東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所 相続レスキュー

columns
弁護士コラム

相続したアパート等の地代・家賃は誰の財産?相続税の対象や遺産分割の考え方

遺産分割のトラブル
投稿日:2025年01月30日 | 
最終更新日:2025年01月30日

Q
要介護の状態にある義母が所有する賃貸マンションの相続について、家族間、特に長男と長女で意見が分かれています。相続後の地代・家賃は誰のものになるのでしょうか?

複数人で分け合うにしても、義母のマンションは1棟だけであり、どのような分配方法になるのか想像もつかず、不安です。確定申告が必要なのかもよく分かりません。

私ども夫婦や長男・長女きょうだいの共有名義にする方法も検討していますが、リスクはあるのでしょうか?
Answer
賃貸マンションなど不動産から生じた地代・家賃は、相続時期や遺言の有無によって取り扱いが変わります。

遺産分割成立後の地代・家賃は、不動産を相続した相続人のものとなります。
ただし、相続開始後、遺産分割までの間に発生した地代・家賃は各相続人が法定相続分の割合に応じで取得することになるので注意が必要です。

分配方法は遺言書の有無によっても結論が異なりますが、相続財産である不動産を共有名義にすることはトラブルに発展する可能性が高いのでおすすめできません。遺産分割協議が終わるまでの管理方法も、慎重な対応が求められます。

この記事では、相続開始後の不動産の地代・家賃の取り扱いを、確定申告の手順も含めて解説します。

相続開始後の地代・家賃の取り扱い

相続における地代・家賃は、時期や遺言・遺言書の有無で帰属先や分配方法が変わります。
不動産の地代・家賃、預貯金等の利息や株式配当金といった物の使用の対価として生じた収益は、民法では法定果実といいます。

相続開始前に発生した法定果実は、被相続人の相続財産として扱われ、遺産分割の対象となります。これに対し、相続開始後に発生した法定果実は、相続開始後から遺産分割前の間に発生した部分については各相続人が法定相続分の割合に応じて取得します。反対に、共益費など管理に必要な費用が発生している場合は、相続財産から支出することができ、相続財産が足りずそれらの費用を支払うことができない場合は、各相続人が各相続分に応じた負担をすることになります。

また、遺産分割後に発生した法定果実は、不動産を相続した相続人が取得するなど、時期によって取り扱いが異なります。遺言書があればその内容に従って相続されますが、ない場合には遺産分割協議で決定します。

発生時期による地代・家賃の帰属

地代・家賃の支払い期日が相続発生の前後かどうかによって、その帰属先が異なります。

表にまとめると、下記のようになります。

家賃の支払い期日地代・家賃の帰属
相続発生前被相続人の財産になる(相続資産に含まれる)
相続発生後遺産分割協議が成立するまで各相続人が法定相続分の割合で取得し、遺産分割協議成立後は、不動産の所有者が取得する

相続発生前の地代・家賃:被相続人の相続財産になる

相続開始前に支払われた地代・家賃は、相続財産となります。一般的には、被相続人(故人)名義の通帳に毎月地代・家賃が振り込まれているはずで、預金債権として相続財産に含まれることになります。なお、相続税の課税対象となりますので、注意が必要です。
他方、未収分は、金銭債権として、遺産分割協議を経ることなく各相続人が法定相続分の割合で取得することになります。

相続発生後の地代・家賃:不動産の所有者に帰属する

相続開始後に生じた地代・家賃は、原則として当該不動産を相続した相続人のものとなります。
被相続人が生前のうちに築いた財産ではないため、相続財産とはいえず、相続税の対象にならず、大抵のケースにおいては後述する所得税の対象となります。

遺言の有無による地代・家賃の分配

地代・家賃の分配方法は、遺言書の有無によって異なります。
当該不動産について、遺言がある場合は、その遺言書の内容に従い、不動産を取得することになった相続人が地代・家賃を取得します。遺言がない場合、相続人全員の合意を得られれば、遺産分割協議において自由に分割方法を決めることができます。

表にまとめると、下記のようになります。

遺言の有無地代・家賃の分配
あり遺言書の指示に従う
なし遺産分割協議で決定

遺言がある場合:遺言書の指示に従う

遺言がある場合には、原則として遺言書の内容にしたがって、指定を受けた相続人が当該不動産を取得し、地代・家賃も、相続の発生した月から受け取れます。

遺言書で指定された通りの配分を指定相続分といい、指定相続分に従って相続人が地代・家賃を受け取る場合には、遺産分割協議は不要です。例外として、遺言があっても、相続人全員の合意があった場合は、指定相続分とは異なる方法で分配することができます。

ただし、遺言書が不備なく作成されていることが前提となります。不備があると遺言書自体が無効となる恐れがありますので、公正証書遺言で作成する(してもらう)のが理想的です。

遺言がない場合:遺産分割協議で決定

遺言がない場合や不備があって遺言書が無効となる場合には、遺産分割協議で決定する必要があります。
遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名と押印による合意を取りましょう。

