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弁護士コラム

保険目的物を譲渡したら、保険金は支払ってもらえないのか?

問題事例 生命保険 火災保険 地震保険
投稿日:2022年08月12日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、火災保険を締結していた建物を他人に譲渡しました。
このことを保険会社に告げないまま、火災が発生してしまいました。

保険金は支払ってもらえないということはあるのでしょうか?
Answer
保険契約の締結後に危険増加が生じたとして、保険金を支払ってもらえない場合があります。
しかし、危険が増加したと言えるか否かは、個別具体的な事情によって異なりますので、約款や判例を確認しながら、保険金を請求することが肝要です。

解説

保険契約の締結後に危険増加告知事項についての危険が高くなり、保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になること)が生じた場合には、保険会社は以下の場合に保険契約を解除できると法律が定めています(保険法29条1項)。

  1. 1当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なく通知をすべき約款が定められていること
  2. 2保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく①の通知を保険者にしなかったこと

の要件を満たす場合。

問題は、保険の目的物を譲渡した場合が、この危険の増加といえるか否かでしょう。

実務上、通知義務のような保険契約者側に義務を課す条項は、保険金が支払ってもらえなくなる場合があるので、保険契約者側から見れば不当性を感じやすい約款条項であり、裁判でもよく問題となります。

最高裁平成5年3月30日判決(民集47・4・3384)は、火災保険の目的物の譲渡に関する通知義務違反の効果として保険者の全部免責を定める条項について、譲渡があった場合において有するものとされる保険者の解除権行使を可能とするために通知義務違反の場合の保険者の全部免責を定めることは、合理的であり有効であるとしています。

もっとも、通知義務違反があれば危険の増加の如何を問わず保険者免責とする条項は、改正前商法650条の趣旨に反し無効とする裁判例もあります(盛岡地判昭45・2・13下民21・1=2・314)

また、保険契約者側の責に帰すべき譲渡の場合にはあらかじめ通知すべきものとする部分については、通知は譲渡後遅滞なくされれば足りるとして実質的に一部無効を認めている裁判例もあります。

このほか、義務違反の効果が発生するための約款所定の要件を厳格に解釈適用して、保険契約者側の救済を図っている裁判例も少なくありません。

このように、ご質問の事例の場合には、果たして保険の目的物である建物を譲渡したからといって、危険増加があるといえるのか、具体的な事情に照らして判断し、保険会社に対して交渉していくことになるでしょう。

お困りの際は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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