columns
弁護士コラム
火災保険の二重加入、保険金はそれぞれの契約から支払われるのか?
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
- Q
-
住宅ローンを組んだ際に契約した火災保険の存在を忘れていたため、このたび、二重に火災保険に加入してしまっていたことに気づきました。
このままにしておいてよいものでしょうか?
-
同じ建物や家財に2つ以上の火災保険をかけて、複数加入をする場合がみられます。
これを、重複保険といいます。
損害保険は、発生した損害に対して支払われる保険です。災害や事故などで発生した損失を補填するために支払われる保険であるため、損失以上の補償はされません。
つまり、損害保険は、たとえいくつ加入していても、損害額を超える保険金を受け取ることができないように作られているのです。
たしかに重複保険が有効な場合もあります。ですが、重複保険には、二重には保険金がもらえないにもかかわらず保険料は2つの保険に対して生じること、請求手続きが煩雑で手間となるなどのデメリットが多いです。
もし現在、火災保険に複数加入している場合には、ご自身の保険の補償内容を確認して、1社に絞ることをお勧めします。
目次
はじめに 〜火災保険の複数加入について~
同じ建物や家財に2つ以上の火災保険をかけて、複数加入をする場合がみられます。
これを、重複保険といいます。
重複保険の要件として、以下の4つを挙げることができます。
- 1保険の目的物、被保険者被保険利益を同一とする数個の保険契約が存在すること
- 2数個の保険契約が保険事故を同じくすること
- 3数個の保険契約で保険期間を共通にする部分があること
- 4数個の保険契約の保険金額の合計が保険価額(てん補損害額)を超過すること
例えば、火災保険と火災共済のどちらにも加入している場合は、重複保険にあたります。
※ 火災保険は保険会社が取り扱う商品であり、火災共済は共済事業を行う非営利団体(生活協同組合等)が取り扱う商品です。
そもそも、重複保険そのものが、禁止されているという訳ではありません。
ただし、火災保険において、他の火災保険に入っているか否かという点は、告知事項となっています。そのため、保険会社に複数の火災保険に入っていることを伝えていないと、告知義務違反として契約解除される場合もあるので、注意が必要です。
火災保険は複数加入するべき?
保険金は別々に出るのか?
損害保険は、発生した損害に対して支払われる保険です。災害や事故などで発生した損失を補填するために支払われる保険であるため、損失以上の補償はされません。
つまり、火災保険の保険金の支払額は、損害が生じたときの建物の保険価額が限度になります。
火災保険は、財物に生じた実際の損害額に対し保険金を支払う保険ですので、損害額を超える保険金を取得するような不当利得を得る行為、いわゆる「焼け太り」は認められていません。
ここで、賃貸向け火災保険を例に挙げて説明します。
賃貸向け火災保険の内容は、自分で任意に保険金額を設定できる家財補償と、賠償責任補償などがセットで補償を組み合わせたものです。
家財補償には「家財の標準的な評価額」というものがあり、世帯人数、世帯主の年齢、部屋の専有面積などを元として計算がされ、評価額にあった保険金額で契約するのが一般的となっています。
例えば、「標準的な評価額が700万円」の家財補償について考えてみましょう。 この評価額に対して、家財補償が700万円の火災保険を2つ(合計1400万円分)加入したとしても、受け取れる保険金の上限は700万円となります。つまり、2つ分受け取れるわけでもなく、全くの無駄になるということです。 |
つまり、損害保険は、たとえいくつ加入していても、損害額を超える保険金を受け取ることが許されないように作られているのです。
保険金額を建物の価値(保険価額)を超えるほど高く設定しても、建物の価値(保険価額)までしか保険金は支払われないので、適正な保険金額を設定することが必要です。
複数加入が有効な場合
なお、例外的にですが、複数加入が有効な場合もあります。
<重複契約が有効な場合>
- 増築や改築した分を他保険会社で契約した場合
- 建物の評価額よりも少ない金額で契約している場合
- 建物と家財をそれぞれ違う保険会社では契約している場合
上記のような場合は、重複契約でも有効といえるでしょう。
評価額以上の契約は出来ないので、保険金が損害額を上回るということが起こらないからです。
ただしこの場合にも、複数の会社と契約しているため、保険金請求のための事務手続を、複数回行わなければならないことに注意しましょう。
複数加入のデメリット
ですが、重複保険には、多くのデメリットがあります。どのような注意点があるのでしょうか。
