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弁護士コラム

相続放棄後も財産の管理義務は残る?管理義務が残るケースや管理義務の内容をご紹介

相続放棄
投稿日:2022年07月26日 | 
最終更新日:2023年12月12日
Q
父から相続し、自分が保管していた遺産の相続を放棄しました。
しばらくは次の相続人である父の兄に遺産を渡せないのですが、その遺産は管理する必要があるのでしょうか?

Answer
父の兄が相続財産を管理できるまでは、たとえ相続放棄を選択したとしても管理する必要があります。自己の財産と同じように被相続人の財産の管理をしなければなりません。

相続財産を管理しなければ、減失などにより他の相続人に損害を与える可能性が出てきます。そのような事態を防ぐために、たとえ相続放棄をしたとしても次の相続人が管理できるまでは管理しなければならないのです。

相続放棄後も管理義務は残る

結論からいうと、相続放棄後も管理義務は残ります。

具体的には次の相続人(や相続財産管理人)が財産管理を始められるまでの期間、管理義務は残ります。

「相続放棄をすれば相続財産を管理する義務を免れるのでは」と考える方もいるでしょう。

しかし、相続放棄によって相続財産を管理するものがいなければ、不都合が発生してしまいます。

そこで民法では、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」(民法940条1号)と規定しました。

したがって、相続放棄をしたからといって相続財産の管理義務をしなくてもよいというわけではないのです。

また相続放棄を選択した場合、相続権は次の共同相続人に移りますが、後に借金といった債務が発覚する例もあるため、自分が相続放棄を選択した際は、次の相続人に、相続人になったことを事前に知らせましょう。

相続人が全員相続放棄を選択した場合の管理義務はどうなる?

トラブルを避けたいがために相続放棄を選択する方は少なくないでしょう。

もし相続人全員が相続放棄を選択した場合、管理義務は誰にあるのでしょうか。

詳しく見てみましょう。

相続財産管理人が選任される

最終順位の相続人全員が相続放棄をしてしまった場合、管理義務はどうなるのでしょうか。

第1順位の相続人全員が相続放棄をした場合、第2順位の相続人がいれば第2順位の相続人が相続することになり、さらに第2順位の相続人全員が相続放棄をした場合は、第3順位の相続人がいれば第3順位の相続人が相続をすることになります。

このように、最終順位の相続人全員が相続放棄をしてしまった場合には、相続財産を管理している者は、次順位の相続人に対して管理を引き継ぐことができません。

このような場合は、相続財産管理人選任の申立てをして、相続財産管理人に管理を引き継ぐ以外、相続財産の管理義務を免れる方法はありません。

相続財産管理人とは、遺産を管理する人のことです。

相続財産の管理は本来、相続人、または包括受遺者が行うものの、相続人全員が相続放棄をしたり、相続人が明らかでない場合があります。

当然、財産を管理するものがいなくなれば、債権者などに大きな損害や迷惑を掛けることとなってしまいます。そのため、相続財産管理人が必要となります。

相続財産管理人は申立ての際に候補者を上げることができ、候補者に特別な資格は必要ありません。

ただし、必ずしも候補者が相続財産管理人になれるとは限らず、実際は弁護士や司法書士といった専門家の第三者がなることも多くあります。

相続財産管理人の選任の申立てには予納金が必要

相続財産管理人の選任の申立てには予納金が必要です。

なぜなら、相続財産管理人が債権者に弁済をしたり、遺産の精算をするのに経費が発生したりするからです。併せて、相続財産管理人へ報酬も支払わなければなりません。

そのため、あらかじめ費用を納める必要があるのです。

予納金の額は裁判所が決めるもので、事案の内容によって異なります。

一般的には、30万円から100万円程と幅広いものになっているため、予納金はあらかじめ準備しておきましょう。

相続財産が十分にある場合は、予納金が返還されます。

しかし、相続財産が不十分な場合には返還される原資がないため、最終的に申立人が費用を負担しなければなりません。

申立てには予納金が必要となることから、相続財産管理人の申立てをためらうかもしれませんが、他方で、相続財産の中に不動産がありそれを放置して近隣に迷惑が及ぶ場合は、管理責任として損害賠償の請求を受けることもあります。

その場合は相続財産管理人の申立てに要する予納金よりも遥かに高い金額を支払うこともあるため、予納金が発生するとしても、相続財産管理人を選任することをおすすめします。

相続財産管理人の選任の申立てに必要な書類

  • 申立書(裁判所にて書式が用意)
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類
  • 被相続人の両親の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類
  • 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人がいれば、その出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類
  • 被相続人の直系尊属(祖父母や曽祖父母など)の死亡の記載のある戸籍謄本類
  • 被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までの戸籍謄本類
  • 代襲者としての甥や姪で死亡している方がいる場合,その甥や姪の死亡の記載がある戸籍謄本類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳など)
  • 相続放棄者と被相続人の関係を証明できる戸籍謄本類
  • 財産管理人の候補者を立てる場合、候補者の住民票また戸籍附票

必要費用

  • 収入印紙800円
  • 連絡用の郵便切手
  • 予納金

予納金は、遺産の精算をする際の経費や相続財産管理人の報酬に充てられます。

相続放棄後の管理義務の具体的な内容とは?

