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弁護士コラム

相続した不動産に他人が勝手に住み続けている?使用貸借・無断賃貸・内縁配偶者とのトラブル対応を徹底解説

遺産分割のトラブル
投稿日:2025年07月04日 | 
最終更新日:2025年07月04日

Q
親から相続した不動産に兄弟や親の内縁のパートナーが勝手に住み続けています。
こちらは相続人なのに、なぜ自由に使えないのですか?出ていってもらうことはできないのでしょうか?
Answer
不動産を相続したものの、他の相続人が無断で居住し続けていたり、被相続人の内縁配偶者が占有していたりするケースでは、「出ていってほしい」と考える相続人が少なくありません。

しかし、法的には「使用貸借契約」が成立していると推定される場合があり、遺産分割が終了するまでは明渡請求や家賃請求が認められにくいこともあります。
また、令和3年の民法改正により、共有物の管理方法に関する多数決ルールも変わっています。


本記事では、こうした複雑な相続不動産トラブルに対して、どのような法的対応が可能かを判例や実務経験をもとにわかりやすく解説します。

相続人や第三者による無断使用、内縁配偶者との関係、そして明渡請求や損害賠償請求の可否について、適切な対応策を知っておくことが、円滑な相続とトラブル防止のカギになります。

目次

はじめに

相続によって不動産を取得したものの、次のようなお悩みを抱えていませんか?

  • 相続した実家に兄弟がそのまま住み続けている。
  • 亡くなった親の内縁のパートナーが自宅を占有し続けている。
  • 他の相続人が無断で第三者に不動産を貸し出してしまった。

こうしたケースでは、「自分の不動産なのに自由に使えない」「どのように対処したらよいかわからない」と困惑してしまう方も多くいます。放置してしまうと、不動産の処分や有効活用ができず、相続人間の対立が深刻化するおそれもあります。

本記事では、これらの問題を整理し、それぞれの状況に応じた適切な対応策をわかりやすく解説します。具体的な法律の規定や裁判例を踏まえ、明渡請求や金銭請求ができるか否か、そしてその方法や手順についても具体的にお伝えします。

不動産相続の問題は複雑で時間が経つほど解決が難しくなります。適切な対応を早めに取るために、ぜひ本記事を参考にしてください。

一部の相続人が相続不動産を単独で使用している場合の対処法

使用貸借とは?(契約の成立と法的効果)

被相続人と同居していた相続人に認められる使用貸借

不動産所有者(被相続人)が、他の相続人(例:子どもなど)と同居していた場合、その同居者に対して居住する承諾があったと推認されます。この場合、特に賃料などの支払いがない場合、法律上「使用貸借契約」が成立していると考えられます。

最高裁判例(平成8年12月17日)では、「被相続人と同居していた相続人は、遺産分割が終了するまでの間、使用貸借契約が存続し、無償で居住を続けることができる」と判断されています。

つまり、被相続人の許諾を得て不動産に居住していた相続人は、遺産分割終了までそのまま住み続けることが認められます。

遺産分割終了までの間、明渡しや金銭請求はできる?

原則として、遺産分割が終わるまでは、他の相続人が使用貸借を解除して居住者に明渡しを求めたり、賃料相当額の金銭を請求したりすることは認められません。なぜなら、遺産分割終了までの間は使用貸借が継続し、その契約に基づく居住権が法律で保護されるからです。

ただし、居住者が被相続人の生前とは異なる方法で不動産を利用する場合など、例外的に明渡請求や金銭請求が認められるケースもありますが、一般的には困難です。

共有不動産の管理方法(令和3年改正民法のポイント)

民法252条による共有物の管理行為のルール変更

令和3年(2021年)に民法が改正され、共有物の管理方法に新たなルールが導入されました。改正前は、共有物の使用について共有者全員の同意が必要でしたが、改正後は持分価格の過半数の同意があれば、使用方法を決定できるようになりました。
具体的には、共有物を使用している共有者の同意がなくても、多数決により管理行為を変更することが可能となっています。

