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生命保険契約とは?基本と仕組みを解説!

給付金の種類、補償内容 生命保険
投稿日:2023年08月07日 | 
最終更新日:2023年08月07日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
生命保険というのはどういうものでしょうか、詳しく教えてください。
Answer
生命保険は、人の生存や死亡に関して一定金額の保険金が支払われる保険です。取り扱うことができるのは、生命保険会社のみです。
生命保険の対象となるのは「人」です。例えば、病気で人が亡くなった時に、一定額の保険金が支払われるのは生命保険契約によるものです。
生命保険契約の当事者は、保険契約者と保険者(保険会社)ですが、関係者として保険の対象となる被保険者や保険金受取人などがいます。保険契約者と被保険者が同一である自己の生命の保険と、保険契約者と被保険者が別人物である他人の生命の保険があり、他人の生命の保険のうち、被保険者の死亡を保険事故とする契約を締結する場合、被保険者の同意が必要です。
また、他に保険事故、保険期間、保険金額及び保険料を要素として生命保険契約は成り立っています。

これから生命保険について、詳しく説明していきます。

生命保険契約の概要

生命保険とは、人の生存または死亡に関して、定められた金額の保険給付を約し、保険料を収受する保険をいい、これに関する契約を生命保険契約といいます(保険法2条8号、保険業法3条4項1号)。

生命保険は、人の生存または死亡を保障しています。死亡してしまった場合に備える死亡保険や、老後を生きていくために備える個人年金保険など、すべての対象は人の生死に関わるものです。
保険給付については、人の生死に関して具体的な金銭的損害額を算定することは不可能であるため、原則として、契約時に定めた一定の額の保険給付を受け取ることができます。例えば、死亡保険の場合、死亡時の保険給付を3000万円と定めれば、死亡した場合に3000万円が支払われます。

そして、生命保険を取扱うことができるのは、生命保険会社のみです。保険会社の免許には生命保険業免許および損害保険業免許の2種類がありますが、同一の者が双方の免許を受けることができない(生損保兼業禁止の原則)とされているためです(保険業法3条2項及び3項)。

一般に、生命保険の場合は長期間にわたる契約が多いのに対し、損害保険は短期の契約が多いことから、生命保険と損害保険を引き受けることによるリスクが異なっており、性質の異なるリスクを遮断する趣旨の異なるリスクを遮断する趣旨と言われています。

~保険金と保険給付~
保険法では、生命保険契約について「保険給付」という用語が使われており一定額の金銭の支払を意味します。従来、保険金の支払と言われてきたものと同じ意味で使われています。

生命保険契約の要素

生命保険契約は、(1)当事者及び関係者(2)保険事故(3)保険期間(4)保険金額並びに(5)保険料を要素として成り立っています。以下、各要素を具体的にみていきましょう。

当事者及び関係者

生命保険契約の当事者及び関係者は、以下の通りです。

当事者保険契約者保険料(保険者が負うリスクの対価)を支払う義務を負う当事者。
保険者保険契約者に対し被保険者の生死に関し保険給付を行うべき義務を負う者。
(通常、保険会社を指します。)
関係者被保険者その者の生存または死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者。
例えば、Aさんが死亡した場合に保険金が支払われる死亡保険の場合、被保険者はAさんです。
保険金受取人保険給付を受ける者として生命保険契約で定めるもので、保険事故が発生したときに保険金の支払を受ける者。

この、保険契約者と被保険者が同一人の契約は「自己の生命の保険契約」(「自己のためにする生命保険契約」ともいいます。)、別人の場合は「他人の生命の保険契約」(「他人のためにする生命保険契約」ともいいます。)といいます。

保険事故

保険契約は、特定の事実の発生を条件として、保険者(保険会社)が保険給付を行うことを約束するものですが、その条件となる特定の事実保険事故といいます。

生命保険契約における保険事故は、被保険者の「一定時期における生存」または「死亡」であり、その両方または一方が保険事故となります。

具体的には、一定時期における生存を保険事故とする保険が生存保険(年金保険や学資保険など)、被保険者の死亡を保険事故とする保険が死亡保険(終身保険など)、生存と死亡の双方を保険事故とする生死混合保険(養老保険など)があります。

