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弁護士コラム

相続の3つの方法と熟慮期間とは?期限や開始するタイミング・延長について解説

相続放棄
投稿日:2022年07月22日 | 
最終更新日:2024年03月21日
Q
相続の方法を選ぶための「熟慮期間」があると聞きました。熟慮期間とは、どのような期間のことをいうのでしょうか?
Answer
「熟慮期間」とは、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月間のことをいいます。
この期間内で、被相続人が遺した相続財産をどのように処理するかを考え決定する必要があります。

相続の3つの方法とは

単純承認

単純承認は、一般的な相続方法です。被相続人の全ての財産・債務を受け継ぎます。単純承認を選択すると、プラスの財産(土地・建物、不動産上の権利、金融資産、動産など)もマイナスの財産(借金、保証債務、公租公課など)も全て相続することになります。

仮に債務などのマイナスの財産が多い場合、相続人は弁済しなくてはなりません。また、相続人が相続財産の一部や全部を処分した場合、自動的に「単純承認した」と見なされます。

単純承認のメリットは、家庭裁判所へ申述する手続きが不要な点です。

一方で、財産をすべて包括的に承継する方法であるため、積極財産だけでなく消極財産も相続することになります。そのため、予期せぬ多額の消極財産がないかどうか慎重に財産調査を行う必要がある点が、デメリットであるといえます。

限定承認

限定承認は、条件付きで相続する選択です。受け継いだプラスの財産の中で債務を引き継ぐ方法です。プラスの財産を超えてしまったマイナスの財産は相続する必要はありません。

どうしても相続をしたいプラスの財産がある場合、もしくは、財産の調査をした結果、プラスかマイナスかの結果が微妙な場合、限定承認を選択することが多いです。相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内に、亡くなった方が最後に住んでいた居住地の管轄にある家庭裁判所へ申し込む必要があります。

限定承認は、債務超過が明らかではないときや、相続財産の中に引き継ぎたい家宝のようなものがあるとき、また、たとえ被相続人に債務があっても引き継ぎたい思いがある場合に、メリットがあります。

一方、限定承認は相続人全員により申述を行う必要があり、また相続人の中で一人でも反対がある場合には手続きに入れないため、その点はデメリットといえるでしょう。また、相続人の中から相続財産管理人が選任されることになるため、相続人の中には相続財産管理人として相続財産の管理や売却を行う必要がある者も生じる点もデメリットです。(共同相続人以外から相続財産管理人を選任する場合もあります。)

相続放棄

相続放棄を選択すると、相続人は「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみな」されます(民法939条)。被相続人の全ての財産・債務を受け継がない選択となり、借金や連帯保証債務なども、手続きをすることで放棄できます。

相続放棄をする場合は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、亡くなった方が最後に住んでいた居住地の管轄にある家庭裁判所へ申述しましょう。仮に、高価な相続財産が発見された時に相続を検討したくなっても、一度、申述すると撤回できないので注意が必要です。

ただし、限定承認も同様ですが、相続放棄後、相続財産の一部もしくは全部の隠蔽などの行為が発覚した場合、単純承認とみなされます。

相続放棄のメリットは、被相続人の残した消極財産からも開放される点や、限定承認とは異なり、共同相続人全員で行う必要がない点があげられます。

一方、積極財産を相続することができなくなってしまう点や、相続人が全員相続放棄を行った場合に、相続財産管理人へのコストを支払う必要がある点はデメリットです。

なお、被相続人の借金が多額だった場合、相続放棄を選択する場合が多くありますが、「債務整理」を行うことで、減額できる場合や、実は過払い金が発生していて積極財産となる場合も考えられます。そのため、一度、相続放棄手続き前に専門家へ相談すると安心でしょう。

相続放棄しても保険金は受け取れる?