ただし、管理方法の変更により特別な不利益を受ける共有者がいる場合、その者の承諾が必要とされています。

使用貸借契約を解除できるケースとできないケース

使用貸借契約を解除できるケースは、持分価格の過半数の共有者が、共有物の使用方法を変更する旨の決定をした場合です。

ただし、使用貸借契約により保護されている居住者が、変更により受ける不利益が過大である場合、契約解除が困難になる可能性があります。したがって、原則として、居住者が従前と同じ方法で不動産を利用している場合には、解除は困難です。

一方、利用方法が著しく変更されている場合など、特別な事情があれば解除できる場合もあります

被相続人の内縁配偶者が不動産を使い続けている場合の対応法

内縁配偶者とは?(法的な権利と保護の範囲)

内縁配偶者とは、婚姻の届出はしていないものの、事実上の夫婦として共同生活を営んでいる男女を指します。日本の法律では、正式な婚姻届出がない限り、相続権を有する配偶者とは認められません。したがって、内縁関係にある配偶者には原則として相続権がありません

しかしながら、内縁関係の実態に応じて一定の法的保護が認められる場合があります。とくに居住権に関しては、裁判所が内縁配偶者の居住の保護を認めるケースが少なくありません。

建物が被相続人の単独所有だった場合のポイント

建物が被相続人の単独所有の場合、相続により所有権は法定相続人に承継されます。
通常であれば所有者は使用、収益、処分の権利を行使できるため、内縁配偶者に対して建物明渡請求や賃料相当額の請求が可能と考えられます。

しかし、判例上、内縁配偶者の生活基盤を守るため、こうした請求が否定されることがあります。内縁配偶者が高齢や経済的困窮など、特段の事情を有する場合には、明渡請求が権利濫用と判断される例があります(最判昭和39年10月13日、神戸地判平成22年4月23日等)。
また、内縁関係の期間や経済状況、不動産の維持管理に内縁配偶者が貢献したかどうかなど、様々な要素が総合的に考慮され、使用貸借契約の成立が認められることもあります(東京地判平成27年4月10日)。

こうしたケースでは、相続人からの明渡請求や不当利得請求は原則として否定される傾向にあります。

相続人としては、このような裁判例を踏まえ、内縁配偶者が生活できる適切な立退料を準備するなどの対策が必要です。内縁配偶者の生活保障措置を講じることで、裁判所が明渡請求を認める可能性が出てきます。

建物が内縁配偶者と被相続人の共有だった場合

建物が被相続人と内縁配偶者の共有の場合、相続後は相続人と内縁配偶者との共有状態となります。共有物は、原則として各共有者がその持分に応じて使用する権利を持っています(民法249条1項)。

ただし、判例上、内縁夫婦が共同で不動産を使用していた場合、一方が死亡した後、特段の事情がない限り、残された内縁配偶者が全面的に使用を継続する合意が推認されます(最判平成10年2月26日)。そのため、相続人が内縁配偶者に対して不当利得返還請求や明渡請求を行うことは難しいとされています。

相続人が内縁配偶者より大きな共有持分を取得した場合でも、民法252条3項による「特別の影響」が内縁配偶者に生じるため、その承諾が必要になる可能性が高く、容易には明渡しや金銭請求が認められません。

最終的には、共有物分割請求訴訟を通じて解決を図ることが一般的ですが、内縁配偶者の生活保障が優先されるケースが多いため、相続人としては、明渡請求が認められにくいことを念頭に置きつつ、穏便な解決策を模索することが望まれます。

具体的事例解説:亡父の内縁の妻が住み続けているケース

具体的な事例を考えてみましょう。

被相続人Aの死後、その自宅に内縁配偶者Bが住み続けており、相続人である子Cが明渡しを求めています。

まず、建物がAの単独所有だった場合、原則的にはCは所有権に基づきBに明渡請求ができます。
しかし、Bが高齢で経済的に困窮し、他に居住できる場所がないなどの事情がある場合、裁判所はCの明渡請求を権利の濫用として否定する可能性が高いです。
また、使用貸借契約の成立が認定される場合もあり、その場合は明渡請求や不当利得請求は認められません。

次に、建物がAとBの共有だった場合、相続後はBとCの共有状態になります。仮に共有持分が同じであれば、Cからの明渡請求や金銭請求は更に困難となります。Bが全面的な使用を継続する合意が推認されるため、裁判所はCの請求を認めない可能性が高いでしょう。
しかし、共有持分に大きな差があり、Cが明渡しを求める強い理由があり、かつBの生活を適切に保障する立退料を用意するなどの合理的措置を講じた場合、裁判所は明渡請求を認める余地があります。
これは、Bが生活を維持できる代替措置がある場合、権利の濫用と判断する必要がないためです。

