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弁護士コラム
「家財」とは?家財保険の対象についても解説
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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火災が発生し、自宅の家具が燃えて使えなくなってしまいました。
この場合、火災保険で補償されるのでしょうか?
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家具は、通常は家財に含まれますので、火災保険の補償対象に「家財」を含めていれば、補償されます。
また、損害の原因は、火災や水災、ガス爆発による破裂など様々なものがありますので、損害の原因となる保険事故が補償される火災保険に加入しているか確認する必要があります。
なお、家財の範囲については、貴金属や宝石等の価値の算定が困難であったり、高価な品物等、それが補償される家財に含まれるか否かが争点となったりすることがあるので、注意が必要です。
本記事では、家財の範囲や補償範囲について詳しくご説明します。
「家財」とは何か
火災保険の対象物は、「建物」と「家財」に分けられますので、火災保険へ加入する際の補償対象物についても、「建物」と「家財」それぞれ別個に選択することができます。
例えば持ち家であれば、「建物」のみを対象とする、もしくは、「建物」と「家財」ともに対象とする選択が考えられます。
他方で、借家であれば、賃貸人が「建物」を対象とする火災保険に加入しているので、「家財」のみを選択することになります。このように、「建物」と「家財」の区別が重要になります。
火災保険の対象物である家財に、法律上は明確な定義はありませんが、家具や家電製品などの生活用の動産のことをいいます。
また、保険会社では、家財とは一般に「被保険者または被保険者と生計をともにする親族が所有するものであって、かつ、保険証記載の建物内に収容されているもの、および物置や車庫その他の付属建物に収容されているもの、宅配ボックス等又は宅配物をいう」としています。
例えば、家具や家電、衣服、日用品、宝石、美術品、貴金属、趣味の品などが挙げられますが、具体的にそれらが火災保険によって補償対象となる家財になるか否かは、保険会社との間で締結した火災保険契約の内容(多くは各保険会社の約款内容)次第になります。
以下では、それぞれの家財が補償対象になるか否かを、代表的な事例を用いて紹介します。
家財保険の対象
家財保険とは、火災保険の契約時において、その補償の対象に「家財」を含める場合の保険契約を意味します。
したがって、家財保険と火災保険は全く別の保険契約というわけではありません。
また、火災保険は、「建物」のみを対象とする場合、「家財」のみを対象とする場合、「建物」と「家財」を対象とする場合があります。
家財保険の対象となる動産
明記物件
明記物件とは、一般に、「貴金属や宝石、書画、骨とう品、彫刻物その他の美術品や稿本や設計書などのうち、1個または1組の価額が30万円を超えるような物で、保険証券に明記されなければ補償の対象とならない物をいう」とされています。
明記物件にあたる動産は、「家財」を補償対象とする火災保険契約を締結したうえで、さらに、明記物件として契約申込書に明記しなければ保険の対象となりません。明記物件として認められると保険証券に記載されることになります。
なお、保険会社によっては、明記物件の申告を不要として、その代わりに、補償される価額の上限を定めている場合があります(こちらをご参照ください)。
また、上述の明記物件の定義として例示されている稿本や設計書等を明示して、補償の対象物から除外している場合もあります
(こちらの10頁をご参照ください)。
明記物件として申告しなければならない理由として、1個または1組の価額が30万円を超えるような貴金属や宝石、書画、骨とう品、彫刻物その他の美術品や稿本や設計書は、高価品であることからその客観的価値を算出することが非常に困難であり、トラブルになりやすいためです。
明記物件として申告し、家財保険の対象物にすることで、損害が生じた場合の補償範囲や保険金額について当事者間で紛争が起きないようにしているということです。
