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地震保険の家財の保険金査定の方法は?4つの損害区分の決め方もわかりやすく解説

給付金の種類、補償内容 地震保険
投稿日:2022年03月11日 | 
最終更新日:2023年07月03日

「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。

Q
地震でダイニングセットが損壊しました。この場合、地震保険金が支払われますか?
Answer
地震保険の対象は家財も含まれています。ただし、家財の場合には決められた割合に達していない場合には保険金の支払い対象になりません。ダイニングセットだけが地震で壊れた場合には、一部損の5%に満たないため地震保険の支払いはされません。

地震保険の補償内容

地震保険は、地震・噴火・津波を直接または間接の原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。

そのため補償内容は、地震や、火山の噴火、津波などによって起こった火災、損壊、埋没や流出などにより家屋や家財が損傷した場合に補償を行うものになります。

また、地震保険の特徴として火災保険とセットで契約されるものであるという性質があります。

そのため、補償額は火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で決まる仕組みになっています。この他にも地震保険には火災保険と異なる点がいくつかあります。そこで、以下では地震保険の補償内容などについて詳しく解説します。

地震保険の補償内容とは

地震保険の補償は、居住の用に供する建物および家財(生活用動産)が対象とされています。つまり、家やその中にある家具などが対象となることになります。

地震保険の補償内容で最大の特徴となるのは、地震保険の補償は火災保険と異なり修理などに要した費用を補填するのではなく、あらかじめ定められた割合での保険金が支払われる点です。

また、どのような割合の保険金となるかという点については、4つの損害の区分のいずれに該当するかによって決まる仕組みとなっています。

そのため、地震保険の保険金を考えるうえでは発生している損害が損害区分のどれに該当するのかという点が最も重要となります。

建物とは

地震保険における建物とは、居住用建物(住居のみに使用される建物および併用住宅)と定義されています。

この定義でポイントとなるのは居住用の建物であるという点です。店舗や事務所のみに使用されている建物については居住用でないため地震保険の対象になりません。

また、住居の建物の一部でも、門、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみに損害があった場合などのように、建物の主要構造部に該当しない部分のみの損害は保険金の対象となりません。

家財とは

地震保険における家財とは、居住用建物に収容されている家財(生活用動産)と定義されています。つまり、住宅の中にある家具や家電製品などがここでいう家財に該当します。

家財については30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車等といったものについては、地震保険の対象から外れています。

こうしたものについては仮にセット契約する火災保険の対象になっている場合でも地震保険の対象とはならないため注意が必要です。

地震保険の対象となる損害の例

地震保険の対象となる損害のうち家財を対象とするものの主な例には以下のようなものがあります。

  • 地震によって火災が発生し、家の中にあったテレビやパソコン、冷蔵庫などの家電製品が全焼してしまった場合
  • 地震が原因となって地盤が崩れ、家が倒壊し、家具や家電製品が家に圧迫されて壊れてしまった場合
  • 地震により津波が発生し、津波に飲み込まれて家と一緒にテレビや冷蔵庫、タンスなどの家具が流されてしまった場合
  • 火山が噴火し火山から流れてきた土砂などにより家と一緒に家の中にある家財道具が一式埋まってしまった場合

この他にも様々なケースが考えられますが、典型的な例としては以上のような例が考えられます。

また、地震などが発生し隣家から火災が起きた結果延焼したようなケースでも保険の対象となる損害となります。

地震保険の対象とならない損害の例

これに対して以下のような損害は地震保険の対象とはなりません。

  • 地震が起きて避難している間に家具や家電の盗難にあった場合
  • 地震が発生した翌日から10日経過後に家が倒壊し、一緒に中にあった家電製品などが破損してしまった場合
  • 地震により発生した津波によって自動車が流されてしまった場合
  • 地震により火事が発生し、家の中に飾っていた高価な掛け軸が焼失した場合

以上のような損害はいずれも地震保険では補償される対象にはなりません。

この他にも、地震が原因となって生じた家具が損壊であっても、後述するように一定の割合に達していない損壊の場合には家財の場合地震保険の保険金支払いの対象とはなりません。

地震保険の期間

地震保険は、保険期間が原則として5年までの契約期間となっています。

また、5年以内の具体的などういった期間設定になるかという点についても、火災保険とセットで契約するという地震保険の性質上、火災保険の保険期間によって異なる点が特徴的です。