多くの方が誤解している相続放棄と保険金の関係。 実は、受取人によっては相続放棄しても保険金を受け取れるケースがあります。

受取人が特定相続人の場合

受取人が特定の相続人に指定されている場合、その相続人が相続放棄をしても保険金を受け取ることができます。

例:被保険者:Aさん

契約者:Bさん

受取人:Cさん(Aさんの長男)

Aさんが亡くなり、Bさんが相続放棄をした場合でも、Cさんは保険金を受け取ることができます。

受取人が特定されていない場合

受取人が特定されていない場合(「法定相続人」となっている場合等)、各相続人は民法427条に基づき、法定相続分の割合で保険金を取得できます。

例:

被保険者:Aさん

契約者:Aさん

受取人:法定相続人(Bさん、Cさん)

Aさんが亡くなり、相続人がBさん(長男)とCさん(長女)で、法定相続分がそれぞれ2分の1の場合、BさんとCさんはそれぞれ2分の1の割合で保険金を取得できます。

Bさんが相続放棄をしても、Cさんは2分の1の保険金を取得できます。

受取人が被相続人の場合

受取人が被相続人になっている場合、相続人は相続放棄をすることで保険金を受け取ることができません。

例:

被保険者:Aさん

契約者:Aさん

受取人:Aさん

Aさんが亡くなり、Bさんが相続放棄をした場合、Bさんは保険金を受け取ることができません。

相続放棄と墓

1. 位牌、仏壇、墓は「祭祀財産」

位牌、仏壇、墓等は、遺産ではなく「祭祀財産」と呼ばれ、祖先の祭祀を主宰する者に属します。これは民法897条1項で定められています。

2. 都心一等地の墓地も高価な仏壇も相続財産には含まれない

つまり、都心一等地の墓地や高価な仏壇であっても、相続財産には含まれません。

3. 祭祀主宰者になる資格

祭祀主宰者になる資格は、相続人であるかどうか、親族関係の有無、氏などが異なっているかどうかに関係なく、誰でもなることができます。

4. 相続放棄をした方でも墓を承継できる

相続放棄をした方でも、祭祀主宰者として墓を承継することが可能です。

相続放棄と退職金

死亡退職金については、退職金の受給権者の範囲や順位について、被相続人の職場の規程が民法の規定と異なる内容を定めているときには、死亡退職金を受給する権利は相続財産に属さず、受給権者である遺族の固有の権利であるとされます(最判昭和55年11月27日民集34巻6号815頁)。

従って、この場合、相続放棄をしても死亡退職金を取得することが可能です。

相続放棄と管理義務

1. 相続放棄しても財産管理の義務がある

相続放棄をした後も、次の相続人が財産管理を始めるまでは、自己の財産と同一の注意をもって、引き続き財産を管理する義務があります。

2. 管理義務の期間

  • ・次の相続人が財産管理を始められるまで
  • ・相続財産管理人が選任されるまで

3. 管理義務の内容

  • ・財産を毀損したり、減失させたりしない
  • ・財産の価値を維持する
  • ・財産から生じる収益を保存する

4. 管理義務の軽減

相続放棄によって、管理義務は善管注意義務よりも軽減されます。

5. 管理義務の履行方法

  • ・財産目録を作成する
  • ・財産を安全な場所に保管する
  • ・財産から生じる収益を記録する

6. 管理義務を怠った場合

 他の相続人が相続放棄をしたことで相続人になった次の相続人や相続財産管理人から損害賠償請求を受ける可能性があります。

7. 管理義務を負う必要がない場合

  • ・相続財産を占有していない
  • ・相続財産の存在を知らず、かつ知らなかったことに過失がない

8. 相続放棄と管理義務に関する相談

相続放棄と管理義務に関する相談は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

兄弟と相続放棄

第1順位及び第2順位の相続人がいない場合、あるいは、いても、その全員が相続放棄をすれば被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