例えば、絵画であれば、ある時点では評価されないような技法や作者によって描かれたものであっても、時代の変遷とともに評価されるようになることもありますので、有識者でなければ、その真価を測ることは困難でしょう。
明記物件が損害を受けた場合は、大半の保険会社では、時価に基づく評価方法によって、保険価額が算出されて保険金が支払われます。ここにいう「時価」とは、再調達価額から使用による損耗および経年年数に応じた経年減価額を差し引いた価額をいいます。また、ここにいう「再調達価額」とは、損害が発生した場所および時点において火災保険の補償対象となる建物・家財と同一の構造・質・用途・規模・型・能力のものを再取得するのに要する価額をいいます。
明記物件の申告時には、対象物件の評価が難しいため当事者間に争いがないように、評価額にかかわらず明記物件として保険の対象にしておき(「30万円を超えるような」とのあいまいな表現から読み取れます。)、いざ損害が発生した場合には、時価で保険金を算定して支払うという方法をとっているといえます。もっとも、時価に基づいたとしても、保険金の上限を定めている場合もあります。
また、1回の事故あたりの上限が定められている場合が多いため注意が必要です。
台風で割れた自宅の窓ガラスの破片により損害を受けた家財
家財を補償の対象として、また、火災保険により補償される保険事故に「風災」を含めて契約を締結した場合(台風は風災にあたるため)には、損害を受けた家具や家電、衣類、日用品などの動産は、家財として補償されます。
風で自宅の植木鉢が飛んで隣の家の窓ガラスを割り、その破片により損害を受けた家財
自宅の庭に置かれていた植木鉢が台風で飛んで、隣の家の窓ガラスを割ってしまった場合には、その植木鉢が置かれていた庭を敷地とする建物の所有者が火災保険に加入していた場合であっても、損害を受けた家財は他人の物ですから、その家財は補償されません。
しかし、隣の家の所有者が「家財」を補償対象とする火災保険に加入していれば、この火災保険によって補償されます。
なお、自然災害によって隣の家の窓ガラスが割れているので、植木鉢の所有者は隣家の所有者に対して、原則として、損害賠償責任を負いません。
自宅に駐輪していて、豪雨で流された自転車
自転車が敷地内に置かれていたのであれば、その自転車は家財に含まれるため、「水災」が保険事故として保証される火災保険に加入していたときには、その自転車は補償されます。
大雪で屋根が押しつぶされたカーポート
敷地内のカーポートや物置、車庫、門、塀、外灯等も家財に含まれます。
この場合は、「雪災」が保険事故として補償される火災保険に加入することで補償されます。
空き巣によって窃取された現金
火災保険において盗難被害を補償する特約に加入していれば、盗難によって建物(窓ガラス等)や家財に損害を受けた場合に、その損害が補償されます。
したがって、建物内に現金が置かれていた場合にも、その現金が盗難被害にあった場合には、補償されるでしょう。
家財保険の対象とならない動産
豪雨で浸水してしまった自動車
火災保険では、自動車は補償の対象となりません。
もっとも、自動車保険では補償される可能性があります。
すなわち、自動車保険のうち、自分の自動車を補償する車両保険を契約している必要があります。
※本記事では詳細を省略します。
火災で亡くなってしまったペットの動物
動物は法律上、物として扱われますが、家財に含まれません。
したがって、「家財」を補償の対象とする火災保険に加入していても、補償の対象となりません。
家財保険の補償範囲
家財保険は火災保険によるものですが、補償の対象となる損害の発生原因は、失火やもらい火、放火などによる火災だけではありません。落雷やガス漏れなどによる破裂・爆発、風災、雹災、雪災、台風や豪雨などによる水災、自動車の飛び込みなどによる建物外部からの物体の落下・飛来・衝突、漏れ水などによる水濡れ、騒擾・集団行動などに伴う暴力行為、盗難などによる窃取・損傷・汚損が挙げられます。
一般的には、水災、風災、雪災、漏れ水などによる水漏れ、ガス爆発などによる破裂・爆発、落雷、建物外部からの物体の落下・飛来・衝突、盗難などによる盗取・損傷・汚損、火災の被害件数が多いため、契約者本人の実情に見合った補償を選択すべきだといえます。
なお、補償範囲を限定することで、支払うべき保険料を安く抑えることができます。
家財保険の保険金額の設定方法