火災保険の保険期間が10年間である場合には、地震保険が5年間で期間を満了した場合には1年等の都度更新を行うか火災保険の契約期間に合わせて契約期間を延ばす必要があります。

なお、2年以上継続する場合には、あらかじめ保険料を一括で支払うことができる仕組みになっており、一括で支払う場合にはそれぞれの期間に応じた割合で割引がされることになっています。そのため、一括で支払う方が基本的にお得です。

地震保険で支払われる保険金額の決まり方

地震保険の保険金額はどのようにして決まるのでしょうか。先ほど少しご説明した通り、地震保険の保険金額の特徴として保険対象の損壊の程度に応じてあらかじめ定められた割合で保険金額が決まる仕組みになっています。

そのため、損害の程度が決められた程度に至っていないと認定された場合には、そもそも保険金が支払われません。

特に家財の場合には保険対象が壊れている場合でも一定の割合に満たない損害については、保険対象の損害に該当せず保険金が支払われません。

では、具体的にはどのような算定方法などで地震保険の金額は決められているのでしょうか。
以下では、その内容を詳しく解説していきます。

支払われる金額は「地震保険金額」と「損害の区分」で決まる

地震保険は損害の区分に応じて保険金の割合が変わる仕組みとなっており、損害の程度は全損、大半損、小半損、一部損の4種類に分類されています。

最も程度が重い全損では地震保険金額の100%が支払われ、大半損では地震保険金額の60%、小半損では地震保険金額の30%、一部損では地震保険金額の5%が支払われることとなります。

地震保険金額は事前に設定する

では、保険金額を計算するうえで重要となる地震保険金額はどのように決定されるのでしょうか。

これについては、地震保険金額については、地震保険が火災保険とセットで契約されるという性質から火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で設定されることとなっています。

したがって、契約時にあらかじめ定められるものとなっています。

この点は地震保険の大きな特徴の一つとなっており、地震保険は火災保険と異なり、発生した損害から回復するために必要になった費用、例えば修理費用などを補填するのではなく、決められた割合に応じて保険金を支払うという仕組みになっています。

そのため、保険金額はあらかじめ決められてしまうということになっているのです。

4つの「損害の区分」に応じて支払われる保険金が決まる

地震保険は損害の程度に応じて保険金の割合が変わる仕組みとなっており、損害の程度は全損、大半損、小半損、一部損の4種類に分類されています。

最も程度が重い全損では保険金額の100%が支払われ、大半損では保険金額の60%、小半損では保険金額の30%、一部損では保険金額の5%が支払われることとなります。

どの損害の区分に該当するかにあたっては、家財と建物でそれぞれ基準が異なっており、損害の区分と支払われる保険金の関係は以下の表のとおりとなります。

[建物]

損害の程度認定の基準保険金額
全損「建物の時価の50%以上」または
「建物の延べ面積の70%以上」の損害
保険金額の100%
大半損「建物の時価の40%以上50%未満」または
「建物の延べ面積の50%以上70%未満」の損害
保険金額の60%
小半損「建物の時価の20%以上40%未満」または
「建物の延べ面積の20%以上50%未満」の損害
保険金額の30%
一部損「建物の時価の3%以上20%未満」または
「建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水を受け、
建物の損害が全損、大半損、小半損に至らない場合」の損害
保険金額の5%

[家財]

損害の程度認定の基準保険金額
全損家財の損害額が家財の時価の80%以上保険金額の100%
大半損家財の損害額が家財の時価の60%以上80%未満保険金額の60%
小半損家財の損害額が家財の時価の30%以上60%未満保険金額の30%
一部損家財の損害額が家財の時価の10%以上30%未満保険金額の5%

家財の「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の判断基準は?

