- 裁判で白黒つけた方が良いケースはありますか?
- Answer
-
裁判を選択すべきケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。
▸ 証拠が十分にあり勝訴の見込みが高い
▸ 金額が高額で妥協できない
▸ 相手方が誠実に対応せず合意の見込みがない
▸ 法的な前例を作りたい
一方、次のようなケースでは、調停を選択する方が適しています。
▸ 証拠が不十分で訴訟での勝訴が不確実
▸ 早期に紛争を終結させたい
▸ 親族関係を維持したい
▸ 訴訟費用や時間を節約したい
調停か裁判かの判断は事案によって異なるため、弁護士に相談して総合的に検討することが重要です。多くのケースでは調停による解決が現実的ですが、明らかな不正行為があり証拠も十分にある場合には、裁判で白黒つけることも有力な選択肢となります。
東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所
使途不明金をめぐる遺産分割トラブルは、法律知識と交渉力が求められる複雑な問題です。相手方から「贈与を受けた」と主張された場合でも、適切な証拠と主張により、公平な解決を図ることができます。
本記事では、贈与の立証責任・特別受益や遺留分との関係・調停での対応ポイントなどを解説しました。重要なのは、早期に証拠を集め、一貫した主張を行い、専門家の助言を受けることです。早期に相談することで、証拠保全や時効の回避が可能となり、問題解決の可能性を高められます。
直法律事務所では、使途不明金問題を含む様々な相続トラブルの解決をサポートしています。親族間の感情的な対立を避けながら、法的に適切な解決を目指すために、最適な解決策をご提案いたします。まずは一度ご相談ください。
遺産分割についてお悩みの方へ
協議が円滑に進まない、お話し合いがまとまらない等、遺産分割にはさまざまなトラブルが生じがちです。遺産分割協議書の作成から、分割協議の交渉、調停申立て等、プロの弁護士が丁寧にサポートいたします。お悩みの方はお早めにご連絡ください。
初回相談は
0
円
相続に関わるお悩みは相続レスキューにお任せください
ご相談はお気軽に
- 初回相談は 円 お気軽にご相談ください







