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弁護士コラム

相続廃除とは?条件や事例・認められないケース・手続き方法を解説

遺産分割のトラブル
投稿日:2025年02月27日 | 
最終更新日:2025年02月27日

Q
私は、不動産会社を経営しています。
私の長男が10年前に会社の資金を無断で使い込み、その後も度々暴言を吐くなど問題行動が続いています。
会社の存続と他の息子たちの将来を考えると、長男には遺産を相続させたくありません。また、長男が妻や他の息子たちとトラブルを起こすことも懸念しています。

問題のある相続人を相続から除外する方法について知りたいです。具体的な手続きの流れや必要な準備、成功率についても詳しく教えてください。また、遺言の作成も考えており、注意点を理解しておきたいと考えています。
Answer
子(長男)には、法定相続分があり、親が死亡した際に、遺産をもらう権利があります。
遺言の作成により、長男の相続分をなくすことは可能ですが、相続人に最低限保障されている相続財産の取り分(遺留分)をなくすことはできません。

そこで、問題のある相続人を相続から除外するために、推定相続人の廃除という制度を活用することが考えられます。この制度により、相続廃除が認められると、相続人に最低限保障されている遺留分もなくすことができます。ただし、相続廃除は、家庭裁判所で認められなければなりません。家庭裁判所では、厳格な審査が行われます。

この記事では、相続廃除の定義と廃除が認められるための要件、手続き方法について詳しく解説していきます。

自分の財産を相続させたくない家族がいる場合、どうすれば良いでしょうか?

遺言により、当該相続人の相続分をなくすことは可能です。しかし、遺言だけでは、遺留分が生じる相続人の遺留分をなくすことはできません。そこで、相続廃除という制度の活用が考えられます。この制度を活用することにより、相続する権利を全てなくすことが可能になります。

この記事では、相続廃除について詳しく解説します。

相続廃除とは?

相続廃除とは、特定の法定相続人に相続権を認めるのが不適切と判断される場合に、その者の相続権を剥奪する制度です。被相続人(財産を残す人)の意思や家庭の秩序を保つための法的手段として、民法で規定されています。

日本語の「はいじょ」という言葉には、「排除」と「廃除」の2つの表記があります。相続における廃除は、法定相続人としての「資格」や「権利」を法的に失わせる手続きであり、単にその人を遠ざけたり排斥したりするものではありません。そのため、「法的資格の廃止」を意味する「廃除」が正しい表記として用いられています。

相続廃除制度の定義と目的

相続廃除は、単に相続権を失わせる制度という意味合いだけではなく、被相続人の尊厳と権利を守り、家族や社会の調和を保つための重要な法的枠組みです。この制度を通じて、不適切な相続を防ぎ、倫理的で公正な相続の実現が図られます。

推定相続人廃除は、民法第892条に基づく制度です。この条文は以下のように規定されています。

(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
引用:e-GOV法令検索|民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百九十二条

推定相続人廃除は、以下のような状況で効果的な問題解決手段となります。

  • 相続トラブルの予防
    廃除により、法定相続人間のトラブルを未然に防ぎ、円滑な遺産分割を実現します。
  • 遺留分問題の解消
    廃除された者は遺留分も失うため、遺留分の準備という遺言の実現を阻む要因を廃除できます。
  • 相続財産の適正な分配
    相続財産が、被相続人の希望通りに適正に分配される仕組みを補完します。

この制度は、被相続人と推定相続人との関係が破綻し、相続権を認めることが不適切とされる場合に活用されます。

相続権を認めることが不適切とされる例として、以下のようなことが考えられます。

・被相続人に対する日常的な暴力行為
・「あなたなんて何の価値もない」といった被相続人の人格否定や、孤立を意図した無視。
・被相続人の虚偽の犯罪歴を広め、社会的信用を失わせる行為。
・家族の集まりで「親として失格だ」等と被相続人を公然と非難し続ける言動。
・被相続人の預金口座から無断で多額の引き出しを行い、ギャンブルに浪費。
・被相続人の所有する土地の権利書を偽造して無断で売却。
・近隣住民とのトラブルや暴力沙汰を繰り返し、家族全体が被害を受ける状況。

遺留分を有する推定相続人が対象

相続廃除が適用される対象者は、推定相続人です。推定相続人とは、被相続人が死亡した場合に法律上相続権を有することが推定される者を指します。ただし、遺留分を有しない推定相続人(例:兄弟姉妹)は、相続廃除の対象にはなりません。また、推定相続人ではない第三者(例: 遺言によって財産を受け取る受遺者)も、相続廃除の対象にはなりません。

