火災保険でクロスのひび割れは補償される？補償される例と、申請方法も解説

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」（火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故）に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

火災保険で補償されるひび割れとは？

火災保険で補償されるクロスのひび割れは、以下のとおりです。

• 家具の移動によるクロスのひび割れ
• 子どものいたずらによるクロスのひび割れ

火災保険の対象になるひび割れは「不測かつ突発的なもの」です。

上記の２つのクロスのひび割れは不測かつ突発的なものであるため、火災保険の対象となります。

ただし、火災保険でひび割れの補償を受けるには、主に2つの条件を満たしている必要があります。

1. 1ひび割れが起きてから３年以内
2. 2破損特約への加入

①に関して、発生して3年以内のひび割れのみ、火災保険の補償の対象となります。火災保険に加入している場合は、保険証券や保険約款を確認しましょう。

②に関して、火災保険で「不測かつ突発的な」事故による損害を補償するには破損特約に加入する必要があります。

①、②の条件を満たす場合には、クロスのひび割れが発生したら、火災保険の申請をしてみましょう。申請方法については、のちほど解説します。

クロスのひび割れ以外の火災保険の基本補償

クロスのひび割れ以外の破損や汚損に対しても、火災保険を利用することができます。

火災保険の基本補償は、主に以下のとおりです。

1. 1火災、雷、爆破が起きたとき
2. 2風災・雪災・ひょうさい
3. 3水災
4. 4盗難
5. 5水漏れ（水濡れ）
6. 6建物外部からの物体の落下・衝突等
7. 7破損、汚損等（不測かつ突発的事故）

ただしプランによって補償内容が変わるので、加入する火災保険の重要事項説明書や保険証券などをチェックしてください。

クロスのひび割れの種類

一口にクロスのひび割れといっても、割れ方はさまざまです。

例えば、以下のようなひび割れの種類があります。

1. 1つなぎ目に入ったクロスのひび割れ
2. 2つなぎ目以外のクロスのひび割れ
3. 3突発的なクロスのひび割れ

①は、つなぎ目に入ったクロスのひび割れです。

線のようなひび割れで、ドアや窓枠にできることが多いです。

②は、つなぎ目以外のクロスのひび割れです。

つなぎ目に入ったクロスのひび割れと異なり、振動以外の原因も考えられます。

したがって、火災保険サポート業者や専門家に調査してもらい、補修すべきか検討してください。

③は、地震や台風など突発的な要因によるクロスのひび割れです。基礎部分のひび割れは建物の安全性にかかわるため、早めの補修をおすすめします。

クロスのひび割れに対する修理費用（補償）の相場は、以下のとおりです。

1. 1１箇所のみの場合：２万円〜３万円
2. 2２箇所以上の場合：①に１万円前後の追加料金

クロスのひび割れを1箇所だけ補修する場合は、2万円〜3万円の費用がかかります。

しかし2箇所以上になると、上記の費用に1万円前後が追加されることが多いです。

クロスのひび割れの補修だけではなく、壁の張替えをする場合は3万円〜5万円前後の費用がかかることが予想されます。

火災保険で補償されないクロスのひび割れ

火災保険で補償されないクロスのひび割れは、以下のとおりです。

• 築年数が古い家のクロスのひび割れ
• 故意によるクロスのひび割れ
• クロスの伸びによるひび割れ
• 地震以外の揺れによるクロスのひび割れ
• 動物が傷つけたことによるクロスのひび割れ

築年数が古い家のクロスのひび割れ

築年数が古く、経年劣化によるクロスのひび割れは、火災保険で補償されません。

損保ジャパンの公式ページでは、「対象建物の自然の消耗もしくは劣化（中略）による修理費用はお支払いの対象とはなりません。」と説明されています。

Q.経年劣化による建物の修復費用は保険の対象ですか？   A.保険の対象建物の自然の消耗もしくは劣化または性質による変色、変質、さび、かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、はがれ、肌落ち、発酵もしくは自然発熱の損害その他類似の損害による修理費用はお支払いの対象とはなりません。   引用:経年劣化による建物の修復費用は保険の対象ですか？/損保ジャパン

