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火災保険は経年劣化に適用できない?経年劣化と査定された際の対処法

問題事例 火災保険
投稿日:2022年03月03日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、台風で外壁が損傷したことから火災保険申請をしましたが、保険会社から老朽化、経年劣化していたものであるから、補償できないと言われました。納得がいきませんが、仕方ないのでしょうか。
Answer
火災保険は、台風や大雨による漏水、自然災害の損害は補償対象となります。

しかし、一方で、経年劣化はあらゆる建物で起こるものです。常に風雨にさらされている建物は、特定の災害にあわなくてもダメージを受けています。

また、そのダメージの蓄積から建物の不具合が起きることも居住者は予測できることが多いのではないでしょうか。そのため、経年劣化は火災保険で補償されないのです。

経年劣化とは

年数の経過とともに品質や機能が低下することを経年劣化といいます。雨風や湿気、温度、日射など自然による劣化はもちろんのこと、建物や家財を使い続けることでの劣化や汚れや損耗も経年劣化に含まれます。

経年劣化の定義

「経年劣化」とは時間の経過やそれに伴う自然現象により、機能や性能が劣化することを指しています。日光による物体の変色、ゆがみなどが当たります。

一方、タイヤのすり減りなど通常の使い方による劣化は経年劣化ではなく「通常損耗」と呼びます。

経年劣化の具体例

  • 太陽光があたっていた壁やフローリングの日焼け
  • 建物の耐用年数を超える畳やフローリングのへこみ
  • 下地ボードまで貫通していない壁紙の穴
  • トイレや浴室内の壁の黄ばみやパッキン故障

などが経年劣化として認められています。

経年劣化の査定方法

普段からリフォーム工事等に携わる仕事でなければ経年劣化であるか否かの判別はほとんどつかないと言えます。実際には発生箇所や、発生内容に応じて判断していきます。

ただ、人間の目で判断することになるので、断定できないケースもあります。
その際は素直に保険会社に伝え、調査会社と保険会社間双方の意見を出して、すり合わせていく形になります(なお交渉行為は、本人以外の弁護士以外の事業者が行うと非弁活動として違法行為になるため注意を要します)。

専門業者が調査する

火災保険において、経年劣化かどうかの査定は専門業者が調査することが一般的です。
経年劣化に該当するかどうかは調査で明らかになります。
調査による査定金額は、半日ほどで判明します。

保険会社が依頼した損害保険鑑定人が調査する

保険会社に依頼された損害保険鑑定人が調査します。
保険会社はそれぞれ提携している調査会社があります。
しかし最終的な査定金額は保険会社が判断し、顧客に伝えられます。

火災保険は経年劣化には適用されない

火災保険は経年劣化には適用されません。

しかし自然災害により被害を受けた場合は、経年劣化に該当しない可能性があります。被害を受けてから3年までが保険の対象になるので、自然災害を受けた場合は調査してもらいましょう。

経年劣化と判定されてしまえば、火災保険からの保険金は支払われません。

もし本当に自然災害による被害を受けたのに経年劣化と診断されてしまった場合は、例えば「全国建物診断サービス」等に相談してみましょう。無料で相談を受け付けてくれます。

もしも一度経年劣化と診断されても、あきらめるのは早いです。被害を受けてから3年までは、再調査により自然災害の被害であると判定されれば火災保険の対象になるのです。

自然災害であると判定されるためには、災害発生直後に写真をできるだけ多く撮影しておくと有利になります。

また、必要な書類も不備のないように用意しておきましょう。保険金請求書・罹災証明書・事故証明写真・修理見積書は必ず用意してください。

保険金請求書は保険会社から取り寄せ、修理見積書は修理業者から取り寄せます。写真はスマホで撮ったものでも十分に効果はあります。

証明書は、被災した建物の所有者が必ず発行申請を行ってください。

経年劣化と査定された際の争い方

もし経年劣化と査定された場合、納得がいかないときにも対処方法があります。

1つの方法は、「そんぽADRセンター」に相談するという方法です。そんぽADRセンターは火災保険の苦情を受け付けている機関で、一般社団法人日本損害保険協会が運営しており社会的な信用もあります。

専門業者に調査を依頼し、保険会社に再調査を求める

保険会社が依頼した鑑定人の調査に納得がいかない場合、再調査を求めることができます。

例えば、保険会社の担当者の対応が悪いなどの場合は、担当者を変えてほしいという要望を出すことも1つの方法です。

または調査の専門業者に依頼することによって、再調査をしてもらう方法もあります。

火災保険が適用されない経年劣化以外のケース

経年劣化以外で火災保険が適用されない代表的な4つのケースは、以下のとおりです。

  • 故意に傷つけた場合
  • 3年の時効を過ぎた場合
  • 戦争や核燃料物質が原因の場合
  • その他(地震が原因の火災保険など)

