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弁護士コラム
火災保険の申請方法を解説!条件や必要書類は?
「弁護士コラム」では、生命保険・火災/地震保険に関連するさまざまな情報をUPしておりますが、直法律事務所では、「保険金の不払い」(火災保険に関しては、「火災」を原因とする事故)に限りお問い合わせをお受けしています。何卒ご了承ください。
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この度の大型台風により、外壁が一部損壊してしまいました。
私が加入している火災保険では、保険事故として台風が記載されていたと思います。
火災保険を利用して、外壁の修復工事を実施したいと思いますので、申請方法を教えてください。
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火災保険の申請は、手続が複雑で面倒というイメージがあるかもしれません。
しかし、火災保険の申請は、非常にわかりやすく簡単なステップで行うことができます。
まずは、その被害が適用条件に当てはまるかについて、検討する必要があります。
①外壁・屋根の破損が災害によるものであること
②被災から3年以内に申請を行うこと
③損害の補修にかかる費用が火災保険の免責金額を超えることの3つを確認しましょう。
申請については、はじめに保険会社に連絡をし、修理業者を選定して見積もりを依頼し、その上で保険会社に所定の書類を提出するというのが基本的な流れとなっています。記事では、詳しく説明をします。
なお、火災保険が認められない場合や、申請でのトラブルについても注意する必要があります。
また、書類に不備があれば保険金の支払いが遅れる可能性があるほか、最悪の場合、保険金の支払いが受けられないこともあります。
くれぐれも不備のないようにし、不安な点がある場合は、必ず保険会社側の担当者へ問い合わせるようにしましょう。
はじめに〜火災保険の申請をしてみよう
火災保険の申請は、手続が複雑で面倒というイメージがあるかもしれません。
しかし、火災保険の申請は、しっかりと保険会社に問い合わせを行うなどすれば非常にわかりやすく、簡単なステップで行うことができる場合が多いです。
まず、今回の台風被害について、保険金の請求ができるについて考えてみましょう。
ご自宅がこれらの3つの条件に当てはまっていれば、火災保険で外壁塗装を行うことが可能です。
• 外壁・屋根の破損が災害や日常生活上の事故によるものであること
• 被災から3年以内に申請を行うこと
• 損害の補修にかかる費用が火災保険の免責金額を超えること
それぞれの条件について、もう少し詳しく見ていきましょう。
適用条件① 外壁・屋根の破損が災害や日常生活上の事故によるものであること
前提として火災保険が外壁塗装に適用されるのは、「災害や日常生活上の事故によって外壁・屋根に補修・塗装などが必要になった場合のみ」です。
つまり、同じ外壁・屋根の破損でも、原因が火災、自然災害又は日常生活上の事故でなければ火災保険の補償は受けられません。ここでいう自然災害とは、風災(台風)・雪害(豪雪)・豪雨などです。
火災保険は「火災」保険という名称から、火災以外のときに利用するイメージがあまりないかもしれません。
しかし、火災保険は自然災害や日常生活上の事故による住宅に対する損害の多くが補償範囲に入っているのです。
ご相談の事例のように台風による被害に対する補償としては、風災補償・水災補償・落雷補償が考えられます。
風災補償
風災とは、強風、突風や春一番、台風や旋風などの強い風による災害です。
強い風によって建物の屋根や雨樋(あまどい)、しっくいなどの外壁、カーポートやベランダ、フェンスなどが壊れた際に、損害金額(修理費用)を保険会社から支払ってもらうことを風災補償と呼びます。
強風によって窓ガラスが割れたというような場合の、補修や修理も保険の対象になります。
風災と認められる強い風というのは、最大瞬間風速が秒速20m以上の風とされています。
瞬間風速とは、0.25秒間隔で測定した風速値を3秒間で平均した値(12個の測定値の平均値)のことです。最大瞬間風速とは、3秒の間の平均風速の最大値のことです。つまり、3秒間で1回でも秒速20m以上の風が吹けば、保険対象になるというわけです。
水災補償
