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弁護士コラム

遺産分割協議書の書き方【遺産分割協議について解説】

遺産分割のトラブル
投稿日:2022年09月16日 | 
最終更新日:2022年09月20日
Q
父の遺産の分割について兄弟と相談したのですが、兄2人は遠方に住んでいるため全員が集まって協議することが難しい状況です。
私の方で遺産分割案を作って、それぞれの承諾を得るような方法でもよいのでしょうか?
Answer
お兄さん2人が遠方に住んでいて、なかなか会えないという状況ですね。
遺産分割の協議は、相続人全員が集まって相談して決めるのが普通ですが、ご質問のようにお兄さんたちが遠方に住んでいる場合には、質問者自身が遺産分割案を作成し、これをお兄さんたちのもとへ郵送するなどして、相続人全員の承諾を得るような方法で問題ありません。
お兄さんたちがあなたの作成した遺産分割案を承諾すれば、そのとおりの内容の遺産分割の協議が成立したことになります。

本記事では、遺産分割協議の方法について、わかりやすくご説明します。

はじめに

遺産分割協議というものをご存知でしょうか。

遺産を相談して分けるときに行う、会議のようなものです。この協議に特別な方法はありません。ただ、気を付けなければならない点がいくつかあります。

今回は、分割協議について詳しく説明します。

分割協議の方法

ご存知の通り、遺産分割とは、相続によって承諾された被相続人の遺産を、共同相続人の間で配分することです。そのため、この協議は通常相続人全員が参加して協議を行い、後述する協議の結果を書類(遺産分割協議書)に残すことが必要です。

「協議」というネーミングからお分かりかと思いますが、これは話し合いの上、遺産の分配を決めるため、法的には遺産分割の協議方式まで決めてはいません。ただ、相続人全員が同じ場所に集まっての協議を絶対要件とするのではなく、まとめられるべき遺産分割の内容について、相続人全員の承諾を得ることが必要なのです。ただ、相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要となることは忘れてはいけません。もし相続人が一人でも欠けた状態で行うと、その協議結果は無効となってしまいます。

冒頭の質問のように、お兄さんたちが遠方に住んでいるため、相続人全員が同じ場所に集まることが時間的・経済的理由から必ずしも容易でないことがあります。だからといって遺産分割の協議ができないとする理由はなく、相続人のうちの一人(今回は質問者)が、各相続人の意向を汲んだ公平妥当と思われる遺産分割案を作成し、これをお兄さんたちのもとへ郵送、持ち回るなどして、全相続人の合意を得ることができれば、そのとおりの遺産分割がまとまったことになります。

兄弟3人以外に相続人がいないという前提ですと、被相続人のお父さんの遺産について質問者とお兄さん2人の合計3人が、お父さんの子として同順位でしかも平等に相続することになります(民889条・900条1号)。更に相続人はそれぞれの希望や被相続人との生前のつながりから、作成した遺産分割の協議案について、同意をしてくれない場合もあるでしょう。

誰かひとりでも相続人の1人が作成した遺産分割案に納得しなければ、その分割案では協議がまとまったことになりません。そのため、更に遺産の分配についてお兄さんたちの意向や利害を聴取し、十分に検討した上、改めて分割案を作成し、相続人全員の承諾を取りつける必要があります。

兄弟間の相続の揉め事なんて、よく耳にしますよね。協議がまとまるまでに、お互いに欲の突っ張り合いや兄弟姉妹間の感情的対立を避け、事態解決のために客観的状況を踏まえての努力が必要です。紛争回避のため、必ず直接に各相続人全員の意向を確かめ、遺産分割の協議を求めていることを認識してもらっておくことが肝要です(分割案受諾の意思表示があったとは認められなかった事例として、浦和地判昭58・1・28判タ496・140)。

誰かが行方不明、というような場合については、こちらの記事相続人の中に行方不明者がいたら?【不在者財産管理人について解説】」をご参照ください。

遺産分割協議前に行うべきこと

遺言書の有無の確認

被相続人(亡くなった方)は、遺言書で相続人の誰に、どの財産を相続させるのかを指定することができますし、遺産分割の方法を第三者に任せることも、また、相続開始時から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁ずることもできます(民法908条)。

遺言書で遺産分割の方法を定めている場合、その指定のとおりに遺産を分割します(民法902条1項)。

ですから、遺産分割協議に際して、被相続人が遺言書を残しているのかを調査してください。

相続人の範囲の調査

まず、遺産分割協議に参加させなければならない相続の関係者を確定する必要があります。調査をする方法は、その被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本を入手し、被相続人の親、兄弟、子の関係を全て家系図に書き出します。

また、「遺産の何分の1(ないし全部)を与える」というように、遺産の全部またはその割合を指定するのみで、目的物を特定しない遺言による包括遺贈者がいる場合には、その者も遺産分割協議に加える必要があります。