このように、内縁配偶者の居住問題に関しては、単純な所有権の問題に留まらず、内縁配偶者の保護という観点から総合的な判断が求められます。相続人としては、内縁配偶者の保護に配慮しつつ、適切な立退料の提供など穏便な解決策を検討することが望まれます。

一部の相続人が第三者に無断で貸し出している場合の対応法

遺産共有と少数持分権者による第三者への貸与問題

遺産相続が発生すると、遺産は相続人間で共有される状態(遺産共有)になりますが、相続人間の合意なしに、一部の相続人(特に少数持分権者)が第三者に遺産の不動産を無断で貸与することがあります。
この場合、多数持分権者(過半数以上の持分を有する共有者)がどのように対応できるのかが問題となります。

遺産共有状態では、民法252条により、共有物の管理方法は各共有者の持分の価格に応じて、その過半数によって決定されます。
つまり、多数持分権者は共有物の利用方法を決め、第三者への貸与行為を是正するため、明渡請求を行うことが可能です。

そして、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、共有物を占有・使用している共有者やその同意を得た第三者に対して、多数持分権者が持分価格の過半数により占有方法を変更したり、明渡しを求めたりできることが明確化されました。

第三者に対する明渡請求と金銭請求

令和3年民法改正では、共有物の管理方法に関する決定権が多数持分権者に与えられており、共有者の一部が無断で第三者に貸与している場合、他の共有者は当該第三者に明渡請求をすることが可能です。
ただし、明渡請求が過酷であると判断される特別な事情がある場合は、権利の濫用として請求が制限されることもあります。

また、金銭請求に関しては、以下のポイントが重要です。

  • 不当利得返還請求
    第三者が法的根拠なく共有物を占有・使用して利益を得ている場合、他の共有者は自己の持分に応じて、不当利得返還請求を第三者に対して行うことができます。

  • 損害賠償請求
    第三者の占有・使用が共有者の利用権を侵害し損害が生じている場合、不法行為に基づく損害賠償請求も可能です。

さらに、第三者に共有物を貸与した少数持分権者に対しても、他の共有者は自己の持分を超える使用に関する償還請求や、不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることができます。

具体的事例解説:兄弟が勝手に他人に貸した場合、取り戻し方は?

被相続人Aの死亡後、相続人は子であるB、C、Dの3人で、それぞれ法定相続分を持っています。しかし、相続開始後にBが無断で建物を第三者Eに貸与し、Eが独占的に使用しています。

この場合、CとDが取れる具体的な対応策を以下に示します。

対応策1:第三者Eに対する明渡請求

まず、多数持分権者であるCとDが合意すれば、共有物の管理方法変更により第三者Eの占有権限を無効化できます。
Eはこの時点で無権原占有者となり所有権(共有持分権)に基づく妨害排除請求として明渡請求が可能です。

ただし、Eに対する明渡請求が過酷な結果をもたらす特別な事情がある場合には、権利濫用にあたる可能性があるため注意が必要です。

対応策2:金銭的請求

  • Bに対する償還請求
    少数持分権者Bが第三者Eに無償で占有を許可した行為は、自己の持分を超える共有物使用を認めたものと解されます。
    このため、CとDは民法249条2項に基づき、Bに対して自己の持分を超える占有に相当する使用料を請求できます。

  • B及びEに対する不当利得返還請求損害賠償請求
    第三者Eは法的根拠のない占有を続けることで、利益を享受し、他の共有者の利用を妨げています。
    そのため、CとDはEに対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求を行うことも可能です。また、占有を許可したBも間接的に占有に関与したことになるため、同様の責任を問われる可能性があります。

具体的な手順

  1. 1多数持分権者(CとD)間で共有物管理の合意形成を行い、共有物の利用方法変更を決定。
  2. 2第三者Eに対して明渡請求を内容証明郵便等で正式に通知。
  3. 3Eが明渡しに応じない場合、裁判所に明渡請求訴訟を提起。
  4. 4同時に、B及びEに対して使用料相当の償還請求および不当利得返還請求を実施。

