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給付金の種類について解説 ~「個人賠償責任保険」とは?~

給付金の種類、補償内容 生命保険 火災保険 地震保険
投稿日:2022年02月27日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
この度、給排水管事故が発生し、下の階に漏水してしまいました。
下の階の部屋から賠償金を請求されましたが、この費用を火災保険で対応できないでしょうか?
Answer
質問者様のように、給排水管事故が発生し、下の階に漏水してしまい、下の階の住民から賠償金を請求されたなどの場合に金銭的な補償をしてくれるのが、個人賠償責任保険です。
個人賠償責任保険とは、日常生活において第三者にケガをさせたり、第三者のものを壊したりした場合に補償をする保険です。

「賠償責任を負う事故」というと重大な事故のようにも思えますが、ケガをさせてしまった相手への治療費や、壊したものの修理費、慰謝料など、幅広いケースが補償の対象になります。

個人賠償責任保険は、一人が加入するとその家族も保険の対象となる商品が多いです。
最近では被保険者が「責任無能力者」(自己の行為の責任を弁識する能力が無い者)である場合、その親権者や法定監督義務者などを補償の対象とする保険会社もあります。

また、最近では自治体が「自転車保険」への加入を義務付けるケースもありますが、自治体が加入を求めている自転車保険は、事故相手への賠償に備えるための保険です。そのため、個人賠償責任保険に加入すれば、この自転車保険加入義務にも対応することができます。

個人賠償責任保険は、火災保険で特約として加入するほかにも、自動車保険や傷害保険でも特約として加入できたり、クレジットカードに付帯していたりします。

そのため、個人賠償責任保険に重複して加入しているケースもよくありますが、たとえ重複して加入していても、保険金は賠償額までしか支払われないので、注意が必要です。

はじめに 個人賠償責任保険とは

個人賠償責任保険とは、日常生活において第三者にケガをさせたり、第三者のものを壊したりした場合に補償をする保険です。

質問者様のように、給排水管事故が発生し、下の階に漏水してしまい、下の階の住民から賠償金を請求されたなどの場合に金銭的な補償をしてくれるのが、個人賠償責任保険です。
つまり、「個人」が人にケガをさせてしまったとか、物を壊してしまったなど法律上で損害を賠償しなければならない事故を起こしてしまった場合に備えるときの保険が、個人賠償責任保険なのです。

以前は単独で契約することもできましたが、現在は「特約」として火災保険や傷害保険、自動車保険、最近では自転車保険などにつけて契約するものがほとんどになっています。

個人賠償責任保険のポイント

どんなときに補償されるのか

個人賠償責任保険は、どんな場合に補償がされるのでしょうか?
以下で、詳しく見てみましょう

補償されるケース

補償がされるケースとして、以下のような場合が挙げられます。

  • 洗濯機のホースが外れて、マンションの下の階の部屋を水浸しにしてしまった場合
  • 自転車で走行中、通行人にぶつかりケガをさせてしまった場合
  • 飼い犬の散歩中、犬が他人にかみつきケガをさせてしまった場合
  • 子どもが野球をしていて、他人の家の窓ガラスを割ってしまった場合
  • 子どもがいたずらで他人の車を傷つけてしまった場合
  • 住宅の2階からうっかり物を落とし、通行人にケガをさせてしまった場合
  • 買い物中にお店の商品のグラスを落として壊してしまった場合
  • ゴルフのプレー中、誤ってボールを他人にぶつけてケガをさせてしまった場合

「賠償責任を負う事故」というと重大な事故のようにも思えますが、意外と身近にありそうな事故も補償の対象になります。
ケガをさせてしまった相手への治療費や壊したものの修理費、慰謝料などが補償の対象になります。

補償されないケース

補償がされないケースとして、以下のような場合が挙げられます。

  • 仕事中に事故を起こした場合
  • 故意によりケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合
  • 車両(船舶・航空機等を含む)による事故の場合
  • 戦争やテロ、地震や噴火、津波などの大規模な災害による損害
  • 家族にケガをさせたり、家族のものを壊したりした場合
  • 心神喪失が原因で他人にケガをさせたり、物を壊してしまったりした場合
  • プライバシーの侵害など、形のないもの

なお、補償の範囲は、商品に異なります。ご自身が加入している保険の内容をしっかり確認してみましょう。

質問者様の場合

質問者様の場合は、給排水管事故が発生して下の階に漏水してしまったとのことですので、個人賠償責任保険がカバーする典型的なケースとなります。

ただし、給排水管を、質問者様が「わざと」壊したという場合は、個人賠償責任保険の補償範囲とはならないので、注意しましょう。

被保険者の範囲について

保険の対象となる人のことを、被保険者といいます。
個人賠償責任保険は、一人が加入するとその家族も保険の対象となる商品が多いです。

一般的な個人賠償責任保険では、以下の人が被保険者となります。

[補償の対象になる人の範囲]