これらの場合は法律の規定や契約によって、建物や家財に損害が生じたとしても火災保険の補償は受けられません。

一つずつ、詳しく確認していきましょう。

故意に傷つけた場合

保険契約者や被保険者などが故意によって傷つけたことによって生じた損害には、保険金は支払われません。

わざと損害を生じさせた場合には、本来であれば対象となる損害であっても、火災保険の補償がされないのです。

なぜなら、故意に傷つけた場合にまで補償を認めると、保険金目当ての請求などにつながるケースが想定されるからです。

故意に傷つける場合の具体例としては、自分で家具を壊したり、自宅を放火したりする場合があります。

家具を壊した場合や放火された場合、通常であれば火災保険などで補償がされるケースも多いですが、故意にやった場合には保険金の支払いは受けられません。

なお、故意による損害を、自然災害によって生じた損害であると虚偽の申請をすると、詐欺になってしまう可能性があるので注意しましょう。

3年の時効を過ぎた場合

保険法の規定により、火災保険を請求する権利は、発生から3年間以内に行使しなければ時効によって消滅します。

被害の発生から相当の期間が経過すると原因の特定が困難になり、適正かつ迅速な保険金の支払いができなくなる点に配慮した規定です。

保険金が請求できる期間を過ぎてしまわないように、損害の発生に気づいたらすぐに保険会社などに相談するようにしましょう。

なお、火災保険が使えるのを知らずに損害の修理をしてしまった場合であっても、3年以内であれば請求ができます。

ただし、損害の程度や修理時の請求書などがないと、損害の原因や損害の修理にどれくらいの費用を払ったかなどがわかりません。

そのため、修理後の申請には、以下の書類が最低限必要になります。

  • 損害状況がわかる写真(修理前の写真)
  • 損害を修理した際に受けた見積書や請求書

火災保険の対象になるか迷うようであれば、一度保険会社に相談してみましょう。

戦争や核燃料物質が原因の場合

戦争や核燃料物質が原因で生じた損害については、保険金を支払わないことが保険契約の際に決められています。

具体的には、以下のような場合に生じた損害には、保険金の支払いはしないと規定されているのです。

  • 戦争・外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動
  • 核燃料物質もしくは核燃料物質などによって汚染された物の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性に起因する事故

戦争や核燃料物質が原因による損害が火災保険の対象外になっているのは、主に以下の2つの理由からです。

  • 保険金の支払い規模がどれくらいになるかの予想がしにくいため、損害状況によっては保険会社が保険金を支払えないケースが想定される
  • 一度発生すると甚大な損害を生じさせる危険があり、適切な保険料の設定が困難

その他

これまで紹介してきたケース以外でも、以下の3つの場合には保険金の支払いはされません。

  1. 1地震や噴火などを原因とする火災などによって生じた損害
  2. 2給排水設備の事故に伴う水濡れ損害のうち、給排水設備自体に生じた損害
  3. 3窓からの雨や雪などの吹込みによる損害

これらの場合について、簡単に補足していきます。

①については、火災保険の対象外になります。
なぜなら、地震や噴火を原因とした火災などで損害を受けた際に適用されるのは、火災保険ではなく地震保険であるからです。
通常の地震保険は単独で加入ができないので、火災保険と一緒に加入する必要があります。

また、②については、給排水設備の事故によって生じた漏水などの水濡れ事故による損害は、火災保険の補償対象です。
しかし、ガス湯沸かし器やトイレの水洗用設備などの給排水設備自体の修理費は、補償の対象外になります。

そして、③については、開けていた窓から雨や雪が吹き込んだ場合に生じた損害は、火災保険の対象外です。
もっとも、台風などの強風によって飛んできた物によって、窓が割れて雨や雪が吹き込んで生じた損ついては、火災保険の対象になります。

火災保険の対象になるかは素人が判断するには難しいので、迷ったら保険会社に相談してみることをおすすめします。

まとめ

火災保険は、火災以外にも、落雷や台風などの自然災害や破損・盗難など幅広い損害に対応できる保険です。

しかし、契約で除外事由として定められた原因によって生じた損害や、3年の時効を過ぎて消滅した場合には、火災保険の補償を受けられないので十分に注意しましょう。

保険金の支払対象外になる経年劣化などを知って、納得のいかない場合には争うことも必要です。

使いこなせば便利な火災保険を上手に活用して、適切な保険金の支払いを受けましょう。

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