留意点

紛争を長引かせないために、早期に弁護士や専門家に相談し、必要な法的措置を迅速に進めることが重要です。また、相続人間での遺産分割協議を速やかに進めることで、根本的な問題解決につなげることが望ましいでしょう。

相続人間の意見が一致しない場合は、民法897条の2項に基づく相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てることも検討すべきです。

相続不動産をめぐるトラブルへの具体的な対処法

相続不動産をめぐるトラブルは、遺産分割が円滑に進まない場合や相続人間で不動産の利用方法に意見の相違がある場合など、多岐にわたります。

ここではトラブル発生時に役立つ具体的な対処法を解説します。

現状把握と資料収集(遺言書、共有持分割合の確認)

トラブル解決の第一歩は、現状の正確な把握です。
遺言書の有無を確認し、有効な遺言がある場合はその内容を精査します。また、不動産の共有持分割合を登記簿謄本で確認しましょう。

遺産共有状態では、持分割合に応じて管理方法や処分に関する意思決定が変わります(民法249条)。持分が過半数に達しているか否かでその後の交渉の進め方が大きく異なります。

遺産分割協議の進め方

相続人間でトラブルがある場合でも、まずは協議による解決を目指します。
遺産分割協議では、相続人全員が参加し、各々の主張を明確に示します。この段階で合意できれば、協議書を作成し、相続登記を進めます。

しかし、意見が一致しない場合は家庭裁判所による調停を申し立てる必要があります。調停では調停委員が中立的な立場で解決を促しますが、それでも解決に至らない場合は、裁判所による審判に移行します。

相続財産管理人選任の申立て(民法897条2項)の検討

相続人間で管理方法に大きな対立がある場合や不動産が適切に管理されていない場合には、民法897条2項に基づく相続財産管理人の選任申立てを検討します。この制度は、中立的な第三者が不動産を管理・処分することで紛争の拡大を防止する効果があります。

具体的には、家庭裁判所に申立書を提出します。申立てには、不動産の所在地、相続人の住所・氏名、選任を必要とする理由などを記載します。選任された相続財産管理人は、適切な管理を行い、相続人間のトラブルの中立的な調整役として機能します。

弁護士への相談・依頼のポイント

相続トラブルが長引くほど感情的な対立が深まり、解決が困難になります。早期に弁護士に相談し、トラブル解決をスムーズに進めましょう。

弁護士が果たせる具体的な役割は以下の通りです。

  • 交渉支援
    相手方と冷静かつ客観的な交渉を行います。

  • 調停・審判支援
    裁判所手続に必要な書面作成や代理出席を行います。

  • 訴訟対応
    訴訟に発展した場合も、的確な戦略を立てて全面的にサポートします。

弁護士を選ぶ際は相続問題に強い専門家を選ぶことが重要であり、初回相談で具体的な対応方針や費用について明確に説明を受けましょう。

よくある質問(Q&A)

Q
他の相続人が家賃を払わず住んでいる場合、家賃請求できますか?
Answer
共有不動産を使用する相続人との間に使用貸借契約があると推認される場合は、原則として使用料や不当利得の請求は難しいです。

ただし、使用方法が大きく変わった場合など特別な事情があれば、請求が認められる可能性もあります。
Q
内縁の妻が建物に住み続けていても、いつかは明け渡しを求められますか?
Answer
内縁配偶者の居住権は保護されやすい傾向にあり、直ちに明渡請求が認められるわけではありません。

ただし、立退料の提供などの条件付きで明渡請求が認められる可能性はあります。
Q
勝手に第三者に貸された不動産を取り戻す手続きはどれくらいの期間がかかりますか?
Answer
少数持分権者が第三者に無断貸与した場合、多数持分権者が明渡請求を行うことができます。

ただし、交渉から訴訟まで進んだ場合、解決までには数ヶ月から1年以上かかる場合があります。

まとめ

相続不動産に関するトラブルは早期対応が極めて重要です。感情的な対立が深まる前に法律の専門家である弁護士に相談し、的確な対応を行いましょう。

当事務所では、相続問題に精通した弁護士が迅速に対応し、トラブル解決まで全面的にサポートいたします。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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