築年数が古いためにひび割れが起きている場合は、火災保険を利用することができません。

故意によるクロスのひび割れ

故意によるクロスのひび割れは、火災保険の対象外です。

わざとひび割れを起こして火災保険を利用すると、詐欺罪としての立件や火災保険を解約させられることもあります。

悪徳業者によって火災保険の契約を迫られて、補償を受けられないケースもあります。半ば強引に契約を迫られた際は、消費生活センターに相談してください。

特に60歳〜80歳以上の被害が多く、訪問販売型の勧誘が被害の80%を占めています。お年寄りのいらっしゃる家庭は、悪徳業者の訪問に注意しましょう。

クロスの伸びによるひび割れ

クロスの伸びによるひび割れも、火災保険の対象外です。

住宅のクロスには、塩化ビニールが用いられています。塩化ビニールには、寒いと縮み暑いと伸びるという特徴があるため、昼夜の寒暖差や真夏の気温上昇により、ひび割れが発生します。

しかしクロスの伸びによるひび割れも劣化の1つであり、火災保険が利用できないため注意してください。

地震以外の揺れによるクロスのひび割れ

地震以外の揺れによるクロスのひび割れは、不測かつ突発的なものでない限り、火災保険の対象とはなりません。

例えば、日常的なドアの開閉でサッシが揺れて、つなぎ目にヒビ割れが起きることがあります。その他、道路沿いに住んでいる場合には、車の往来による揺れでひび割れが起きることがありますが、この場合も火災保険で補償することはできません。

動物が傷つけたことによるクロスのひび割れ

動物によるクロスのひび割れも、火災保険の対象外です。

例えば、飼っているネコやイヌが壁を引っかいた場合は、故意のキズという扱いになるので火災保険の補償を受けられません。動物によるクロスのひび割れは、破損特約が利用できないので注意してください。

火災保険の申請方法

火災保険でひび割れを補償するための申請手順は、以下のとおりです。

1. 1クロスのひび割れの確認
2. 2弁護士や火災保険サポート業者を比較
3. 3弁護士や火災保険サポート業者による訪問・見積書の作成
4. 4保険会社による保険金の支払い

まず、クロスのひび割れをチェックしましょう。前章でも解説しましたが、動物によるクロスのひび割れは火災保険の対象外です。

火災保険の補償が受けられるひび割れかどうかを確認するために、以下の2つの作業をしてください。

1. 1ひび割れが起きた日時と要因の特定
2. 2ひび割れ部分の撮影

とはいえ、火災保険で補償できるひび割れなのかわからない場合もあります。そのときは弁護士や火災保険サポート業者へ相談することをおすすめします。

次に、弁護士や火災保険サポート会社を比較しましょう。中には悪徳火災保険サポート業者もあるため、各社の評判・口コミを比較サイトで確認してみましょう。

信頼できる業者を見つけたら、①の内容を弁護士や火災保険サポート会社へ送付しましょう。

その次の手順が、火災保険サポート業者による訪問と見積書の作成です。

連絡をした火災保険サポート会社にひび割れ箇所の調査をしてもらい、火災保険で補償できるかチェックしてもらいます。

申請ができる場合、火災保険サポート会社による見積書・申請書類・補修前の写真を保険会社に提出します。上記の書類は、火災保険サポート会社から保険会社へ送られます。

また補償内容が100万円以上である場合や書類の不備がある場合は、火災保険会社の鑑定士による事故内容報告書・見積書のチェックもあるので注意してください。

最後に、火災保険サポート業者の提出書類と調査の結果を加味して、保険金額を決定します。

火災保険サポート業者を利用した場合は、保険金の30〜40%前後の手数料が発生することが多いでしょう。

仮に保険金が50万円なら、火災保険サポート業者への手数料が15万円〜20万円程度になるでしょう。それ以上の手数料を請求される場合は、悪徳業者の可能性もあるので注意してください。