相続財産の範囲の調査

相続人の範囲と同時に、相続財産の範囲も確定させなければなりません。

もし遺産分割協議後に新たに相続財産が見つかった場合には、その見つかった財産をどのように分けるのか、再度遺産分割を協議しなければならないことになります。

分割協議書の作成と効用

遺産分割の協議は、共同相続人間の承諾を得ることで成立します。後々、言った言わないのトラブルを避けるために、「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員が署名押印しておくことが大切です。特に、孫の代も加わってくる代襲相続などのため相続人が多い場合には、相続人が一人も洩れないように、特に注意しておきましょう。後から実はもう一人いた、となるとまた最初からやり直しです。

また、遺産分割協議書は、不動産や銀行預金などの名義変更を行う際に必要となります。この書面には、被相続人の氏名、本籍地、最後の住所、生年月日などを記載し、相続財産についても不動産については登記簿謄本のとおりに記載するなど、特定ができるように詳細に記載します。そして、相続放棄した相続人も含め相続人全員を表示し、本人が署名し実印を押印します。

分割協議書は、一般に作成される契約書と同じ効用があり、遺産分割について合意が成立したことを証明する資料です。

特に決まった様式はありません。縦書きでも横書きでも、パソコンで打ったものでも手書きでもよしとされています。

大事なのは、

  • 遺産分割を受ける権利を持っているすべての人(共同相続人、包括受遺者、相続分譲受人)が押印すること
  • 複数枚に及ぶ場合にはページのつなぎ目に契印を押すこと

です。

参考までに、法務省が公開している例を記載します。

遺産分割協議書


 令和元年6月20日、○○市○○町○番地 法務太郎 の死亡によって開始した相続の共同相続人である法務花子、法務一郎及び法務温子は、本日、その相続財産について、次のとおり遺産分割の協議を行った。
 相続財産のうち、下記の不動産は、法務一郎(持分2分の1)及び法務温子(持分2分の1)が相続する。
 この協議を証するため、本協議書を3通作成して、それぞれに署名、押印し、各自1通を保有するものとする。
 
 令和元年7月1日
               〇〇市〇〇町二丁目12番地       法 務 花 子 実印(注14)
               〇〇郡〇〇町〇〇34番地         法 務 一 郎 実印(注14)
               〇〇市〇〇町三丁目45番6号    法 務 温 子 実印(注14)


不動産
所  在  〇〇市〇〇町一丁目
地  番    23番
地  目    宅地
地  積    123・45平方メートル

所  在    〇〇市〇〇町一丁目23番地
家屋番号    23番
種  類    居宅
構  造    木造かわらぶき2階建
床 面 積    1階 43・00平方メートル
     2階 21・34平方メートル

※記載例です。この記載例を参考に、協議の結果に応じて作成してください。

遺産の中に不動産があれば、権利取得の登記が必要となります。登記申請に要する情報として、遺産分割協議書があれば、不動産登記法61条所定の「登記原因を証する情報」があるため、これによって各相続人は相続による取得登記ができるわけです。

遺産分割協議による所有権移転登記には次の書類が必要です。

  1. 1被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
  2. 2被相続人の住民票の除票
  3. 3相続人全員の現在の戸籍謄本
  4. 4登記する不動産を取得する相続人の住民票
  5. 5最新年度の固定資産税評価証明書または固定資産税納税通知書
  6. 6遺産分割協議書
  7. 7相続人全員の印鑑証明書

ただし、相続人が法務局(登記所)に必要な書類を提出し、登記官が内容を確認した上で、法定相続人が誰であるのかを登記官が証明する制度(法定相続情報証明制度)を利用する場合は①~③は要りません。

遺産分割の協議がまとまり、相続人全員が自ら署名押印した遺産分割協議書が作成されると、遺産分割が終了します(東京高決昭52・8・1七家月30・4・101)。

分割終了後に家庭裁判所へ遺産分割の審判が申し立てられても、その申立ては、既になされた相続人間における協議の成立が否定されない限り却下されます(仙台家審昭35・9・10家月13・3・148、同旨大阪高決昭38・5・20家月15・9・192)。

否定される例としては、相続人実はもう一人いた、というようなときなどですね。

遺産分割の遡及効

遺産分割をする前もしくはその後に、法定相続分を売却した相続人がいた場合には、その法定相続分を買った第三者と遺産分割で権利を取得した相続人のどちらが保護されるのでしょうか。

民法909条(遺産の分割の効力)
 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

この条文には、「さかのぼって」効力が生じるとあります。

つまり、遺産分割の協議が成立すると、相続人は分割協議の内容に従って権利を取得することになり、その効力は相続開始の時にさかのぼります。遺産分割協議が成立した瞬間から協議の効力が生じるのではなく、その効力は相続が開始した時(被相続人が死亡した日)にさかのぼって発生します。これを遺産分割の遡及効といいます。

相続人は被相続人から直接権利を承継したことになるので、遺産の共有関係が解消します。これを遺産分割の宣言的効力といい、通常の共有物分割の場合は分割のときから将来に向かって権利が移転する点が違います。