なお、遺留分とは、相続人が法律上最低限確保できる相続財産の取り分です。直系卑属、直系尊属、配偶者など一定の相続人には遺留分が存在します。

相続廃除が認められた場合、その対象者は、相続分だけでなく遺留分も完全に剥奪されます。このため、被相続人は廃除された相続人に財産を一切渡さないことが可能になります。

推定相続人の種類、遺留分の割合、相続廃除の対象についての一覧を以下に示します。

区分推定相続人の種類遺留分の割合相続廃除の対象
遺留分あり配偶者(夫、妻)法定相続分の1/2
直系卑属(子ども、孫)法定相続分の1/2
直系尊属(父母、祖父母)直系尊属のみが相続人の場合:法定相続分の1/3
その他の場合:法定相続分の1/2
遺留分なし兄弟姉妹なし

兄弟姉妹が相続廃除の対象外である理由は、以下の通りです。

  • ・遺留分がないため、廃除の必要性が低い。
  • ・相続順位が低く、相続権の制限の必要性が限定的。
  • ・遺言など他の手段で相続権を廃除できる。

このように、兄弟姉妹に関しては、相続廃除ではなく遺言による対応が実務的かつ合理的とされています。

被相続人のみが申立て可能

相続廃除の申立てを行うことができるのは、被相続人本人のみです。

相続廃除は、推定相続人が被相続人に対して重大な害を与えた場合に適用される制度です。このため、被害者である被相続人自身が廃除を求める正当な立場にあります。被相続人以外の親族や第三者(例: 他の推定相続人、親族関係者)は、相続廃除の申し立てをすることはできません。

被相続人が生前に廃除請求を行わなかった場合でも、遺言で廃除の意思を示すことができます。「特定の推定相続人を廃除する」と明記した遺言が残されていれば、遺言執行者が家庭裁判所に廃除を申し立てることが可能です。

この制度は、被相続人の意思を最優先に尊重し不適切な推定相続人を廃除することで、他の相続人への公正な財産分配を可能にします。このため、被相続人または遺言執行者という直接的な関係者にのみ申立権が認められています。

相続廃除が認められる要件と事例

相続廃除が認められるためには、推定相続人に法が定める廃除事由に該当する事由がある必要があります。

民法第892条は、廃除事由を以下のように規定しています。

  • 推定相続人が被相続人に対して虐待をした
  • 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えた
  • 推定相続人に著しい非行があった

虐待:被相続人に対して暴力や身体的な虐待が行われた場合。耐えがたい精神的な苦痛を与えた場合も含みます。

侮辱:言葉や行動により、被相続人の名誉や尊厳を著しく傷つけるような行為。
これらは、推定相続人が被相続人に対して行った行為であり、その程度や影響が重要となります。

非行:反社会的な行為や犯罪行為、被相続人を困惑させるような行為。
これには推定相続人の刑法違反や不正行為が含まれます。例えば、窃盗や詐欺などの犯罪行為が該当することがあります。

裁判所が認めた具体的な事例

相続廃除が認められた事例を説明します。

【事例1 和歌山家裁 平成16年11月30日審判】
息子(相続人)が、無断で父親(被相続人)の郵便貯金約3582万円の払い戻しを受け、また父親に対して繰り返し暴力をふるっていた事案。

【事例2 京都家裁 平成20年2月28日審判】
息子(相続人)が窃盗等により何度も服役し、父親(被相続人)が息子の代わりに被害者らへの謝罪、被害弁償及び消費者金融への借金返済を行っていた事案。

【事例3 東京高裁 平成23年5月9日決定】
養親(被相続人)が10年近く入院及び手術を繰り返していることを知りながら、面倒を見なかった養子(相続人)に対して、養親から提起された離縁訴訟等について、連日電話をかけて、体調が悪いと繰り返し訴える養親へ長時間にわたって訴訟の取下げを執拗に迫った事案。

【事例4 大阪高裁 令和元年8月21日決定】
父親(被相続人)が息子(相続人)から少なくとも3回にわたって暴行を受け、父親は鼻血のほか、肋骨の骨折、外傷性気胸などの傷害を負い、全治約3週間を要した事案。