一般的には、台風による高潮や大雨による洪水が原因で床上浸水や再調達価格の30%以上の損害を受けた場合には水災補償によって補償を受けることができます。また、大雨による土砂崩れの被害を受けた場合も補償の対象です。
水災補償は補償をつけるかつけないかを選択できる会社が多いです。保険料を下げることなどを目的に水災補償をつけていない場合は補償を受けられないので注意してください。
ちなみに、2019年度の都道府県別の水災補償付帯率(当該年度末時点で有効な火災保険契約件数のうち、水災を補償している契約件数の割合)について、損害保険料率算出機構によるデータがあります。2019年度の全国の水災補償付帯率は、67.8%となっています。
https://www.giroj.or.jp/databank/attachment_ratio_flood.html
落雷補償
落雷によって屋根に穴が開いてしまった、落雷による急激な電圧の変化が原因で過電流が流れて電化製品が故障してしまったといった場合に落雷補償により補償を受けることができます。
注意すべき点としては、
・家財を保険の対象にしていない場合は家財の補償を受けることができないこと、
・パソコンが故障してしまった時にパソコンそのものは補償されますが消失してしまったデータは補償対象外だということです。
水害(洪水・高潮など)や窃盗は、ご加入のプランによっては補償の対象外となっていることがよくあるため、注意しましょう。
ご自身で契約している火災保険の契約内容を、よく確認しておく必要があります。
なお、一般的な水の被害として挙げられるものに、大雨や大雪による雨漏りがあります。
雨漏りは屋根から室内の壁まで、広範囲の修理・補修が必要ですが、雨漏りそのものは、水災補償の対象にはなっていません。
火災保険の対象となる雨漏りは、台風などの風災が原因で、雨漏りしたというような場合です。
そのため、風災や雪災などの自然災害による雨漏りの場合は、火災保険で補償できる可能性があります。
また、集中豪雨などによる洪水や土砂災害などの水災については、河川の近くなど、住んでいる地域によって、保険対象に組み込むかどうか、任意で決めることができます。
ハザードマップで住所周辺を確認するなどして、ご自身の火災保険の契約内容を確認してみましょう。
集中豪雨や台風による床上浸水後の補修については、保険対象ではありますが、床上45cm以上の浸水に限られているので、注意が必要です。
また、地震による火災や破損も火災保険の補償対象外です。地震のリスクまでカバーしたい場合には、地震保険に加入する必要があります。
具体的な被災例
・台風や竜巻による屋根材・外壁材の破損
・豪雪による屋根材の破損
・飛来物による外壁材・屋根材の剥がれ
・地盤面45cmを超える浸水による外壁材の劣化
適用条件② 被災から3年以内に申請を行うこと
火災保険が適用できるのは、被災してから3年以内の補修工事についてのみです。(保険法第95条(消滅時効))
保険法 第95条(消滅時効)
保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。
保険法により保険金請求の時効は支払事由が発生してから3年と定められています。
損害を受けてから時間がたつと、保険金の支払対象になるかの調査や支払うべき保険金の決定が困難となるからです。
損害を受けてすぐ、あわてて火災保険の請求をする必要はありませんが、落ち着いてから請求しようと思い、そのことを忘れたまま3年経過してしまったということがないように、気をつけましょう。
詳しくは、火災保険は使ったら保険料が高くなる?利用の流れや注意点を解説も合わせてご覧ください。
例えば、「7年前の台風が原因で外壁塗装が必要になった」といったケースでは適用ができないので注意しましょう。
なお、自費で既に工事を行ってしまっていても、3年以内であれば工事の請求書をもとに保険金を申請することができます(ただし、保険事故による損害の証明が難しくなる場合もありますので、できれば修理前に申請をされるとよいでしょう)。
さらに、内容によっては、追加工事にも申請が認められることがあります。
適用条件③ 損害の補修にかかる費用が火災保険の免責金額を超えること
免責金額というのは簡単に言えば自己負担しなければならない金額です。免責金額の設定がある場合で損害額が免責金額以下の場合には保険金を受け取ることができません。
火災保険には、免責金額といって、「この金額以下の補修は自己負担で直してください」という基準になる金額があります。
