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遺贈登記とは?手続きの方法や第三者への対抗要件も弁護士が分かりやすく解説!

遺産分割のトラブル
投稿日:2024年10月15日 | 
最終更新日:2024年10月15日
Q
3兄弟である私たちは母から遺言書で一筆の土地を遺贈されました。しかし、一番上の兄が兄弟3人の名義にする前に相続登記を行い、自分の持分を第三者に移転登記してしまいました。

私たちは第三者の持分取得登記の抹消を請求できますか?
Answer
不動産に関しての物件変動は、登記を行わなければ第三者に対抗できないため、あなたがたが登記をしていない限り、遺贈で取得した土地の権利を主張することはできません。しかし、その第三者が背信的悪意者等に該当する場合には例外として対抗できる場合があります。

本記事では遺贈登記の手続き方法や注意点、第三者への対抗要件についても解説していますので、ぜひ目を通してみてください。

遺贈登記の概要と重要性

相続が発生すると、被相続人から遺贈により財産を受け取るケースがあります。このような場合には遺贈登記を行う必要がありますので、下記の内容をチェックしておきましょう。

遺贈登記とは何か?

遺贈とは、遺言で財産の贈与をすることを指します。主には相続人以外の第三者に財産を贈与する際に用いられます。そして、遺贈により受けた不動産の所有権は受遺者に変更する必要がありますが、その際に行う「遺贈による所有権移転登記の手続き」を「遺贈登記」と呼びます。

なお、遺贈は贈与と同じく無償で行われますが、贈与は贈与者と受贈者の双方行為による契約であるのに対し、遺贈は遺言者からの一方的な意思表示による単独行為であるという違いがあります。

【コラム】:遺贈登記の実務

遺贈登記を行う必要性

民法177条では、不動産に関しての物権変動は登記をしなければ第三者に対抗できないと規定されています。したがって、不動産の遺贈を受けた場合、第三者に対して自らの所有権を主張するためには登記を行う必要があるのです。

相続人以外の第三者が遺贈で受け取った不動産に、遺贈登記の期限などは特にありません。しかしながら、登記をしておかないと、遺言の存在を知らない相続人、もしくは相続人から不動産を購入したと主張する第三者に対抗できないため注意しましょう。

遺贈登記がなくても対抗できる場合

前述の内容では、遺贈登記を行わないと第三者に対抗できないと説明しましたが、一部のケースにおいては登記がなくても対抗できる場合があります。具体的には、下記のような事例に当てはまる場合です。

・第三者が詐欺または脅迫により登記申請を妨げた者である場合
・第三者が背信的悪意者に当たる場合
・第三者の権利取得が仮装のものである場合

なお、ここで言う背信的悪意者とは、不動産の物件変動があった事実を知りながら、悪意を持って嫌がらせをする・暴利をむさぼる等の行為をする人物を指します。

遺言執行者がいる場合

遺言執行者とは、遺言書の内容どおりに相続を進める役割の方です。主に相続人や相続財産の調査、財産目録の作成などをしますが、不動産の登記手続きも行います。

不動産の遺贈を受けた際に遺言執行者がいる場合においては、当該執行者とともに遺贈登記の手続きを行います。受遺者のみで直接登記はできませんので、覚えておきましょう。

遺贈登記の手続き概要

遺贈登記を行う際には、手続き方法についても確認しておく必要があります。申請に必要な書類も含めて解説しますので、ぜひ確認してみてください。

必要書類の準備

遺贈登記の際に必要な書類については、下記のようなものがあります。遺言執行者がいる場合といない場合で異なりますので注意しましょう。

① 遺言執行者がいる場合
a. 登記原因証明情報(遺言書、遺言者の死亡記載がある戸籍【除籍】謄本)
b.不動産の登記済証又は登記識別情報
c.受遺者の住民票
d.不動産の課税明細書もしくは固定資産評価証明書
e.遺言執行者の印鑑証明書(3カ月以内に取得したもの)

② 遺言執行者がいない場合
a.①のa~dまでの書類
b.相続人全員の戸籍謄本
c.相続人全員の印鑑証明書(3カ月以内に発行したもの)

共同申請の流れ

遺贈があった場合の登記申請は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で行います。登記権利者とは不動産を取得した人を指しますので、遺贈の場合は受遺者が該当します。そして、登記義務者は相続人もしくは遺言執行者がいる場合にはその方となります。

なお、共同申請の主な流れは下記のようになっています。

① 遺言書の「検認」作業
→公正証書遺言以外の遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

② 不動産の登記簿謄本のチェック
→遺贈された不動産の所有者が遺言者と合致しているかを確認します。

③ 必要書類の準備・登記申請書の作成
→前述した必要書類を準備して登記申請書を作成します。記載内容の不備や誤記があると申請できないため注意しましょう。

④ 法務局に申請書を提出
→不動産の所在地を管轄している法務局へ申請書を提出します。

なお、遺言執行者がいる場合といない場合で登記申請書の書き方が異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。

登記権利者と登記義務者の役割

贈与を行う際には、通常ですと「登記権利者(贈与を受けた方)」と「登記義務者(贈与をした方)」が共同で所有権移転登記を申請します。しかし、遺贈の場合には異なりますので、下記内容を見て違いを把握しておきましょう。

登記権利者:受遺者とは

まず、遺贈における登記権利者とは、遺贈を受けた方である受遺者が該当します。遺贈により不動産を受け継いだ受遺者の方は、自らの名義に変更する必要がありますので登記を行います。