前述の表のとおり、家財の場合「全損」「大半損」「小半損」「一部損」といった各損害区分に該当するか否かは家財の損害額が家財の時価の何%に該当するかにより判断されます。

しかし、この割合の計算は単純に壊れた家財の時価を計算するといった計算方法ではなく家財の分類ごとに構成割合に応じて家財の損害を品目ごとに算定し、合計した割合が認定の基準を満たしているときに各損害の程度になることになっています。

家財を5分類して損害割合を算出する

家財は以下の5つに分類され、品目ごとに損害を算定されます。

  1. 1食器陶器類:食器、陶器置物、食料品、調理器具等
  2. 2電気器具類:冷蔵庫・洗濯機・パソコン・TV・エアコン等
  3. 3家具類:食器棚・タンス・机・椅子・ソファー等
  4. 4その他身の回り品:カメラ・靴・鞄・スポーツ用品・レジャー用品等
  5. 5衣類寝具類:衣類・寝具等

そして、これらの5つの分類にはそれぞれ構成割合が設定されており、まとめると以下の表のようになります。

分類品目構成割合(1品目)
食器陶器類食器、陶器置物、食料品、調理器具等1%
電気器具類冷蔵庫・洗濯機・パソコン・TV・エアコン等2.5%
家具類食器棚・タンス・机・椅子・ソファー等4%
その他身の回り品カメラ・靴・鞄・スポーツ用品・レジャー用品等2.5%
衣類寝具類衣類・寝具等15%

家財の損害割合を算出するにあたってポイントとなるのは品目ごとに計算するという点です。

例えば、食器が10枚壊れても1枚壊れても品目としては食器となるため、構成割合はどちらの場合も1%です。10枚壊れたから10%という計算にはならないため注意しましょう。

具体例

具体的な例で見てみましょう。例えば、地震によって食器が5枚、テレビが1台、パソコンが2台、ソファーが1脚、ベッドが1つ壊れてしまった場合を考えてみましょう。

この場合、食器5枚(1%)+テレビ1台(2.5%)+パソコン2台(2.5%)+ソファー1脚(4%)+ベッド1つ(15%)となり、合計25%となります。

この場合には30%未満のため損害の区分は一部損となり、支払われる保険金額は地震保険の保険金額の5%となります。

保険金支払までの対応の流れ

主に家財について地震保険の保険対象や保険金額などについて解説してきましたが、ここからは実際に保険金を請求する際の手続きを解説します。

保険金請求にあたって注意が必要な点として、地震保険の保険金には請求期間が3年間に限定されている点です。

大規模な地震が起きて、落ち着くまでに時間がかかってしまうといったことも考えられますが、地震保険の請求は可能な限り早く行うようにしましょう。

①保険会社への連絡

まずは加入している保険会社へ連絡を行います。これは電話やWebなどで受け付けています。加入している保険会社のホームページなどで受け付け方法を確認すると良いでしょう。

一般的には、契約者の氏名、証券番号、事故の発生日時、発生場所や状況、連絡先などを聞かれることが多いのであらかじめ準備しておきましょう。

また地震などで保険証書や契約書類が無くなってしまう場合も多いため、証券番号が分からない場合には、保険会社に合わせてこの点も確認しておきましょう。

②訪問による被害状況の確認

保険会社から鑑定人が派遣され、実際の被害状況を確認することになります。鑑定人というのは保険会社から委託を受けた鑑定会社から派遣される人間です。

この鑑定人が被害の状況を確認し、損壊の程度を認定していくことになります。

また、家財について保険金請求を行う場合には、あらかじめ対象となると思われる家財のリストや破損の状況について携帯電話などで写真を撮っておくと良いでしょう。

場合によっては訪問による被害状況の確認に変えてこうした写真などの提出で代替できる場合があります。

③保険金請求書類の確認・保険金の算定

現地の調査等が完了すると保険会社は鑑定会社から提出された調査結果に基づき、損壊の程度に応じた保険金額を算定し、契約者に提示します。契約者はこの内容を確認し、了承すれば支払い手続きへ進みます。

こうした調査結果に納得がいかない場合には日本損害保険協会にそんぽADRセンターが設置されており、こうした問題に取り組んでいるため、相談を行うことも検討されるのも一つの方法でしょう。

④保険金のお支払い

契約者が保険金の算定額に納得し、了承が得られたときは、指定された口座に保険金が支払われ、保険会社から通知が届きます。これで保険金の請求手続きは完了です。

まとめ

火災保険と比較して保険金額の算定方法や仕組みに特徴のある地震保険ですが、家財の場合にはさらに特徴的な保険金額の算定がされます。

地震が起きた場合には家具や家電製品などが破損してしまうケースは非常に多いため、地震保険の中でも家財については請求を行う機会のあるかたは多くいらっしゃるでしょう。

本記事を活用して家財の地震保険の保険金額の見込みや目途をつけ、適切な保険金額を受け取りましょう。

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