保険金レスキュー

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弁護士コラム

火災保険金が支払われる一般的な要件とは?

対象、補償内容 火災保険
投稿日:2022年02月28日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
保険会社に火災保険金の支払を求めますが、保険金が支払われるための一般的な要件を教えてください。
Answer
1.保険期間内に契約で特定された保険事故の発生
2.その保険事故と損害とに因果関係があること
3.保険会社に支払免責事由がないこと
の3つを満たすことで支払が行われます。

要件1について

保険期間とは、保険会社と契約で定めるその期間内に発生した保険事故による損害をてん補する期間(保険法65号参照)をいいます(詳しくは「火災保険の保険期間」の記事をご参照ください。)そして、保険金の支払対象となる事故は火災だけではなく、落雷、爆発、風災、雪災、雹災、水災、盗難、給排水施設の水漏れ、車両の衝突、騒擾又は労働争議など多くの事故に保険金を支払うとしている場合があります(詳しくは、「火災保険の種類について解説の記事をご参照ください。

要件2について

時効による消滅

保険法26号や保険会社の約款により保険金が支払われるためには、発生した損害と保険事故との間に因果関係がなければなりません。

注意点としては、保険事故が地震によって発生した場合には、保険金が支払われないことです(下記要件3について 火災が地震もしくは噴火又はこれらによる津波によることをご参照ください。)。

要件3について

保険金が支払われない事由(免責事由)として以下の事由が考えられます。

時効による消滅

保険金の支払請求権は保険法951項により3年となっています。

     消滅時効の起算点については保険法に規定されていませんので、民法1661項により、保険金請求権を行使できる時から消滅時効が開始します。
この点に関係する判例として、以下のものがあります。

全く保険金支払請求をしなかった場合や約款所定の方式に従った保険金支払請求をしなかった場合には、損害保険契約による保険金支払請求権の消滅時効は保険事故発生時が起算点となる旨の判示をした判例(東京地判昭和42年9月27日)
上記判例は保険法が施行(保険法の施行は2010(平成22)年4月1日)されるよりも前のものですのでこれらだけを判断の材料にされないようにしてください。
※被保険者とは、保険金を受け取る人を指します(保険法2条4号イ参照)。保険契約者とは、保険契約を締結した人で、保険料を支払う人を指します(保険法2条3号参照)。必ずしも両者は同じではありませんが、同一人であることが一般的

上記判例は保険法が施行(保険法の施行は2010(平成22)41日)されるよりも前のものですのでこれらだけを判断の材料にされないようにしてください。

被保険者とは、保険金を受け取る人を指します(保険法24号イ参照)。保険契約者とは、保険契約を締結した人で、保険料を支払う人を指します(保険法23号参照)。必ずしも両者は同じではありませんが、同一人であることが一般的です。また、両者は個人に限定されず、法人でもなることが可能です。

火災が戦争その他の変乱によって生じたこと

戦争、外国からの武力行使、革命、内乱、その他これらに類似の事変または暴動等の異常事態による被害が生じたとしても保険金は支払われません。なぜなら、このような場合は、被害規模の想定が困難であり、保険会社の支払いに限界が生じる可能性があるためです。

保険事故が地震もしくは噴火又はこれらによる津波によること

基本的に、地震により発生した保険事故(火災・損壊・埋没・流失)による損害は地震免責条項により保険金は支払われません。そして、発生した保険事故が地震によるものか否か、すなわち地震と火災との因果関係の有無についてどのように判断するのか疑問に思われるかもしれません。この点に関係する判例としては以下のものがあります。

地震発生から約2時間後に火災が発生した場合において、本件火災が発生する前に相当の人為的活動が行われたことなどから本件火災が本件地震によって発生したとは直ちに推定できない旨判示とした判例(大阪高判平成13年12月20日)。
地震発生の約5時間後に火災が発生した場合において、地震により倉庫内に侵入した海水等と倉庫内の資材とが触れることにより自然発火したものであり、当該火災は間接的にではあるが、本件地震によって生じたものというべき旨判示とした判例(東京地判昭和45年6月22日)。

これらの判例も保険法の施行前のものですので、これらだけを材料に因果関係について判断されないようにしてください。

もっとも、上記判例では、因果関係の有無については、保険会社側に立証責任があるため、保険契約者・被保険者側が主張立証する必要はないとしています。

もし、地震による損害もカバーしたいのであれば、地震保険の加入も検討に入れてみてはいかがでしょうか。

火災が保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じたこと

保険事故が故意または重過失により発生したときには保険金は支払われません。
この故意または重過失の有無に関連して、事故が偶然のものであったか否かということが問題となることがありますが、保険契約者・被保険者は火災が発生し損害を被ったことだけを主張立証すればよく、偶然性については主張立証する必要がありません。

法人の場合、火災が法人の理事、取締役又は法人の業務を執行するその他の機関の故意又は重大な過失によって生じたこと

この免責規定を約款に規定している保険会社もありますのでご確認ください。

告知義務違反

保険契約者・被保険者には保険会社が保険料を設定するにあたって参考とする保険契約者・被保険者側の重要な情報(告知事項)を告知する義務が課されており(保険法4条)、この義務に違反しますと、保険金が得られなくなる可能性があります(詳しくは「火災保険の告知事項」をご参照ください。)。

重大事由による解除

保険契約は保険契約者・被保険者と保険会社との間に信頼関係があることが必要ですので、故意に事故を起こすなどの信頼関係を破壊するような行為(重大事由)があった場合には、保険法30条により契約を解除され、保険金が支払われなくなる可能性があります(保険法3123号参照)。

重大事由は、保険契約者・被保険者が、保険会社に保険金を支払わせるために損害を生じさせ、又は生じさせようとした場合(保険法301号参照)や詐欺を行い又は行おうとしたことにより保険金を得ようとした場合(同条2号参照)、そして、前記2つ以外に保険会社の信頼を損ない保険契約の存続が困難となった場合(同条3号)に認められます。

通知義務違反

保険契約の締結後に保険契約の内容に変更が生じ、それが通知すべき事項に該当する場合に、保険契約者または被保険者は遅滞なく保険会社に変更内容を通知しなければならない義務があり、この通知義務に違反すると契約の解除や支払いの免責により保険金を得られなくなることや保険金が減額されることがあり得ます(詳しくは、「火災保険の通知義務」の記事をご参照ください。)。

違法建築である場合

保険対象となる建物が違法建築(法令違反)であった場合、保険金が支払われなくなる可能性があります。法令とは、建築基準法や消防法などを指します。ただし、違法建築であったとしても、この法令違反と損害の発生との間に因果関係が認められなければ保険会社は保険金の支払いを免責されない可能性があります。

損害防止義務違反

「保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない」(保険法13条)とされており、正当な理由なくこの義務に違反した場合には、損害の発生や拡大を防止することができたと認められる額を保険金から減額すると約款に規定されていることが一般的です。

損害防止義務は保険事故の発生後に生じる義務である一方、保険事故発生前に保険契約者・被保険者がこれを未然に防止できたのにしなかった場合は保険法13条ではなく同法17条の問題として保険金が支払われなくなる可能性があります。

まとめ

以上のように火災保険は様々な事故に対応しておりますが、発生した損害と保険契約で定めた保険事故との間に因果関係が必要となります。

また、要件の列挙した免責事由に該当しますと保険金の減額や不払いとなる可能性がありますのでご注意ください。

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