なお、被相続人の財産のうち、財産の種類を具体的に特定して譲受する方は「特定受遺者」と呼ばれます。逆に財産の種類を特定せずに、資産・負債含めて包括的に遺産を譲受した方は「包括受遺者」となります。

登記義務者:相続人等の役割

贈与であれば登記義務者は贈与をした人になりますが、遺贈では贈与をした人である被相続人は亡くなっています。したがって、登記義務者は贈与をした被相続人ではなく、遺言執行者もしくは相続人全員になります。

ちなみに、遺言執行者がいない場合には相続人全員が登記義務者となりますが、その際には相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書が必要となりますので、登記手続きが煩雑になってしまう点には注意しましょう。

【コラム】:受遺者を遺言執行者にする場合

受遺者を遺言執行者に指定することもでき、その場合には、登記の申請は民法108条ただし書にいう債務の履行に準ずべきものですので、受遺者(兼遺言執行者)は、登記権利者たる受遺者及び登記義務者たる遺贈者の代理人として、遺贈による所有権移転の登記を申請することができます。

遺贈登記にかかる費用

遺贈登記を行う場合、書類の取得費用や税金等が掛かります。また、固定資産評価額や税率の違いで費用の金額は変わりますので、下記内容をチェックしておきましょう。

登録免許税について

登録免許税は、法務局にて不動産の名義変更をする際に発生する税金です。遺贈登記を行う際に掛かる費用の一つですので、あらかじめどの程度の金額になるか確認しておきましょう。

また、遺贈登記では戸籍謄本・住民票・印鑑証明書等も用意します。さらに、司法書士に遺贈登記を依頼する場合は手数料も掛かりますので、それらも加味して費用を把握しましょう。

固定資産評価額の確認方法

登録免許税の算出には、遺贈登記する不動産の固定資産評価額が必要になります。固定資産評価額とは、各自治体独自のルールに基づき決められた不動産の評価額です。登録免許税のほか、固定資産税や不動産取得税の算出にも用いられます。

確認方法としては、市区町村から送付される「課税明細書」や、役所で取得できる「固定資産評価証明書」などで確認可能です。

登録免許税の税率の違いとは?

不動産の所有権移転登記の際に掛かるのが登録免許税ですが、算出する際には下記のような計算式を用います。

● 固定資産評価額 × 税率 = 登録免許税

なお、算式で用いられる税率は、受遺者ごとに異なります。受遺者が相続人である場合には「0.4%」、受遺者が第三者である場合には「2%」にそれぞれなりますので注意しましょう。

遺贈登記を行う際の注意点

遺贈登記の際の注意点も確認しておきましょう。主に気を付けるべき点としては、以下のような内容があります。

第三者対抗要件としての登記

遺贈の場合、所有権の移転自体は不動産の所有者が亡くなった際に生じます。しかしながら、前述のように第三者に対して対抗するためには、所有権移転登記を行わなければいけません。

なお、ここで言う「対抗」とは「効力が発生した法律関係を主張すること」であり、遺贈登記は第三者に対して所有権移転を主張するために必要な手続きです。

ちなみに、相続人に対しては登記未了でも対抗は可能になっています。

住所の一致確認

遺贈登記は、遺贈した方の登記簿上の住所と亡くなった際の住所が合致していないと認められません。そのため、登記を行う際にはあらかじめ遺贈者の住所や登記簿を確認しておく必要があります。

仮に確認して住所が合っていなかった場合には、遺贈者の登記名義人住所変更登記の手続きを行います。手続きは受遺者、遺贈者の相続人、遺言執行者のいずれの方でも可能になっていますので覚えておきましょう。

相続人の協力が得られない場合

遺言執行者がいる場合には、受遺者が遺言執行者とともに遺贈登記を行うことが可能です。しかし、遺言執行者がいないケースでは、遺言者の相続人全員が登記義務者になるため注意が必要です。相続人の協力が得られなかった場合には、裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てたり、裁判手続きを経る必要がありますので気を付けましょう。

遺贈登記と相続の違い

基本的に遺言書では、相続人に対しては財産を継承させる場合は「相続させる」と記載します。一方で、第三者に対しては相続させることはできませんので、財産を継承させたい場合は「遺贈する」と書きます。

しかし、遺贈の場合は受遺者の制限がありませんので、相続人を受遺者に指定しても問題ありません。相続人に「遺贈する」としても遺贈は成立し、所有権移転登記の登記原因も「遺贈」になります。

ただし、相続人全員に包括遺贈(相続財産の全部もしくは一部の割合の財産を無償で与えるもの。債権だけでなく債務も含む)をする場合においては、実質的に相続分の指定と変わらないため、登記原因は「相続」となります。

【コラム】:遺贈による所有権移転の登記

遺贈による所有権移転の登記は、包括遺贈、特定遺贈のいずれについても、受遺者を登記権利者、遺贈者を登記義務者とする共同申請によるべきものとされています。
この場合、遺言執行者があるときは、遺言執行者が当該遺言の執行としてその代理人となり、遺言執行者がないときは、遺贈者の相続人全員が登記義務者となります。

東京都千代田区の遺産相続に強い弁護士なら直法律事務所

遺贈登記の概要や手続き、第三者への対抗要件についても解説しました。遺贈登記の準備や必要書類の収集には手間が掛かりますので、弁護士や司法書士などの専門家に相談した方がスムーズでしょう。

併せて、遺贈登記は相続人同士もしくは第三者との話し合いをしっかり行わなければ、トラブルになる可能性も存在します。ぜひ、本記事をチェックしながら円滑に登記できるように進めてみて下さい。

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