  • 被保険者本人
  • 被保険者本人の配偶者
  • 被保険者本人または配偶者と生計を共にする同居の親族
  • 被保険者本人または配偶者と生計を共にする別居の未婚の子

つまり、世帯主を被保険者に設定すれば、たとえば、同居の父母や子ども、地方の大学進学で一人暮らしをしている未婚の子まで対象になります。
世帯主が単身赴任になった場合でも「配偶者と生計を共にする同居の親族」や「被保険者本人と生計を共にする別居の未婚の子」という条件があることが多く、安心です。
ただし、保険商品により「親族」の範囲は異なるので、よく確認しておきましょう。

最近では被保険者が「責任無能力者」である場合、その親権者や法定監督義務者などを補償の対象とする保険会社も出てきました。(なお、「責任無能力者」は補償の対象としない、と明記する保険会社もあります。)

※ここにいう責任無能力者とは、民法上不法行為に関する責任を負わない者をいいます。
精神上の障害によって行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある者が、責任無能力者にあたります。

認知症患者の起こした事故と家族の賠償責任について争われたJR東海事件(最高裁平成28年3月1日第三小法廷判決)がきっかけとなり、このような規定が盛り込まれた経緯があります。

電車自体に損傷はなくても、電車に遅延を生じさせた場合に鉄道会社から請求される賠償金に対応するための補償を出している保険会社もあるので、ご家族を介護している人などは、規約を丁寧に検討する必要があります。

なお、個人賠償責任保険の被保険者に含まれるかどうかは、事故があった時点で判断されます。

自動車保険加入義務にも対応可能

最近では自治体が「自転車保険」への加入を義務付けるというニュースも聞かれるようになってきました。
保険として自治体が求めているのは「他人を死傷させてしまった時の損害の補てん」です。

これは自転車の事故により、高額の賠償が発生する事例がでてくるようになったためです。

高額賠償が発生した事故の事例としては、事故当時小学5年生の男児が女性に衝突し、女性は頭がい骨骨折、意識不明の重体となり、男児の保護者に対して約9,500万円の賠償が命じられた裁判例(神戸地裁平成25年7月4日)があります。

自治体が加入を求めている自転車保険は事故相手への賠償に備えるものです。
そのため、個人賠償責任保険で対応することができます。

つまり、自分自身のケガを補償しないものの、「必要最低限の補償=他人への損害の補填」ということであれば、個人賠償責任保険に加入すれば自治体の要求する加入義務に、しっかりと対応することになるのです。

もし、自分が住んでいる自治体で自転車保険の加入義務ができた場合は、まずは個人賠償責任保険に入っていないか確認してみましょう。

個人賠償責任保険の注意点

重複加入に注意!

個人賠償責任保険は火災保険で特約として加入するほかにも、自動車保険や傷害保険でも特約として加入できたり、クレジットカードに付帯していたりします。

個人賠償責任保険は火災保険で特約として加入するほかにも、自動車保険や傷害保険でも特約として加入できたり、クレジットカードに付帯していたりします。

そのため、個人賠償責任保険に重複して加入しているケースは、よくあります。
ですが、個人賠償責任保険に重複して加入していても、保険金は賠償額までしか支払われないので、注意が必要です。

例えば、保険金額が1億円の個人賠償責任保険を2つ加入していた場合、賠償額が5,000万円だと2つの保険会社から2,500万円ずつ支払われることとなります。

この場合、賠償額が1億円を超える場合は重複して加入する意味がありますが、そうでない場合は倍もらえるわけではないので注意しましょう。

補償が消えてしまわないよう注意!

個人賠償責任保険をつけていたカードを解約したり、自動車を手放すので保険を解約したりすると、オプションで付けていた個人賠償責任保険も一緒に解約されてしまう場合があり注意が必要です。
無保険の期間がないように、新たな補償をつけてから解約するようにしましょう。

さらに、個人賠償責任保険は、火災保険の特約としてセットすることができますので、他の保険で個人賠償責任保険を契約していない人は、加入の検討をしてみましょう。

無制限の補償しているものに加入していれば、それ以外の補償は無駄になるので、無制限の保険だけ残して、あとは解約すれば保険料の節約になります。

まとめ

個人賠償責任保険は、日常の様々なトラブルで賠償責任を負ってしまった場合に補償を受けることができます。
特にマンションなどの集合住宅の場合は、ご質問者様のように、漏水で他人の部屋に損害を与えてしまう場合があるので、ぜひ加入を検討しましょう。

また、自転車保険の加入義務がある場合にも、個人賠償責任保険で対応することができます。

なお、火災保険の他にも自動車保険等で特約として加入できるので、補償の重複には注意するようにしましょう。

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