保険のパンフレットなどでは、自己負担額と表記されているものです。
保険会社によって設定できる免責金額に違いがあります。最近は0円、5千円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円などのいくつかの金額が示され、その中から選択するパターンが多いです。免責金額が大きいほど、自己負担額が大きくなりますが保険料は安くなります。
この免責金額を下回った補修工事の場合、火災保険は適用されないので注意しましょう。
火災保険請求の手順
申請の流れ〜6つのステップ
まずは、大まかな申請の手順を、6つのステップで見ていきましょう。
①保険会社へ連絡
②修理業者への連絡・見積もり依頼
③書類(保険金申請書・事故状況説明書)の作成
④保険会社へ書類を送付
⑤保険会社による鑑定人の調査
⑥保険金の入金
以下で、詳しく見ていきます。
申請の具体的な流れ
保険会社へ連絡
まずは、保険会社の事故受付窓口へ連絡しましょう。
保険事故が発生した場合には、保険会社の事故受付窓口へ連絡が必要です。
なお、代理店経由で契約をしている場合には代理店に連絡をすることで、保険会社への連絡を代行するという場合もあります。
近年は、インターネット等による手続が可能な保険会社もあります。
損害が分かり次第、できるだけ速やかに手続きをすることをおすすめします。
特に、屋根等、目の届かない場所については、大きな自然災害等に見舞われたら、直後に損害の有無を確認することをおすすめします。
さらに、「いつ?」「何が原因?」など、損害が発生した日時や原因をできるだけ明確にして保険会社へ伝える必要があります。
近隣地域に共通する大きな自然災害が発生するようなケースであれば、保険会社が混み合い保険金の受け取りまでに時間がかかってしまうこともあります。
そのような意味でも、できるだけ速やかに対応を進める必要があります。
修理業者への連絡・見積もり依頼
修理業者の手配は、ご自身で行う必要があります。
今回のご相談では、外壁の修復工事ですので、外壁工事専門の業者を探すとよいでしょう。
工事会社の選定については、複数の業者を比較検討するなど、慎重な判断が必要です。
また、修理金額の相場について、たとえば「この工事ならいくら」といった客観的かつ共通する価格表があるわけではありません。
地元で評判の良い業者を選んだり、インターネットの口コミを参考にしたりするとよいでしょう。
中には契約者に対して不当に保険金を請求させようとする詐欺まがいの修理業者もいます。
そのような業者の被害に遭わないようにするためにも、地元の評判や口コミを確認して修理業者を選ぶのが有効と言えます。
屋根修理業者を選ぶため、複数の工事業者を比較検討することがおすすめです。
インターネット上には、一括見積もりを行うサービスもあるので、利用するのもよいでしょう。
書類(保険金申請書・事故状況説明書)の作成
保険会社へ提出するための必要書類の作成をしましょう。
保険の請求には、いろいろな書面が必要となります。
- 保険金請求書・修理見積書・罹災物件写真・事故内容報告書(事故届書)・罹災証明書
- 損害明細書・住民票・印鑑証明書・建物登記簿謄本・保険金直接支払指図書
たとえば、以下のような書面が挙げられます。
ここから、詳しく説明します。
保険金請求書
損保会社から書類を取り寄せて記載、もしくはWEBサイトの専用フォームなどに入力をします。保険金が高額になる場合、実印の押印が必要になるケースもあります。
火災、その他の自然災害、盗難などすべての損害において必要な書類となります。
修理見積書
修理会社に見積もりを依頼。修理代総額のみでなく、修理内容・部品材料の数量・単価などの内訳詳細が分かるもののことを言います。
火災保険の補償内容は、外壁修理だけではありません。
つまり、
• 外壁以外の被災の補償
• 建物付属物の修理費用
も含まれるということです。
たとえば、
外壁以外の被災として、
●屋根の損傷
●窓の割れ
●シャッターや雨戸の破損
●アンテナの破損
●雨どいの歪み
建物付属物の修理として
●門や塀の歪み
●物置きのヘコみ
●エアコンの室外機の歪み
も補償の対象となることがあります。
他の部分にも被災箇所がないか、選定した工事業者に見積もりをしてもらう際には、他の被害の申告漏れがないようにしましょう。
※なお保険商品により補償内容は様々です。ご自身の加入している火災保険の内容をよく確認する必要があります。