保険期間

保険期間とは、死亡保険においては、その期間内に被保険者が死亡したときに保険者が保険金支払義務を負う期間をいいます。
たとえば、30歳から50歳までなどという一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とするもの定期死亡保険または定期保険といいます。この場合の保険期間は30歳から50歳までです。
他方、時期の限定なく、被保険者の死亡を保険事故とするもの終身保険といいます。この場合の保険期間は被保険者が死亡するまで存続します。ある意味では保険期間の定めのない保険とも言えますが、保険事故が発生することは確実であり、その発生時期が不確定であるというだけなのです。なお、保険料払込期間一定期間(例えば、65歳までなど)に限定されることが多いです。
また、生存保険の場合、一定期間満了時(満期)に被保険者が生存しているときに保険金が支払われますが、この満期までの期間も保険期間といいます。

保険金額

生命保険契約を締結した場合、保険事故が発生すると、保険者(保険会社)は一定の金額を支払う義務を負います。
損害保険契約の場合は保険事故により生じた損害を填補する保険金額が支払われますが、生命保険契約は、人の生死に関して具体的な金銭的損害額を算定することは不可能であるため、原則として、契約時に定めた一定の額の保険給付を受け取ることができるとされています。
このように、人の生死について具体的な金銭的損害を算定することが不可能であることから、生命保険契約においては、どのくらいの保険金額を適正とすべきかについて法律上の既定はありません。しかし、保険契約者の経済的状況などからみると過度に多額の生命保険をかけ、生命保険を悪用・濫用する事例もあります。そのようなことを防止するため、公序良俗に反するとして契約が無効となる場合や、保険法上の重大事由による解除対象とされる場合もあります。

~変額生命保険契約~
生命保険契約の保険金額は一定の金額であると説明してきましたが、保険事故発生に際して支払われる保険金額が、保険者による運用実績に応じて変動する変額生命保険契約というものもあります。この変額生命保険契約の保険金額は、変動するため、一定の金額といはいえないようにも思われます。しかし、支払われる保険金額の算定基準が、具体的な損害の額とは無関係に、契約上客観的に定められていれば、一定の金額であると考えられます。そのため、一定の金額の保険給付という、生命保険契約の要件を満たすと解されます。

保険料

保険契約者は、保険者(保険会社)に対して、保険料を支払う義務を負います。
保険料は、保険事故の発生の可能性に応じた対価であり、契約により定めることが必要です。
生命保険契約は、長期間にわたる契約がほとんどです。そのため、複数の期間を区切っていることが多いです。たとえば、保険期間が20年であっても、1年単位で保険料を支払う契約であれば、1年が保険料期間です。
また、保険料を払い込む期間と保険期間も異なることが多いです。例えば、終身保険の場合、保険期間は被保険者が死亡するまで続きますが、保険料を払い込む期間は60歳までという場合もあります。

他人の生命の保険

同意が必要なケース

他人の生命の保険契約のうち、被保険者の死亡を保険事故とする契約を締結する場合、被保険者の同意が必要とされています(保険法38条)。被保険者の同意がない場合には、その生命保険契約は無効です。
このような被保険者の死亡を保険事故とする契約を無制限に認めてしまうと、保険金取得目的の殺人を誘発する危険があり、不労の利得手段に悪用される恐れもあります。また、実質的に他人の生死を賭博対象とすることができてしまうなど、人格権を侵害してしまうこともあります。そのため、被保険者の同意を必要としているのです。
なお、契約を締結する場合以外にも、次のような場合、被保険者の同意が必要となります(保険法45条、同47条)。

  • 保険金受取人が保険事故発生前に死亡保険金請求権を他人に譲渡する場合
  • 死亡保険金請求権に質権を設定する場合
  • 保険金受取人を変更する場合
  • 保険契約者と被保険者が同一人の保険(自己の生命の保険契約)であっても、保険金受取人が第三者である場合で、保険受取人が死亡保険金請求権を他人に譲渡または質権設定をする場合

同意の法的性質

同意は、被保険者となるべき者が、保険契約について異議がないことを表明する意思の通知です。準法律行為であり、法律行為に関する民法の一般原則が類推適用されます。

同意は単独行為であると考えられるため、かつて、被保険者が同意した後、何らかの事情が生じた場合に同意が撤回できるのか議論がありました。そこで、保険法は、同意後の被保険者の保護と事情の変化に配慮して、死亡保険契約の被保険者が保険契約者に対して死亡保険契約を解除するように請求することができる権利を定めました(保険法58条)。

同意の方式

同意の方式や同意を得る時期について、保険法上はとくに決まりはありませんが、保険者(保険会社)または保険契約者に対して行う必要があります。

通常は、保険契約申込書に被保険者が同意する旨の記載が印刷されており、被保険者が署名・記名捺印することで同意する方式が採られています。さらに、保険契約成立後に保険契約者が保険受取人を変更する場合などでは、保険会社の担当者などが被保険者に面接するなどして同意を確認しています。

