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弁護士コラム

遺言はいつから効力が発生する?ケースごとに解説!

家族信託・遺言書作成
投稿日:2022年07月22日 | 
最終更新日:2024年03月18日
Q
遺言書はいつから効力が発生するのでしょうか?
また、家業を継いでくれた子供に土地を譲るとある場合、誰かが家業を継ぐまで効力は発生しないのでしょうか?
Answer
遺言は遺言者の死亡時に効力が発生しますが、何らかの条件が付けられているときは、遺言の効力発生時期はその条件が成就した時点となります。
また、遺言の中に家業を継いだ子供に特定の遺産を相続させる旨の記載があるときは、遺言の効力発生時期は子供の誰かが家業を継ぐという条件が成就した時点となります(子供の誰かが家業を継ぐまで遺言の効力は発生しません)。

ただ、実際には、遺産分割協議をする中で相続人同士で意思確認がなされるでしょうし、遺産分割協議で意思確認がなされなかったとしても、遺産分割調停が申し立てられたときは家事調停委員によって意思確認がなされることになります。

遺言の効力発生時期について

遺言は、遺言者が遺言で何も条件を付けなければ遺言者の死亡時に効力が発生します(民法985条1項)。

これに対し、遺言者が遺言で条件を付けている場合で、遺言者の死亡にはまだその条件が成就されず、遺言者の死亡後にその条件が成就されたときは、遺言で付けられた条件が成就したときに遺言の効力が発生します(民法985条2項)。

なお、遺言者は条件が成就したときの効果を成就したときよりも前にさかのぼらせることができますので(民法127条3項)、遺言者が遺言でその旨の意思表示をしているときは、遺言者の意思に従って、条件成就時ではなく遺言者の死亡時に遺言の効力が発生することになります。

つまり、例えば「孫が20歳になれば、50万円を遺贈する」という遺言があったとします。

「孫が20歳になれば」という条件があり、孫が20歳になることが「成就」を指します。

このとき、遺言者が亡くなったあと、場後が20歳になったときに遺言の効力が発生することになります。

しかし、遺言者が亡くなったときにすでに孫が20歳になっていた場合もあります。この場合はすでに条件が成就しているため、民法127条3項にしたがい、遺言者が亡くなったときに効力が発生する、ということです。

ご質問事例についての検討

特定の土地について、遺言で「家業を継いだ子供に譲る」という条件が付けられているときは、その土地は家業を継いだ子供が取得することになります。すなわち、遺言者の死亡時に家業を継いだ子供がいれば、遺言者の死亡時に条件が成就したものとして遺言の効力が発生することになりますし、遺言者の死亡後に子供の誰かが家業を継ぐことになれば、その時点で条件が成就したものとして遺言の効力が発生することになります。

これに対し、家業を継ぐ子供が誰もいなかったときは、実務上は、遺言の該当部分は効力を失ったものとして、遺産分割協議・調停・審判をすることになります。遺産分割調停の申立てがなされたときは、早い段階で家事調停委員から全ての子供に対して「家業を継ぐかどうか」についての意思確認がなされ、その結果は期日調書に記載されます。そして、以後はその結果を前提として調停・審判が進行されることになります。

遺言書の効力についてよくある質問

よくある質問① 認知症の親が作成した遺言書の効力

質問:

認知症高齢者は遺言をすることはできますか?

回答: 

この遺言を完成させるための意思能力(遺言能力)の有無についての判断は、遺言者の状態や遺言内容の難度等、個別具体的な事案に応じて行われ、明確な判断基準がありません。

遺言者が高齢で、認知症の症状があるとか、また医師の証明がなされているかという医学的判断のみで、遺言書の作成の善し悪しが判断されるわけではありません。

意思能力の有無の判断として、

①遺言者の認知症の内容、程度、心身の状況及び健康状態、

②年齢、

③日頃の遺言についての意向、

④遺言に至った経緯、動機、

⑤発病時と遺言時の時間的関係等を総合的にみて、遺言事項(遺言内容)を判断する能力があったか否か、

を判断すべきであるとされています(東京地判平16・7・7判タ1185・291)。

認知症によって成年後見開始審判を受けた場合であっても、判断能力が回復すれば、遺言はできることになります。

ただし、成年被後見人が判断能力を一時回復した時に遺言をするには、医師2人以上の立会いを要し、遺言者が判断能力を欠く状態になかった旨をその医師らが遺言書に付記して署名押印しなければなりません(民973)。

認知症気味であるが成年後見の審判を受けていない場合、認知症の程度として軽度から重度と種々の段階があるため、認知症であっても遺言能力が十分に認められることもあります。

また、認知症の程度が軽い場合であっても、後日「遺言無効の争い」に発展する可能性がありますので、あらかじめ医師の診断書を用意してから遺言を作成する、又は、1人以上の医師の立会いのもとで遺言を作成することが賢明です。

医師等に証人をお願いする方法も考えられます。対策についてお困りの方は直法律事務所までご相談下さい。

できることなら、後日の紛争の種とならないように、遺言書が正常に作成されたことの明視化として、遺言者の状況、医師の診断書を含め、遺言書作成に関する遺言者の意向等について録音・録画データの保管も心がけておく必要があります。

よくある質問② 遺言の強制

質問:

私の親は兄に遺言書の作成を強制されたと思います。このような遺言でも有効でしょうか?