ただ、保険金請求された金額が市場価格に近ければ近いほど、保険会社の対応は早いです。
適正な価格かつ適切な見積り内容であると判断されれば、保険会社は現地調査を経ずに保険金を支払うことも多いです。
一方、過度な金額の請求をすると、支払いは遅れるばかりか、調査を元に支払いが拒絶されることもあります。
罹災物件写真
建物などの全体像および被害箇所、被害程度の分かる写真を撮影しましょう。
被害の内容を証明できる写真(画像データ)は、できるだけ多く提出することをおすすめします。
誰が見ても被害状況が一目でわかる写真が望ましいです。
たとえば、建物の場合、損害が生じた箇所をアップした写真の他、建物全体の写真があるとさらに客観性が増してわかりやすくなります。
また、修理の前に応急的な処置をほどこす必要があるような場合は、その前後の写真を撮影してください。
罹災証明書
所有する建物が損壊した場合に、管轄の消防署や消防出張所で発行される書類で、各自治体から発行してもらえる書類です。罹災した事実、被害の内容を証明するのに使われます。
火災の場合は管轄の消防署、火災以外の自然災害(風災、水害など)の場合には自治体から取り寄せをします。
事故内容報告書(事故届書)
事故の概略を記載する報告書です。
保険金請求書と同様、保険会社から書類を取り寄せて記載、もしくはWEBサイトの専用フォームから入力します。
なお、自然災害の場合、損害が本当に自然災害によって発生したのか、いつの災害によって発生したのか、特定しづらい場合があるので注意が必要です。
たとえば台風の後に家の塀が少し欠けているのを見つけたとして、それがいつどのように損害を受けたのか証明するのは困難なことがありますが、そのようなときには、弁護士に相談するなどして、適切に保険金を請求できる準備をしていくのがよいでしょう。
一つの方法として、気象庁のホームページの『過去の気象データ検索』で、最寄りの気象観測所での当日の時間ごとの天気・風速・降水量等の記録を確認するという方法があります。
最寄りの観測所と、その近くでより詳細なデータをとっている観測所があれば、そこもチェックするとよいでしょう。
気象庁ホームページ
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/
損害明細書
家財などの損害品などを記載するものです。
保険会社から書類を取り寄せて記載、もしくはWEBサイトの専用フォームから入力します。
住民票
自治体から取り寄せすることができます。
印鑑証明書
保険金請求書に実印を押す場合に必要です。自治体から取り寄せすることができます。
建物登記簿謄本
法務局(出張所)で取得します。保険会社から提出を求められた場合に必要となります。
保険金直接支払指図書
保険金請求権に質権が設定されている場合に必要です。保険会社から取り寄せしましょう。
以上であげた書面のうち、保険金請求書・修理見積書・罹災物件写真は、多くの場合で必要になります。
詳しくは、それぞれの保険会社により異なりますので、指示にしたがって書面の準備をしましょう。
保険会社へ書類を送付
準備した書面を揃え、保険会社に送付しましょう。
保険会社による鑑定人の調査
申請したあとに、損害を受けて保険金申請をした場合、保険会社から「損害保険登録鑑定人」と呼ばれる調査人が派遣される場合があります。
火災保険申請を保険会社が受け付けする際、「写真から判断して被災として認めるには無理がある」「過度な金額の請求である」とみなされた場合にも、保険鑑定会社による調査がおこなわれるのです。
ヒアリングだけで終わることもありますが、現地におもむいて被災状況と見積書を比べて調査をおこなうこともあります。
なお、保険鑑定会社の人員にも限りがあるため、大規模自然災害後に保険鑑定会社による鑑定が決定した場合は、保険金の支払いが大幅に遅くなる可能性があります。
また、鑑定を経て申請書類に疑問が残る場合は、支払いが拒絶されることがあります。
損害保険登録鑑定人は、主に以下の3つの役割を担っています。
【損害保険登録鑑定人の主な役割】
1. 損害鑑定:自然災害などによって発生した損害額の算定をする。
2. 評価鑑定:住宅などの保険対象となる評価額を設定する。
3. 事故の原因・状況調査:損害(事故)の原因、状況が保険の補償内容でカバーされているかの調査を行う。
保険金の請求をしたら、必ず調査人が現場を訪ねて来るわけではありません。
損害規模が大きい事故が対象になるとも言われています。
※損害保険登録鑑定人とは?