相続放棄を選択した人は相続人でなくなり、財産の所有権を失うものの、その放棄によって相続人となった次順位の相続人が相続財産の管理を始められるまでは、財産管理をしなければなりません。

具体的には、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理をしなければなりません。(民法940条1項)

相続人が相続放棄を選択して相続財産を管理しなくなると、それにより当該相続財産が減失されて債権者や他の相続人に迷惑をかけるリスクが発生します。

その他にも、管理を怠った者が、管理責任者として損害賠償を支払う場合もあります。

「相続財産の保存に必要な処分」とは

土地や建物に対する「変更」行為については、共同相続人全員の合意が必要となり(民251)、「管理」行為については、各相続人の相続分の過半数による合意が必要となります(民252本文)。

他方で、「保存」行為の場合については、共同相続人の1人が、他の共同相続人の同意を得ることなく、単独ですることができます(民252ただし書)。

もっとも、一般人である相続人による管理には限界があります。以下のような場合には、相続財産の保存行為が期待できません。

  • 被相続人が遠隔地に居住している場合
  • 相続放棄をした者の管理能力に問題がある場合
  • 管理義務違背など不適切な管理が行われる恐れがある場合
  • 相続放棄をした者や相続人が相続財産の管理を行うことが困難もしくは不適切な場合

いずれかに当てはまる場合は、利害関係人(相続人、相続人の債権者、次順位の相続人等)又は検察官の請求により、家庭裁判所はいつでも相続財産の保存または管理に必要な処分を命じることができます。

相続財産の保存に必要な処分としては、相続財産管理人の選任、相続財産の封印、換価その他の処分禁止、占有移転禁止、相続財産の換価処分、財産目録の調製・提出命令等が想定されます。

空き家の相続放棄を選択する際の注意点

親が居住していた実家の相続を放棄する場合、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?

ここでは空き家の相続放棄を選択する際の注意点についてご紹介します。

空き家の解体などの「処分」行為を避ける

空き家は維持費がかかるなどの理由から相続放棄を検討する事例が増えているのは事実です。

しかし、熟慮期間中に空き家を解体してしまうと、「処分行為」に該当し、単純承認を選択したことになってしまいます。

また相続放棄の申述が受理されたとしても、直ちに空き家の管理責任を免れるわけではないため、注意が必要です。

相続放棄を選択する場合、検討しているのならば空き家の維持に費用がかかったとしても、売却や解体をしないのがベストです。

また相続放棄を選択した者も、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始められるまで、その財産の管理をしなければならないとなっているため、注意が必要です。

相続放棄を検討している場合は、空き家の解体などの処分行為は避けましょう。

空き家の管理責任を追及される可能性がある

空き家は周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空室等の適切な管理に務めるものとするとされています。

空き家の相続放棄を選択した人は、この管理者に該当するのです。

空き家を不適切な状態にすると、市町村長はその管理者に対して建物の解体や修繕、周辺の生活環境の保全を図るために、必要な措置を講じるように助言もしくは指導を出してきます。

不適切な状態とは、景観が損なっている状態や、周辺の生活環境に影響が出ている場合などです。

助言もしくは指導に応じない場合は、市町村長は行政代執行法に基づいて自ら命令した措置を実行することができ、さらにそれによって生じた費用も管理者に負担させることが可能です。

もしも空き家の倒壊等により第三者に損害を与えた場合は、損害を賠償する責任も負う可能性も出てきます。

相続財産も自己の財産と同様に扱わなければならないため、適切に管理をしましょう。

たとえ相続放棄をしたとしても、次の相続人が財産の管理を始められるまでは管理をする必要があります。

また先に述べたように維持が難しいからといって売却や解体をすると、「処分行為」に該当し相続放棄ができなくなるため注意してください。

相続財産管理人の報酬や解体費用などを総合的に考慮する

管理責任を問われることを防ぐため、相続財産管理人を選任して相続財産の管理を引き継ぐことが適切です。

しかし、相続財産管理人の選任には申立てや予納金が必要となります。

この予納金は基本的に相続財産から支払われるものの、相続財産が少なく支払えないと見込まれる場合もあるでしょう。

その場合は、申立人に報酬相当額を家庭裁判所に予納させ、そこから報酬が支払われるケースが多いです。

そのため、相続財産中に空き家が存在する場合、相続財産のみならず、相続財産管理人の報酬相当額や当該空き家の解体に要する費用を考慮に入れて、相続放棄をするかを判断しましょう。

まとめ

本記事では、相続放棄後の管理義務と空き家の管理についてご紹介しました。

相続財産の管理は大変なため、相続放棄を選ぶ方も多いと思います。

しかし、相続放棄を選択したとしても、その放棄によって次の相続人が管理を始められるまでは、自己の財産と同一の注意義務をもって管理をしなければなりません。

もしも相続人全員が相続放棄を選択した場合は、相続財産管理人を選任する必要があります。

費用がかかるものの、リスクの観点から、適切な管理ができない場合は相続財産管理人を選任するべきでしょう。

もし相続放棄後の管理義務や、相続財産管理人の予納金等についてわからないなどの不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考サイト

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不用品回収・遺品整理・特殊清掃・生前整理に | 遺品整理のミカタ

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