回答:

遺言を無理やり書かされた場合には、強迫がなされたことになりますから、民法96条1項に基づいて遺言を取り消すことができると解されています。遺言が取り消された場合には、その遺言は無効になります。

また、遺言者が強迫されて遺言を書かされた場合、強迫した者が相続人の一人であるときは、その相続人は、「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」に該当しますから、相続人となることができません(民法891条)。

このように相続人の相続資格を失わせるものを「相続欠格」といいます。

相続欠格者には、被相続人を殺害しようとして刑に処せられた者や遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者などを含みます(民法891条)。

よくある質問③ 遺言書の効力と検認

質問:

遺言書の検認前でも効力を有しますか?また、勝手に封印のされた遺言書を勝手に開封すると遺言書の効力はなくなるのでしょうか?

回答:

検認は、あくまで形式的に、その時点において遺言書があり、内容がどのようなものであったかを記録に残すものなのですので(遺言書の存在を明確にし、後日における偽造・変造を防ぐためですので)、遺言書の有効無効に関係はありません。

※もっとも、平成30年法律第72号による民法(相続法)改正により、自筆証書遺言を法務局に預けることができるようになっており、遺言を法務局に預けている場合には検認手続が不要となります。

よくある質問④ 自筆証書遺言の効力が無効になる例

質問:

自筆証書遺言が無効となる例を教えてください。

回答:

自筆証書の遺言書を作成する上で、注意しなければならないことがいくつかあります。遺言書が無効にならないように注意しましょう。

自筆証書遺言については「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」(民968①)とルールが定められているので、押印がない遺言書は無効となってしまいます。

この押印は、実印である必要はありません。認印でもよいとされています。また、指印であっても、遺言書は有効とされた事例がありますが(最判平成元年2月16日)、押印には印鑑を利用しましょう。

なお、遺言書本文に押印がなくても、遺言書を入れていた封筒の封じ目に押印がされていたものについては、押印の要件に欠けることがないとして有効とされた例もあります。

日が特定できない遺言書(たとえば「〇年〇月吉日」とした遺言書)は、無効と判断された事例があり(最判昭和54年5月31日)、そのような日の記載では法務局で保管してもらえません。

次に氏名は、日本国籍者であれば戸籍上の氏(苗字)と名を記載しましょう。

氏名の記載は遺言者本人を特定できればよいという考え方から、通称などでも有効とされた事例がありますが、無用な論争を避けるために、戸籍上の氏名を記載してください。

他人の「添え手」による作成病気等の事情で、一人ではうまく文字が書けない場合は、他人の「添え手」によって遺言書を作成したいという方もいるでしょう。

このような「添え手」によって作成した遺言書でも、「自書」の要件を満たすのか、争われた事例があります。最高裁判所(最判昭和62年10月8日)の見解によると、下記の三つの要件がそろえば、「自書」の要件は満たすとされています。

①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、

②他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、

かつ、

③添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できる場合

仲のよい夫婦がお互いに死んだときに財産を承継させる有利な内容であっても、同一の遺言書で遺言することは禁止され、これに違反した証書は、全部無効となります。

よくある質問⑤ 公正証書遺言の効力が無効になる例

質問:

親が公正証書遺言を作ったのですが、これが本当に有効なのかどうか知りたいです。公正証書遺言でも無効となった例はあるのですか?

回答:

当時の遺言者に遺言能力がない場合に、公正証書遺言が無効となる場合があります。

例えば、東京高裁平成22年7月15日判決(判例タイムズ1336号241頁)では、公正証書作成当時は、少なくとも認知症の症状は進行していたものと認められること、認知症の程度として金銭管理が困難であること、被害妄想的であること、遺言事項の意味内容や当該遺言をすることの意義を理解して遺言意思を形成する能力があったものということはできないこと等を理由に公正証書遺言を無効と判断しています。

なお、公正証書遺言の無効を主張する方法は自筆証書遺言の場合と同様であり、公正証書遺言の有効性について、他の共同相続人や利害関係人と意見が一致しなかった場合には、裁判で解決を図るほかなく、遺言無効確認訴訟を提起することになります。

よくある質問⑥ 遺留分を侵害する遺言書の効力

質問:

遺留分を侵害する遺言書の効力は有効ですか?

回答:

遺言で遺留分を侵害された相続人がいたとしても、その遺言書が無効になるわけではありません。 その相続人が、自らの遺留分を主張し、遺留分侵害額の請求をしたら、その相続人は金銭が得られます。

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相続人は、遺言が存在したとしても、相続人全員の合意があれば、遺言の内容を無視した内容の遺産分割をすることができます。

そのため、遺言の中に家業を継いだ子供に特定の遺産を相続させる旨の記載があるものの、家業を継ぐ子供がいないときは、その遺言がなかったものとして遺産分割協議を行い、協議がまとまらなければ遺産分割調停の申立てをすることになります。

(遺言によって遺贈や遺産分割方法の指定がなされると、受遺者や分割方法を指定された相続人は、遺言者の死亡時に直ちに当然に遺産を取得することになります。そのため、全ての遺産について遺言で分割方法が指定されていれば遺産分割協議をする必要はありませんが、家業を継いだ子供に相続させるべき特定の遺産について家業を継ぐ子供がいなければ、その遺産についての遺産分割をするためだけに遺産分割協議や遺産分割調停をする必要があります。)

本記事をご参考いただき、相続についてどのようにすべきか悩んだ場合には、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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