「損害保険調査人」とも呼ばれる、住宅の損害を鑑定する専門家のことをいいます。
保険価額の算出や、損害額の算定、事故原因の調査などを行っています。
また、火災だけでなく、地震被害の際に、調査人が立ち会うこともあります。
職務上、中立・公平・公正であることが求められ、公的資格として1級・2級・3級とレベル分けがされています。
さらに、申請が認められないケースについては、以下で説明します。
保険金の入金
保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。保険会社は支払う保険金について連絡し、加入者の了解をもらったうえで保険金支払いの手続きを行います。
費用保険金は、指定された口座に支払われます。
そして、支払金額の明細が、はがきなどで送られます。
そして、火災保険では、保険金額を上限として損害額から免責金額を除いた金額が支払われます。
損害保険金=損害額-免責金額(自己負担金額)
※損害保険金は保険金額が上限となります
火災保険の申請での注意点
火災保険の申請が認められない場合について
火災保険の申請が認められず、保険金が支払われないケースもあります。
火災保険は、住宅(建物)や家財の損害に対する保険です。
しかし、対象が建物や家財だからといって、どんな場合でも保険金が支払われるわけではありません。
保険金が下りない主な理由は、次の3つです。
①経年劣化が原因による損害
② 火災保険が補償する災害とは別の原因の場合
③故意や重大な過失がある場合
経年劣化が原因による損害
屋根と外壁の痛みや劣化が見るからに進んでいる屋根や外壁は、台風が原因ではなく経年劣化が原因であると保険会社からみなされる可能性があります。
火災保険はそもそも、火災や風水害、日常生活上の事故といった不測かつ突発的な事故を原因とする損害に対して補償するものです。
そのため、経年劣化が原因で建物や家財が壊れたとしても、補償対象外となります。
経年劣化とみなされた場合、屋根の修理にかかる費用は自己負担となります。
経年劣化についての説明の一例として、
大手損害保険会社である損保ジャパンの火災保険資料には、以下のような内容が示されています。
- 【保険金をお支払いできない主な場合】
●保険の対象の自然の消耗もしくは劣化または性質による変色、変質、さび、かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、剥がれ、肌落ち、発酵もしくは自然発熱の損害その他類似の損害
●ねずみ食い、虫食い等
●保険の対象の平常の使用または管理において通常生じ得るすり傷、かき傷、塗料の剥がれ落ち、ゆがみ、たわみ、へこみその他外観上の損傷または汚損(落書きを含みます。)であって、保険の対象ごとに、その保険の対象が有する機能の喪失または低下を伴わない損害
- 引用元:損保ジャパン|火災保険重要説明事項より一部抜粋
火災保険が補償する災害とは別の原因の場合
前述したように、火災保険契約の補償対象になっていない災害が原因となっている損害については、保険金が下りません。
こちらは個別の契約内容に準じるものですが、例えば「地震」についての損害は火災保険の対象外です。
地震による損害を補償するには、地震保険への加入が必須となります。
③故意や重大な過失がある場合
契約者や被保険者が故意に火をつけたような場合や、故意でなくても重大な過失がある場合には保険金が支払われません。
重大な過失は個別の事例で判断されますが、てんぷら油に火をかけたままその場を離れて放置して火事になった場合や寝たばこで火事になった場合などで、重大な過失と判断された事例があります。
故意や重大な過失がある場合
契約者や被保険者が故意に火をつけたような場合や、故意でなくても重大な過失がある場合には保険金が支払われません。
重大な過失は個別の事例で判断されますが、てんぷら油に火をかけたままその場を離れて放置して火事になった場合や寝たばこで火事になった場合などで、重大な過失と判断された事例があります。
火災保険の保険金が下りない場合の対処法
保険金請求をしてもスムーズに保険金支払いがなされず、承認がされないこともあります。
申請内容を調査した結果、損保会社が「補償範囲ではない」と判断したり、別の事由により保険金支払額を減らしたり、支払いを拒んだりということもあります。
そのような火災保険の保険金が下りない場合の対処法について、確認しておきましょう。
●保険金のお支払いに関する不服審査お申し出制度を利用
この鑑定結果が不服の場合は、再審査を受ける事ができます。
保険会社には、査定結果の不服申立が行える「保険金のお支払いに関する不服審査お申し出制度」があります。
不服の申立を行うと社外弁護士で構成する「不服審査会」で第三者の視点から審査結果の適切性について再審査が行われます。
● そんぽADRセンターに苦情・紛争解決手続きを依頼
「そんぽADRセンター」は、一般社団法人日本損害保険協会の中に設けられている保険会社の業務に関連する苦情・紛争に対応する窓口で、保険業法に基づく指定紛争解決機関です。
専門の相談員が無料で相談に応じるほか、損保会社との紛争が解決するようサポートを行なっています。
