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弁護士コラム
「相続させる」旨の遺言の効力は?判例とともに解説
- 家族信託・遺言書作成
- 投稿日:2022年07月22日 |
最終更新日:2024年07月25日
- Q
- 「相続させる」とされた相続人(父)が、被相続人(祖父)より先に亡くなった場合、効力はそのまま孫へ代襲相続されるのでしょうか?
- Answer
-
遺言書に何も記載されていなければ、代襲相続されません。
それぞれの相続人が、それぞれの相続分に応じて相続することになります。
本記事で解説していきます。
代襲相続については、「甥や姪は相続できる?「代襲相続」についても詳しく解説」の記事をご参照ください。
「相続させる」遺言、遺贈について
遺言書の「相続させる」という文言について、最高裁判所平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に単独で相続させるために遺産分割の方法を指定したものであると解釈しています。そのため、「相続させる」旨の遺言と、遺贈(遺言による贈与)は異なるものです。
※記事「遺言書作成のとき、「相続させる」と「遺贈する」では効力が変わる?」もご参照ください
そして、民法は、遺言であげる人(死亡した被相続人)より貰う人が先に死亡したケースについて、遺贈についての規定は存在するものの(民法944条1項は「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」と規定しています)、「相続させる」遺言についての規定は存在しません。
そこで、「相続させる」遺言についても、遺贈と同様に、あげる人より貰う人が先に死亡した場合に効力を失うのかどうかが争われていました(下級審では、高裁レベルで判断が分かれていました)。
最高裁の判決
判決内容
最高裁判所平成23年2月22日判決は、下記のとおり判断しています。
「被相続人の遺産の承継に関する遺言をする者は、一般に、各推定相続人との関係においては、その者と各推定相続人との身分関係及び生活関係、各推定相続人の現在及び将来の生活状況及び資産その他の経済力、特定の不動産その他の遺産についての特定の推定相続人の関わりあいの有無、程度等諸般の事情を考慮して遺言をするものである。このことは、遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定し、当該遺産が遺言者の死亡の時に直ちに相続により当該推定相続人に承継される効力を有する「相続させる」旨の遺言がされる場合であっても異なるものではなく、このような「相続させる」旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される。したがって、上記のような「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」
解説
最高裁判所の上記判断によって裁判実務は統一されました。
以後は、「特段の事情」が認められない限り、あげる人(被相続人)より貰う人が先に死亡した場合には、「相続させる」遺言はその限度で効力を失い、それぞれの相続人がそれぞれの相続分に応じて相続することになります。
そして、最高裁判所は、上記「特段の事情」について、次のとおり述べています。
「BはAの死亡以前に死亡したものであり、本件遺言書には、Aの遺産全部をBに相続させる旨を記載した条項及び遺言執行者の指定に係る条項のわずか2か条しかなく、BがAの死亡以前に死亡した場合にBが承継すべきであった遺産をB以外の者に承継させる意思を推知させる条項はない上、本件遺言書作成当時、Aが上記の場合に遺産を承継する者についての考慮をしていなかったことは所論も前提としているところであるから、上記特段の事情があるとはいえず、本件遺言は、その効力を生ずることはないというべきである。」
つまり最高裁判所によれば、上記「特段の事情」が認められるためには、特定の遺産を相続させようとした相続人が自分(遺言者)より先に死亡した場合に、その遺産をその相続人に代わって誰に相続させるかについて、遺言で何らかの言及をしていることが必要であるということになります。
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上記のように、「相続人(父)が被相続人(祖父)より先に亡くなったときは孫に相続させる」との記載が遺言書にあれば、「相続させる」とされた相続人(父)が被相続人(祖父)より先に亡くなったときには孫が相続することになります。
これに対し、そのような記載がないときは、遺言書の該当部分は効力を失い、その遺産については遺言が存在しないものとして扱われることになります(具体的には、それぞれの相続人がそれぞれの相続分に応じて相続することになります)。
遺言書に関連するお悩みがあると、遺産分割をするうえでスムーズに協議が進まなかったり、相続人同士でトラブルになったりすることが多くあります。
判断に困った場合などは、お早めに当事務所の弁護士にお問い合わせください。
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