相続廃除が認められないケース

次に相続廃除が認められなかった事例を説明します。

【事例5 東京高裁 昭和59年10月18日決定】
推定相続人が勤務先会社の金員総額5億数千万円を業務上横領した罪等により懲役5年の判決を受け服役した事案。

【事例6 福島家裁 平成元年12月25日審判】
推定相続人の孫らを債務者として金融機関から借金させ、被相続人との約束を守らず弁済を怠り、被相続人に迷惑、不利益を与えた事案。

【事例7 東京高裁 平成8年9月2日決定】
推定相続人のみの責任ではない嫁姑関係の不和に起因した、推定相続人から被相続人に対して行った力づくの行動や侮辱的な言動があった事案。

【事例8 東京高裁 平成13年11月7日決定】
被相続人と別居し、離婚調停を申立てた推定相続人(妻や子ら)を対象にした事案。

相続廃除は、感情的な理由や個人的な不満だけでは認められず、客観的かつ法的に有効な理由が求められます。

相続廃除の手続き方法

相続廃除は、家庭裁判所の審判の確定により成立します。

推定相続人の廃除の申立ては、以下の2つの方法があります。

  • 被相続人が生前に、家庭裁判所に廃除の申立てを行う方法
  • 被相続人が遺言に廃除を希望する旨を記載して、相続発生後、遺言執行者が家庭裁判所に申立てを行う方法

生前廃除の申立て手順と必要書類

被相続人が生前に行う廃除手続きの流れを説明します。

【手続きの流れ】

  • ① 廃除理由の確認
  • ② 証拠の収集
  • ③ 家庭裁判所への申立て
  • ④ 家庭裁判所による審理の開始
  • ⑤ 家庭裁判所による審判
  • ⑥ 市区町村役場に推定相続人の廃除の届出

必要書類と手数料については、以下の通りです。

項目必要なタイミング備考
必要書類相続廃除申立書家庭裁判所への申立て時家庭裁判所の書式を使用
被相続人の戸籍謄本全部事項証明書
廃除したい推定相続人の戸籍謄本全部事項証明書
推定相続人廃除届市区町村役場への届出時(審判確定後10日以内)市区町村役場の窓口でもらうか、ホームページからダウンロード
家庭裁判所による審判書の謄本1ページあたり150円
審判の確定証明書原則、1通あたり150円
手数料収入印紙家庭裁判所への申立て時800円
裁判所からの書類郵送費数千円程度
(裁判所により異なる)
届出費用市区町村役場への届出時(審判確定後10日以内)無料
ただし、審判書の謄本と確定証明書の添付が必要。

相続廃除の申立ては、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所で行います。

相続廃除が認められるためには、法律に基づいた正当な理由と十分な証拠が必要になります。

廃除が認められた場合には、10日以内に廃除される推定相続人の本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に家庭裁判所の審判所の謄本(確定証明付)を添付した推定相続人廃除届を提出する必要があります。ただし、この届出がなくとも、廃除審判の確定によって、推定相続人は当然に相続人たる資格を失います。

遺言による廃除の手順と必要書類

遺言による廃除手続きの流れを説明します。

【手続きの流れ】

  • ① 廃除の意思を遺言書に明記
  • ② 遺言書で遺言執行者の指定
  • ③ 遺言者の死亡による相続の開始
  • ④ 家庭裁判所への申立て(遺言執行者が行う)
  • ⑤ 家庭裁判所による審理の開始
  • ⑥ 家庭裁判所による審判
  • ⑦ 市区町村役場に相続人の廃除の届出

必要書類と手数料については、以下の通りです。

項目必要なタイミング備考
必要書類相続廃除申立書家庭裁判所への申立て時家庭裁判所の書式を使用
被相続人の死亡が記載された戸籍謄本全部事項証明書
廃除したい推定相続人の戸籍謄本全部事項証明書
遺言書の写し、または遺言書の検認調書謄本の写し
遺言執行者選任の審判書謄本家庭裁判所で選任された場合のみ
推定相続人廃除届市区町村役場への届出時(審判確定後10日以内)市区町村役場の窓口でもらうか、ホームページからダウンロード
家庭裁判所による審判書の謄本1ページあたり150円
審判の確定証明書原則、1通あたり150円
手数料収入印紙家庭裁判所への申立て時800円
裁判所からの書類郵送費数千円程度
(裁判所により異なる)
届出費用市区町村役場への届出時(審判確定後10日以内)無料
ただし、審判書の謄本と確定証明書の添付が必要。