家財の評価方法は、「積算評価」と「簡易評価」の2種類があります。
積算評価とは、家財全ての正確な価格を判定し、これを合計して行う評価方法です。
もっとも、家屋内にあるすべての家財の価格を正確に判定することは事実上不可能なので、もっぱら家計分野の火災保険においては、積算評価における評価方法を簡易化した簡易評価がよく用いられます。
具体的には、世帯主の年齢や家族構成に基づき保険会社が算出した家財金額を目安にして評価することになります。また、保険会社ごとにこの基準による目安は異なります。
ただし、あくまで目安なので、契約者本人の実情に合わせて家財の評価額を算出することになります。
また、簡易評価による目安額には、一般的に明記物件の価額は含まれません。
そもそも明記物件として補償の対象とする旨の合意は、補償の対象としたい動産の保険価額を正確に評価することが困難であるがゆえになされるものです。
そのため、世帯主の年齢や家族構成に基づいて一般的・標準的な家財金額を算出する簡易評価では、評価し尽くすことができないことがなおさら明白です。そこで、簡易評価による目安額には、一般的に明記物件の価額は含まれません。
家財保険の主要な特約について
日常生活賠償特約
「日常生活賠償特約」とは、日常生活を過ごす中で、他人を負傷させ又は他人の物を損壊・汚損した場合に負うことになる損害賠償責任について、補償がなされる特約をいいます。
なお、保険会社によって、名称が異なる場合があります。
借家人賠償特約
「借家人賠償特約」とは、賃貸借されている物件において、偶発的に発生した事故を原因として、その物件の所有者または賃貸人に対して、損害賠償責任を負うことになった場合に、補償がなされる特約をいいます。
また、特約と位置付けられていますが、多くの賃貸人が、賃貸借契約において、借家人賠償特約に合意する義務を課しているのが現状です。したがって、この義務が課されている賃借人が、借家人賠償特約に加入しない場合には、債務不履行に基づいて賃貸借契約を解除されてしまうおそれがあります。
もっとも、賃借人にも加入するメリットがあります。すなわち、賃借人は退去時に、物件を原状に復する義務を負います(民法621条本文)が、たとえば壁紙を大きく破壊してしまった場合には、修理費用が高額になるおそれがあるため、借家人賠償特約によって、その負担を軽減することができるからです。これは、もちろん借家人の保護になりますが、紛争を回避できるという点では、賃貸人の保護にもつながります。
そして、借家人賠償特約によって補償される保険事故の範囲は、火災、ガス爆発などによる破裂・爆発、漏れ水による水濡れに限定される場合が大半です。
受託物賠償特約
「受託物賠償特約」とは、他人から賃貸借または使用貸借した物を破壊・汚損してしまった場合に発生する損害賠償責任について補償がなされるものをいいます。
例えば、他人から借りていた書籍やBlu-rayが火災によって破壊され、もしくは盗難によって紛失してしまった場合には、受託物賠償特約に合意している場合に限り、補償の対象となります。
受託物賠償特約に合意していない場合には、補償の対象になりません。一般的な保険会社の掲げる家財の定義(「被保険者または被保険者と生計をともにする親族が所有するものであって、かつ、保険証記載の建物内に収容されているもの、および物置や車庫その他の付属建物に収容されているもの、宅配ボックス等又は宅配物をいう」)のうち、他人から借りた物は「被保険者または被保険者と生計をともにする親族が所有するものであって」という部分にあたらないからです。
まとめ
以上に見てきたように、家財保険の保険金を受け取ることができるか否かについては、損害を生じた動産が「家財」に含まれるかということ、および家財保険の補償範囲が問題となります。
保険会社によって、「家財」に含まれる範囲に差異がありますので、注意が必要です。
また、損害の発生と火災や水災等に因果関係があるかも問題となる可能性がありますので、当法律事務所にご相談を頂ければと思います。
保険金の不払いに
お悩みの方へ
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ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。
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