遺産分割の協議により不動産を取得した相続人は、共同相続の登記を経由することなく、分割後における各単独所有名義での取得登記を直接的になし得る(昭和19・10・19民事甲692)というのも、この理由によります。

相続開始の時から遺産分割までの遺産の法律関係について、学説の多くは個々の財産に持分権を認めておらず、各相続人は相続財産の全体の上に各自の相続分に応じた権利義務を有するとの合有説をとっています。

判例(最判昭30・5・31民集9・6・793)は共有説の立場から、個々の相続財産の持分権を肯定し、かつこれを自由に処分できるとの考え方をとっているので、遺産分割前に、特定の遺産につき、相続人から持分の譲渡を受けた第三者を保護してあげなくてはいけません。遺産分割の効力が遡及しても、既に取得した第三者の権利を害することはできないとして、相続開始後分割前に権利を取得し、対抗要件である登記等を具備した第三者を保護するために、遡及効を制限しているのです(民909条但し書き)。

また、共同相続人の一人が遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲渡した場合には、譲渡の部分は遺産分割の対象から逸出するので、譲り受けた第三者との関係で共有関係を解消するのは遺産分割手続ではなく、民法258条に基づく共有分割の裁判手続によるべきものとされています(最判昭50・11・7民集29・10・1525、家月28・5・26)。

結論としては、遺産分割「前」の第三者は、民法909条但し書きにおいて保護されます。このとき、悪意(遺産分割前であることについて知っている)の人であっても保護されますが、取得した財産が不動産である場合には、登記をしなければ保護されませんので注意が必要です。

遺産分割「後」の第三者は、同条但し書きには該当しませんので、保護されません。この場合は、民法177条の対抗問題となり、「先に登記したもの勝ち」となります。

詐欺又は脅迫がある場合

遺産分割協議などの段階で、相続人の中の誰かが遺産を隠すなどといった詐欺行為が起こることがあります。相続時に実際に詐欺行為があった場合、どのようにすればいいのでしょうか。

遺産分割の協議書が形式的に作成されていても、協議そのものは私法上の意思表示です。とすると、相続人の自由意思に基づかない場合、例えば分割協議に当たり相続人を威圧するなどの強引な方法や、遺産の内容・価額等につき虚偽の事実を告げたり、重要な事項を秘したりして相続人をだますような方法で承諾を得たときは、後日当該相続人から瑕疵のある意思表示だとして、協議の無効あるいは取消し(民95条・96条)が主張され、分割協議の効力が争われることもあります。

遺産を隠されたり、遺言書を偽造・破棄されたり、不動産の売却価格に嘘をついたり、多額の生前贈与を受けていたことを隠したり、というケースが考えられます。場合によっては、相続欠格(民891条)に該当し、法律上、相続人の資格がはく奪されることもあります。

遺産分割協議を取り消すためには、他の相続人や包括受遺者全員に取り消しの意思表示をしてもらう必要があります。他の相続人や包括受遺者が遺産分割の取り消しに応じない場合は、裁判所に「遺産分割無効確認訴訟」を提起して争います。

したがって、分割協議に当たり遺産の範囲・評価はもちろんのこと、分割の内容につき遠隔地のお兄さんたちと十分な意思疎通を図り、客観的に公平妥当な結論で納得してもらうように、ある程度の時間をかけることもやむを得ない場合もあります。

仮に、相続人の一人分から、分割協議の無効ないし取消しが主張されて家庭裁判所へ遺産分割の請求がなされると、家庭裁判所は分割審判の前提問題として、訴訟事項である分割協議の成否を判断することができますが(最決昭41・3・2民集20・3・360)、右協議に関する無効ないし取消しの主張が通らないと、遺産分割の審判申立は、既に分割協議済を理由に却下されます。

詐欺行為に基づく意思表示の取消権は、追認できる時(詐欺行為を知った時)から5年が経過すると時効によって効力が消滅してしまいます(民法126条1文)。

さらに、遺産分割協議が取り消された場合、もう一度初めからやり直すことになります。その時点ですでに相続した遺産が第三者に売却されているとします。買い受けた第三者が遺産分割協議が詐欺であったことを知らずに購入(善意)している場合、売却された財産は取り戻すことができません。

もし、遺産分割で騙されたかも、と感じた場合には、取消権の消滅時効が消滅する前に、早めに専門家に調査を依頼することをおすすめします。

分割協議のトラブル・お悩みは、弁護士に相談を

遺産分割協議では、相続人同士のトラブルはよく起こることです。

相続人同士の遺産分割協議が成立しない場合、つまり相続人の誰か1人でも遺産分割協議の結果に合意しない場合、そのままでは遺産分割ができません。

この場合には、裁判所を通して遺産分割の方法を決めることになりますので、お早めに当事務所の弁護士にお問い合わせください。

※遺産分割に関するお悩みは、こちらのページから弁護士費用もご確認いただけます

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