協議が調うまでの間は、一旦は法定相続分で分配されます。なお、法定相続分とは民法で定められた法定相続人が、被相続人との関係に応じて取得できる割合です。具体的には被相続人の配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹の優先順であり、家族構成や人数によってその割合は異なります。

なお、協議が調って相続人全員の合意があれば、どのような分配でも有効となります。もし新たに相続財産が見つかった場合には、見つかった財産部分についてのみ協議すればいいのですが、新たに相続人が発見された場合には、新たな相続人も交えて協議をやり直すことになります。

遺産分割協議における地代・家賃の考え方

遺産分割協議が終わるまでの地代・家賃の管理方法、及び最終的な分割方法については、専門家に相談しながら相続人全員で話し合い、決めておくことが大切です。

相続財産が分割されず残ったままの状態であること自体にペナルティはありませんが、売却や登記、税金の申告などの手続きで躓く恐れがあります。可能な限り迅速に、未分割の財産を残さないようにしましょう。

遺産分割協議が未了の場合の地代・家賃

相続開始から遺産分割協議が終わるまでに発生した地代・家賃は、相続人が法定相続分の割合で取得することになります。そして、遺産分割協議が終わり、最終的な分配がされるまでの間に発生した地代・家賃の管理方法、分配方法をどのようにするかは、各相続人の判断に委ねられます。

共有財産として管理:別口座での管理を推奨

相続開始から遺産分割協議が調うまでに生じた地代・家賃は、法定相続分に応じて各相続人に分配されます。そこで、その間に発生した地代・家賃を誰が受け取り、どのように管理するかが重要となってきます。

通常、金融機関は被相続人の死亡を確認すると、被相続人の口座を凍結します。
この段階で、今後の地代・家賃の受取口座として、相続人の1人が日常的に使用している口座へ変更するのは危険です。個人の預貯金と混同しやすく、私的な使い込みを疑われてしまったり、各相続人が現在いくらずつ貯まっているのか把握するのが難しくなったりと、トラブルの原因となる可能性が高いからです。

そのため、相続人の代表者1人が、全く使用していない別の口座や新規で開設した口座を用意して、この口座で受け取っていくと、他の相続人に周知することが可能となり、トラブル防止に良いでしょう。明細書を保管し、出入金について記録しておくなどの管理をおすすめします。

法定相続分で一時的に分配:最終的な分割とは異なる場合も

遺産分割協議が成立するまでに発生した地代・家賃は、法定相続分に応じて各相続人に分配されます。
しかし、遺産分割協議が調うのであれば、どのような分割となっても法的には問題ありません。割合が少し増減するだけのケースもあれば、全く分配がなくなるケースがなども想定されます。
一時的な分配が、最終的な分配とは異なる場合も視野に入れなければなりません。

遺産分割協議における注意点

遺産分割協議では、相続人全員が納得し、合意できる協議内容で終えることが何よりも大切です。特に、不動産を相続して所有者となる相続人は、どうすれば不動産を有効活用できるかを検討しながら遺産分割協議に臨まなくてはなりません。

所有者として将来的に安定した収入が見込めるか、修繕費用などがいつ頃どの程度必要になるのかを予測するなど、経済的な損得を把握する必要があります。なお、共有名義で不動産を相続することは後々になって非常に面倒なトラブルになりやすいので、注意が必要です。

将来の地代・家賃も考慮:収支バランスを踏まえた分割

将来の地代・家賃の金額がどのように変動していくか予測することが重要です。家賃は物価と共に上がっていくだけでなく、老朽化により下がっていくことも考えられます。また、固定資産税などの経費、建て直しやリフォームなどの修繕費用なども見越した分割をしなければなりません。

不動産を所有し続けることがかえってマイナスと判断できる場合には、売却も視野に入れる必要があります。管理や固定資産税の負担もありますので、分割は早期かつ慎重に協議しておく必要があります。

不動産は単独名義で相続する:共有によるトラブルの回避

夫婦やきょうだいでの共有名義という方法で、不動産を相続することは可能です。しかし、不動産は単独名義で相続するのが望ましいとされています。共有名義の人数が多いほど、不動産を有意義に活用しにくくなるリスクがあり、将来的に大きなトラブルに発展しやすいからです。

共有になっている不動産に建て替えや増改築、売却など何か変更を加えたいときに、多くの場合は共有者全員または過半数の同意が必要となります。

例えば、共有名義の不動産を持つ長男と長女がいた場合、売却して現金化したい長男と反対する長女で意見が分かれてしまうと、どちらかが折れるか、下記の方法などにより解決を目指していかなくてはなりません。

  • 土地を分筆する現物分割
  • 不動産を所有し続けたい人が、売却したい人に代わりのお金を出して相続分を買い取る代償分割
  • 不動産を売却して現金化して分け合うなど換価分割

いずれにしても経済的精神的に大変な負担がかかります。

さらに、共有名義の不動産を相続した長男・長女にそれぞれ子どもが生まれ、更に次の世代へと相続が発生した場合にその管理がさらに複雑になります。
例えば、長男と長女の子ども同士で共有する場合、いとこ同士で相続となると、一緒に暮らすことは滅多になく、疎遠となりやすいです。代を重ねるごとに共有者がどんどん増えていき、同意を得るにも数年間の時間を要してしまったり、固定資産税や老朽化による維持管理費をどちらが負担するかで揉めたりするなど、未来に禍根を残してしまいます。