従って、第1順位及び第2順位の相続人が相続放棄をした場合には、兄弟姉妹も相続放棄をするか選択する必要が生じてきます。

相続放棄と撤回

1. 相続放棄は原則として撤回できない

民法919条1項では、「相続の承認及び放棄は、〔民法〕第915条第1項の期間内でも、撤回することができない」と規定されています。

つまり、一度相続放棄をした後は、熟慮期間内であっても、撤回することはできません。

2. 相続放棄が撤回できない理由

相続放棄は、相続人の資格を確定させる重要な手続きです。

もし撤回が認められてしまうと、他の相続人や相続債権者の立場が不安定になり、相続関係の安定が損なわれる恐れがあります。

3. 相続放棄の申述の取り下げ

相続放棄の申述書が家庭裁判所に提出されてから受理されるまでに、一定の時間がかかる場合があります。

この期間内であれば、申述者の意思確認等のために、相続放棄の申述の取り下げを認めています。

4. 相続放棄の撤回・取り下げに関する相談

相続放棄の撤回・取り下げに関する相談は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄と証明書

相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申述を家庭裁判所が受理したことを証明するものです。

相続放棄後に相続債権者等から相続放棄したことの証明として提示や提出を求められることもあります。

相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されると、自動的に交付されるのではなく、相続放棄をした者又は利害関係人(共同相続人、後順位相続人、相続債権者等)が、申述を受理した家庭裁判所に交付請求をすることで取得することができます。

相続の「熟慮期間」とは

熟慮期間は、被相続人が亡くなってから、相続についてどの方法を選択するか検討できる期間です。被相続人が亡くなってから何も手続きをしないと「単純承認」となり、プラスの財産もマイナスの財産も自然と相続することになります。「限定承認」もしくは「相続放棄」を選択する場合は、熟慮期間中に手続きをする必要があります。

「熟慮期間」は、被相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内と決まっています。多くの場合、被相続人が死亡したことを知った時から3カ月となりますが、この点は別の記事(「相続の「熟慮期間」とは?熟慮期間に行うべき4つのことと開始タイミングの考え方」)で説明します。

この熟慮期間内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなくてはなりません。期間を過ぎると「単純承認」したとみなされ、マイナスの財産があっても相続することになってしまうため注意しましょう。

仮に、「熟慮期間」中に、相続人が相続財産の状況調査などをしていたり、相続に関する決定が滞っていたりした場合、家庭裁判所に申立てを行うことで期間の伸長をできる場合があります。また、被相続人に相続財産が存在しないと信じた場合、もしくは、相続財産の財産調査を行うことが難しい場合は、その理由によっては、例外的に3ヶ月を超過した場合でも、相続放棄ができる可能性があります。

熟慮期間はいつから開始するのか

自己のために相続の開始があったことを知った時

「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、判例において「相続人が相続開始の原因たる事実の発生(被相続人の死亡など)を知り、かつ、そのために自己が相続人となったことを確知した時」となっています。つまり、原則として相続人が相続開始の原因たる事実、すなわち被相続人の死亡を知り、自己が法律上の相続人になったことを知った時から起算して、3ヶ月間ということになります。

相続開始原因となるものとして、「被相続人の死亡」もしくは「被相続人の失踪宣告」があげられます。また、「法律上の相続になったことを知った時」というのは、先順位相続人の「相続放棄」又は「死亡」を知った時です。相続人が複数人いる場合は、熟慮期間がそれぞれの相続人につき、別々に進行することも考えられます。

相続人が複数いる場合

熟慮期間は、相続人それぞれが「自己のために相続の開始があったこと」を知ってから、それぞれに進行していくこととなります。仮に、相続人の内一人の「熟慮期間伸長」が認められたとしても、他の相続人に影響が出ることはなく、それぞれ、相続について「限定承認」「相続放棄」の選択をします。期間の伸長についても、個々で申立てをしなくてはなりません。

熟慮期間を延長することは可能?

結論、熟慮期間は延長ができます。

家庭裁判所への申立て期間の「自己のために相続の開始があったことを知ってから3ヶ月間」を超えてしまうおそれがある場合に、熟慮期間が経過する前に期間の伸長(延長)を申立てる必要があります。期間伸長の申立を、家庭裁判所が認めた場合、熟慮期間が延長され相続についての検討期間を延ばすことができます。

熟慮期間の延長が認められるための考慮要素

家庭裁判所は、期間伸長の申立について、「相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の海外や遠隔地所在などの状況のみならず、相続財産の積極、消極財産の存在、限定承認をするについての共同相続人全員の協議期間並びに財産目録の調整期間などを考慮して審理することを要する」とされています(大阪高決昭和50年6月25日家月28巻8号49頁)。