遺言者は、廃除理由を具体的に明記し、客観的な証拠を準備します。遺言執行者を適切に指定することで、廃除手続きがスムーズに進行します。遺言書の形式不備や廃除事由の証拠不十分があると、廃除が認められない場合があるため、注意が必要です。

相続廃除の申立ては、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所で行います。
廃除が認められた場合には、10日以内に廃除される相続人の本籍地または遺言執行者の所在地の市区町村役場に推定相続人廃除届を提出する必要があります。

遺言書に、「長男には一切相続させない」との記載があった場合、相続分を0にする意図なのか、相続廃除まで求めているのか不明な場合があります。このような場合、遺言執行者は、遺言者の背景事情などを調査し、遺言者の真意を探求した上で処理を行います。

遺言執行者に無用の時間・労力をかけさせないためにも、遺言の作成に当たっては、「長男を廃除する。」等、意味と内容が一義的に明確となる文言を使用する必要があります。

申し立て後の審判手続き・戸籍への記載

相続廃除の申立て後に家庭裁判所で行われる審判手続きについて説明します。

【手続きの流れ】

  • ① 家庭裁判所が提出された書類を確認し、審理を開始します。この段階で、廃除理由の正当性と証拠の妥当性が確認されます。
  • ② 推定相続人(廃除対象者)には、家庭裁判所から通知が送付され、反論を行う機会が与えられます。
  • ③ 家庭裁判所は、申立人および推定相続人の主張や提出された証拠を慎重に検討し、判断をします。
  • ④ 家庭裁判所の審判結果が、関係者に告知されます。
  • ⑤ 推定相続人や申立人が審判に不服がある場合、審判書送達から2週間以内に不服申立てを行います。
  • ⑥ 不服申立てがない場合、審判内容が確定します。

相続廃除が認められた審判が確定したら、審判書謄本確定証明書の交付を受け、10日以内に廃除される推定相続人の本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に推定相続人廃除届を提出する必要があります。
市町村役場への届出を行うと、廃除された推定相続人の戸籍に、相続廃除について記載がされます。

推定相続人廃除【推定相続人廃除の裁判確定日】令和〇年9月14日
【被相続人】父 ▲▲▲▲
【届出日】令和〇年9月15日
【届出人】父
法務省HP「戸籍記載例」(https://www.moj.go.jp/content/000116690.pdf)参照

相続廃除をめぐる重要な法的効果

家庭裁判所が廃除を認めた場合、推定相続人は相続権を失います。廃除された者が相続人から除外されるため、他の法定相続人の相続分が増加します。

ただし、廃除された相続人に子がいる場合、代襲相続権が発生します。代襲相続人は、廃除された相続人の相続分をそのまま引き継ぐため、他の法定相続人の相続分は増加しません。廃除は、廃除された本人のみに影響し、直系卑属(代襲相続人)の相続権には影響を与えません。

遺留分の権利喪失とその影響

遺言によって推定相続人の相続分を0にできますが、遺留分をなくすことはできません。しかし、相続廃除となった相続人は、相続分とともに、遺留分も消滅します。

なお、兄弟姉妹には遺留分が存在しないため、相続廃除の対象にはならないので注意が必要です。財産を譲りたくない兄弟姉妹がいる場合には、遺言で相続させない旨の意思を明確にする必要があります。

代襲相続との関係性

廃除された推定相続人に子がいる場合、代襲相続が発生します。相続廃除された人の家族に財産がいくことが許せないという場合には、代襲相続人に対しても、相続廃除の申立てをする必要があります。

ただし、代襲相続人にも、廃除事由が認められなければなりません。単に、「廃除された人の家族に財産がいくのが気に入らない」という理由だけでは相続廃除は認められません。

推定相続人の廃除が認められた場合でも、代襲相続人への相続分を明確にするために、遺言書を作成しておくことが推奨されます。

相続欠格制度との違い

相続欠格とは、法律に定められた重大な不正行為や違法行為を行った者に対し、自動的に相続権を喪失させる制度です。相続廃除と相続欠格はいずれも相続権を失わせる制度ですが、その成立要件や手続きの方法、適用範囲などに違いがあります。

以下に、両者を比較して説明します。

比較項目相続廃除相続欠格
申し立ての方法本人または遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる申立て不要(法律上、当然に相続権を失う)
被相続人の意思必要不要
遺留分なくなるなくなる
取り消しの可否可能不可
代襲相続の可否可能可能
戸籍への記載有無ありなし
効力発生の要件家庭裁判所の審判が必要要件該当時に自動的に発生