~団体保険における同意~
企業の福利厚生のためなどに利用されることが多い団体生命保険契約は、団体自体が保険契約者となり、従業員など団体の構成員が被保険者となる他人の生命の保険契約です。そのため、死亡保険であれば被保険者である従業員の同意が必要です。
この同意取得の方法について、金融庁の「保険会社向け総合的な監督指針」Ⅳ-1-17によれば、原則として被保険者本人による同意の記録を確認する必要がありますが、これが困難な場合、一例として被保険者となる者全員に保険契約の内容を通知した旨の確認の記録と被保険者になることに同意しなかった者の名簿の提出などによって代替することが求められています。

生命保険の種類

生命保険契約には様々なものがありますが、保険事故、保険期間、保険金支払方法、被保険者の数などによって分類することができます。分類することによって、どのような生命保険契約があるのか概要を知ることができますので、ここで説明していきます。

なお、保険期間による分類は「2 生命保険契約の要素 2.3 保険期間」で説明しているとおりなので、そちらをご参照ください。

保険事故による分類

生存保険

この一定時期における生存を保険事故とする保険が生存保険です。例えば、養老保険の満期に支払われる保険金や年金保険がこれに該当します。

死亡保険

被保険者の死亡を保険事故とする保険が死亡保険です。例えば、終身保険や、養老保険の死亡時に支払われる保険金がこれに該当します。

生死混合保険

被保険者の生存と死亡の双方を保険事故とする保険が生死混合保険です。

養老保険契約が生死混合保険契約の典型例です。

養老保険契約は、被保険者が保険期間満了時までに生存していれば満期保険金が支払われ、保険期間内に死亡すれば死亡保険金が支払われるという、生存保険契約と死亡保険契約が一つになったものです。

ニーズに合わせた特約

生命保険は、その主な取り決め(主契約)以外に、特約が定められ、主契約の内容を変更・補充・拡大・多様化させているものも多いです。
特約の一例として、

  • 三大疾病特約:がん等の三大疾病により所定の状態となった場合に保険金を受け取ることができる特約等
  • 収入保障特約:被保険者が高度障害状態になった場合に年金形式で保険金を受け取ることができる特約等
  • 入院給付特約:病気で入院したときに入院給付金を受け取ることができる特約等

があります。
これらの特約は、人の生死に関し保険金を支払うものではないため、生命保険契約ではなく、第三分野の保険の保障内容ですが、主契約の特約として付することができます。

保険金支払方法による分類

保険金支払い方法によって生命保険契約を分類すると、一時金(資金)保険契約と年金保険契約の2種類に分類することができます。
一時金保険契約は、一度に保険金の全額を支払う契約です。これは、生命保険契約の通常の支払い形態と言えます。
他方、年金保険契約は、年金として保険金を順次支払う契約です。一度、年金支払いが開始すると、原則としてその契約を解約することはできません。
年金保険契約には、被保険者の生存中は年金の支払いが続く終身年金保険契約一定期間のみ年金が支払われる定期年金保険契約があります。

一時金保険契約:一度に保険金の全額を支払う契約

年金保険契約 :年金として保険金を順次支払う契約
    終身保険契約:被保険者の生存中、年金が支払われる契約
    定期年金保険契約:一定期間、年金が支払われる契約

定期年金保険契約の中でも確定年金保険の場合、年金支払期間中に被保険者が死亡すると、残存保険期間分の未払い年金の原資が遺族に支払われることになります。

被保険者数による分類

生命保険契約は、一契約あたりの被保険者の数によって、以下の表のように、単生保険契約連生保険契約団体保険契約の3種類に分類できます。

種類一契約あたりの被保険者数特徴
単生保険契約  一人生命保険契約の通常の形態です。
連生保険契約  複数人夫婦や家族などをまとめて被保険者にする場合などで利用されます。
団体保険契約  一定の団体の構成員の全部または一部企業の従業員の福利厚生として利用されることが多いです。また、ローン債務の支払担保のための団体信用生命保険契約も多く利用されています。

まとめ

このように、生命保険といっても、様々な種類があります。誰を対象とする保険なのか、保険期間はいつまでか保険給付はどのような形で、どのような条件でなされるのか特約はどうなっているのかなど、重要なポイントをしっかりと確認する必要があります。

自分のニーズに合致する条件の保険をしっかりと選ぶことができるよう、生命保険の様々な態様を確認しておきましょう。

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