次のようなケースでは、多くの場合、期間伸長が認められています。

財産の調査が間に合わない場合

遺産が多くて「遺産整理」が間に合わなかった場合、相続をどうしたらよいか判断がつかないため、期間の伸長を家庭裁判所に申立できます。

仮に被相続人に多額の負債があった場合には相続放棄を選択したいでしょうし、プラス財産の方が多い場合には単純承認して相続したいということが多いでしょう。このように、遺産を「相続」するか「放棄」するかを検討するためにも、財産調査を完了させなくてはなりません。

財産調査を始めたものの、調べることが多く熟慮期間内で調べきれない・判断ができない場合には、熟慮期間の伸長の申立を家庭裁判所にしましょう。

相続人の複数名の所在が不明な場合

被相続人と離れた場所で暮らしている場合、「戸籍収集」「財産調査」などに時間がかかってしまうことがあります。家庭裁判所への「限定承認」「相続放棄」などを申述する時には、被相続人の最後の住所地を管轄している裁判所で手続きをしなくてはなりません。そのため、仮に離れた場所で暮らしていた場合には、書類を集めるにも時間がかかってしまい熟慮期間内に相続放棄や限定承認の申述ができない可能性があります。

そのため、熟慮期間中に、熟慮期間伸長の申立をしておきましょう。もし、申立て前に入手できなかった戸籍等の申立添付書類がある場合でも、申立後に追加提出することもできます。

延長に必要な手続き

熟慮期間の延長をする為には、住所地を管轄している家庭裁判所に申立てを行う必要があります。申立てには「申立書」と「申立添付書類(住民票・戸籍謄本等)」を用意しなければいけません。

手続きの流れとして以下のような流れになります。

  1. 1必要となる書類を作成し、準備する
  2. 2準備した書類を管轄している裁判所に提出する
  3. 3家庭裁判所が内容を審査し、審判を下す
  4. 4内容を確認し、納得が出来なければ即時抗告をする
  5. 5熟慮期間の期間が確定する

熟慮期間内でも相続放棄が認められないケース

熟慮期間内でも相続放棄が認められない場合があります。自分が法律上の相続人であることを知ってから3ヶ月以内であっても「単純承認」とみなされる行為をした場合、「相続放棄」はできません。

  • 相続財産の家屋を取り壊す
  • 相続財産を捨てる
  • 形見分けなどの、経済価額のある相続財産の譲渡
  • 遺産分割協議
  • 被相続人の債権を取り立てて収受する
  • 遺産を使い込んでしまった
  • 相続財産の名義変更をした
  • 相続財産を隠蔽した

上記行為は、「単純承認」になるため、相続放棄は認められず、相続放棄の申述をしても、相続放棄不受理決定を受けることになります。

何もせず熟慮期間が経過した場合どうなる?

熟慮期間中に相続を承認・放棄するなどの手続きをせず、経過した場合はそのまま「単純承認」となります。期間中に、熟慮期間の延長の申立てを行っていれば、熟慮期間の延長が認められます。もし、法律上の相続人であることを知っていたにも関わらず何もしないうちに熟慮期間が過ぎてしまった場合は、「単純承認」となり、被相続人の財産・負債の全てを相続することとなります。

財産・負債の全てを相続し、結果大変なことになったとしても、熟慮期間中に何もしていなかったのであれば、相続するしかありません。熟慮期間中の相続の承認・放棄について検討する時間や財産調査などをする時間を延長するための申立は、必要書類を郵送するだけでできます。

少々、手間や時間がかかってしまいますが、大きな損が生じてしまう恐れがある場合などは、安心して相続ができるようしっかりと調査をする時間を用意することが大切です。そのためにも、必要があれば熟慮期間内に相続についてどうするかを検討し、期間が足りなかった場合は期間延長を申立てましょう。

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単純承認・限定承認・相続放棄には、それぞれに違いがあり、また、メリットやデメリットも生じます。遺産相続関係の話は、難しく手間や手続きが面倒であったり、弁護士への相談費用なども不安になったりすることと思います。遺産相続は、一般的に被相続人が亡くなった時点で発生する出来事です。

相続する際には、相続財産によってどの方法で相続するかをしっかり検討する必要があります。

気にせず、全てを相続したとして、これからの生活が大変なことになってしまう恐れもあるので、簡単に相続することを決めることは避けた方がよいでしょう。分からないことや遺産相続に関する不安点、財産調査などは弁護士・司法書士などに相談することがおすすめです。

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