相続廃除申し立ての認容率と立証の重要性

相続廃除は、被相続人の保護が主目的である一方で、推定相続人の権利を強く制限するため、厳格な審査が行われます。

相続廃除が家庭裁判所で認められる確率について具体的な統計データは公表されていませんが、裁判実務において認められるハードルは高いとされています。裁判所の令和5年の司法統計における「推定相続人の廃除及びその取消し」の既済案件総数が222件であるうちの認容数が52件であることから推察すると、認容率は20%前後と考えられます。

相続廃除が認められるには、民法第892条に基づくいずれかの廃除事由を認めてもらう必要があります。そして、廃除事由を認めてもらうためには、以下のような客観的な証拠が重要です。

  • 書面や録音、映像などの記録
  • 医療記録や診断書
  • 警察や司法機関の記録
  • 第三者(証人)の証言

感情的なトラブルや一時的な怒りに基づく申し立てであると判断されると、廃除は認められにくくなります。相続廃除を認めてもらうためには、被相続人の主張のみでは不十分であり、具体的かつ信頼性の高い証拠が求められます。

相続廃除は取消しが可能!|条件と手続きの流れ

相続廃除が確定したのち、廃除された推定相続人との関係改善等により廃除を取消したいと考えることもあります。その場合には、推定相続人の廃除の取消しが可能です。

相続廃除の取消しは、被相続人が自らの意思で家庭裁判所に請求すればいつでも認められます。相続廃除の取消しの理由は不要です。

(推定相続人の廃除の取消し)

第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
引用:e-GOV法令検索|民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百九十四条

相続廃除の取消しは、生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言で相続廃除の取消しの意思を示し遺言執行者が申立てる方法の2つがあります。

相続廃除の取消し手続きの流れは以下の通りです。

【手続きの流れ】

  • ① 家庭裁判所への申し立て
  • ② 審理と審判
  • ③ 審判の確定
  • ④ 市区町村役場へ推定相続人廃除取消届の提出

相続廃除の取消しの審判が確定したら、審判書謄本の交付を受け、10日以内に廃除の取消された推定相続人の本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に推定相続人廃除取消届を提出する必要があります。

なお、遺言で相続廃除の意思を示していた場合に、廃除の意思を取消すには、先の遺言を撤回する旨の遺言を新たに作成する必要があります。

遺言で相続廃除を行う場合の文言選択の留意点

遺言で相続廃除を行う場合、遺言書の文言は明確かつ法的に有効な形式で記載する必要があります。不適切な文言や不備があると、廃除の効力が認められない可能性があります。

明確かつ具体的な廃除事由を記載

民法第892条の廃除事由に該当する事実を明記することで、遺言内容が裁判所で争われた場合でも、その正当性が認められる可能性が高まります。

例文:「長男〇〇は、私に対し〇年以上にわたり、私の身体に対して暴力行為を加えるなど、著しい虐待行為を行ったため、相続廃除を求める。」

廃除を行う対象者を特定

廃除の対象者を、氏名生年月日続柄などで明確に特定します。

例文:「私の長男である〇〇(生年月日:〇年〇月〇日生)について、相続人の廃除を家庭裁判所に申し立てることを求めます。」

家庭裁判所への申立てを明示

遺言執行者に対して、廃除を申し立てる旨を明示的に記載します。

例文:「本遺言の遺言執行者は、家庭裁判所において、長男〇〇の相続廃除の審判を申し立てること。」

言葉を正確かつ法律用語に基づいて使用

主観的な感情や曖昧な表現を避け、法律に基づいた明確な文言を用います。

「長男には一切相続させない」との記載があった場合、相続分を0にする意図なのか、相続廃除まで求めているのか不明な場合があります。意思を明確にするために、相続廃除という法律用語を使うようにしましょう。

東京都千代田区の相続に強い弁護士なら直法律事務所

相続廃除は、法律に基づいた正当な理由と十分な証拠が必要です。また、家庭裁判所での適切な手続きが求められるため、計画的に進めることが重要です。

この制度は、被相続人が望まない相続を防ぐための有効な手段ですが、慎重に判断し、専門家の助けを得ることが成功の鍵となります。そのため、弁護士などの専門家に相談するなどして慎重な検討をするようにしましょう。

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