そんぽADRセンター
https://www.sonpo.or.jp/about/efforts/adr/index.html
※日本損害保険協会とは
日本損害保険協会は損害保険会社の業界団体です。
あいおいニッセイ同和損害保険やau損害保険、セコム損害保険、ソニー損害保険、損害保険ジャパン、大同火災海上保険、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、明治安田損害保険など28社が加盟しています。
火災保険の申請でのトラブルについて
近年、住宅修繕費用を補償する保険金の申請サポートや、当該修繕工事について勧誘をする業者が存在しており、火災保険申請サポート業者と呼ばれています。
ただし、これらの業者の中には悪質な保険金請求代行業者もおり、注意が必要です。
独立行政法人国民生活センターでは、消費者への以下のようなアドバイスが掲載されています。
- 1. 申請代行業者の説明を鵜呑みにせず、必要のない勧誘はきっぱりと断る
2. 契約している保険の内容を自分の目で確認したうえで、事実に基づいて保険金を請求する。分からなければ保険会社等に相談する
3. 複数の修理業者から見積もりを取り、慎重に判断する
4. 修理の着工前に代金を全額前払いすることは避ける
5. 訪問販売や電話勧誘販売で契約した場合には、クーリング・オフできる
6. トラブルにあったら、最寄りの消費生活センター等に相談する
- 引用元:http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20121206_1.html より
詳しい内容は、火災保険申請サポート業者とは?メリットデメリットを解説の記事を参照してください。
火災保険申請に関するおすすめ動画(一般社団法人 日本損害保険協会)
日本損害保険協会が制作した火災保険申請の注意喚起動画です。
保険金の使い方について
保険金の使い方
保険金はどのように使えばよいのでしょうか。
実は、火災保険の保険金の使い道は自由です。
火災保険の契約は「○○というときにはこのような保険金を支払う」という内容のみです。
そのため、受け取った保険金をどのように使うかまでは決められていないのです。
保険金は、修理費用や再購入費用に充てるのが一般的ですが、旅行や買い物などの娯楽に使ってしまっても、そのこと自体に問題はありません。
何に使ったのか保険会社にレシートを提出したり、修理以外のことに使ったからと言って詐欺罪に問われたりすることはありません。
ですが、修理費用の見積書は支払う保険金を決めるためのものです。
前述の通り、火災保険の保険金を請求する際には損害が発生した箇所の修理費用の見積書等を出す必要があります。
修理費用の見積書を出すがゆえに保険金はその見積書通りに使わなければならないと思いがちですが、上で述べたように保険金の使い道は自由です。
それでもなぜ修理費用の見積書が必要なのかというと、保険金をいくら支払うのか決めるのに必要だからです。
火災保険は損害の穴埋めのための保険で、保険金は損害額の分だけ支払われます。
つまり、修理費用の見積書には何の修理にいくらかかるのかが書かれているので、それをもとに支払う保険金を算出しているのみなのです。
なぜ保険金は修理に使うべきなのか
保険金の使い道は自由です。
それでもやはり保険金は修理費用に充てるべきです。その理由は以下の通りです。
●放置すると被害が拡大するおそれがあります
損害を受けた個所を修理せずに放置しておくと、そこから建物の劣化が進んでしまうことが考えられます。
例えば、台風で屋根に損害が発生した場合、その時点では大きな影響がなかったとしても放置すれば雨漏りの原因ともなります。
そうすると床が水浸しになったり天井にシミがついたりカビが発生したりします。
こうなると当初必要であった修理費用よりも大きな額が必要となってしまいます。いずれ修理が必要となり、必要な修理費用が増えてしまうのであれば保険金を受け取ったらさっさと修理してしまう方が金銭的にも住宅の寿命的にも得だといえます。
●修理しないと同一個所の補償を受けられません
保険金を受け取ったにもかかわらず修理をしていなかった場合、その箇所が再度被害を受けた場合に保険金を受け取れない可能性があります。
保険金を受け取ったあとに修理をしていなかった場合、再度同じ箇所が被害を受けたとしても、適切に修理されていたら発生しなかった損害ではないか、新たに発生した損害ではなく前回発生した損害ではないかといった疑義が生じるからです。
こうした認定をされると保険金を受け取ることができません。
保険金を別の用途に使ってしまっていた場合には、自腹で修理しなければならなくなります。
一度被害を受けたら二度と被害を受けないということはありません。
このような観点からも、保険金を受け取ったら修理費用として使うべきでしょう。
詳しくは、火災保険は使ったら保険料が高くなる?利用の流れや注意点を解説の記事をご覧ください。
補足 火災保険申請のよくある質問
保険の申請は保険会社と保険代理店どちらに連絡をすればいいのでしょうか?