クロスのひび割れに関するよくある質問

クロスのひび割れに関するよくある質問は、以下のとおりです。

①クロスにひび割れがあれば、保険金を受け取れる？

不測かつ突発的な原因によるものであれば火災保険で補償できます。例えば、引っ越しで家具を入れたときに傷つけた場合など、故意でなければ保険金の受け取りができます。

ただし保険会社が「このクロスのひび割れは景観を損ねていない」と判断した場合、火災保険の対象外になります。

弁護士や火災保険サポート業者にクロスのひび割れの状況をチェックしてもらいましょう。

②動物原因のクロスのひび割れは補償できる？

動物が原因のクロスのひび割れは火災保険で補償されません。例えば、飼っているネコやイヌが壁紙を引っかいた場合では、火災保険の補償対象となりません。

ただし、子どもの落書きは「破損汚損・補償の対象」なので、火災保険の補償を受けられるケースが多いでしょう。

③クロスのひび割れを無料で補修できる？

クロスのひび割れを無料で補修することは難しいでしょう。なぜなら、クロスのひび割れを含む汚損や破損に関する火災保険には、免責金額が決められているからです。

免責金額とは、保険加入者の自己負担額を指します。免責金額が大きくなると、保険料の自己負担額が増えるのが特徴です。

④賃貸のクロスのひび割れも補償される？

賃貸マンション・アパートのひび割れは、以下2つの補償制度に加入している場合、火災保険の補償を受けることができます。

1. 1個人賠償責任補償特約
2. 2借家人賠償責任補償特約

①の個人賠償責任補償は、自分や家族が他人にケガをさせたり、モノを壊したりしたときなどの補償です。

例えば、散歩中にイヌが他人を噛んでしまった場合、店舗の商品を壊した場合などに利用できます。賃貸マンションの場合、大家に対する賠償責任が発生するので、この賠償責任を個人賠償責任補償特約で補償できる場合があります。

②の借家人賠償責任補償は、賃貸マンションやアパートの契約時に加入するものです。物件を借りるために、借家人賠償責任補償特約が必要なケースもあります。

例えば、家事や水漏れによるクロスの張り替えをする場合、借家人賠償責任補償特約に加入すると大家さんへの補償ができます。

もし上記の補償特約に加入していない場合は、保険内容の変更をおすすめします。

⑤ひび割れ以外のカビも補償できる？

壁紙のひび割れ以外にも、カビを火災保険で補償したいと思われる方もいるのではないでしょうか。しかし火災保険では、壁紙についたカビは補償できません。

カビは高温多湿の環境で起きやすいので、空気の入れ替えや空気清浄機で対策できます。したがって火災保険では補償できないので、自主的にカビの対策をする必要があります。

まとめ

• クロスのひび割れは、不測かつ突発的な破損なら補償してもらえる
• 劣化や日常生活の振動によるクロスのひび割れは、火災保険で補償されない
• 虚偽申告をすると、保険金詐欺になる

クロスのひび割れで火災保険の補償を受けるには、故意、重過失ではないことが重要です。子どもの落書きや地震によるひび割れは対象となりますが、経年劣化やペッドなどが原因のクロスのひび割れは火災保険の対象外なので注意してください。

クロスのひび割れの修理費用は、2万円〜3万円前後といわれています。また火災保険の加入時に設定する自己負担額（免責額）によって、保険料が下がるか火災保険利用時の支払い額が変わるため、保険会社に問い合わせてください。

火災保険で補償できるひび割れや申請方法を知り、火災保険を有効活用しましょう。火災保険の申請方法がわからない方は、弁護士事務所や火災保険サポート会社、保険会社等に問い合わせをしてください。

その上で火災保険の補償額や保険料に問題があれば、火災保険比較サイトを利用して火災保険の見直しをしましょう。