したがって、共有名義で相続することは極力避け、不動産は単独名義で所有するのが将来的に見て得策といえます。

特定の相続人が遺産を無償使用している場合の解決策

実際によくある問題として、特定の共同相続人が相続財産、特に不動産を無償使用しているケースが挙げられます。自分にも使用する権利があると主張し、1人で占有しているような共同相続人に対する対策を説明します。

民法249条により、1人で無償使用している共同相続人が単独で共有物全部を使用することができるようにも思えます。そこで、まるで他の共有者の使用を拒むように、1人で無償使用しているような共同相続人の占有への対策として、いくつかの対策が考えられます。

この点、明け渡し請求による解決は難しいと考えられてきました。特に、被相続人との間で使用貸借契約が認められる場合には、不法占拠に当たらず、地代・家賃を請求することもできません。使用貸借契約は遺産分割が成立するまで続きます。

遺産分割協議成立後、無償使用している共同相続人以外の相続人が当該不動産を取得することになった場合、当該相続人は無償使用している共同相続人に対し、賃料相当額の請求明け渡し請求を行うことができます。

最後に、各共同相続人と合意が得られず、解決が望めない場合には、裁判所を交えた解決を検討しましょう。遺産分割手続を起こす場合には、調停(その後の審判)を家庭裁判所に申し立てることになります。預貯金等の他の遺産も考慮してもらい、現物分割、代償分割、換価分割といった分割方法を決める方法です。

共有物分割請求については調停の申し立て、そして地方裁判所に訴訟を起こすことが可能です。調停は調停委員会に仲介してもらいながら話し合うのに対し、訴訟は最終的な判断を裁判所に委ねる方法で、解決の最終手段といえます。

相続財産の確定申告は相続人も被相続人も必要

地代・家賃など不動産所得が生じる財産を相続した場合には、2種類の確定申告をする義務があります。相続人が不動産所得を得たことに対する確定申告と、被相続人が死亡した年に不動産所得を得たことに対する準確定申告の2つです。どちらも申告期限、提出先などが異なるため、充分に注意する必要があります。

なお、どちらもe-Taxでのオンライン申告による提出が可能です。

地代・家賃のある不動産の相続人は確定申告を行う

地代・家賃などの不動産所得がある不動産の相続人は、確定申告の義務を負います。一般的に知られる通常の確定申告であり、毎年1月1日から12月31日までの1年間分の所得に関して、「総収入金額-必要経費」の計算式により、不動産所得を計算します。翌年の2月16日から3月15日の間に、提出書類を申告者である相続人本人の住所地を管轄する税務署に提出します。

被相続人の地代・家賃は4か月以内に準確定申告を行う

準確定申告とは、被相続人の生前の収入について行う確定申告のことです。被相続人が死亡した年に地代・家賃という不動産所得が発生していた場合には、相続人という立場から被相続人の代わりに、被相続人の所得や控除額を申告する義務を負います。

ここで重要なのは、準確定申告は相続によって被相続人の立場を継承して所得を得ているため、相続人全員に申告と納税が義務づけられている点です。相続人全員が連署し、代表者1人に委任して実施する方法と、各相続人がそれぞれ実施する方法があります。使用する申告書は通常の確定申告と同じですが、どちらの方法で申告するか、相続人が何人いるかで書き方が異なりますので、作成には注意してください。

死亡した年の1月1日から死亡日までの被相続人の収入を、死亡日を知った日(相続開始日を知った日)の翌日から計算して4か月以内に、死亡時における被相続人の住所地を管轄する税務署へ、相続人が申告、納税します。

通常の確定申告よりも申告期限は長いですが、その分時間と手間がかかる場合もあるため、早めに準備しておきましょう。また、被相続人が1月から3月までの間に確定申告をしないまま死亡した場合、確定申告と準確定申告の両方を相続の開始があったことを知った日の翌日から計算して4か月以内にしなければなりません。

東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所

地代・家賃が相続開始後に発生した場合、原則として不動産を相続した相続人が取得します。

ただし、遺産分割協議までに発生した部分は相続人の共有財産として扱われ、相続分に従って分配されます。共有名義による不動産の所有にも大きなリスクがありますし、そもそも相続人と円満な解決が望めない場合もあります。

遺産相続に特化した弁護士などの専門家に相談し、大切な遺産を守っていきましょう。

遺産分割についてお悩みの方へ

協議が円滑に進まない、お話し合いがまとまらない等、遺産分割にはさまざまなトラブルが生じがちです。遺産分割協議書の作成から、分割協議の交渉、調停申立て等、プロの弁護士が丁寧にサポートいたします。お悩みの方はお早めにご連絡ください。

Contact 初回相談は 0
相続に関わるお悩みは相続レスキューにお任せください

ご相談はお気軽に

トップへ戻る