基本的にどちらに連絡しても違いはないと考えてよいでしょう。なお、保険の申請に不安がある場合には、当事務所までご連絡を下さい。保険金の請求が認められやすいよう、できる限りサポートをさせて頂きます。
火災保険と公的支援の両方を申請して問題はないのでしょうか?
別個の制度ですので、どちらも同時に利用することができます。
そのため、火災保険と公的支援の両方を申請することが可能です。
保険金はいつ支払われるのでしょうか?
保険金は、保険金請求が完了してから原則30日以内に支払いとなります。
ただし、特別な照会や調査が必要になると、延長がなされるのでされるので注意が必要です。
保険金の支払いが延長される場合は、損保会社は被保険者または保険金受取人に対して、保険金支払いを行うために確認が必要な事項と、確認が終了する時期を通知することになっています。
保険金の支払期限が延長されるケースとして、以下のようなものがあります。
【保険金の支払期限が延長されるケースの例】
- 警察・検察・消防などの機関による捜査・調査結果の照会を行う場合
- 専門機関による鑑定などの結果の照会を行う場合
- 災害救助法が適用された災害の被災地域において必要な調査を行う場合
- 日本国外における調査を行う場合
延長になるケースの多くが、損害規模が大きく保険金額も多額になるもの、または保険事故にあたるかどうかの判断が難しいものだといえます。
逆に、「台風による屋根のはがれ」のように、事故原因もはっきりしていて、損害額もそれほど大きくない場合には、30日以内に保険金が支払われることが多いです。
さいごに〜保険金請求をする際のポイント
保険金請求をする際のポイントは以下の通りです。
●被災がわかったら、速やかに保険会社に連絡してください。
専門家に相談して、できる限り書類の不備を無くし、保険金の請求を認めやすくしたい場合には、併せて、当法律事務所までご連絡をください。
まずは、損害がわかった時点で、速やかに保険会社に連絡をしましょう。
火災などの事故が発生してから時間が経過するにつれ、損害がどんな原因によるものなのかを証明しにくくなってしまいます。
そのため、損害が分かり次第、できるだけ速やかに手続きをすることをおすすめします。
●工事会社の選定は慎重に行いましょう
修理業者によっては、相場とはかけ離れた高い金額で見積もりをしてきたり、見積もりをとって契約しなかった場合に高いキャンセル料を要求してきたりすることもあります。
このような悪徳業者の被害に遭わないようにするためにも、地元の評判や口コミを確認して修理業者を選ぶのが有効と言えます。
今回の相談者様も、屋根修理業者を選ぶため、複数の工事業者を比較検討することがおすすめです。
●必要な書類について不備のないように揃えましょう
火災保険の請求では、上述したとおり保険金請求書・罹災証明書・修理見積書を手配する必要があるほか、印鑑証明書などを取得しておく必要があります。
さらに、被害内容を証明する写真も必要です。
書類に不備があれば保険金の支払いが遅れる可能性があるほか、最悪の場合保険金の支払いが受けられないこともあります。
くれぐれも不備のないようにし、不安な点がある場合は当事務所までご相談ください。
保険金の不払いに
お悩みの方へ
保険会社への対応に疑問を感じた時は、交渉のプロである弁護士にお任せください。
ご相談内容に応じて、代理請求・示談交渉、そんぽADRセンターへの申立て、訴訟提起をいたします。
時効で権利が消滅することもあるので、ご連絡はお早めに。
ご相談はお気軽に
当事務所では、「保険金の不払い」に限りご相談をお受けしております。
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