重複契約をすると基本的に保険料が過分にとられてしまい、得られるメリットはそう大きくないといえます。
先ほど、保険金は損害額を超えて下りることはないと述べました。
しかし、保険加入したことで、保険会社(共済)それぞれに保険料(掛金)を支払う必要があります。そのため、その分家計への負担は重くなってしまいます。
例えば、先ほどの例で考えてみましょう。 家財補償が700万円の火災保険に2つ(合計1,400万円分)加入した場合、それぞれから350万円ずつ合計700万円受け取ることができますが、それぞれに支払う保険料の合計額は1社で700万円の保険に加入するよりも高額になります。 そのため、無駄が発生するといえます。 |
また、火災共済や火災保険の申し込みをするときは、インターネットなどで簡単に申し込みをすることができるので、便利と言えます。
しかし、いざ損害が発生して保険金を請求する場合には、次のような多くの書類が必要になります。
- 保険金請求書
- 損害見積書:火災等による建物・家財への損害の程度を立証する書類
- 損傷箇所の写真:損傷箇所を証明する写真
- 修理見積書:実際に修理を行った業者から取得した書類
多く保険金をもらえるという利益はないのに、これだけたくさんの書類を用意しなければならないということです。
このように、火災保険を複数加入することは、あまり意味がない方法といえます。
まとめると、重複保険は、
- 保険料に無駄が生じてしまいます
- 保険金の請求手続きが、煩雑で手間となります
- 複数の保険会社とやりとりする必要があるため、支払いに時間がかかることもあります
- 契約内容や補償範囲が違うことで支払いが複雑になる可能性もあります
以上のようなデメリットがあるため、重複保険はあまりおすすめしません。
火災保険重複の際の対処方法
火災保険の契約が複数あるときはデメリットの方が多いので、基本は1つの契約にまとめるのがオススメです。
つまり、重複保険が生じた場合には、自身の保険契約の内容を見直したほうがよい、ということになります!
補足 補償内容を厚くしたい場合
火災保険に複数入りたいと思った方の中には、補償内容を充実させたいとの理由の方も多いかと思います。
では、実際に補償内容を充実させたい場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。
地震保険のさらなる補償を受けたい、と考えた場合をみてみましょう。
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で、建物は5,000万円、家財は1,000万円を上限としています。最大で50%までしか補償されないので、重複して加入したい気持ちになるかもしれません。
ですが、火災保険と同様に重複して契約していても、保険金額が2倍受け取れることにはなりませんので意味はありません。
それでは、地震に対する補償をより手厚くするにはどうすればよいのでしょうか?
1つの選択肢としては、保険会社が独自で設けている補償の上乗せを利用する方法が考えられます。
一部の保険会社では、100%まで補償を上乗せすることができます。
その分保険料は上がってしまいますが、地震に対する備えは手厚くしたいという場合は検討してみるとよいでしょう。
また、地震保険とは別の保険である「地震補償保険」に入ることを検討するのもよいでしょう。
地震補償保険は火災保険とセットの地震保険とは違い単独でも加入することができます。
また、地震保険と併用して加入することもできるので、地震保険の不足分の上乗せとして利用することができます。
なお、地震補償保険の保険金は、地方自治体が発行する罹災証明書に基づいて支払われることとなります。
また、保険会社が独自に設定する上乗せを利用するにしても、地震補償保険に加入するにしても、追加で保険料が必要となります。
必要な補償と保険料のバランスを考えて、加入を検討するとよいでしょう。
まとめ
火災保険は生命保険とは違い、重複して加入していても実際の損害額までしか保険金は支払われません。
そのため、火災保険に重複して加入するのは、保険料の無駄払いとなることが多くデメリットが多いことに注意が必要です。
もし現在複数の火災保険に加入している場合には、ご自身の保険の補償内容を確認して、1社に絞ることをお勧めします。
何か困っていることがある場合は、当事務所の弁護士までお気軽にお問い合わせください。
保険金の不払いに
お悩みの方へ
保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。
ご相談はお気軽に
当事務所では、「保険金の不払い」に限りご相談をお受けしております。
- 弁護士への相談 0円
Column
おすすめコラム
キーワードから探す
- 弁護士への相談 0円
- 弁護士へのご相談 初回30分は0円